前々から中途半端な設定厨の作者が発症していた『唐突に降りてくる新作のネタを作品化するかどうか』についての対症療法的な投稿。
基本途中で投げっぱなしです。
ちなみに大体自己満足なのでご注意を。

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英霊剣豪番外勝負1

草木も眠る丑三つ時

 

鬼殺隊・花柱・胡蝶カナエは柱として配当された区域の巡回の中で鬼に遭遇する。

 

青白い肌、血を被ったような模様のある白橡色の髪、つい先ほどまで被っていた冠のような帽子、どれも一目見れば中々忘れられない特徴の容貌だが、まず何よりも彼女に衝撃を与えたのは虹色の瞳に刻まれた”上弦”と”弐”の文字。

 

鬼の始祖たる鬼舞辻無惨、その直属の配下”十二鬼月”。

 

鬼殺隊の悲願である鬼舞辻討伐の最大の障害。その中でも百年以上に亘って討伐記録のない上位六体の鬼”上弦”の”弐”番目。

 

鬼殺隊において”上弦”の鬼についての情報は、行使する血鬼術はおろか容姿や性別に至ってすら判明していない。

 

それは遭遇した者が誰一人生還しておらず、

鬼殺隊最高戦力たる”柱”においても例外はないということ。

 

 

そのような存在を前にして警戒するカナエをよそに、その鬼は場違いな温和でにこにこと屈託なく笑い、穏やかに優しく喋りかけてきたのだった。

容姿も、言動も類を見ない異質な存在、鬼殺隊の人間であれば鬼であるからと問答無用で滅殺せんと攻撃を加えるのが当たり前であったが、

 

花柱・胡蝶カナエもまた鬼殺隊の中における異質な存在である。

 

 

人を殺し、喰らう鬼と仲良くしたい。鬼と人が共存できる世にしたい。

 

 

万人が世迷言や夢物語だと嘲笑してきた思想を掲げる彼女にとって、初めて対話を望んできた鬼の手を払いのける思考は存在せず上弦の鬼と鬼殺隊最高戦力の柱の対話がここに成立した。

 

 

 

だがカナエの念願は儚くも徐々に崩れ去っていく。

 

 

上弦の鬼は”童磨”と名乗った。

話が弾み機嫌を良くした彼は、鬼にしては珍しく持った人間の頃の生い立ちや自身の思想をカナエに語っていく。

 

地獄や極楽は人間の妄想

 

人間は死んだら無になるだけ

 

 

徹底的な無神論・唯物論者であり、同時に常識が破綻した狂人の童磨は「愚かで気の毒な人間を喰らう(救う)ことで幸せにしてやるのが己の使命」だと信じてやまない。

 

会話の最初とは真逆の青ざめた顔にどこか悲嘆な表情を混ぜつつも敵意を向けてくるカナエに、童磨は変わらず温和でにこにこと屈託なく笑い、穏やかに優しく言った。

 

「カナエちゃんも俺が救ってあげるよ。」

 

「あなたは斬らなくてはいけない鬼です!」

 

 

’花の呼吸  ()ノ型   (あだ)芍薬(しゃくやく)

 

芍薬の花を思わせる刀の軌跡を残しながら放たれる九連撃。開幕の一撃であり納刀からの居合いの勢いで常よりも加速した申し分ないはずの攻撃は、金属同士がぶつかり合う高音を響かせるだけに終わり、直後カナエの口から鮮血が溢れる。

 

咄嗟に対峙していた屋根から退避し呼吸を整えようと努めるが一向に改善せず、むしろ呼吸のたびに肺に激痛が走った。

 

「肺が壊死してるんだから無理しない方がいいぜ?」

 

 

どこからか取り出した金の扇を両手に、童磨は変わらず笑顔でカナエに語り掛けた。

 

’血鬼術  粉凍り’

 

自身の血液を氷結させそれらを自在に操る能力をもつ童磨は、周囲に凍らせた血を微細な霧状に散布しそれを吸った者の臓腑を壊死させる。

 

生身で強靭な鬼に立ち向かうべく生み出された特殊な呼吸法を用いる鬼殺隊員にとって天敵となる技をカナエは受けてしまった。

 

 

溢れ出る鮮血で呼吸もままならず足取りもおぼつかない。ダメ押しの様に相対するのは”上弦の鬼”

 

崩れ落ちそうになる体を刀を杖代わりに支えることで辛うじて立っているカナエは、悠々と歩み寄って来る童磨をせめてもの抵抗と言わんばかりに睨み、その内心は様々な感情がめぐっていた。

 

 

 この危険極まりない存在を討ち取れずその糧となってしまう己への不甲斐なさ

 

 妹共々、窮地を助けてくれた恩人に恩返し出来なかったことへの後悔

 

 未だ心を取り戻せていない小さな女の子の成長を見届けられないことへの悔い

 

 

  そしてもう最愛の妹に会えない、身を割かれそうなほど悲しみ

 

 

 

目元から零れそうになるものを堪え、最期まで屈しないとばかりに童磨を睨んでいたカナエの前に

 

 

ふと、閃光が走った。

 

 

遅れて舞う童磨の腕と、カランと下駄の子気味良い音

現れたのは十文字槍を携えた僧兵のような出で立ちの男。

 

「はてさて……何の因果か現世に立ち返って来たものの、夜更けに血肉求める化生が人を襲うものだから流石に目を疑ったぞ」

 

「突いて貫き歩いてみれば、見目麗しい女性剣士が窮地に立っておる。願わくば事情に詳しいと良いのだが?」

 

ただの一振りでさも簡単に腕をはねられた童磨は警戒して大きく後退。奇しくもカナエと最初に相対した時と同じく家の屋根上から見下ろす形で童磨は尋ねた。

 

「君、いったい何者なんだい?」

 

「仏法を尊ぶ身として説教の一つでもくれたやりたいところだが、今回はそう時間もない。拙僧の槍を手向けに疾く逝け」

 

 

結局、その後童磨は男の名すら知ることができず這う這うの体で撤退し鬼の首領たる鬼舞辻に折檻をもらうことになったのだった。

 

 

 

♦♦♦♦♦♦♦

 

「近づいてきておったのはお主の知人であったか。それならばあの化生、仕留め損なったな…」

「姉の命を助けていただき、感謝の言葉もありません。本当にありがとうございます。」

「頭をあげられよ。お主にいたっては傷に響きかねんぞ。まあ禁欲中の身だがそれはそれとして情はあるのでな。花のような美人を見殺しにするワケにはいかん」

 

 

夜が明け、駆けつけたカナエの実の妹である胡蝶しのぶと隠たちによってひとまずの応急処置も終え肺を痛めたカナエに代わってしのぶが男と話をしていた。

 

「鬼を退けるとは尋常ならざる遣い手と見ましたが…あなたは一体…」

「おお!まだ名乗っておらなんだな。」

 

そういって男は頭の裹頭(かとう)を外した。現れたのは額に十文字の傷を残した男

 

奈良は興福寺の僧であり開祖たる胤栄(いんえい)没後「宝蔵院流槍術」を再び興し

『その槍神仏に達す』とまで謳われた”山間無双(さんかんむそう)

 

「拙僧はランサー、名を宝蔵院胤舜(ほうぞういんいんしゅん)と申す!!!」

 

 

これは流れ着いた英霊と鬼狩りたちが織り成す物語の始まりにすぎなかった。

 

 

 

 

 

 




和鯖であまり見かけないチョイス。
自分的には結構好きだが供給が心もとない。
ならば己で生み出すしかないでしょう。

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