今日は、日曜日。一度外出して、帰って来た後はいつも通りにぐーたらしようと考えていたら、俺の部屋の扉の前に一人の女性が突っ立っていた。
——白雪だ。
俺は、白雪を驚かそうと背後から肩にトンっと軽く衝撃を与えるように手を置く。
「なーにやってんだ、白雪」
「——ひゃっ!?」
どうやら計画は成功したようだ。
白雪はこちらを見て、呆れた様子を見せながら「ソラくん……」と言っていた。
「何か用でもあるのか?」
「あ、うん……ちょっと聞いてほしいことがあって」
ふーん。聞いてほしいことね……
「じゃあ中に入るか? 待たせてたみたいだからココアの一杯くらいは出してやるぜ」
「うん……」
……ふむ。どうやら何か気落ちするような出来事があったみたいだな。白雪の元気のなさがよく伝わってくる。
とにかく、白雪の話を聞こうと部屋の中に入っていく。
とりあえず、白雪と自分の分のアイスココアを作り、白雪の元へと持っていく。白雪は居間のソファの端にちょこんと背筋を伸ばして座っている。その佇まいから白雪の育ちの良さがよくわかるものだった。
しかし、白雪はボーッとしているようで俺の方を見ようとしない。
そんな白雪を見て、またしてもイタズラしたい気分になった俺は、アイスココアが入っている冷たいカップを白雪の頬に当てた。
「——きゃ!? 冷たい! もぅ……ソラくん!」
ぷくっと頬を膨らませて俺のことをジト目で見てくる白雪……可愛い。
「ボーッとしているみたいだったから、目覚まし代わりの挨拶だ」
「あ、うん……ごめんね。気を遣わせるみたいになって……」
「本当だよ。後で体で支払えよ?」
「——去勢する?」
「すんませんでした白雪サン」
全力で白雪サンに土下座する俺。
謝まってるんで白雪サン、その短刀を仕舞ってくださいお願いします。
「もうっ! ソラくんがいつも通りにセクハラしてくるから落ち込む暇もないよ!」
落ち込む暇もないのはいいことじゃないか、と言ってやりたいが、その後に「お前はなにを上から目線で語ってんだ?」と言われるのが嫌なため、とりあえず黙っておく。
「……でも、どんな時でもいつも通りに接してくれるソラくんだから相談しに来たのかな…… ?」
「——なに、俺に惚れちゃったの? いいよ付き合おう。どこに初デート行く? どこで初体験済ます? どこで結婚する? どこに新婚旅行する? どこに家を建てる? どこに墓を建てる?」
「お、落ち着いてソラくん。正直言ってキモいよ」
——キモッ!? さ、流石に傷つきます。
……とりあえず平静を取り戻して、白雪の話を聞こうとする。
「それで、相談事言ってみろよ」
「う、うん……えっと、その……キンちゃんのことなんだけど……」
「——はい解散。ありがとうございましたぁ」
「ふぇ!? どうしてっ!? 相談に乗ってくれるんじゃないの!?」
知らない知らない。相談は相談事だけど、恋愛についての相談だったら知らない。
なぜ常時女に飢えている俺が、他の男に惚れている女の恋愛話を聞かなきゃいけないのか。
「お、お願いだから相談に乗ってよぉ!」
「お、おい足にしがみつくな。お前の豊満な胸が俺の脚にあたってんだよ。当てるなら俺の顔面にしろよ」
「——そ、そうだ! 相談に乗ってくれたら一回だけ抱きついてあげるよっ!」
「いや別にそれはいいや。抱きついてくれるのは他にもいるし」
「——あ、あれっ!? 昔だったら泣いて喜んでくれてたのにっ!?」
昔は昔、今は今、だ。
別に嬉しくないわけじゃないが……今の俺には、抱きついてくれるヤツがいるからな。
「う、うぅぅ……ソラくん意地悪しないでよぉ……!」
だんだん涙目になってきている白雪。
はぁ……しょうがないなぁ……
「……わかった。わかったから……そのかわり、今度俺に占いでもしてくれ。できれば恋占いとかそんな感じのやつで」
「う、うん。わかった……」
うん、うん、と頷いて了承する白雪。
妥協したみたいになってるけど、白雪は神社の星伽神社っていう大きい所の娘さんだから、占いの的中率的なものも良い筈だ。つまり、これで俺がモテモテになりますって占われたら……俺の生涯安泰? 美人を側に侍らせて一生ウハウハ生活? ウハァー! 勝ち組じゃんキタコレ! というわけなのである。そして、俺はその逆を考えないポジティブ男。つまり、モテませんと言われることを想定しない男だ!
白雪は、もう一度姿勢を伸ばして俺と向き合う。
「——キンちゃんとキ、キスをするためにはどうすればいいかなっ!?」
…………やっぱ、今からでもいいから断れないかな。そして、キンジを八つ裂きにしたい。
「あー、えーと、まず、なぜにキスをしたいとお思いになられたのでしょうか?」
キンジを八つ裂きにしている未来を浮かべながら、俺は白雪に尋ねる。
「キ、キンちゃんとアリアが、ハイジャック事件のときにキスをしたって言ってたから、わ、私もキンちゃんとキスしたいですっ!」
——は? あいつら、武偵殺しと戦ってたときにそんなことやってたの?
……いけないいけない。今は平静にならなければ……白雪の相談に答えないといけないよな……いや、でも答えは一つしかないよね……?
「じゃあ、キスすればいいじゃん」
キスしたいならすればいいじゃん。キンジなら多分だけど白雪も受け入れてくれるだろ?
なんて俺が思っていたら、白雪は鼻で笑った——おい。
「ソラくんは相変わらず、女心というものがわかってないよね。それだから、変態だなんて罵られれれれれれッッ!? 痛い痛い痛いッ!? ごめんなさいっ! 私が悪かったから頭離してぇえええええええ!!」
相談していたハズの白雪が、急に俺に対して説教してきたから頭を鷲掴みにしてやった。反省もしてないが後悔もしていない。
白雪は、フウフウと息を吐きながら、頭を押さえている。しかし、俺に向かって何か言いたいことがあるのかこちらをジト目で見ている。
「ソラくんは、簡単にキスすればいいじゃんって言うけど、キンちゃんと、キ、キスなんて! 簡単にできるわけないよっ!」
——おい、もうめんどくせえよこいつ! キンジのこと好きならさっさと告れやっ!
「じゃあ、アリアにキンジを取られればいいんじゃ——」
「——それはダメェエエエエエエ!!」
——パチーン!
俺の頬に白雪のビンタが叩き込まれる。
…………………え、なんで?
「……あ。ごっ、ごめんねソラくんっ! つ、ついっ!」
ブンブンとまるでヘッド・バンキングのように頭を振りながら俺に謝ってくる白雪。
『ついっ!』で頬をぶっ叩かれる俺の気持ちになってみろバカチン。
だがしかし、白雪の相談ではこういう身体の被害がよく起こる。つまり俺は、白雪のビンタに慣れているということだ——女の子のビンタに慣れたくなかったっ!
「いや気にしてないよ、うん」
——全くの嘘である。めちゃくちゃ気にしてます。はい。
「それで、キンジとキスする方法だったっけ?」
「う、うん。そうだよ。何か良い案ないかな?」
良い案ねぇ……あるっちゃあるけど……しょうがねえ。そろそろ俺も覚悟を決めようか。
「白雪っ!」
「は、はいっ! ソラ先生っ!」
「——これから『遠山キンジにキスしてもらう作戦』を始める!」
*
俺は、自室から無線を使ってキンジの部屋の前にいる白雪に通信する。
「白雪、声聞こえるか?」
『聞こえるよっ! ソラくん!』
大きすぎる白雪の声が返ってくる。
……キンジにバレたらどうすんだバカチン。
「……声を落とせ白雪」
『あ、ごめんねソラくん……』
白雪は、バレることに気づいたのか小声で謝る。
うん、わかればいい。わかればいいのさ
「じゃあ今から『遠山キンジにキスしてもらう作戦』の説明を始める!」
『は、はい。ソラ先生』
「まず、白雪は、頭のリボンのところにカメラがついてあるのがわかるか? それを起動してくれ」
『あ、うん。これだよね……えいっ』
可愛らしい白雪の掛け声とともに、俺の部屋に置いてあるモニターにキンジの部屋の扉が映される。これで具体的に指示が出せるようになった。
「よし、それじゃあ概要を説明する。これは単純だ……俺が無線で言ったことをそのままキンジに言い、その台詞に合わせて白雪がキンジにアクションする……わかったか?」
『わかりました、ソラ先生……!』
——うむ。さすが物分かりの良い白雪くんだ。
「もう一度言うが、俺の言った台詞通りに言うんだぞ?」
『了解でありますソラ先生』
……なんか役にノッてきてないか白雪? お前のためにやってるんだぞ。
「それでは
『はっ! 行って参りますソラ先生っ!』
これ完全にアイツ楽しんでんな。辱めさせてやろうか。
* (※白雪さんはソラくんの台詞を受けてから喋ってます)
俺——遠山キンジは、今日はアリアがいないため一日中部屋でゴロゴロしようとしていた。
——ピン…ポーン——
うん? この慎ましいインターホンの押し方は白雪だな。
正直、白雪が来ると色々と面倒ごとがあって休みが潰れる可能性があるため、あまり出たくないんだが……流石に居留守は使えない。
一応、玄関まで行って、のぞき穴から確認する。
——うん、白雪だな。
「何か用か白雪?」
「キンちゃん……! こんにちは」
俺の顔を見て、花が咲くような笑顔を浮かべてキレイなお辞儀をする白雪。
こいつを見てると、育ちの良し悪しというものがよくわかる。
「えっと……とりあえず、中に入れてほしいな……」
「え? あ、まあいいけど……」
用件を言わない白雪を不思議に思ったが、別に用件がなければここに来てはいけないという話もないので、部屋の中に引き入れて居間へ向かう。
「……キンちゃん」
「うん……? どうしたしら——ゆきっ!?」
突然、白雪が俺の名前を呼んだので、振り返って反応したら——押し倒されてしまった。
「お、おい!? いきなりなにすんだよ!?」
「あ、ごめ——じゃないや、えっと、私はキンちゃんを押し倒したかったの!」
いやなんで逆ギレみたいに言うんだよ!? そして、押し倒したかったってどういうことだよ!?
俺がアタフタしていると、白雪は俺を押し倒したまま、さらに密着する。し、白雪の豊満な胸が——ッ!
すると、白雪は、俺の右手を掴んで自分の体へと近づけていく。
「えっと……キンちゃん! 私のおっぱい触って! ええっ!?」
いやなんで自分で言ってから驚いているんだよっ!?
というか、おっぱい触ってって!? そんなことしたら100%の確率でヒステリアモード突入するわ——ッ!
「離れろっ! 白雪!」
俺は白雪を離れさせるため、体を起こして白雪の肩を掴む。
白雪は、きゃう! と小さく悲鳴を上げて、俺に怒られると思ったのか目を閉じて全身を震わせる。
別に怒るつもりはなかったんだが……
「すまん白雪、怒るつもりは——」
「——キンちゃん!」
ドサッ! とまたしても白雪が俺を押し倒す。
はぁ!? 突然俺を押し倒したり、自分で言ったことに驚いたり、また、俺を押し倒したり、さっきから白雪は何をやっているんだ!?
「お、おい……白雪……今日は、どうしたんだよ」
俺がそう言うと、白雪は目線を後ろ……いや、自分の耳元にやっている……?
「あっ……えーっと……キンちゃんともっと深い関係になりたいなぁーって」
「もっと深い…関係……?」
「えーっと……男と女がプロレスするぐらいの関係になりたいっ!」
「——はっ!? プロレス!?」
プロレスって普通の意味のプロレスじゃないよな!? つまりそれは男女のセッ——とにかくっ! ど、どこでそんな言葉を覚えたんだ白雪は!?
俺があたふたしていると、今度は俺の腹の上に全体重をかけて乗っかってきた。
「——キンちゃん」
「……え?」
俺の腹の上から妙に落ち着いた白雪の声が聞こえてくる。
普通、白雪が俺に抱きついたりしたならば、顔を真っ赤にするハズなのだが……
「私ね、えーっと……キンちゃんが私以外の女を愛そうとしたら——殺すから」
「怖すぎるわァアアアアアアアア!?」
『殺すから』の部分だけ、目のハイライトが消えていた。
「だからね、もし、キンちゃんのアレが溜まったりしたら……いつでも私に言ってくれていいよ?」
は……は!? はぁ!? ど、どういうことだ!?
「キンちゃんが自家発電したくなった時には、私がシッカリとサポートしてあげるから!」
「おっおい!? どこで自家発電なんて言葉覚えたんだよ白雪っ!?」
先ほどから驚きが連鎖して、ヒステリアモードになる余裕もない。
今日の白雪は異常すぎる。以前までの白雪だったら絶対知らないような言葉までも知っている。
「だから、キンちゃん! えーっと……私とR-18なこといっぱいしよう? 私とチョメチョメなこといっぱいしよう? 私といっぱいニャンニャンしよう?」
——だからそんな言葉をどこで覚えたんだよ白雪っ!?
R-18もチョメチョメもニャンニャンも知ってる単語じゃなかっただろう!?
すると、白雪がまた自分の耳のところに視線をやって、何かをボソボソと小声で呟いている。
俺は、それを聞こうと意識を集中させた。
「……ここで決める……? 俺に続け……?」
などと、白雪は独り言を言っている。そして——
「なぁ……キンちゃん—–スケベしようや……」
…………………おっけい、確信した。
俺は、無言で白雪の肩を掴んで起こした。
「白雪、少し体に触るぞ」
「え、あ、うん」
彼女の髪に隠れている右耳を触ってみる……やはりあった、無線。
そして、白雪がしているリボンをよく見る——超小型カメラを発見した。
「おい、白雪……これは誰のだ?」
「——えっ!?」
俺はそれら二つを両手に持って、ジロジロと眺める。すると、白雪が焦りながら俺に弁明した。
「ち、違うよキンちゃん! これは決して
……なるほど。俺は全てを理解した。
俺は出来るだけ、キレイな笑顔を白雪に向ける。
「ちょっと白雪はここで待っててくれ。すぐ帰ってくるから」
「え、あ、うん——いってらっしゃいキンちゃん!」
彼女はいつも通りの素の笑顔を浮かべて俺を見送る。
うんうん、白雪はその笑顔が似合ってるぞ。
そして、俺はこの部屋の上の階にいる住人——天草空を殺しに向かった。
数分後、Sランク武偵の悲鳴が男子寮に響き渡ったらしい。
*
——し、死ぬかと思った……! キンジのやろぉ、ガチで俺の命奪いにきやがった……!
「えっと……ソラくん、大丈夫……?」
白雪が心配そうに俺を見つめる。
お前が口を滑らせて、『ソラくんの』って言わなきゃバレなかったんだけどな。
「ああ、大丈夫だ。いつも通りのことだからな」
「い、いつも通りなんだ……」
ああ、いつも通りもいつも通りさ。
レキに銃剣を刺され、キンジには殴られ、白雪にはビンタをされて、アリアには銃をぶっ放される。ロクなやついねえや。でも、どいつもこいつも嫌いになんかなれるわけねえんだよなぁ……
なんて考えていたら白雪が俺をじっと見つめていた。
「俺のこと見つめてどうしたの? もしかして惚れちゃった?」
「——えっ!? あ……いや、えっと……うん……ソラくんの今の表情見てたら、少しだけどドキドキした……」
あっそう。俺はイケメンだから仕方ねえよな。
でも、お前の本命はキンジなんだろ? 無理矢理変えてやろうとか思わないから安心したまえ。
「……ソラくんは、どうして……私の相談に乗ってくれるの?」
白雪が神妙な顔つきで俺に聞いてくる。
突然どうしたんだろうか……?
「そんなのダチだからに決まってんだろ?」
当たり前じゃん。友達だからな。
しかし、白雪は俺の答えに納得がいかなかったようで俯いていた。
「……ソラくんは、私の相談……嫌だったよね……? わかってるの、ソラくんがめんどくさそうにしていたの。でも私は、ソラくんの優しさにつけ込んで、何回も何回もソラくんを頼ってた……ソラくんが私の相談に乗ってくれてたのは……どうしようもなく優しかったからだよね……?」
——ごめんねごめんね……と、泣きそうな声で俺に謝ってくる白雪。
はぁ……なんで俺の周りはこんなにもめんどくさい奴ばっかりなのかねぇ……
「そうだな。俺は、お前の相談をめんどくさがってた」
「あうぅ……」
「だって、ずっとキンジについての恋愛相談ばかりだぜ? 巨乳でロングヘアーで可愛いという俺にとっての理想形を表したような白雪が他の男をずっと好き好き言ってるんだからな。拷問かよってな?」
「……そう…だよね……ごめんね……」
謝るんじゃねえよ。俺が惨めになるじゃねえか。
「でも勘違いすんなよ。俺は絶対に、優しさだけでお前の相談に乗っていたわけじゃないってことだ」
「え……でも……」
白雪は完全に俺のことを勘違いしている。
俺が優しいからずっと頼られっぱなしだったダァ……? ンなわけねえだろ。
「俺はただ、惚れた女には幸せになってほしいだけだよ」
「——ッ!」
ハッキリとわかる。俺は間違いなく白雪のことを好きだった。でもそれは、初めっから勝てるはずも勝負だったから参戦すらしていない、でもそれでもよかったんだ。俺は気が多い人間だからな、好きな女はたくさんいるんだよ。
それでも好きな女——愛した女には幸せになってほしい。その気持ちだけは、絶対に偽らねえ。俺が惚れた女は絶対に幸せにする。それが俺の誇りだ。
「お前が俺のことを好きになんてならなくていい、でも、お前には幸せになってほしいんだよ」
「ソラ、くん……」
それにさ——
「お前にはいつもセクハラしてて良い思いしてんだから、これくらいは当然だろ?」
そう言って俺は笑みを浮かべる。
白雪は、唖然としながらも次第に笑みを浮かべていく。
「やっぱりソラくんは、大バカだね。今世紀最大の大バカ……」
なんだそりゃ、めちゃくちゃ馬鹿にされてるんだけど。
「セクハラばっかりして、そのくせに誠実で、優しくて、強くて……だから、これは——そんな大バカへの私からのお礼……」
そう言って白雪は——俺の頬にキスをする。
「——は!? な、なにやってんのお前!?」
「ふふっ、ソラくんの顔真っ赤だね。可愛い」
そう言って微笑む白雪はとても綺麗で、いつもの気弱さも全く感じさせなかった。
……バーカ。お前も顔真っ赤じゃねえか。
「ソラくんには、これからもどんどん相談するからね! 絶対断っちゃダメだよ?」
「えー、もう勘弁してほしいんだけど……」
白雪は、ダメ! と両手でバツを作る。
その仕草は可愛らしくて、白雪らしいなぁと思った。
白雪はソファから立ち上がる。
「——それじゃあ、私帰るね」
俺も、おう、と短く返して白雪を見送ろうとする。
「あ、ちゃんと占いの結果は後で伝えるから心配しないでね」
「え……あ、そうだったな! よろしく!」
白雪のキスですっかり忘れてた……
「じゃあね、ソラくん」
「バイバイ、白雪」
お互いに手を振り合って別れる。
白雪の姿が見えなくなるまで俺は手を振り続けた。
「はぁ……今日は、色々と疲れた……」
俺は、頬に手を当てる——白雪にキスをされたところ……
「とんでもない爆弾を投下されたもんだな。やっぱり白雪は悪女の素質あるわ」
それでも可愛く見えるんだから、
ソラくんへ
ソラくんを占ったところ、女難の相がありました。
これは宿命だと思います。受け入れましょう。
白雪より