Fateの二次創作。衛宮士郎と間桐慎二の数年後の関係を妄想したSS
衛宮士郎は魔術使いである。
同時に、正義の味方を志し、英雄へと成り果てる運命が待つ剣である。
衛宮士郎は魔術の師とも言うべき遠坂凛と時計塔で決定的な仲違いをしてから数年、世界を旅しながら遂には始まりの地、冬木に帰って来たのだった。
蔵にある父の忘れ形見を取りに帰ってきたのだが、当然懐かしい顔に出会うことになる。
時には叱咤され、時には泣かれ、時には意地の悪い言葉をぶつけられ。
ぐるりと冬木を一周する頃には、既に夜へと片足を突っ込む時間となっていた。
教会からの帰り道、沈む太陽を横目に冬木大橋を渡る途中にも衛宮士郎と馴染みの深い男が一人。
間桐慎二である。
「なんだよ、衛宮じゃないか。いつこっちに帰ってきたんだい?」
間桐慎二は数年前と変わらず演技がかった喋り方だが、それでいてフランクさも変わらずだった。
「ま、そんなことはどうでもいいや、ウチに寄っていけよ。アイツも尻尾振って喜ぶだろうし」
間桐家にいるアイツ、慎二が呼ぶアイツとは桜のことであろう。桜には既に顔を合わせている。
「あっ、そ。……ふーん、急に帰ってきたからどうしたのかと思ったけど、ナニ、遠坂にフられたから桜に乗り換えようって話?」
遠坂に振られたのは事実の一端ではあるため、苦虫を噛み潰したような表情になる。
「そんなんじゃない。桜は慎二の……親友の妹だ」
その返事に慎二は一瞬目を丸くし、少ししてから何か納得したような呆れているような表情へと変わった。
「はっ、報われないね。アイツもお前も」
「どういう意味だよ」
「気にしなくていいよ、大した話じゃあないからね。ところで当分はこっちに……いや、その格好、また何処かへ行く腹積もりかい?」
衛宮士郎の格好といえば、どこぞの教会からかっぱらってきた聖骸布を腰と左腕に巻きつけ、顔の一部と右腕は燃える丘を連想させるような褐色となっている。
どう見ても堅気の日本人ではなく、外人の少なくない冬木ですら目立つ格好であった。
「……あぁ。今晩中には発とうと思う」
「忙しいねぇ……」
何処へとも聞かない慎二なりの気遣いがひどく懐かしく感じる。
「そうだ、衛宮。僕と組まないか?」
間桐慎二は突然そう告げた。
「組む?」
「そうさ!僕とお前が組めばこの地……遠坂の管理地である冬木を乗取ることも出来るだろうさ!」
「……慎二。俺は遠坂とコトを構える気なんてないぞ」
「冗談だよ。真に受けんなって。とっくに間桐の血は冬木に適応しなくなってるし、今更こんな地方の管理を奪ったってね」
「……」
「管理地はともかく、これからの時代魔術だけで生きて行くのは難しい。魔術なんかよりよっぽど金の方が大事だ。
僕もこれから新しく事業を展開したい。そこで衛宮、お前が使いっぱをやってくれればいい。遠坂への牽制にもなるし、お前は甘い汁を吸える。いいコトづくめじゃあないか!」
それは魅力的な提案だった。冬木の地に根を下ろし、間桐慎二と共に新たな生活を始める。きっと桜も手伝ってくれるだろう。
衛宮士郎にとってそれは間違いなく幸せな空間であるように思えて仕方がない。
しかし、衛宮士郎は既に選んでしまったのだ。
帰る道はなく、立ち止まることも許されない。
もう思い出せない背中を追い続けると。
「……」
「なぁ、衛宮。考え直せよ、あちこち飛び回って、英雄の真似事して。昔からそうだったけどお前は」
「慎二」
「……あぁそうかよ。そんなに死にたきゃどっか行って勝手に死んでろよ!もう知らないからな!」
そう慎二は告げて背を向ける。これが最後通告だ、と言わんばかりの背中に
「慎二は変わらないな」
そう言って踵を返す。
間桐慎二は新都へ、衛宮士郎は深山町へ
それは二度と交わることのない日暮の訣別
さらば友よ
願わくば再び合間見えることのないように