現在、俺はファミレスにいた。
ちびちびとメロンソーダを飲みながら横にいる同級生の生徒たちに視線を送る。
そこには、何やら悲しげに俯いている遠山キンジと、とある部屋……キンジの部屋のカードキーを片手に喜んだ顔をしている星伽白雪と、新しいドレイ(白雪)が出来たとかなんとかで嬉しそうにしている神崎・H・アリアと、いつも通りの無表情で俺と同じくメロンソーダをちびちびと飲んでいるレキがいた。
こいつらは『
それで俺も誘われたのだが……やっぱりおかしいよね。
『
……つまり俺が言いたいことは。
「——肩身が狭いよぉ」
「? 何か言いましたかソラさん?」
俺の正面に座っているレキがコテリと首を横に傾ける。
はいはい可愛い可愛い。
「俺ってさぁ、ほとんど『
俺は、半ば逆ギレのようにレキに言う。
「アリアとキンジと白雪は言わずもがな、お前だってキンジに白雪の居場所教えたんだろ?」
「はい」
「ほらぁ……俺もう居る場所ないじゃん……クソぼっちじゃん……」
無感情な声で『はい』じゃないよ全く……
はぁ……とため息を吐いて、俺はメロンソーダをちびちびと飲む作業を再開した。
そんな俺にキンジが肩をトントンと叩く。
「何言ってんだよ。お前だってどこかで『
「…………ん?」
……どうしよう。なんのこと言ってるか全然わからないんだけど。
「
……ギンが? というよりもアイツの本名はジャンヌ・ダルクだったんだな。有名人じゃないか。
「実際にアイツもどこか戦いづらそうにしていたぞ。終始、苦虫を噛み潰したような顔してたしな」
キンジの言葉にアリアも同調する。
「昔の
…………もしかしてギンは。
俺と仲良くなったせいで、俺の仲間であるキンジやアリアや白雪を傷つけることを躊躇したのだろうか……?
そう考えて俺はついつい小さく笑ってしまった。
「まぁ、とにかく白雪が無事で何よりだ」
「あ、ありがとう。ソラくん」
俺は、保護対象であった白雪と握手をする。
「——報酬は、おっぱい5揉みでいいぜ?」
俺は白雪の握っている手をこねこねと動かしながら言い放った。
そして、白雪はというと……俺を虫ケラを見るような目で見つめている。
「ソラくん——そろそろそのセクハラ癖なおそっか」
突然、俺の手だけ
「え……あ、アチイイイイィイイィィィイイ!!」
悲鳴をあげて俺はメロンソーダに燃えている手を突っ込む。
しゅぅうう、と音を立てる俺の右手氏。一体何があったというのか!?
「な、なんだ今のは!? 俺の手が突然、燃えたぞ!?」
ワケがわからない俺はキンジやアリア、白雪、レキの顔を見渡す。
キンジとアリアはやれやれといった顔で、レキはいつも通りの無表情だった。
そして、白雪はなぜか緊張しているような面立ちをしていた。
「……『白雪』というのは私の真の名前を隠すための伏せ名」
緊張した様子の白雪が俺にそう言ってくる。
「私の諱、本当の名前は『緋巫女』。2000年ものの永いときの中、始祖の力を受け継いできたの」
……ひ、緋巫女!? それってあれか!? 邪馬台国の卑弥呼か!?
「じゃ、じゃあこの炎……」
「うん。私の超能力……で出したの」
——私のこと怖くなったよね……と続ける白雪。
……なるほど、白雪はこの力が原因で
それで、白雪もこの炎を出す力はみんなから恐れられると思ってずっと隠していたということね。
「ああ、怖いな」
俺がそう言うと、白雪は肩をビクッと震わせた。
怖いよ……怖いに決まってるだろ! 『白雪』がな!
「俺は、お前の力よりもお前の方が怖えよ!? それじゃあなにさ! 俺はお前のその先祖の血とやらのせいで股間を斬られそうになったり手を燃やされたりしてるってわけなの!? お前の始祖ってそんな股間大好きなビッチ野郎だったの!? このクソビッチ白雪めっ!」
白雪がポカンとした顔をする。キンジとアリアは「やっぱりね」と言いたげな顔をして、レキは真顔で俺をジッと見ている。
「大体なんだよその始祖だとか先祖だとか超能力だとか、俺の知ったことじゃねえよ!」
俺はぼんやりとしている白雪の肩をグッと押さえる。白雪はビクッと反応して俺を見てくる。
「お前はお前だ、お前は星伽白雪だろうが! お前がお前である証拠はそんな炎を出す力じゃねえだろ!」
俺は白雪に語りかけるように言う。白雪も俺の言葉の一言一句を聞き逃さないように俺の目をしっかりと見つめている。
「お前がお前である証拠。それは——」
俺は一回間を空けて。
「そのデカイおっぱいだろうが!」
俺は白雪——のおっぱいをガン見しながら言ってやった!
………………
…………
………
——ボッ!
白雪の両肩に置いていた俺の手が発火した。
「うァアアアアアアアア!? アチィイイィィィィ!? ま、また燃えたあああああああ!!!」
床にのたうち回る俺を見て、白雪サンが一言。
「やっぱり去勢しようね」
この後土下座を繰り返して許してもらえました。
*
俺は今、警察署にいた。
先に言っておくが、俺は捕まったわけではないからな。勘違いするなよ?
単なる面会だ——ティリア・ミストの。
というわけで俺が今いる場所は警察署の面会室というわけだ。
その中で、アクリル板越しに俺とティリアは向かい合っていた。
相変わらず、アリアよりも小さい体。俺はこんなガキっぽいのと闘っていたのか。
「……お前」
「なに? どうかしたのぉ?」
最近よく聞く間延びした声。
「その貧相な身体なら簡単に脱獄できそうだな」
引っかかる所もなくて牢屋とかスイスイ抜けられそうだしな。
「殺されたいようね。いいわ。今すぐ脱獄して射殺してあげる」
いや冗談だって……冗談だから、そんなガチの殺気を俺に向けないでよ。アクリル板越しとはいえ怖いんだよ。
はぁ……とティリアはため息を吐く。
「……私に何か聞きたいことがあるからここに来たんじゃないのかしら?」
「——あ」
「あ、って貴方ねぇ……」
そうだった。用事があるの忘れてた。ティリアの貧相な身体見てたらついつい忘れてちゃってた。
「お前の異能って『
俺がそう言うとティリアは……完全にアホを見る目をしていた。
「貴方、何言ってるのよ。関係してるに決まってるじゃない。運命と未来よ? ほとんど同じみたいなものじゃない」
いや、それはわかる。関係はしているだろうなぁ、とは思ってたから。別に確認しただけだから。勘違いしないでよね。
「それじゃあお前って『異能』を二つ持ってるってことか?」
そう俺はこっちが聞きたかった。だって、『無運』に『未来予知』だろ? 二つじゃん。
そして、ティリアは…………完全にアホを見る目をしていた。
彼女は一度ため息を吐いて。
「前提が間違ってるわ。『無運』を異能の一つに数えちゃダメよ。そもそも、運命の一族ってもともとは未来を予知する預言者の一族よ。もしかして知らなかったの……?」
「う、うん。知らんかった」
呆れた顔色をしていた彼女であったが、俺がそう答えるとますますその色を濃くしていった。
「はぁ……つまり、元々の運命の一族は私みたいな能力を持つ奴が多かったのよ。運命の
「お前にわからんなら俺にもわからんだろ」
「そうね。バカに聞いた私がバカだったわぁ」
「お前なんか刺々しいな!」
——どうしてこんなバカに負けたのかしらぁ。とボソッと呟くティリア。
お前こそどうして俺のことをそんなにバカバカ言ってくんだよ。最初の頃は俺のこと大好き言ってたじゃねえか。
「じゃあ聞きたいこと聞けたから帰るよ」
「ん? ああ、そう。じゃあね」
そう言ってティリアは、手を横にフリフリする。
その仕草が子どもっぽくてなんだか似合ってるなあと思った。
「それじゃあ、またな」
「ええ、また会いましょう『先輩』」
……先輩か。そうだな。
俺は警察署を出た。
最後にティリアが言っていた『先輩』という言葉、あれは俺と同じ東京武偵高校に通うからである。
捕まっているのになぜ? と思うだろうが、今の日本には司法取引という制度が導入されている。
司法取引とは、犯罪者が犯罪捜査に協力したり、共犯者を告発することで罪を軽減——もしくは帳消しにできるというものだ。
ティリアはかなり大規模な組織——『イ・ウー』に所属しているため、日本もその組織の情報はかなり欲しいハズだ。
それで、ティリアの罪は帳消しになるだろうが……流石に危険な組織の構成員であったため、化け物じみた教師といった抑止力が大勢いる東京武偵高校に通わされることになるだろう。
だからティリアは俺のことを『先に学校に通っていた人』として先輩と呼んだのだ……たぶん。
*
アドシアードも終わって、1週間が経った。
午前中の授業が終わり、午後の自由履修の時間だ。
俺は、既に一年のうちに全単位を収めているので午後は暇な時が多いのだ。それで、俺はとある人物と、とある場所で待ち合わせしていた。
——選択教科棟の前に立ち止まる。
ここだ。
ここが、俺が彼女と待ち合わせしていた場所だ。
中にある音楽室からピアノの音が聞こえてくる。俺はあんまり音楽関係に強くないのだが……それでもわかる。このピアノを弾いている人は上手だ。
おそらく、曲名は……『火刑台上のジャンヌ・ダルク』
……自然と頬が緩んでいくのがわかる。
俺は音楽室の中に入った。それと同時にピアノの音が止む。そして、ピアノを奏でていた少女はこちらに顔を向けた。
「——久しぶりだな。天草」
その少女は、氷のような銀色の髪をつむじの辺りまで上げた2本の三つ編みで結っており、肌も白人のように白く、目もキリッとしていて、高貴さを感じさせるものもあってまるでどこかのお嬢様のように見えた。
彼女には——
だが、俺が彼女を呼ぶときの名はそのどれでもない——
「……ああ、久しぶりだな——ギン」
——ギン・ダイヤモンド。
それが俺が彼女を呼ぶときの名前。
俺が……俺だけが彼女をそう呼ぶ。これからもずっと俺だけが彼女のことをそう呼んでいたい。
そして、彼女も俺だけがそう呼ぶことを許している。とても嬉しいことだ。
ギンは座っていた椅子から立ち上がって、ゆっくりと俺の元へと歩んでくる。
そして——俺に強く抱きついてきた。
「天草……ただいま……」
彼女は俺の耳元で小さく呟くように言う。
……温かい。彼女の体温が俺の体に浸透していく。
そして俺も——彼女の体を思いきり抱きしめた。
「ギン……おかえり」
……彼女にしっかりと届くように俺は、声をかける。
彼女の抱きしめる力がさらに強まった。どうやら、伝わったらしい。
……言いたいことは山ほどある。
司法取引の件やら、アドシアード中の行動の件やら、持っている超能力についての件やらと。
だが、今は聞く時ではないだろう……今は、彼女をただ迎えてやればいい。
長い旅路を終えて帰ってきた彼女を。ただ、優しく……強く……思いきり抱きしめてやればいい。
「お前のところに帰ってこれてよかった……」
ギンが俺の耳元でそう呟く。
「お前が生き延びてくれてよかった……」
……、
「お前が……私を受け入れてくれて本当によかった……」
……受け入れる、か。
「ばーか……俺は、お前が可愛い子ちゃんだから受け入れただけだよ」
俺がそう言うと彼女は小さく笑った。
「嘘をつくな……お前がどんな奴でも受け入れてしまうことはわかっているさ。お前が、無責任に……無条件に仲間に期待して、信じて、受け入れることはよくわかっている」
無責任とはひどい言い草じゃないか。ぶーぶー。
「でも、だからこそ……仲間たちはお前の期待に……信頼に応えるために全力を尽くす。なぜなら、お前の傍にいたいから……ずっとお前の傍にいてあげたいからだ」
……、
「……私もお前にやられてしまったよ。お前の信頼という温かさにやられてしまった。どうしてくれるんだ一体、私をここまで弱くして……おかげで星伽白雪と遠山金次と神崎・H・アリアに負けてしまったではないか」
台詞は怒っている……だが、全く声のトーンは怒っているようには感じない。むしろ嬉しそうにしているように聞こえる。
「……『強さ』ってのは誰かを傷つけることじゃねえだろ。『強い』ってことは誰かを傷つけることができるってことじゃねえだろ」
「ああ……」
「『強さ』ってのは誰かを護れるかってことだ。『強い』ってことは誰かを護ることができるってことだ」
「……そうだな」
「……お前は弱くなんかねえよ。そして、弱くなってなんかもねえ。誰かを傷つけたくないと少しでも思えるようになったんなら……お前は、むしろ強くなったんだよ」
ここ最近になって、『強さ』ってのがよくわかった。
ただ、敵を倒すってことが『強さ』じゃない。ただ、敵に負けることが『弱さ』じゃない。
強さとは……誰かを護ること。そして、戦った相手を許すこと。
弱さとは……誰かを傷つけること。そして、戦った相手を恨むこと。
『強さ』とは『弱さ』とは、そういうものだと俺は思っている。だから、俺は強くなりたかった。最強のハズのSランクになっても変えられないものがあると知ったから。
……誰かに自由を縛られて解放されるために悪いことをやっている少女がいる。
人を拐うという悪事をやっているが、根は真面目で天然で可愛い少女がいる。
悪人とは、悪事をやっているから悪人であるわけじゃない、悪人であるから悪事をやっているんだ。
それじゃあ、悪人じゃないのに悪事をやっている者たちとは一体……
よくわからない……よくわからないが、俺は悪事をやっているからといってバッサリと断ち切る勧善懲悪の世界に呑まれたくはない。
だから、俺は戦った相手でも許すことをしていきたかったのだ。戦った相手にも魅力的なヤツらがたくさんいたから。
——そして今、俺が抱きしめている少女も敵であった者の一人だ。
俺は彼女を許せているだろうか。彼女を受け入れられているのだろうか。
「お前は受け入れてるさ、十分に」
ギンが俺に呟く。
「私を抱きしめているお前のこの温かさこそが私を受け入れている証拠だ」
……そうか。俺はお前を受け入れているんだな。よかった。
「……そして、私もお前に受け入れられたまま終わるつもりはない」
「……え?」
ギンはそう言うと、俺の肩に置いていた頭を離して、俺の顔のすぐ近くにやった。
その行動のおかげで、俺とギンの顔の距離は10センチもない。
「ギ、ギン……? 一体何を」
——している。と言おうする前に。ギンが——俺にキスをした。
「——!」
「………………動くな天草」
驚く俺を横目にギンは俺の肩を押さえてそのまま深い口づけをする。
…………柔らかい。
こんなにも唇ってのは柔らかいものなのか。
……ただ、粘膜と粘膜が接触しているだけで、こんなにもほんわかと温かい気持ちになるのだろうか。
自分の脳に——世界にギンだけが映る。そういう感じがする。
彼女の匂いが伝わってくる。爽やかな若草のような香りだ。
「……どうやら、私はお前を私自身が思っていた以上に大切に思っているらしい」
ギンは、まるで自分のことを第3者のような口ぶりで言い、それが終わると彼女は俺の右手を自分の身体の方へと触らせていく。
太ももからお腹……そして——
「お、おい、ギン——」
「
……フランス語か。
「意味は……言わなくていいな」
そう言ってギンは——俺の手を自分の胸に
……白雪のようにとても大きくはないが、アリアのように小さすぎるわけでもない。
程よい……程よいサイズの胸。
俺はギンの並乳の感触を味わうようにして揉んでいく。
「……めちゃくちゃ、柔らかいな……しかも服越しなのに暖かいし……なんか気分が盛り上がってくる」
「お……おい……っ! 揉みながら感想を言っていくな……っ! 恥ずか…っしいだろ……!」
顔を真っ赤にしてそう言うギン。
——可愛い。今のギンはめちゃくちゃ可愛い。さっきキスをした時よりもさらに可愛く見えてくる。
俺はどうやら本格的におっぱいのことが大好きらしい。
普通であれば、揉んでいるだけでこんなに幸せな感覚を得られるのだろうか……
「……ギン。ありがとな。俺はお前のおかげでまた一つ幸せになれた」
「そうか……私もお前を幸せにできてよかっ——って! さらに揉むな——ッ!」
そう言って顔が真っ赤なギンは俺から離れる。
先ほどまで感じられていたギンの体温が無くなり、身体と手がほんのりと寒く感じた。
——ギンは振り返って音楽室から出ていこうとする。
「ギン」
彼女は歩みを止め俺の方を振り向く。
俺はこちらを見る彼女に、慣れないながらも確かに伝わるように——
「
俺の慣れていないフランス語を聴きながら、彼女は少し目を見開かせる。
俺はそんな彼女を見て、ついつい微笑ましく思った。
「意味は言わなくていいよな?」
「ああ、十分だ……それじゃあな天草」
「おう」
そう言ってギンは音楽室から立ち去っていった。最後に見えた彼女の顔は、少し頬が緩んでいて赤くなっているように見えた。
まぁ、俺も同じなんだけど。
先ほど、ギンが言っていたフランス語の言葉を思い出す。
「
随分とくさいことを言うじゃないかギン。おかげで俺は照れちまったよ。
だが——
「
……俺も恥ずかしいこと言ってるなぁ。
ったく、フランス語なんて慣れない言葉使うからこういうことになるんだよ。
あー、恥ずかしい恥ずかしい。
おかげで今日はギンの顔が忘れられそうにねえわ……
これで、『
ギン改めジャンヌが持っていた本物の聖剣デュランダルは白雪によって叩き折られたらしい。化け物かアイツは。
だが、そんなことはどうでもいい、ようやく平穏が訪れたんだから。
とても長い数日間だった気がするけど、みんな生き延びて、みんなさらに強くなった。
それでいいだろう。
これから先に待ち受けるのは、俺たちの普遍的な日常。いつも通りの日常。
だが、俺にはそれが何より大切なものなのだ。
*
後日、これは完全に蛇足だ。
「空せんぱぁい……私のお世話をしてくださぁい」
「ふざけんなクソチビっ!」
間延びした声。だが、今は完全にムカつく声。
そう、この声を出しているのはライトパープルに包まれたミディアムヘアの少女——ティリア・ミストだ。
彼女は東京武偵高校の制服を着て、俺の体に擦り寄ってくる。
「どうしてですかぁ? 私はぁ、空先輩の——
——ブチッ!
俺の眉間の青筋が断ち切れる音が鳴り響いた。
今のクソチビの発言に何か変なところがあったのにお気づきになられたのではないだろうか。
『
だが、一つだけ言うとしたら……『
「お前、なんで1年生扱いなんだよッ!? あぁ!?」
「そんなこと言われてもぉ……私は生まれながらにして戦い続けてきたのでぇ、歳もわかりませんしぃ、どうせなら空先輩と特別な関係になりたいなぁって」
——それで1年生になりましたぁ。と言うクソガキッ。意味わかんねぇよ!?
大体、喋り方キメェんだよ! なんで、アドシアードの時は普通に話してたのに今は敬語っぽいナニカで話してんだよ!?
しかも呼び方変わってるしよぉ!?
「それに、なんでお前が勝手に俺の
そう、このクソチビガキ、俺の全く知らないところで俺とクソガキの『
その申請を受けた教務科の人間の名は蘭豹。それで、蘭豹は『天草が
あのクソババアまじふざけんじゃねえぞ!! ファック! ファック! マジファーック!!
「まぁまぁ、空先輩おちついてくださぁい」
そう言って俺を宥めてくるティリア。
テメェのせいで俺は荒れてんだよクソガキッ!
「——ソラさん」
背後から無感情な声が聞こえてくる。
「レキか。どうした?」
特に振り返ることなく俺は答えた。
「あらぁ? 『狙撃科Sランク』のレキ先輩じゃないですかぁ。こんにちはぁ」
そう言って全く礼儀のこもってないゆっくりとしたお辞儀をするクソガキ。
そして、なぜに『狙撃科Sランク』のところを強調したんだよ。
……あぁ、そうか。ティリアは狙撃科を専門としているのか。まぁ、そりゃあそうだよな。
「……ソラさん。この『子ども』を射殺してもよろしいでしょうか?」
背後からゴゴゴととんでもないオーラを出しておられるレキ様がいらっしゃる。
ちょ、チョーこえー……
「こ、こどっ………あらあらぁ。今は、武器を持っていない私に対して攻撃しようだなんて、それでもSランクなのぉ? 品位を疑うわねぇ」
こっちもこっちで『子ども』って言われてこめかみピクピクさせながら言ってるしよぉ。なんなのコイツら。
「というかティリア。お前、今、武器持ってないのか?」
俺の質問にティリアは頷いて答える。
「ええ、空先輩にAWMを壊されたしぃ……武偵は殺しちゃダメなんでしょう? それじゃあ.338ラプア・マグナム弾やAWMなんて使うわけにもいかないからぁ。まだ持ってないのよぉ」
……ちゃんと武偵として考えてるんだなぁ。少し見直したよ。
「仕方ねえな。俺はお前の
そう言うとティリアは、ぱぁっと明るい笑顔を見せた。
「是非とも一緒にいきましょう『お兄ちゃん』!」
「——ぐふっ!」
ア、アカン……! 俺、本当にこういう妹系はダメなタイプかもしれない。
や、やべっ、ティリアが妹……!? 容姿も子どもっぽいし本当に妹としても「グサッ」ありかもしれない!!
……あれ? 今なんか「グサッ」って音が鳴らな——
「アアアアアアアアアアアアアア!! 後頭部に銃剣刺さってルゥウウウウウウウウウウ!?」
ゴロゴロとのたうち回りながら、おそらく下手人であろうレキ様の方を見る。
「——死んでください」
な、なんで!? 意味がわかんないんですけどッ!?
「あらあらぁ、めんどくさいパートナーねぇ。こんな人が本当に空先輩の
お、おい!? 余計なことを言うんじゃねえよ!? お前への飛び火が俺に飛んできてんだよッ!
「………………ソラさん。今すぐ、この子どもとの
や、やべぇ……!? レキさんやべぇ!? めちゃくちゃドス黒いオーラ出してるんですけどぉ!? 怖い! 怖すぎるよレキさんっ!!
「子ども…………ほぅら。またそうやって空先輩を束縛しようとする。空先輩が自分のだけだと思っていたら大間違いじゃないですかぁ?」
ひえぇ!? お前も言い返すなぁ!? というかお前も俺を
「…………私は、ソラさんに自由に接していいと言われています。貴女はソラさんに『子ども』として扱われているようなので、自由に接しても大丈夫なようですね」
羨ましいです。と続けるレキ様。
ピクッ! ピクッ! と青筋ピクピクさせてるティリアと無感情無表情ながらもドス黒いオーラを見に纏わせているレキ。そして、二人の猛獣に挟まれているバンビな俺!
オイオイ! 狙撃科ってこんなメンドくせえヤツらばっかりなの!? 気難しすぎんだろ!
と、とにかくコイツらを一旦宥めなければいけないだろう。
「おいおい、お前ら少し落ち着けって! 同じ狙撃科同士でプライドみたいなものはあると思うんだけど、ここはいったん——」
「ソラさん」
「あ、ハイ」
「ソラさんはどちらの味方をしているのですか?」
う、うん!? ど、どっちの味方!?
「え、えーっと……それは——」
「当然ながら
間髪入れず、めちゃくちゃ俺に詰め寄って言ってくるレキさん。
……正直言って、おしっこ、ちびりそうです。
しかも、『相棒』の部分をかなり強調して言ってるような感じがしました。
「あらあらぁ。そんな
テメェも結局一緒じゃねえか!?
「——
「——
ハ、ハハハ……こ、困ったなぁ。
ソ、ソラさんモテモテだなぁ………………
………
……
…
「ん? ああ、天草ではないか。 こんなところで奇遇だな」
——ギン!!
「お前らよく聞け!!」
俺は高らかに宣言する。
レキが動きを止め、ティリアも足が止まり、ついでにギンも歩みを止める。
「俺が……俺が味方するのは——」
俺は駆け出した——ギンの元へ。
「なっ——なにをッ!? 天草ッ!?」
俺はギンの膝の裏を持ち上げるようにして、背中に手を回す——俗に言うお姫様抱っこだ。
そして。俺は叫びながら全力で猛獣スナイプバカ二人から逃走した。
「俺が味方するのは、ギンだァアアアアアアア!!」
「きゃあああああああああああああああ!!」
普段は男口調のギンも可愛い悲鳴をあげている。うん、可愛い。
「ギンッ! 愛してるぞおおおおおおおおおおおッ!!」
「や、やめろバカああああああああああああああ!!」
*
な? 蛇足だったろ?
ったく、誰がこんな悲しいお話なんて見たがるんだよ。
今の話、ただ俺が銃剣ぶっ刺されただけだからね!?
こんな話をもっと見たーい! だなんて言うヤツはただのドSだからな!
もはや、ほとんど修羅場じゃねえか!? レキに銃剣ぶっ刺されて、白雪に股間斬られそうになったり、アリアには銃を向けられて、バカばっかじゃねえかよ!!
俺は……俺はなぁ……!
修羅場よりもハーレム人生を送りたいんだああああああッ!!
でも、ギンは可愛い。