春の空気、気持ちいい風。このまま眠ってしまったら朝がきたことに気づかず、ずっと眠ってしまいそうだ。
——ただまぁ、眠れればの話だけどな。
「キンジ、私お腹すいた!」
ッ!? 早速きやがったな、ちびっ子め!
「すかせこのバカ!」
*
はぁ……憂鬱だ。
開幕冒頭からため息を吐いて申し訳ない。だが、俺がため息を吐く理由をしっかりと分かってもらえれば俺の気持ちもわかるだろう。
紹介が遅れた、俺の名前は遠山キンジ。東京武偵高校二年生で探偵科を専門としている。まぁEランクだけどな。
だが、ランクのことは正直どうでもいい。
なぜなら、俺は武偵をやめるからだ。
俺は武偵が嫌いだ。正義の味方が嫌いだ。女が嫌いだ。
……いや、最後のは別に嫌いではない。嫌いというよりも苦手というべきか。というか女が嫌いなどと言っていたら、俺の親友とホモップル扱いされてしまうハメになる——それは絶対に嫌だ!
……話が逸れてしまった。
とにかく、俺は、
というわけで俺は武偵高校を辞めようとしているのに——このチビっ子は!
「お腹が減った! へったへったへったへったあああ!」
「そんだけ大声出せりゃ食う必要はねえ!」
ぎゃあぎゃあと言いながら俺に襲いかかってくる、緋色の髪のツインテールのちびっ子の名前は、神崎・H・アリア。昨日からずっと俺に付きまとってくる女だ。コイツが俺の部屋まで押しかけてきたせいで昨日、俺の親友のソラにロリコン呼ばわりされたり、ガチの冷たい目をされたりと、正直泣きたいレベルだ。しかしだ……ここ最近ではいつもセクハラばかりしている
とにかくっ! この神崎・H・アリアには本当に困らされているのだ!
やれ私のドレイになれだの、やれ強襲科に戻れだの——絶対に嫌だ!
そんなわけで、俺こと遠山キンジは精神的に参っている。
*
武偵は民間からの依頼を受けることができる。依頼を達成すれば授業の単位を得られるのだ。その上、報酬も手に入れることができるので、普通であれば積極的に依頼を受けにいくものだ。
しかし、武偵を辞めたい俺はこういった依頼をあまり受けない。
——というのに、このちびっ子ときたら、俺の依頼にまでついてきやがった!
今回受けた依頼は『猫探し』、0.1単位の依頼で報酬は1万円。Eランク武偵にはお似合いの依頼だ。
しかし、このアリアは俺に失望することなく、当たり前のようについてきやがる。
自分の単位は大丈夫なのかと聞いてみたら、アリアは既に全単位を修めたらしい。
……と、まぁ、こんな感じでアリアと一緒に猫探しをしているという状況だ。
はぁ……とため息を吐く。猫を探してから結構、時間が経ったが未だに見つかっていない。別に忙しいわけでもないので、特に問題はないのだが。
休憩がてら二人でそこらにあった木製のベンチに座る。
しばらくは近くの自販機で買ったジュースをちびちび飲んで時間を過ごしていたが、アリアが俺に聞きたいことがあると言った。聞く必要はないが、聞かない理由もないので、聞いてやろう。
「天草空ってどんなやつなの?」
ほぅ、ほとんど自分にしか興味がないようなアリアが俺以外にも興味を持つ奴がいたのか。しかし、まぁ……ソラのことね。
「どんなやつって……変態だろ」
うん、変態だ。まごうことなき変態。ウチの学校の全員が『天草空は変態』って答えるほどに変態だ。
しかし、アリアはこの答えに不服だったらしく口を尖らせた。
「みんなそう言うのよ。天草空は変態だって」
まぁ、そうだろうな。しかし、納得いかないのはわかる。アイツはSランク武偵だからな。Sランク武偵が『変態』の一言でまとめられたら……正直困惑する。
「——じゃあ、『秀才』か」
変態という言葉で納得がいかないのなら、『天草空は秀才』、そう答える。すると、携帯のようにピクンとアリアのツインテールが揺れた。なんだその機能は……。
「そうそれっ! 二学年の生徒は全員、天草空を『変態』以外で表すなら『秀才』かなって言うのよ! なんなのよ『秀才』って!?」
なんなの、ってそんなの普通の『秀才』に決まってるだろ。後天的に得られた才能を持った奴、という意味での『秀才』だ。
「けど、二年生以外の学年は全員、天草空は『天才』って言うのよ!? 何が違うのよ!?」
ああー、そういうことか……納得した。
ただ、これは少しアリアにソラのことについて説明する必要がある。
「ソラが一度Sランクから落ちてEランクになったのを知ってるか?」
「ええ、もちろんよ。Sランクの生徒については全員調べているもの」
それは、また研究熱心なことで、ご苦労様。
アリアは、それがどうしたのよって顔をする。
「天草空は入学当初からSランクで、秋の頃にEランクに落ちた。けど、それからまたSランクに昇格した、それだけでしょ? 結局初めっから才能持ってる『天才』じゃない」
その通りだ、アリア——だから天草空をよく知らない
その通りだ——その通りなのだが、違うんだよアリア。
そう伝えたい……しかし、言葉にするなら容易く済んでしまう——ソラが歩んできた一年はとてもじゃないが言葉では言い尽くせないほどのものなのだ。
「アイツは——ソラは『天才』じゃないよ」
「だから、それはどうしてかって聞いてんのよ!」
アリアは言葉を濁す俺に向かって激昂する。
そう言われても、俺もなんと言えばいいかわからないんだ……
——だから、俺が見てきた天草空を思った通りに伝えよう。
*
——天草空は『秀才』である。
もう何度も聞いたフレーズでいい加減聞き飽きてきただろうが勘弁してほしい。
ソラはSランクから始まり、一度Eランクに落ちて、再びSランクに舞い戻った。
言葉にするならこの程度で済むことだ。
しかし、この言葉の中には彼の劇的な一年間が詰まっている。今のソラはこの一年によって作られたようなものだと俺は思う。
まず、彼が入学当初からSランクという栄光を勝ち取った理由は、入学試験で俺と共に活躍したからだ。
入学試験の内容は14階建ての廃屋に散らばり、武装の上で自分以外の受験生を捕縛し合うという実戦形式のものだった。
俺は『とある力』で自分以外の受験生を圧倒した——抜き打ちで廃屋に潜んでいた、
しかし、それはソラも同じだった。これはソラの最大級の秘密なので詳細は言うことはできないが、ソラも『
そして、試験は俺とソラの一騎討ちの途中に時間切れで終了。俺たち二人は合格で、どっちもSランクだった。
俺たちは気が合っていた。入学当初からずっとつるんでいて、1週間が経ったときには生涯の親友のようになっていた。当時のソラは今のように変態じゃなくて、セクハラもしない、至って真面目な奴だった。
そんな俺たちがコンビを組むのは必然だったのだろう。
コンビを組んだ俺たちはどんな依頼でも完璧にこなしていた。一時は東京武偵高校最強のコンビだと言われてたし、俺たちはそれを信じて疑わなかった。事実、俺たちに勝てるやつらはいなかったと思う。しかし、これだけ最強だの最高だの言われても俺たちは増長することなんてなかった。一回一回の依頼を人を救うためにこなしていく。それを思い浮かべていたからだ。それに、今日みたいに二人で『猫探し』なんてこともやっていたしな。お互いがお互いを助け合い、協力して依頼に当たる。まさに理想のコンビだったと思う。
——しかし、その理想は儚く消え散った。
一学年の秋頃、その『不幸』は突如起こった。
——天草空が一人の少女に敗れたのだ。
正直、当時の俺は信じられなかった。ソラが一人の少女にやられていた場面を見たとき、自分の目を疑っていたくらいだ。
負けるぐらいのことなんて正直どうでもいいと思っていた。俺たちは最強だのなんだの言われてるが、別に俺たち自身はこだわっていなかったから。しかし、それからのソラは全く変わっていた。
今までのような真面目さは見る影もなくなり、武偵としての誇りを失っていた。
ソラは自分の『特殊な力』を伝えた。その『特殊な力』は自分でも今まで認識していなかったが、敗北した少女に教えられたらしい。
ソラが敗北した少女は彼の知り合いだったようで、彼は錯乱していたらしい。
……今思えばソラが少女にやられていたあの時、彼はかなり動揺していたような気がする。
そして、ソラは『特殊な力』が
その言葉通り、ソラは全くと言えないほど戦えなくなり、Sランクとしての輝かしい栄光はまさしく地に沈んだともいえた。そして、彼は自らSランクを捨てて、Eランクという底辺に落ちていった。
当時の彼はまさしく『絶望』という二文字で表されているようだった。同じクラスの奴らも、そんなソラの様子を見て、彼を忌避するようになった。
——だが、俺はそんなことどうでもよかった。どれだけ、ソラが弱くなっても俺たちの友情は偽物なんかではない。
そう思って、ソラと関わり続けた。アイツはやめてくれと言っていたが、俺は決してやめなかった。ある時は喧嘩したかもしれない。口喧嘩も殴り合いもしたかもしれない。それでも俺はやめなかった。
それからしばらく経って、絶望に沈んでいたソラも少しは元気が出るようになっていた。ただ、『特殊な力』は一切使えず、彼は弱いままだった。
しかしきっといつかはソラが元気になって、また一緒に武偵としての活動をやれるだろうと希望的に思っていた。
——だが、『不幸』は連鎖した。
去年の冬の出来事だった、俺の兄——遠山金一が死んだ。
浦賀沖海難事故。
日本船籍のクルージング船・アンベリール号が沈没し、乗客1名が行方不明となり……死体も上がらないまま捜索が打ち切られた、不幸な事故だった。
その死亡したのが、船に乗り合わせていた武偵——遠山金一だった。
いつも力弱き人々のためにほとんど無償で戦い、どんな悪人にも負けなかった兄さんは——警察の話によれば、乗員・乗客を避難させたために自分が逃げ遅れてしまったそうだ。
だが、乗客たちからの訴訟を恐れたクルージング・イベント会社、そしてそれに焚き付けられた一部の乗客たちは、事故の後、兄さんを激しく非難した。
——『船に乗り合わせていながら事故を未然に防げなかった、無脳な武偵』と。それに助長されてかマスコミによって兄さんは叩かれ、ネットや週刊誌、または『直接』、俺たち遺族と——死んだ兄さんに対して罵詈雑言が吐かれた。
——ふざけるなっ! 兄さんは叩かれるために救ったわけじゃない——死んだわけじゃない!
俺は心の底から武偵や自分の中に眠る
俺たち遠山一族に受け継がれる遺伝子——『
通称『ヒステリアモード』は遠山家の人間に伝わる特異体質だ。性的興奮を覚えるとヒステリアモード時には思考力・判断力・反射神経・視力・聴力などが劇的向上するというものだ。ただ、その代償に——俺の場合は女性を守りたくなり、女性に対してキザな扱いをするということだ。
この兄さんを殺した
それからの俺は、今までと打って変わってソラと深く関わろうとは思わなくなった。
だから、俺とソラのコンビが自然と解消されるのも当然のことだったのだろう。
ある時——ソラが俺を訪ねてきた。
ソラは俺が抱えている『事情』を知りたいと言っていた。当時の俺はソラに対して自分の思いをぶちまけた。お恥ずかしながら泣いていたような気もする。けれどアイツが悪い。だって、ソラは何も言わずに俺の話を聞いていたから。上から目線の説教も俺や兄さんに対しての下手な慰めも一切せず、ただ俺の話を聞いていた。
——それがどれだけありがたかったか、それを知るのは俺だけだろう。
ただ、それでも俺の心の傷は癒えることはなかった。しかし、ソラは一人動いていた。
——ソラはもう一度Sランクに舞い戻ると立ち上がっていた。
そう決心したソラは、それはもう血反吐を吐くような生活を送っていた。
自分を鍛えるための訓練、武偵として必要な知識、生き残るための経験など——自分を高めるために必要なことを休む暇もなくやっていた。
当然ながら身体は疲労や怪我で壊れる。実際にソラは午前中の『一般教科』の授業中に倒れることもあった。しかし、ソラはそれでも同じ生活を続けていた。そして時間が経ち、EランクからDランク、DランクからCランク、そして——Aランクまで到達した。
そこまでいけばもはや武偵としては立派である。
だが、アイツは一切妥協をしなかった。
ソラは武偵として立派だと言われても立ち止まることなく、Sランクを目指すことをやめることはしなかった。
それからのアイツは訓練や依頼の量をさらに増やしていった——いや、増やさざるを得なかった。Sランクとなるためには今よりもさらに強くなる必要があったからだ。
AランクとSランクは一見、何も知らない人からするとたった一つのランク違いのように見える。だが、その差には圧倒的に超えられない壁があり、Aランクの人間が数十人がかりでも勝てないのがSランクなのだ。
いくら自分を鍛えても、まだまだ足りない。ソラは一度、Sランクの地位にいたからこそ、普通の人よりもそれがはっきりと分かっていた。
——Sランクの武偵は才能に満ち溢れている。
これは武偵の間でよく言われていることだ。Sランクの武偵は初めから生まれ持った才能を持っている『天才』なのだと……。
しかし、ソラは今では使えない『特殊な力』以外に才能と言えるものはなかったと思える。
それでも、ソラは走り続けた、戦い続けた、鍛え続けた。そして、ある時。
——限界を迎えてしまった。
疲労、怪我などの限界を迎えたソラは、依頼の途中で意識を失ったらしい。
それは当然といえば当然なのだろう。ソラはずっと自分の力の限界以上を求め続けてきたのだ。自分の力の限界以上を求めれば、当然ぶつかるのは『自分の力の限界』という壁だ。超えるのは容易ではない。
意識を失ったソラは病院に運ばれた。疲労やダメージの蓄積が原因らしい。ソラは一週間ほどの入院をしなければならなかった。
兄さんを喪ったショックで閉じこもっていた俺は、ソラの親友としての責任感からか、お見舞いに行くことにした。
当時の俺は知り合いと遭遇するのが嫌だったので、夜に行くことした。そして、夜に病院へ向かい、彼の病室までいくと、病室の前には友人の武藤や強襲科のソラと同じAランク武偵の不知火、探偵科でAランク武偵の理子、他にも同じクラスや同学年の生徒が集まっていたのだ。彼らは何故か病室に入らず、その場に立ち尽くしていた。
俺は話しかけるのも嫌だったが、そのまま何もしないというのも嫌だったので武藤たちに何事かを聞いた。
武藤たちはただ、黙って病室の扉に指をさした。指された扉には少しだけ開かれていた。そこから中を見ろということだろうと俺は理解して、その隙間から中の様子を覗いてみた。
病室の中には月明かりに照らされている病室と、
——ただ無言で涙を流しているソラがいた。
それを見た途端、俺は弾かれたように扉から離れた。見てはいけないものを見た、そんな感覚を覚えた。
誰も病室に入らないということは武藤たちも同じ感覚を感じたのだろう……とそう思った。
結局俺たちは何もせずに帰った。
一週間後にソラは退院して学校に通い始めた。だが、アイツはまた無理をして入院することになってしまうことを俺たちは分かっていた。
——だから、俺たちでソラを支えようということになった。
武藤はソラが依頼に向かう
しかし、ソラの一番近くにいたのは間違いなくレキだろう。
彼女は教務科からの依頼でソラとコンビを組んでおり、何でもかんでも一人でやろうとしていたソラと、人と必要以上なコミュニケーションをとろうとしなかったレキとの相性は最悪で、初めは全くというほどコンビとして合わなかったらしいが、入院をきっかけにソラとレキは変わっていった。俺たちのサポートを受けてか、身体的にも精神的にもほんの少し余裕ができたソラは、レキとのコミュニケーションを図ろうとしたらしい。
そして、レキもそのコミュニケーションに応じて徐々にコンビとしての相性が良くなっていったのだ。
——二学年全員でサポートを続ける学校生活が二ヶ月ほど続いた。
ソラはついにSランク昇格に向けての依頼が教務科から言い渡された。この依頼を通称『昇格依頼』といい、教務科から直々に言い渡されるこの依頼を達成すると自分の武偵ランクが一つ上がるのだ。しかし、当然ながらその依頼は自分よりも一つ上のランクの難易度なので、合格できるかどうかなんてわかるはずもなかった。
ソラはレキと共に依頼に向かっていく。
そんな二人を俺たちはただ祈ることしかできなかった。
——そして二人は依頼を達成して無事に帰ってきた。
ボロボロになりながら帰ってきた二人を俺たちは取り囲み、胴上げなんてのをやっていた。傷心中だった俺もその時ばかりは笑顔でいたのを覚えている。
——だって親友が自分の目標を叶えたんだぜ? 俺も嬉しいに決まってる!
そんなこんなでソラはSランクに昇格し、そのまま話は無事に終わるかと思った。
——しかし、そうは問屋が卸さなかった。
Sランク昇格の祝いの席的なやつを二学年全員と数人の教師と共にやっていた時のことだ。
そこで、そのお祝い会の主役のソラに話が回ってくるのは必然だったんだ。
アイツは初めは真面目な顔して、自分の気持ちやら本音を語っていた。俺たちも涙を誘われて、感動のままソラの話が終わるかと思った——思っていたんだ。
しかし、あの大バカは二学年全員の前でこんな事を言いやがった。
「今まで散々苦労してきた…本当にキツかった……!」
「——てなわけで、今日から俺は自分に正直になると決めた!」
「っつうことで、女子共全員俺に胸触らせろやぁああああああああああああああああああ!!」
——うん、もう最悪だね。
でも、自然と笑顔は絶えなかった。ソラは男子と女子と教師にリンチにされて泣いてたけどもな。
さて、これで天草空の過去話は終わりだ。
——最後に、天草空は
だから『天草空は天才だ』なんて言う奴もいるんだ。
しかし、
だから俺たち——天草空の友人たちは言う。
『天草空は秀才であり変態だ』と。
*
「とまぁ、こんな感じだよ。俺が見た天草空って男は」
長い間語り続けて、ようやく話に区切りをつけた。
俺のヒステリアモードや兄さんについての話などの一部除いて話し終えた俺はアリアを見ると、アリアはボーッとしていたのか口をポカンと開けていた。
「……お前、話聞いてたのかよ」
俺は不満気にアリアに言う。
こいつ、話長すぎて眠かったわとか言うんじゃないだろうな。
俺の言葉に反応して肩をビクッとさせたアリアはただ、聞き入っていただけらしく至って真面目な顔をしていた。
「ソラって本当は
——ソラ、『
きっと本人が聞いたら表面上は適当に流すけど、裏ではめちゃくちゃニコニコしていたことだろう。
いつの間にか『ソラ』呼びになっているアリア。ソラの過去話を聞いて良い印象を抱いたのだろう。
アリアは俺に指差して言う。
「あんたも、ソラみたいに頑張んなさいよ」
——お前は俺の母ちゃんか。
と思ったが言葉には出さず、俺は適当にハイハイと流す。
さて、そろそろ時間だ。
「『猫探し』再開すんぞ」
そう言ってベンチから立ち上がり背伸びをする。
アリアもベンチから飛び降りてスカートの尻辺りをパンパンと叩く。
さっさと猫見つけて依頼終わらせましょうかね……
——今頃、お前も何か必死にやってるんだろ……?
なぁ——
*
——その頃。キンジの親友、天草空はというと……
「理子ぉおおおおおおおおおおおお!! 頼む! 胸を触らせてくれぇえええええ!!」
「理子はソーくんみたいな性魔獣に身体を売るような趣味はしていないのだ」
長い金髪をツーサイドアップに結った、童顔のロリ巨乳の少女にセクハラを必死に仕掛けていた。