——ここは東京武偵高校の第2救護科準備室。
第2救護科準備室とは、武偵病院に隣接している
しかし、準備をするといってもこういった準備室は大抵その科目の教師の個室みたいなものであり、この第2救護科準備室もそれは同じだ。
それで、なぜ強襲科の一般生徒である俺がこんなところにいるかというと……
「——
「ふふふ、天草クンこそ流石ですねぇ……」
それは、この第2救護科準備室の
「……おぉ! このロリっ子、めちゃくちゃ可愛いですね……! さすが小夜鳴センセ! 究極のロリコンっぷりです」
「いえいえ、まだまだ私のロリコン道はこれからです。それに、天草クンの周りにも可愛いロリっ子がたくさんいるではないですか」
「アイツらは……可愛いけど性格に難がありますから手は出さない方がいいですよ?」
「ふふふ、ご心配なく。私——ロリ鳴はYESロリータ!NOタッチ! を遵守しておりますのでね……」
「さすがロリ鳴センセェだ! そこにビリビリきて憧れるゥ!」
……会話を見ていればわかると思うが、俺たちはロクな話はしていない。
そして、この小夜鳴先生——本名、
彼は、世界中の可愛いロリっ子を探し回り、しっかりと本人に許可をもらった上での撮影をしており、その写真には可愛い子が笑顔でピースをしているなど、かなりキュンとするような写真をたくさん持っているガチのロリコンなのである!
そして、小夜鳴先生がロリコンであると見抜いた俺は、彼に自分の変態っぷりを語り、彼にもその本性を明かしてもらったということだ。
しかし、この小夜鳴先生はかなりモテる。それはもう、お前死ねやという感じにモテるのである。
それもそのはず、彼は、誰に対しても敬語で話す礼儀正しい性格で、かなり高そうなスーツとネクタイを着込み、スラッとした細身で長髪の美青年であるのだ。そりゃあモテるわ。
それで俺と小夜鳴先生は、ロリ談義をよくこの第2救護科準備室でやっているのである。主な内容は、彼の見せてくれた写真に俺がコメントしていく形だ。
「それにしても、やっぱり小夜鳴センセはイケメンですからロリっ子の1人や2人ぐらいは簡単に寄ってきそうですけどね」
俺がそう言うと小夜鳴先生は首を横に振った。寄ってこないということなのだろうか。
「彼女ら……ロリっ子たちにイケメンもブサメンもありませんから——しかし、その純粋さに私の心が盛り上がるですッ!」
なるほどな。確かに小さい子どもには容姿でカッコ良いもカッコ悪いもねえもんな。
「でも、やっぱり小夜鳴センセのイケメンっぷりは羨ましいですよぉ〜。少しだけでいいんでそのイケメン遺伝子を俺にください!」
「いえいえ、天草クンこそ十分イケメンではありませんか。むしろ、私に天草クンの遺伝子を分けて欲しいぐらいですよ」
くぅー、この容姿&性格イケメンめっ!
俺なんて……俺なんてっ、今のところ容姿についての説明は小説内で全然されてねえってのによぉおおおおお!!
ぐすっぐすっ、と泣いている俺に、小夜鳴先生は真面目な顔をして話しかけてきた。
「——それにですね。天草クン」
「ぐすっ……はい。なんでしょう」
一瞬、間を開けて。
「ロリとは14歳までなのです! つまり、それ以降は全員ババア! 私は生粋のロリコン! 武偵高にいるババア共なんて全く眼中にないのですよ!」
……そうだった。ロリ鳴先生はこういうことを言う男だった。
これだけは……これだけは、俺は容認してはいけない!
「——それは違うよ!」
反論。と俺のバックに文字が入りそうなほど、俺は深刻な顔をして小夜鳴先生に俺の激情をぶつける。
「ロリは14歳までなのはわかるが、それ以降、全員がババアだなんて言うことは絶対に許せない! むしろ、ロリが成長して絶世の美女になっていく姿こそが俺の求める真の女性の姿だッ!」
俺はロリ鳴先生を睨め付けるが、ロリ鳴先生は一切引かず同じく俺を睨めつけている。
「——どうやらキミとは相容れないようですね」
「ああ、そうみたいだ」
一触即発。今の俺と小夜鳴先生の関係はそう言えるだろう。
俺は右手を小夜鳴先生の前に突き出し、小夜鳴先生も左手を俺の前に突き出した。そして俺たちは——握手をした。
『だが、それがいい』
俺たちはお互いにそう言った。
そう、俺たちはお互いの趣味を理解しているのだ。そしてどちらもそれが相容れないことも。
まぁ、つまりいつものことであるということだ。
いつものイケメン先生になった小夜鳴が俺に話しかける。
「ふむ。ところで天草クン。キミは遺伝子というものに興味はありますか?」
遺伝子……? まぁ、興味はないことはないな。だって『運命の一族』のダキュラ・クラウディもティリアも俺の遺伝子欲しがってたしな。
「遺伝子とは気まぐれなものです。父と母。それぞれの長所がどちらも遺伝することもあれば、それぞれの短所を遺伝することもあります」
ふーん。メンデルのエンドウマメみたいなもんなんだな。
「そして、これは
「それじゃあ俺が遺伝子を摂取すれば何かあるんすかね」
「実際はわからないけど、不思議な力であれば……何かしらあるかもしれないですね」
なるほど、だからダキュラ・クラウディもティリアも俺の遺伝子を欲しがったわけか。
「じゃあ小夜鳴センセ——そのイケメンという特殊な力を俺にください」
「無理ですね。これは遺伝ではなく身に付けたものですから」
くっ! やはり無理か……!
「そういや小夜鳴センセ」
「どうかしましたか?」
「この部屋からフラフラとした女の子が出てくることがあるって聞いたことがあるんですが、もしかしてそれって」
「……ええ、お恥ずかしながら採血をしたからですね。アフターケアもしっかりしているのですが、やはり、血を抜かれるのはキツいものでありますから」
ほーん。俺はよく大量出血しているけど、すぐに治ってるからあんまりわかんねえな。
「いい勉強になりました。ありがとうございます小夜鳴センセ」
「いえいえ、生徒の勉強を手伝うのも教師の大事な仕事なので」
そして、俺は第2救護科準備室から出た。
ここはキンジの部屋。
「——つうわけだキンジ。精子よこせ」
「まるで意味がわからんぞ!?」
だってヒステリアモードいいじゃん。以前、キンジの体でやった時は気持ち悪く感じたけど、本来の自分の体でやればモテモテになれるってことでしょ。だったら、最高じゃね?
* 【スナイプガールズはデンジャラス】
俺は今、狙撃科棟の個室にいた。
部屋の中には、狙撃銃を整備する工具やら何やらがたくさん置いてある。そして、この個室の奥にはかなり広大な空間が広がっていた。
その空間の300メートルごとに人体を模した銃撃訓練用の板が設置してあり(1500メートルからは100メートル単位での設置)、たしかに
また、個室であると言ったが一人で使うには勿体無いほどのスペースがあるため、この個室を利用する武偵高の生徒たちはよく複数人で借りるらしい。
それで強襲科の俺がどうしてこんなところにいるかというと……
「……やっぱり、新しい銃を扱うのは難しいわぁ」
ティリア・ミストの新しい狙撃銃のお披露目会+特訓——兼。
「ソラさんも見ているだけでなく、一緒に狙撃訓練をやりませんか?」
レキの狙撃訓練の付き添いである。
「え、いいよ。俺は別に
……そう。つまり、今日の俺はこいつら問題児のお
コイツら同じ狙撃科だかなんだか理由は知らんが、かなり仲が悪い。
まして、俺が居るとさらに関係が悪化するからここに来たくなかったんだが……何を血迷ったのかこいつら、一緒の同室を借りやがった。
元々、俺はティリアの狙撃訓練に付き合うつもりだったのだが……この個室を借りた際に、既に借りている人がいて同室になってしまうがそれでもいいか? と聞かれてティリアが問題ないと答えたため、この個室を借りたんだが……既に借りている人はレキだったという。
しかも、コイツら会ってそうそう煽り合いするし、ティリアのやつも別の部屋でやればいいのに、そのままこの個室でやろうとするし、本当にストレスが溜まってくる……
とりあえず俺は先ほどから、うーんうーんと唸っているティリアの様子を見にいくことにした。
ティリアが新しく買った狙撃銃は——フランス製のFR F2だ。
装弾数は10発で、レキのドラグノフのセミオートとは違うボルトアクション方式、有効射程は確か800メートルぐらいだったハズ。ここはドラグノフと同じだな。
「俺にはわからんが、そんなにやりづらいのか?」
俺はティリアに尋ねる。
ティリアは床に伏せてスコープを覗きながら答えた。
「えぇ、今まで撃ってきたAWMとは有効射程が違う上に、私は
確かにティリアはやりづらそうにカタカタと手を震わせているな。きっと、無意識にでも人体の急所を突こうと身体が動くのだろう。
「未来予知は使えないのか?」
俺はそう尋ねる。
ティリアには未来予知という力がある。それを使えば、敵を殺さずに撃ち抜くことも可能じゃないのか?
「前にも言ったけど未来予知は気分屋さんだからぁ、私が無心にならないとうまく応えてくれないのよぉ」
つまりそれは、何も考えず殺すためだけに銃を撃たなきゃ未来予知を使うことはできないってことか。なかなか難儀な力なんだな。
「それで今は段階的に
「そういうことよぉ……でも、正直そろそろ限界が見えてきたかも」
……そうか? 今でも1800メートル撃ててるから充分異次元の存在だと思うんだが……
大体、レキもお前も有効射程が800メートルの銃でなんでそんな遠くのものを撃てるんだよ。
まぁ、ティリアは元々、3845メートル撃ててたわけだしな。そりゃあ力が落ちたことも痛感するわな。
——ティリアが1発放つ。
俺は双眼鏡を使ってティリアが撃った
「おっ、当たってんじゃねえか。これで1900メートルはクリアだな」
「えぇ、でも全く安定して撃ててる気がしないわぁ」
……バカだなあ。成長した時は自分をしっかり褒めてやることが、後々になって自分の努力ってやつを実感することに繋がるんだよ。
「それでも、しっかりと当てれたじゃねえか。すごいぞティリア」
俺はそう言って、床に伏せているティリアの横に座り、彼女の頭を撫でた。
俺はコイツの
「もう……あんまり、褒めると増長しちゃうわよぉ?
そう言いながらも、ティリアはもっと撫でてというように頭を擦り寄せてくる。
別にお前なら増長もしないだろう。だってずっと戦場に立ってきたわけだしな。
——1発の銃声が隣から鳴り響く。
隣——つまり、レキが撃ったのだろう。
まぁ、彼女は一人でも特に問題はないと思うので、あまり気にかけることもない——
「ソラさん。見てください」
構えていたドラグノフをいつものように背中に納めたレキが俺にそう言ってくる。
……とりあえず、俺はレキが撃った方向を見ると、レキは2100メートルの
……で、俺はどうすればいいのか。
「ソラさん。2100メートルの狙撃に成功しました」
うん。見たからわかってる。でもどうすれば……
あぁ……レキの
……で、俺はどうすればいいのか。
「——ソラさん。2100メートルの狙撃に成功しました」
は、はい。同じことを言わなくてもちゃんと聞こえています。
で、でも俺はどうしたら——
もしかして、レキは俺に褒めて欲しいのだろうか……?
「お、おう。すごいぞレキ。よく
俺がそう言うと、レキは肯定するように頷いて——俺に頭を近づけてきた。
……な、撫でろということでしょうかね。ティリアと同じように撫でろと言っているのでしょうかね。
「は、ははは……すごいぞレキ。うん、さすが俺のパートナーだ」
そう言って俺はレキの頭を撫でる。
レキは頭を撫でられながら嬉しそうに目を細める……おい、可愛いな。
「あのぉ、イチャイチャは別のところでやってください——せんぱぁい」
た、助けてくれ……
こ、怖い声を出しながらティリアちゃんが俺の後頭部に銃を突きつけてくるんだが……あっ。後頭部がメリメリいってる。
「わ、悪かった。レキももう充分だろ?」
俺はそう言ってレキの頭を撫でるのをやめる。
レキは残念そうにゆっくりと俺から頭を引き上げながら。
「…………子ども」
そう言った。
ひ、ひぇー! ティリアちゃんのこめかみがピクピク言ってるぅ!? しかもレキもなんだか少し怒っているように見えるんだがっ!?
一応その場はこれで落ち着き、二人は再び狙撃訓練を開始した。
相変わらずうーんうーんと唸っているティリアと、黙々と
レキの方は問題無さそうだが、ティリアは問題があるようだ。
——ティリアが1発、銃弾を放った。
俺はそれを双眼鏡で見ると2000メートルのところの
2000メートルはかなりすごいことだ……だが、当たっている箇所が悪い。
最初に言った通り、
「ふぅ……」
ティリアが狙撃の疲れや、自分への失望やらを込めたため息をする。
——レキの方から1発の銃声が鳴り響いた。
俺はそちらを双眼鏡で見ると、レキは2100メートルの
そろそろ、レキの
それにしても、やはりティリアは大変そうだ。レキと見比べてみるとよくわかる。新しい銃に慣れて、今まで培ってきた感性を変えていかなきゃいけないから本当につらそうだ。
今だって、手を震わせながら撃ってるし……なんとかしてあげたいもんだ。
「ちょっと失礼するぜ。ティリア」
「えっ……?」
俺は伏せているティリアの横に同じように伏せて、ティリアが銃を持っている手を震えないように両手で包み込んだ。流石に強く押さえるとティリアも撃ちづらいだろうから、優しく包み込む感じな。
「どうだ? これならやりづらくないだろ?」
「……え、えぇ。ありがと…ぅ……」
なんだ? やけに声が小さくなったな。今、ティリアの顔見れないから、どんな感じかわかんねえんだよ。
ティリアが引き金を引いた。
俺は、銃口から飛んでいく銃弾を目で追う。
ティリアが放った銃弾は——2000メートルの
「やったじゃねえか。この調子で頑張れよ」
「……う、うん」
俺は小さく頷くティリアを横目、手を離して立ち上がった。
まぁ、いずれはティリアも狙い通りに撃てるようになるだろう。やればできる子なんだろうしな。
「——私は1発の銃弾」
バンッ! と隣から銃声が鳴り響いた。レキの銃弾を撃つ前の詩のようなやつだ。レキのやつ、随分と気合入れて撃ったな……
俺は双眼鏡でレキが撃ったところを確認する。
……気合入れてた割には、2100メートルの
さっきはちゃんと右肩に当てたのに……
「——ソラさん」
レキが俺に話しかけてくる。
……俺は、何やら嫌な予感を感じていた。
「……手が震えます。私の手を押さえてくれませんか?」
「嘘つけッ! 手が震えてる割には頭のド真ん中にヒットしているんですけど!? 絶対に狙って撃ちましたよねあなたっ!?」
俺の言葉に対して、首を横にぶんぶんと振るレキ。
なんなの? 今日は俺に甘えたい日なの? ティリアに対抗して何やってんだよお前は。
「はぁ……わかった。わかったから、手を押さえててあげるから……」
コクリとレキは頷く。そして、床に伏せて銃を構える。
……やっぱり、全然手が震えてないんですけど。
しかし、やると言った手前、やらないわけにもいかないので仕方なく俺はレキの横に同じように伏せてレキの銃を持っている手を両手で包み込んだ。
それに対して満足しているのか、俺が包んでいるレキの両手の体温が少し上がっているような気がする。
「——私は1発の銃弾」
バンッ! 1発の銃声と共に銃弾が
そして、銃弾は2100メートルの
いや結局、急所じゃねえか!?
「すいません、手が滑りました。もう一度お願いします」
レキは伏せたまま俺を見てそう言った。
お前昔、俺に対して私はミスはしませんとか、私の銃は絶対に裏切りませんみたいなこと言ってたじゃねえか!?
うぅ……だけど、こっちをじーっと見てくる顔がめちゃくちゃ可愛いんだが。
「——あのぉ。下手くそは帰ってくれませんか? ね? 先輩」
カチャ。と俺の後頭部に銃が突きつけられる。
……いや、なんで俺に飛び火すんのさ。まるで俺が下手くそみたいじゃん、ね? ティリアちゃん。
「わ、わかった。わかったからその銃を俺に向けないでくれ」
俺は両手を上にあげながらゆっくりと立ち上がる。
さ、さすがに怖いですよ……
「……………子ども」
おいっ!? 煽るんじゃねえよバカレキ!
ほ、ほらぁ……ティリアちゃんのこめかみがピクピク言ってるじゃん……
一応、その場はなんとか落ち着いた……だが、俺の胃は落ち着いてない。
二人は先ほどのように伏せて狙撃訓練をしている。
俺は、やはりまだやりづらそうにしているティリアを見て思った。
「ティリアはレキみたいに撃つ前のルーティーンをしないんだな」
ほら。レキでいう『——私は1発の銃弾』みたいな感じに。
「……以前までは、殺害対象の相手を見て、『私の
え、なにそれ怖いんですけど……もしかして俺の時もそんなこと思いながら撃ってたわけなの……?
「でも、今は殺すわけじゃないからそんなこと思いながら撃つことなんてできないわよぉ」
……なるほど。ティリアが一般的な感性を持っていて俺は安心しました。
「じゃあ、新しくルーティーンみたいのは作らないのか?」
俺がそう言うとティリアはうぅーん……と悩む様子を見せた。
「……作りたくないわけじゃないんだけど、思いつかないのよねぇ。ルーティーンってその人の自己暗示みたいなものだから、簡単にはできないのよぉ……」
ふーん。そういうもんなんだ……難しそうだ。
「それじゃあよ。こういうのはどうだ?」
俺はポケットから片手で簡単に持てるサイズの機械——録音機を取り出した。
「これでよ、お前の好きな音声を入れて、撃つ前にこれを一回聞くってのはどうだ?」
どう? 俺の素晴らしい提案。これなら別に邪魔にならない……かなぁ? レキみたいにヘッドフォンとかイヤホンしとけば問題はないだろうけど。
「いいわねそれ。是非とも使わせてもらうわぁ」
ん? あぁ、使うんだ。
俺はティリアに録音機を手渡そうとすると——
「先輩の声を録音機に入れて欲しいわぁ」
「えぇ……」
……マジで? 撃つ度ごとに俺の声を聞くつもりなの……?
「……なんて入れればいいんだ?」
仕方ない。俺はティリアの
「うぅん……そうねぇ。それじゃあ、私を応援するような感じで入れてちょうだぁい」
……応援? まぁ、それならいいか。
俺はできるだけ小さく、しかし、再生した時にティリアにだけ聞こえるぐらいの声量で言う。
「——ティリア、頑張れ」
よし。録音完了。
一度鳴らしてみると、しっかりと再生できていた。
俺はティリアに録音機を渡す。
「これでいいか?」
「うん。ありがとぉ」
ティリアは満面の笑みを浮かべて録音機を受け取った。
そして早速、それを聴きながら狙撃訓練に入っていた。
『——ティリア、頑張れ』
ズガンッ! と一発の銃声が鳴り響く。ティリアのFR F2の銃撃音だ。
俺は双眼鏡でティリアが撃った方を見ると、見事に2100メートルの
すげえな………でもかなり恥ずかしい! やっぱり俺の音声消したいっ!
「——ソラさん」
俺の肩をトントンとレキが叩いてきた。
「ん? どうしたの?」
俺は振り返りながらレキの方を向くと——レキは両手を皿にして俺の前に差し出していた。
「……何してんの?」
俺がそう聞くとレキは……
「私にも録音機をよろしくお願いします」
……、
「いや、でもキミはルーティーンあるじゃん……必要ないじゃん。ね?」
俺がそう言うとレキは頷いた。
うん。わかってくれればいい——
「しかし、もし私がいつものルーティーンを使えなくなった時のために、予備のルーティーンも必要だと思います」
いや、予備のルーティーンってなんだよ!? そんなもん、バックに入れている予備のカイロ並みに使うことないからね!
「はぁ……わかった。入れればいいんでしょ?」
めんどくさいと思いながらも、とりあえずレキにも渡さなきゃいけないだろうなぁと思っていた俺は、もう一個の録音機をポケットから取り出した。
「——さて、と」
俺は息を吸い込んで……
「レキッ! 愛してるぞおおおおおおおおおおッ!!」
——と叫んだ。
よし。録音終了だ。俺はレキに録音機を手渡した。
録音機を持ったレキは早速、機械のスイッチを押して。
『レキッ! 愛してるぞおおおおおおおおおおッ!!』
ぐすっ……何やってるの俺……?
レキは少し顔を赤くして、録音機を大事そうに持っているけども。
「——せんぱぁい。その女、殺してもいいですかぁ」
「あ、アハハッ。アハハハハッ。ティリアちゃん。俺の後頭部に銃をグリグリとねじり込まないでほしいなぁ……」
「………………子ども」
「だからお前も煽ってんじゃねえよバカレキっ!」
これは、俺とデンジャラスなスナイプガールズとの日常だ。
かなり危険だが……俺はこういう日常は嫌いじゃない。