ありふれた錬成師と神に愛された病弱で世界最強   作:ファフ

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光輝「第五回『あり病』のあらすじ紹介だ!」


龍太郎「おっ?今日は零人じゃないのか?」
鈴「れいれいなら風邪で寝込んだよ」
龍太郎「まじか」
光輝「なので今日は俺達だけでやるぞ」
光輝「前回は香織達が落ちた後の俺達の話だったよな?」
龍太郎「おう。色々あったよな~」
鈴「どっかのお馬鹿さんが勝手にどっかに行くし」
龍太郎「ガンダム召喚したし、それよりも……」
鈴「リリィにプロポーズ(?)してたしね」
光輝「ほんとなにやってんだか」
龍太郎「まっ、アイツだし別にいいんじゃね?今は丸く収まってるし」
鈴「うんうん。責任をとらなかったら八つ裂きにしてたよ」
光輝&龍太郎「こっわ」
鈴「そお?あっ、そろそろ時間だよ」
光輝「もうそんな時間か。じゃあ、三人同時に!」

「「「本編をどうぞ!」」」



その頃、奈落の底で《前編》

〔ハジメside〕

 ピチョン………ピチョン………と水が落ちる音とザァーと流れる音がする。

冷たい微風が吹き、濡れた体が身震いした。全身に当たる硬い感触に呻き声を上げて目を覚ました。

 

「痛っ、ここは……奈落の底か……」

 

 ベヒモスの悪足掻きによって限界だった橋が崩落してちょうどこの川に飛び込んだったんだ。今着ている対衝撃コートがなかったら今頃肉片になっていただろう。想像するだけでもゾッとする。

 ふらつく頭を片手で押さえながら、辺りを見渡す。

 周りは緑光石のおかげで薄暗く照らされていた。足下には幅五メートル程の川があり、凄い速さで流れている。そして、すぐ側に真っ白な聖職者のような格好をした少女が横たわっていた。

 

「っ!香織さん!」

 

 ベヒモスと一緒に落ちる自分を追いかけて来て、落下する際の衝撃を自ら下敷きになって庇い、自分が命懸けで守った白崎香織がいた。

 いまだふらつく脚を動かし彼女の側による。体は水で濡れていて冷えているがまだ少し温かいし、脈もちゃんとある。

 

「起きて香織さん!香織さん!」

「う………うぅ………ハジメ……くん?」

「良かった、目を覚ましたんだね!」

 

 呻き声を上げながらゆっくりと意識が回復してこちらを見てきた。

 

「ここは……?」

「奈落の底だよ。ほら、彼処にある滝から落ちてここまで流れてきたんだ」

 

 さっきからザァーと鳴る方向を指差す。そこには崖に無数の穴が開いており、底から水が勢いよく噴き出している。恐らく、ウォータースライダーの如く流されたのだろう。とてつもない奇跡だ。

 

「それよりも火をおこして暖を取ろう?風邪を引いたらひとたまりもないし」

 

 そう言って腰にあるウェストポーチから火種の魔法陣が刻まれた魔石とジップロックに入れた乾燥木材を取り出し、木材を出して魔力を流し込んだ魔石を放り込む。するとすぐに着火し少し大きめの焚き火ができた。

 零人に念のため入れとけって言われていた木材が役にたった。一体どこまで予想してたんだろう?

 濡れている服をすぐ側の岩に並べて乾かす。香織さんの姿を見ないように後ろを向きながら暖をとり始めた。ガンダムとかでもこんなシーンあった気がする。うーん、懐かしい……。

 

「それでこれからどうするの?」

 

 焚き火で暖を取っていると香織さんから今後について質問された。

 

「一応、下に向かって行こうかなって思ってるよ」

「下?上じゃなくて?」

 

 うん、やっぱりそう思うよね。でも、ちゃんとした理由があるんだ。

 

「僕たちが居たのは六十五階層でそこからこの深い奈落まで落ちてきたんだ。つまり、今いるこの場所は大迷宮の最深地、百層に近い。上に向かって進むよりも百層に進むほうがいいと思うんだ。もしかしたら地上までの転移ゲートがあるかもしれないし」

 

 二十階層から六十五階層まで転移させられたんだ。地上まで転移できるやつがあっても可笑しくない。

 

「なるほど」

「でもここから先は未開拓領域でどんな魔物が出るかわからないし、ベヒモスより強いヤツもいるかも」

 

 六十五階層のベヒモスは零人と二人でやっと死まで追い詰めた魔物だ。それよりも更に深い階層の魔物はベヒモスの倍以上に強い可能性が高い。だけど………

 

「僕たちある程度気配消せるしね」

「雫ちゃんに習っといて正解だったよ」

 

 僕は零人や光輝くん、遠藤くんにやり方教わってたから簡単なやつならできる。遠藤くんは素でやってるが二人は八重樫さんの道場で習ったらしい。剣術を学んだ筈なのになんで消す方法を習ったんだろう?まぁ、そんなことは置いておいて、これなら大抵の魔物なら気づくことはできないだろう。不良から逃れるために習ってたけど、まさかこんな所で役に立つとは。

 

「じゃあ、服が乾いたら出発する?」

「うん、それまでに短剣を研いだり、荷物の整理をしとくよ」

 

 ポーチから携帯用砥石や非常食、薬品など様々な道具を取り出す。これから移動するんだ。少しでも荷物を減らして動きやすくしないと。

 

「いろいろ入ってるね。こうなること予想してたの?」

「入れたの零人だから本人に聞いてください」

「…………どこまで予測してたんだろう」

「…………さぁ?零人だし」

「だよね~」

 

 

 

―――数時間後

 

 

 

 只今、百層に向かって進行中。服が乾いて体も十分暖まったからずいぶん前に川を出発した。だいたい三階層分は下りただろう。道中、何度か魔物に出くわすが気配を消していたお陰か気づかれず通りすぎってた。恐らく深海魚みたいに目が退化してしまったのだろう。運が良かった。

 

 しばらく歩き、ちょうど身を隠せそうな岩場を見つけて休憩に入る。体感的には二、三時間ぐらい歩いた気がする。

 さすがにベヒモスと戦ってからそう時間も経ってないし、硬い地面に座りながら暖を取っていたから十分休めてなかった。それに僕とは違ってロングスカートの香織さんを長時間歩かせる訳にはいかないし。

 

「ふぅ………、やっと十階層ぐらいは降りたんじゃないかな?」

「所々に階段もあっからたぶんそうなんじゃない?それにしてもよく見つからなかったよ」

 

 ホントに運が良かったよ。もし聴覚が発達してたり、熱を探知できる魔物がいたら恐らく死んでいただろう。だが、ここから先は今までよりも強い魔物がいるかもしれない。

 何故って?それはここの雰囲気がガラリと変わってるからだ。メルドさんに言われていたが『迷宮というものは死と隣り合わせ』だと。それがこの階層に来てから身に感じるほどひしひし来る。

 しかも、壁や地面の色が上よりも断然違う。今まで茶色っぽい感じだったのに灰色っぽく見える。

 

「香織さんも気づいてるかもしれないけどここからは気をつけたほうがいいかも」

「うん、わかった」

「じゃあ、今はゆっくり休も、―――っ!?」

 

 突然、背後から物音がし短剣に手を掛ける。僕が警戒し始めたのに驚きつつも杖を持って戦闘体制に香織さんも入った。岩影に隠れながら様子を伺う。

 視線の先には白いウサギがいた。しかも、ただのウサギじゃない。大きさが中型犬くらいあり、後ろ足が大きく発達している。そして赤黒い血管のような線が体を走り、ドクンドクンと脈打ってた。今まで見てきた魔物よりも危険そうにみえる。

 ヤバそうなので気配を消してやり過ごそうとした瞬間、ウサギがピクッと反応しスッと背筋を伸ばして立ち上がった。警戒するように耳が忙しなくあちこちに向いている。

 

(まずい!見つかったか!?)

 

 だが、ウサギが警戒していたのは自分達ではなく他のようだ。

 

「グルゥア!!」

 

 獣の唸り声と共に、白い毛並みの狼の魔物がウサギ目掛けて岩影から飛び出してきた。

その白い狼は大型犬ぐらいで尻尾が二本、そしてウサギと同じように赤黒い血管のような線が体に走って脈打ってる。

 何処からか現れた一匹目が飛び掛かった瞬間、別途の場所から更に二体の二尾狼が飛び出す。どう見ても狼がウサギを捕食しようとしている瞬間だ。

 このドサクサに紛れて移動しようとした瞬間、

 

「キュウ!」

 

 可愛らしい鳴き声がしたかと思えば、ウサギが飛び上がり、空中で一回転して、太く長い足で一匹の狼に回し蹴りを炸裂させた。

 

ドパンッ!

 

 と足が狼の頭にクリーンヒットする。すると、

 

ゴギャ!

 

 と鳴ってはいけない音がし、首があらぬ方向にねじ曲がった。

 

(うそーん)

 

 一体目を倒した後、また飛び上がってと思ったら空中を踏みしめて隕石の如く落下し、二匹目の狼に踵落としを食らわせて絶命させてた。恐らく、空中に足場を作る固有魔法だろう。

 てか、誰だよウサギが弱いって言った奴。強いどころか狼にすら勝ってるじゃないか。まぁ、リゼロとかでウサギは強いこと知ってるけどさ、それは集団であって単独で行動しているウサギが強いってどゆこと?

 そんなことを思ってたら更に二体の二尾狼も倒してしまった。因みに二尾狼の固有魔法は紫電を纏うタイプだった。

 

「キュ!」

 

 蹴りウサギは勝利の雄叫びを上げ、耳をファサッと前足で払った。あっ、今の仕草うざい。蹴りウサギとでも呼ぼう。

 見つからないように少しずつ後退りしながら香織さんの下へ向かう。

 だが、それが間違いだった。

 

カラン

 

 その音は洞窟内にやたら大きく響いた。

 下がった拍子に足元の小石を蹴ってしまったようだ。あまりにもベタで痛恨のミスである。蹴りウサギがバッチリこっちを見ていた。

 赤黒いルビーのような瞳が捉え細められている。魂が全力で逃げろと警鐘をガンガン鳴らしているが後ろにいる香織さんを残して逃げるわけにはいかない。

 やがて、蹴りウサギが体ごとこちらの方を向き、足をたわめグッと力を溜める。

 

(来る!)

 

 本能と共に悟った瞬間、蹴りウサギの足元が爆発した。残像を引き連れながら、途轍もない速度で突撃してくる。

 最小限の動きで回避し、手に持っていた短剣で蹴りウサギを切り裂く。切られた影響でバランスを崩し、頭から地面に突撃した。

 一年前、つまり高一の時に光輝くんに言われたことを思い出した。僕は素の身体能力は低いが反射速度がピカイチだと。だから光輝くんにお願いして軽く武術を習った。そのお陰で光輝くんの抜刀術までは無理だったが、それ以下の速さなら簡単に避けれるようになった。

 

(まだ生きてるよな?)

 

 切り裂いたものの深くまで切った感触がしなかった。恐らく、ステータスの差と短剣の質の問題かもしれない。ステータス差ははっきりしていることはわかるが短剣はわからない。ここに来るまで魔物を切ってないし、砥石でそこら辺の石を軽く切り裂けるぐらい研いだはずなのに浅めにしか切れなかった。

 するとプルプルと震えながら蹴りウサギが立ち上がった。さっき切ったのは右脇腹辺りで血を流している。傷は浅いが血管を切ったらしく血がドバドバ出している。それにも関わらずまた突撃しようと足に力を溜め始める。

 

「まだ来るのか!?」

 

 短剣を再び構えて戦闘体制に入る。しかし、いつまで待っても蹴りウサギが跳んで来ない。よく見ればまるで怯えてるようにプルプルと震えていた。

 

(なんで怯えてるんだ?僕や香織さんに怯えてるように見えないし…………)

 

 そう思った矢先、自分達が逃れようとしていた方向から異様な気配を纏った新たな魔物が現れた。

 その魔物は兎に角巨体だった。二メートルは優に越えているだろう巨躯に又もや白い毛皮。蹴りウサギ達と同じく真っ赤な線が幾つも体を走っている。どう見ても熊の姿をした魔物だ。ただし、足元まで伸びた太く長い腕に、三十センチはありそうな鋭い爪が三本生えている。爪熊とでも言っておこうか。

 あまりにも強者の風格を持つ魔物のため、空気が凍るように静寂が流れ、硬直する。

 

「………グルルル」

 

 突然、爪熊が低く唸り上げていた。

 

「「「ッ!?」」」

 

 未だ動けない僕たちと違い、蹴りウサギがビクッと一瞬震え踵を返し脱兎の如く逃走を開始した。先程の踏み込みをこの逃走のために全力で使うように。

 

 しかし、その試みは失敗した。

 

 爪熊がその巨体に似合わない素早さで蹴りウサギを追い、長い腕の爪を振るったからだ。僕の攻撃によって負傷していたのか、あの俊敏さで避けれず、蹴りウサギの体がズルッと斜めにずれて噴水の如く血を吹き出して倒れた。

 蹴りウサギが怯えて逃げ出した理由がよく分かった。あの爪熊は別格、つまりこの階層のボス的存在なのだと。

 爪熊は、のしのしと蹴りウサギの死骸に歩み寄り、バリッボリッと音を立てながら喰らっていく。

 ヤツが食事に夢中になっている間に足音を立てず香織さんに近づく。手を取り、急いでこの場から離れようとした瞬間、咀嚼音が消えた。恐る恐る後ろを振り返ると蹴りウサギを食べ終えた爪熊がこっちを向いていた。その視線が次の食料はお前らだと語っている。

 

「ちぃっ!もう食べ終わったのかよ!?」

 

 咀嚼は十回程しか聞いていない。つまり、たったそれだけであの中型犬並のウサギを食べ終えたということ。まだあの大きな腹は満腹になっていないのだろう。

 早くこの場から離れようと爪熊がいる方向とは反対方向に走る。

 しかし、それは叶わず、後ろからゴウッと風が唸る音が聞こえると同時に強烈な衝撃が左側面を襲った。香織さんは右にいるからこの衝撃は伝わってないだろう。衝撃で吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。

 

「がはっ!」

「ハジメ君!」

 

 肺の空気が一気に抜け、咳き込みながら滑り落ちる。衝撃に揺れる視界で青ざめなから駆け寄ってくる香織さんと、何かを咀嚼している爪熊を確認する。

 

(な、何を食べてるんだ?)

 

 蹴りウサギはさっき食べ終わったはずだ。それにどうして、()んでいるその腕にはとても見覚えがあった。

 

「ハジメ君!腕が!」

 

 香織さんが叫ぶと同時に視界が回復する。そして、指摘された腕に違和感を覚える。何故かさっき衝撃が伝わった左腕が軽いのだ。もしやと思い、左腕を見る。

 

「あ、あれ?」

 

 

 

腕がなかった。

 

 

 

 左腕があった場所は何もなく、今でも血が吹き出している。その血を止めようと必死に回復魔法を香織さんが掛けてくれている。爪熊が今食べているのは切り落とした僕の腕だろう。今まで感じなかった痛みが一気に襲ってくる。

 

「あ、あ、あがぁぁぁあああーーー!!!」

 

 絶叫が迷宮内に木霊する。左腕は肘より少し上辺りからスッパリと切断されていた。

 

(なんで!アイツとは十分離れていたはずだ!爪が届くはずない!)

 

 確かに爪熊とは二メートルは離れていたはずだ。なのに爪が届いた。あの時聞こえてきたのは風の音だけだ。

 

(風……?まさか……!)

 

 ようやく、爪熊の固有魔法が分かった。爪熊の固有魔法は風の刃を爪に纏い、切断範囲を伸ばすことだと。

 それを考えれば腕一本で済んだのは幸いだ。もし、少しでも左に寄っていれば胴体が真っ二つにされていたかもしれない。

 回復魔法が終わり、血が止まったのを確認し、再び香織さんの手を握る。

 

「香織さん来て!〝錬成ぇ〟!」

 

 背後の壁に二人が潜って通れる程度の大きさの穴を作り出し、入り込む。香織さんが入るのを確認し急いで穴を閉じる。

 すると、壁の向こうから雄叫びが聞こえて壁を削るような音がする。

 

「ちくしょう!まだ来るのかよ!?〝錬成〟〝錬成〟〝錬成ぇ〟!」

 

 穴の高さを中腰になれる程度まで上げて、残った右腕を壁に当てながら走って奥に進む。後ろ振り向かない。いな、振り向いてはいけないと本能で感じる。振り向いた瞬間、殺されるだろう。

 香織さんだけでも逃がそうと錬成速度を上げて爪熊との距離を開ける。

 三十回ぐらい錬成を続けていたら、後ろから来る恐ろしい音が聞こえなくなった。恐らく、諦めたのだろう。

 

「た、助かったの?」

「たぶんね………、これで少しは安心かな……」

 

 緊張が解けて崩れる。左腕が切断されて血が大量に出たのと錬成による魔力が尽きたことにより、意識が朦朧としてきた。隣にいる香織さんも止血のために全ての魔力を使ったのだろうか倒れた。

 

「ごめんね、こんなことに巻き込んじゃって…………」

 

 すでに意識のない彼女に謝罪する。ここには緑光石のような明かりが一切なく、ほとんど見えない。それでも彼女がすぐ側にいることは分かった。

 

 

 

 いつしか昔のことを思い出していた。これが走馬灯というやつなのだろう。保育園時代から高校時代、皆と遊んでバカやったりして親に怒られたり、長期休みに遠出したりした思い出などが次々に浮かび上がってきた。最後に思い出したのは…………

 

 昨日の夜、月明かりが射し込む窓辺で香織さんといつの間にか二人きりになった時に見た彼女の笑顔。

 

 その美しい光景を最後に意識が闇に呑み込まれていった。意識が完全に落ちる寸前、ぴたっぴたっと地水滴が落ちる音がして頬に当たった。

 それはまるで、誰かの流した涙のようだった。

 

 

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