——ズガンッ!!
ソラの刀がブラドの顔に叩き込まれた。
ブラドはその重厚な頬を斬られ、鈍器で殴られたように頭が弾かれる。
ブラドの手にあった5メートルもの大きさを誇る金棒は天高くに舞い——大層な地響きを鳴らしながら地に落ちた。
「…ぶっ、あぁ!?」
ブラドの口から血が吹き出る。だが、その鋭い双眼は自分を斬った男——天草ソラの姿を見ていた。
「あまく、さ……ソラァアアアアアアアア!!」
ブラドは拳を握り、ソラに向かって殴りかかる。
だが——
「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ソラの刀は既にブラドの顔まで届いていた。
——ズガンッ!
再度、ブラドの顔が横に弾かれる。
だが、すぐに反対の方向に顔が弾き飛ばされた。
また、すぐに腹に衝撃をくらい——今度は脳天に衝撃が走った。
「ぐっ…がはぁ……!?」
ブラドの口からまたしても鮮血がほとばしる。
連続攻撃。
ソラが目に止まらぬ速さでブラドに連続で攻撃をしているのだ。
(ここで、決める——ッ!!)
ソラは縦横無尽にブラドの身体を斬りつける。
——頭、首、肩、胸、腕、腹、腰、太腿、足。
もはや斬ってはいないところはないというところまで斬りつけた。ブラドの弱点となりうる刻印までも……
だが、ブラドの4つ目の刻印がわからない——故にブラドを倒せない。
ソラの視界が、ドロドロした赤い何か——血のカーテンに染まっていく。
しかし、ソラの目が見えなくなることはない。なぜならば、その目には確かな光が見えているからだ。
白い刻印が刻まれたブラドの右肩に突き刺さっている純銀製の銃剣。
白銀のヤタガン——『ギンの愛』がソラの視界を晴らしていた。
そして、ソラはその瞳に捉える——
(見つけたぞ……ッ! 最後の……最後の刻印ッ!)
ブラドの弱点である4つ目の刻印を。
「ぐっ…ぁ、まぁ、ぐさぁ……!!」
全身から血を撒き散らしながらも持ち前の再生力を活かし、ブラドはソラに拳を突き出す。
不安定かつ腰の入っていない拳であるが、吸血鬼の力が入った拳だ。人間であるソラがダメージを負うことは間違いない。
だがそれは、当たればの話だ。
ソラはブラドの拳を掻い潜り、持っていた刀をブラドの胸に突き刺し——
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
巨体のブラドの身体を地面ごと引きずり、建物の壁に突っ込んだ。
「——ごッゔぁっ!?」
ブラドは大量の血を口から吐き出す。
だが、彼は吸血鬼だ。その程度で死ぬハズがない。
「あ、まぐ…さぁあああああああああああああああ!!」
ブラドは己の身体に刀を突き刺している宿敵——天草ソラに向かって手を伸ばす。
だが、ブラドが掴んだのは虚空。
ソラは後ろへと高く跳び、魔の手を躱したのだ。
ブラドの視界の大半を占めていた一人の男の姿がなくなる。
そして、新しい景色が目に入ったブラドの反応は——
「なッ!?」
驚愕であった。
そこには、己に向かって銃を構えている2人の人間——遠山キンジと神崎・H・アリアの姿が。
——ズガンッズガンッ!!
2発の銃声。
そして、2発の銃弾はそれぞれ、白い刻印が刻まれたブラドの左肩と右の脇腹を貫いた。
したがってブラドは今、右肩、左肩、右の脇腹と3か所の刻印が潰されている。
ブラドの視線が上へと向かう。
そして、ブラドの目に、こちらに向かって回転式拳銃——S&W M686を構えている天草ソラの姿が映った。
「
ソラが空中を
ブラドの弱点である4つの白い刻印が今、全て潰された。
この刻印が全て潰されたとき、ブラドは吸血鬼としての力をなくしてしまうのだ。
「あ、がぁ……!?」
ブラドの体から力が抜ける。右肩からジュウウウウウと重厚な肌が焼けつく音がこだまする。
純銀のヤタガン——それが、ブラドの肌を熱く燃やしていた。
銀は元々、吸血鬼の弱点である。
だが、ブラドは度重なる吸血を行い、銀や太陽といった吸血鬼としての弱点、その全てをなくしていたのだ。
しかし、今のブラドは吸血鬼としての力——吸血の力すらもなくしている。故に、その耐性すらも無くなってしまったのだ。
「アア……アァアァァァァ……ッ!!」
ブラドは悲鳴のようなものをあげる。だが、それでも倒れなかった。
自分の胸に刺さっている天草ソラの刀を引き抜き、前へと進む。
今のブラドが立っているのは、人間の上位種——吸血鬼としての誇りが理由だった。
そして今、ブラドの視界に映っているのは、自分が、『
「よ、4世っぃぃいいいいいいいッ!!」
理子はブラドの心臓へと、超小型拳銃——デリンジャーを向けていた。
「私はッ! お前を倒して、自由を得るんだ……っ!」
気丈な台詞。だが、その声は震えていた。
そして、声だけでなく、その銃を持っている手も……
「……理子」
理子は後ろから誰かが自分の身体を抱きしめているのを感じた。
そして、理子の震えている手に、温かい……人の手が重なる。
「ソーくん……」
理子は自分を支えてくれている者の名前を呟く。
「その銃……お前の母ちゃんの形見なんだろ……? だったら、母ちゃんに見せつけてやろうぜ……」
理子は自分の持っている拳銃——デリンジャーに視線を落とす。
このデリンジャーは元々母が扱っていた拳銃で、リュパン家が没落した際に財宝と共に盗まれてしまったが、理子は必死に取り戻し、大切に持っていたのだ。
「母ちゃんに見せてやれ、お前が真に自由になるところを……お前に
力強い言葉。『相棒』からの最高の言葉。『もう一人の自分』からの最大の激励。
大好きな天草ソラからの素敵な救済。
「……うん!」
理子の手はもう、震えていなかった。
再び銃を構えて、ブラドの心臓へと照準を定める。
引き金に手をかけて——
「私は、お前に勝つ!」
1発の銃弾を放った。
理子の拳銃から放たれた銃弾は——
「…………そ、うか」
ブラドの心臓に命中した。
心臓を貫かれたブラドは脱力したかのように膝をつき、地面へと倒れ伏す。
そして、そのまま動かなくなった。
「勝った……?」
理子は
「理子は、勝ったの……?」
理子には目の前の景色が幻想のように見えているのだろう。
それほど、理子の過去は凄惨で、ブラドは強大であったのだ。
「ああ、お前は勝ったんだ…ブラドにも……自分にも」
理子は後ろから自分を肯定する声が聞こえた。
世界で一番愛しい人からの声。間違えるハズもない。聞き違えるハズもない。
——つまり、理子は本当に勝ったのだ。
「理子は、自由、なのかな……?」
「ああ、お前は自由だ。これからは何者にも縛られないよ」
「理子は、強くなったのかな……?」
「ああ、お前は強くなった。これからはたとえ何者に縛られたとしても、きっと戦える」
「理子は、幸せになってもいいのかな……?」
「ああ、お前は幸せになっていいんだ。これからは世界で1番の幸せ者を目指せるんだ」
「そっか……そうなんだ」
理子は涙を零しながら頷く。
涙を流す……その行為は悲しみを表す。
だが、時には嬉しさも表すのだ。
理子が今、流している涙は嬉しさから生まれたものだ。その証拠に理子は、笑みを浮かべていた。
「ねぇ、ソーくん」
「なんだ……?」
「理子は、ソーくんの傍に居てもいいのかな……?」
理子は少し声を震わせる。
この質問はそれほど大事なものであった。
だが、理子は確信している
ソラはきっと——
「当たり前だろ。というかむしろ、俺がお前の傍に行くから……」
そう答えるという確信を。
「そっか……ありがとね。ソーくん……!」
理子は顔だけ後ろへやって自分では笑顔を浮かべたつもりでお礼を言った。
「……へったくそな、笑顔」
「なっ!? そ、ソーくんひどっ——」
「だけど……最高の笑顔だな」
「——っ!?」
不意打ち。
理子の顔が真っ赤になった。
「お前ら、何イチャついてるんだよ……」
すぐ近くから男の呆れた声が聞こえた。
「ほんとよ! あんたら、私たちがいることを忘れてないでしょうね!」
今度は、女のアニメ声が聞こえてきた。
理子はその2人——遠山キンジと、神崎・H・アリアの方を見る。
「もう私は、お前たちのことを見下さないよ。キンジ、そしてアリア」
「な……なによ、突然……」
「宣誓だよ。
「あっそう。好きにすればいいじゃない。でもちゃんと約束は——」
「うん。ちゃんと果たすから安心して……キーくんの方もね」
「お、おう……」
3人の微笑ましい会話。
全てが解決したからこそ、話し合えること。 以前までの『武偵殺し』の時では考えられないことだ。
そして、もう一方——天草ソラの方では。
「おい、ブラド」
「な、んだ……」
ソラはブラドの右肩に刺さっていたヤタガンを引き抜きながら、ブラドへ話しかけていた。
ブラドは地面へと倒れ伏して力尽きている。それでも意識を失わないのは吸血鬼としての本能か、意地か、プライドか。
だが、ソラにとっては好都合だった。
「お前はこれから刑務所にぶちこまれることだろう。『無限罪』だなんて言われてるんだ、きっとお前が待ち受けているのは、死刑か……いや、死んでも死なないお前のことだ終身刑クラスの無期懲役がお似合いだろう」
「い…や、みを……言いにきたのか……?」
ソラは首を横に振る。
「お前が牢屋にぶち込まれちまっても、寂しくないように俺が面会に来てやるよ。何回も何回も来てやる」
「お、まえ……」
ブラドの声が震えている。
それはダメージを負っているからなのか……いや、きっと——
「今の日本には司法取引なんていう便利なものがあるんだからよ。真っ当なヤツになって戻ってこい。そん時まで俺が面会に行ってやっから」
「…そ、うか……バカだな、お前は……」
「よく言われる」
散々な殺し合いを演じたにもかかわらず、ソラは今もブラドのことを友達と思っているのだ。
甘い。大甘すぎる。
だが、それが天草ソラという人間なのだ。
「ブラドでも小夜鳴でもどっちでもいいからよ。お前が帰ってきたら、また、ロリ談義でもしようぜ」
「そうか……そうだな……」
ブラドは大きく息を吐く。
その表情は苦しみに歪められていたが、最初の頃に比べると格段に穏やかになっていた。
「でも、
——ガクッ。
ブラドは眠るように気を失った。
ソラはそんなブラドを見ながら——血の混じった唾を吐き捨てた。
「最後に何抜かしてんだクソ馬鹿やろう。俺は熟女好きじゃねえから付き合わねえからな」
そう言い捨てて、ソラは未だ元気に話し合っている3人の元へと歩いていく。
3人はこちらに歩み寄ってきているソラを見て、笑顔を浮かべた。
——ハッピーエンド。
……ぐ に ゃ り……
「あ、れ………?」
突然、ソラは自分の視界が歪んでいるのを感じ、次の瞬間には視界が横になっていた。
違う。
(俺、倒れているのか……)
視界が横になっていたのではない、ソラが横になっていたのだ。
ソラの目に、こちらに向かって何かを叫んでいる理子とアリアとキンジの姿が映る。
ソラは応えてやりたい衝動に駆られるが、身体が全く言うことを聞かない。まるで、自分の身体じゃなくなったかのように、指先も、足も一切動かすことができない。
ソラは徐々に自分の視界が暗くなっているのに気づいた。視界の中に黒い斑点が浮いてきている。そして、ゆっくりと視界を黒く塗りつぶしていった。
しかし、それでも、こちらに向かって何かを叫びながら近寄ってきている3人の姿だけはソラの視界に収まっていた。
(ばーか。なんて顔して、んだ……よ)
睡魔。
突然、ソラに睡魔が襲ってきた。
寝てはいけないのはわかっている。きっと寝てしまったら二度と起きれなくなってしまうのをソラはわかっていた。
だが——
(やべっ……耐えらんねえ……)
睡魔は徐々に強くなっていく。そして、ソラは……
『ね……ん…じゃ…え、…お……ろ…ラ……ッ!』
親友の必死な声。だが、ソラの耳には届かない。なぜならばソラは——
ソラは……眠ってしまったからだ。
*
「眠るんじゃねえ! 起きろソラッ!!」
俺——遠山キンジは
「ソーくんっ!!」
泣いている理子がソラに強く抱きつく。
だが、ソラに一切の反応がない……
「何やってんのよソラッ! 目を覚ましなさいッ! さもないと、風穴……風穴開けるわよッ!!」
アリアが涙を流して必死にソラに向かって叫ぶ。
「起きてよ……早く…起きてよ、お兄ちゃんッ!!」
そうだぜ早く起きろよソラ……
ほらっ、お前が大好きだって言ってた理子の巨乳が当たってるんだぜ……っ?
それにお前、アリアが『お兄ちゃん』って呼んできたら、どんなお願いでも叶えてやろうって言ってたじゃないか……
それでも……ソラは目を覚さない……
「おい、いい加減にしろよ……お前ッ」
俺はソラの胸倉を掴んでいる手に、さらに力を加える。
「お前、死ぬつもりかよ……俺たちを置いて……俺たちを置いて死ぬつもりかよお前ッ!! ふざけんなッ! ふざけんなよお前ッ!!」
俺は胸倉を引っ張ってソラの顔を引き寄せる。
俺の手は、ソラの防弾制服に付着している血液によって真っ赤になっていた。
そして、ソラの首筋——ブラドに噛まれた箇所から川のように血が流れている。
——大量出血。
ソラは血を流しすぎたんだ。だから、失血死しようとしている。
どうにかしようにも、輸血パックも、直接血を送る装置もない。
ましてや、まずこの流れている血を止めなければ何も変わらないだろう。
つまり——どうしようもない。
「頼むから……っ! 目を覚ましてくれよソラっ!」
俺は目から水が流れたのを感じた。
……涙。
感情が昂りすぎて、流れてしまったのだろう。
「お前、やっと自由になれた理子を置いていくつもりなのかよ……っ! レキとも死なないって約束したんじゃないのかよッ!? ジャンヌともそういう約束したって聞いたぞッ! だというのにお前はこんなところで死んで……俺たちを……俺たちを置いていくつもりなのかよッ!?」
俺の目からソラの首筋から流れ出ている血のように、涙が溢れ出てくる。
それでも、ソラは一切反応を示さない。
ソラの胸ぐらを掴んでいる俺の手の力が少しずつ抜けていく……
なに、やってる……俺。
なんで、力抜いてんだよ……
もしかして、俺はソラが死ぬって思ってるのか……?
そんなわけ……
——そんなわけねえだろうがッ!!
「ソラ……お前、死なないよな……っ!?」
俺はおそらく返ってこないであろう問いをといかける。
そして、やはりソラから、返事はなかった。
「——その通りです。ソラさんは絶対に死にません」
背後から声が聞こえてくる。
無感情な声……ソラの傍でよく聞く声……
俺は後ろを振り向く。そして、そこにはやはり——
「なぜなら私が守るから。私がソラさんを絶対に死なせません」
ライトブルーに包まれたショートヘアの少女——レキがいた。
レキは手に、何やら変な装置と救急ボックスを持っている。
「キンジさん。あなたはソラさんと同じ血液型ですよね」
「あ、ああ……そうだ」
俺がそう答えるとレキは、俺に変な装置を手渡してきた。
「この装置は人と人とを繋ぎ、直接、輸血をする装置です」
輸血! そうか——ッ!
「キンジさんの血液をソラさんに与えてください」
「わかったッ!」
俺はすぐに装置を取り扱う。
その間にもレキは周りに指示を出していた。
「アリアさんと理子さんは私と一緒にソラさんの応急処置をしましょう」
「わかったわ!」
「了解ッ!」
そして3人はソラの怪我を救急ボックスから取り出した包帯やガーゼ等で血を止めていく。
俺は腕に、血を送り込むための針を刺し込んだ。
それと同時に、ソラの応急処置を終えた3人がこちらを向く。
「キンジさん。お願いします」
「ああ!」
俺はソラの元に駆け寄り、ソラの腕の血管の通っている箇所に針を刺し込んだ。
俺とソラを繋いでいるチューブに赤い液体が渡っていく。俺の血液がソラの中に入っていくのだ。
「ソーくん……」
祈るように目を
「早く起きなさいよ……ばか」
泣きそうな顔をしながらソラの顔をじっと見つめているアリア。
「死んだら……私があなたを撃ちます。だから、生きてください」
ソラの右手をギュッと握りしめているレキ。
……ソラ。お前、こんなに愛されているんだぞ。
しかも全員可愛い女の子だ。大満足だろ?
「だから、早く起きろよな……」
お前はそんな死にかけた状態よりも、普段みたいにバカやっている方が100倍お似合いだぜ。
「………ん……だ、よ……」
————ッ!
「なん…だよ……寝かせて…くれよな……ったく」
お前ってやつは……っ! 大バカやろうめ……!
「ソーくん……っ!!」
理子がソラの身体を抱きしめた。
「ソーくん……っ! ソーくん! ソーくん! ソーくん!!」
理子は涙を流しながら、何度もソラの名前を呼び続ける。
ソラは、そんな理子の頬に手をやって涙を
「ったく……
「……っ! ばかっ! もう絶対に眠らせないからっ! ソーくんの太陽にずっとなり続けてあげるからっ! だから……生きて、ソーくん……!」
「そっか……理子が俺の太陽になってくれるのか……それなら、ずっと起きていられそうだな」
ははは、と力なく笑っているソラ。
そんなソラを見て、理子がさらにソラを強く抱きしめる。
「私もソラさんの風になりますから。ずっと起きていられますね」
「あれ……なんで、レキが……?」
「ソラさんの危機を感じて駆けつけました」
「ニュータイプかお前は……」
……いつもレキが言っている『風』ってやつか?
いや、きっとレキの相棒としての直感だろうな。
「あと5秒起きるのが遅かったら風穴スパイラルだったわよ。運がよかったわね、ばか」
「なんだよ風穴スパイラルって……俺の身体はアニメのチーズじゃねえんだぞバカちん」
俺も風穴スパイラルは嫌だな。是非とも勘弁していただきたい。
さて、次は俺の番だ。
「おい、ソラ」
「……んだよ、
誰が昼行灯だコラ、頭ぶち抜くぞ。
「お前、色んなヤツと死なないって約束してんだろ?」
「ああ、レキとかギン——ジャンヌとしてるな」
そうか——
「だったら約束の数。もう一個追加だ」
「はぁ……?」
「俺とも、絶対に死なないって約束しろ」
「は? なんでお前としなきゃ——」
俺は断ろうとするソラの顔をジロッと睨みつける。
「はぁ……わかったわかった。だから、その根暗な目はやめろって」
なんだよ根暗な目って、撃ち殺すぞ変態やろう。
「じゃあバカソラ、絶対に死なないって約束しろよ」
「おう……だけど、お前もちゃんと約束しろよ?」
「当たり前だ。俺も絶対に死なねえよ」
「あっそ。ならいい」
プイッと俺から顔を逸らすソラ。
もしかして照れてんのか。
ぷぷっ、妙なところで照れるヤツ。
「——何笑ってんだクソキンジ」
「アアアアアアアアアアアアアアアア!! 目がァァァ!! 目がァァァ!!」
コイツ、俺の目を指でブッ刺してきたやがった……!!
こ、このやろ……! ぶっころ——
「はいはーい!!」
俺がソラに飛びかかろうとした瞬間、理子が手を上にあげた。
「理子もソーくんと約束したいなっ!」
「え……イヤなんだけど……」
「なんでっ!?」
「単純にめんどくさいから」
「意味わかんないよっ!? なにめんどくさいって!?」
こいつら一体何を言い合っているんだ……
「はぁ……わかったよ。理子とも約束すっから」
「やーりぃ! これでソーくんとの『夫婦』への道が一歩前進した!」
「おい……勝手に俺の将来を決定しようとすんじゃねえ」
なんかコイツがモテてるのを見るのムカムカすんな。
しかもソラのやつ徐々に元気になってるし、そろそろ輸血やめていいだろうか。
そして今度は、口からケチャップを一気飲みさせてやりたい。
「……ソラさん。『夫婦』への道とはどういうことですか」
「ひえっ、こ、怖いですレキさん。顔は無表情なのに、オーラは全然、無じゃないんですけど……」
「話を逸らさないでください。刺しますよ」
「何をッ!?」
そりゃ銃剣だろ。
レキとお前のコンビといえば、レキの銃剣がよくソラに突き刺さってるという話が一番有名だからな。
「あ、ソラ。ついでだから私とも約束をしなさい」
「え、アリアも……?」
「なによ。私とはダメなの? じゃあ風穴スパイラ——」
「是非とも約束したいと思いますアリア様」
「それでいいのよ。ありがとね……お兄ちゃん」
「——がふっ!?」
おい。せっかく輸血したのに血を吐くんじゃねえよバカやろう。
「それでは、私とも約束をお願いします」
「え……レキとは既にしてるだろ……?」
「もう一度することによって、ソラさんを約束で縛りつけます」
「もう十分、亀甲縛りぐらい縛られてるよっ!?」
相変わらずこのバカコンビはお互いに縛りあってるし……まぁ、それがコイツらなんだろうけど。
「あー、少し眠たくなってきた」
あっけらかんと言うソラ。本当にさっきまで死にかけてたのか?
……ったく仕方がないヤツだ。
「っつうわけで俺、少し寝るから」
そう言ってソラは目を瞑る。
本気で寝るつもりなんだろうな。
傷も応急処置したし。輸血もしてるから死ぬことはないと思うが……少し不安が——
「心配しなくても、ちゃんと起きるから安心しろよお前ら」
目を瞑りながらそう言ったソラは、今ではグーグーと寝息を立てながら寝ている。
……ばーか。こういう時まで他人のことを気にかけんのかよ。
だったら、さっさと怪我治していつもみたいにセクハラでもなんでもしろよな、大バカ野郎。