「今日はバイト休ミ?」
突然、バイト先に到着と同時に店長に言われ、首を傾げるレ級。
「そう。労基に引っかかり…あっ!労基って知ってる?レオクくんの国にはないかな?」
「いや、労基くらイは知ってル。」
「あぁ、良かった。とりあえず、今日は休みだよ。申し訳ないね。突然で。」
「いヤ。」
突然の休暇で、何すれば良いかと考える。普段であれば、五島支部に帰るが…。
今朝
「ノンッ!長崎!オ出カケナノ!」
「本当ニ来ナイノ?」
北方棲姫と港湾棲姫が出かける支度をして、レ級に再度聞く。長崎まで買い物に出かけるらしい。
「今日ハ『バイト』ダカラナァ…。休ミナラ 一緒ニ行クンダガ…。」
「夜マデ 帰ラナイケド…。」
「大丈夫ダ。ソレニ、戦艦棲姫ヤ駆逐棲姫、防空棲姫ヤ集積地棲姫ガイル。」
「言イ忘レテタカシラ?4人ハ、横須賀ノ『カレーフェス』ニ 出カケルッテ言ッテタワ。」
「マジカ。ナンダヨ…。俺ダケ仕事カ…。」
レ級はツイてない顔をする。
「マタ行ク時アルカラ、ソノ時ニ 一緒ニ行マショウ?」
「今度ハ 一緒ニ 行クノ!」
「分カッタ。」
レ級は、キラキラ輝いた目の北方棲姫を撫でる。そして、北方棲姫と港湾棲姫は出かけて行った。
現在
(コンナコトナラ、店ニ言ッテ休ンデ、港湾棲姫達ト一緒ニ行ケバ良カッタ…。)
そんなことを思いながら、人間の男装したまま街を歩く。
(マァ、気ヅカレルコトモナイダロウシ、チョット商店街ヲ見テ行クカ。)
そう思いつつ、商店街を散策する。町行く人々は、レ級とは全く気が付かずに歩いていく。近所の人でさえも、レ級と気づいていなさそうだ。
「あら、こんな田舎にえらい男前な子がいるわ!」
「ほんとだわ!どこの子かしら?」
突然、おばちゃん2人組に話しかけられる。レ級は、軽く爽やかな笑みをしながら受け流す。
(隣ノ山田サンダヨナ…?本当ニ気付イテ ナカッタノカ…?)
レ級は歩きながら疑問に思う。これならば、今までとは違う商店街の人々を見れるのでは無いのかと。
そして、レ級は思いのほか上手く馴染める。格好と言葉遣いが中性的だったのも大きかったのだろう。
「エーラッシェー!おや、そこのにーちゃん、見ない顔だね。観光かい?この五島の名物は、やっぱりこれ!アゴだよ!出汁に干物になんでもこいだ!」
魚屋のおっちゃんから、呼び止められる。レ級は、知っていると思いつつも近づく。
(オレ達以外デモ、同ジ対応ナノカ。…ナンカイイナ。)
レ級が思う。レ級たち深海棲艦は人類の敵だ。人間なんて紙クズのように殺すことが可能で、いつも危ない武器を持って海を支配している。でも、ここの人たちは傷ついた自分たちを受け入れてくれた。助けてくれた。
「ん?どうしたんだい?」
助けてくれた後も、恐怖で従うのでもなく、利用するのでもなく、普通の人と同じように受け入れてくれた。それがとても嬉しい。
「なラ、少し買っていこうかナ。」
「お!にーちゃん、わかってるねぇ!サービスするよ!」
「アァ。ありがとナ。」
レ級が、魚屋を後にして商店街を歩く。
(本当ニ…良イ人タチダ…。)
そう思いつつ、商店街を歩いていると…。
「おぉ、我が愛しの女神…!」
「ゲ!」
ある人物の声を聞いて、レ級は嫌な顔をする。今まで、戦闘ですら獰猛な笑みを浮かべるレ級を、嫌な顔にできるのはこの男しかいない。酒屋の息子だ。人間に恐怖すらしたことのないレ級が初めて恐怖した変態だ。
(大丈夫ダ。今ハ変装中…。他ノ商店街ノ人達ニダッテ バレナインダ…。)
「どうしたんだい?そんな黙りこくって。」
「い、いヤ…。人違いじゃないカ?初めて会うと思うシ…。」
「何を言う!俺の女神の声を間違えないぞ!俺は君の心すら理解でき…。」
「何を言ってるんダ…?頭でも打ったのカ…?」
「それに、香水の中僅かに香る深海の香りに、歩幅で…。」
「キモッ!コワッ!マジデ恐怖デシカネーヨ!」
レ級はついにドン引きしながら、酒屋の息子の相手をする。
「ハァァァァァ…。ナンデ、ソンナ一瞬デ気付クンダヨ…。」
「愛ゆえに!」
「ヨシ、ソノ目ヲ潰ス。愛ドコロカ恐怖ニシテヤル。」
レ級は軽く殺気を出しながら言う。
「はっはっは!そんな殺気で怖気付くとでも?」
「ダロウナ!マジ蹴リデスラ喜ブモンナ!!」
レ級は、もはや無敵状態の酒屋の息子になす術なし。
「ドチラニセヨ、酒屋ニハ行ク予定ハアッタケド…。」
「おぉ!我が女神様が私の顔を見に!?」
「オマエジャネェ、座ッテロ。ソレニ、酒ッテ言ッタロ!」
そんなこんな言いながらも酒屋に入る。
「いらっしゃ…。…友達?」
「違ウ!」
酒屋のおっさんは、息子が外人を店に入れて、尚且つ親しくしてるのを見て聞いてきた。
「お、おう…。外人さんの知り合いかい?」
「おやじ、我が女神様だ。」
「?…あー、レ級ちゃんか!」
酒屋のおっさんがレ級に気付く。
「ナントカシテクレ…。外デ付キ纏ワレタゾ…。」
「お、おう。悪ぃ。」
酒屋のおっさんは、ゲンナリしているレ級に、軽く詫びを言う。
「ま!息子は何言っても聞かなくてね…。これからもよろしく頼むよ。」
「頼マレタクナイ!!」
遠い目をした酒屋のおっさんに言われる。レ級は、心底嫌そうな顔で酒屋のおっさんに言う。
「お詫びにサービスだ。ほら、つまみ一袋無料にしとくよ。」
「ウーン…。」
レ級は納得してない顔だが、やれやれと仕方のない顔をして酒やらつまみ類を漁る。
「愛しの女神様、こっちこっち。」
「……。」
店内を見ているレ級が、酒屋の息子に手招きされる。ジト目をして行くのをとても躊躇うが、はぁ…とため息を付いて行く。
「これを。」
「オォ…!」
レ級は、酒屋の息子が勧めた日本酒の1本を手に取る。そして、その銘柄に驚く。
「オォ…。コレハ…。」
それは、レ級の好きな銘柄だった。
「そう、女神様のために特別用意していましたよ。この五島でここでしかないもの。」
「ズット探シテタンダ!…デモ、ドウシテ知ッテルンダ…?」
ふと、レ級が疑問に思い、今までずっとストーキングされていたのではと僅かに恐怖心を抱くが…。
「この前、店に来た時に呟いていたではありませんか。」
「…ソウダッタカ…?」
「愛しの女神様のためなら、このくらい当然!」
「ソウカ…。アリガトナ。」
(マァ、イイヤ…。)
レ級は、そんなことを言ったか覚えておらず、尚且つ流石に酒屋の息子も四六時中ストーキングをするような奴じゃないと思い、その日本酒を持ってレジに行く。
「会計頼ム。」
「あいよ。…こんな銘柄うちに置いてあったか…?まぁいいか。はい、おつまみ一袋無料だよ。」
「アァ。」
レ級は、酒屋のおっさんからおつまみの袋を受け取り、店を出ようとするが…。
「愛しの女神様!またのお越しを!」
「オ前ニハ会イタクナイ。」
レ級は、そんなことを言いながらも店を出た。
「ソレニシテモ…。」
レ級は思う。自分の好きな銘柄を偶然とはいえ知っているとは思いもしなかった。そんなの、1時間後には忘れているだろうと。だが、あの変態っぷりだ。実際はストーキングされてたのかもしれない。
「……。」
(ヤッパリ、聞イトケバ良カッタカ…!)
そんな後悔をしながらも商店街を歩く。何もない平日。陽が沈んで行き、商店街も店が閉まって行く。
「ハァ…ナンダカ疲レタ…。変装モヤメテ帰ロウ…。」
レ級は、変装をやめて元の姿に戻る。そして、商店街を後にする。後ろから視線を感じていた。
(ヤッパリ、ストーキングシテンノカ…?マァイイヤ。コノ先ノ路地裏デ、暴イテヤル。)
レ級はそう思い、曲がり角を何度か曲がる。
「やっぱり、やめとこうぜ…。」
「何言ってんだ。深海棲艦だぞ。倒したら箔が着くだろ?」
「それに、この数だ。囲んで叩けば、なんとかなるだろ。」
「殺しても問題ねぇしな。」
レ級より後方、そんな会話をしながらレ級の後をつける5人の男。未成年っぽく、たまたま五島に遊びに来た口だろう。その時…。
「何してるんだ?」
「「「!」」」
1人の青年が声をかける。手には財布を持っていた。
「俺たちは化け物退治しに行くんだよ。」
「化け物?」
青年は、何を言っているのか分からないように聞き返す。
「深海棲艦だよ。深海棲艦。」
「深海棲艦…?」
青年は、何かを考える。
「いや!彼女達は化け物じゃない。」
「はぁ?何言ってんだ?」
「彼女達は、うちの街の大切な住人達だ!」
青年は、力強く言った。
「彼女達に乱暴するなら、許さない。」
青年の目に宿る光に、レ級の後をつける男達は怯む。そして、この青年が自分達の敵だと認識する。
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
その瞬間、青年は殴られた。
「な、殴ったな!容赦しないぞ!」
「お前ら!やっちまえ!」
1人の掛け声に、レ級の後をつける男達が青年に殴りかかる。青年はやり返すも、数は相手の方が多い。
「この野郎!くたばれ!」
「グワーッ!!」
1人の男が、青年の腹に膝蹴りを食らわせる。青年は腹を抑えながら蹲る。
「オラァ!」
「人類アンチめ!」
「何が大切な住人だ!」
5人がかりで青年に殴る蹴るを繰り返す。
「結局、誰モ来ナイシ。気ノセイダッタカ?」
レ級が路地裏から出てくる。すると…。
ガシャーン!
「?」
大きな物音が商店街方面からしている。この時間帯なら、店は閉まっているはずだ。
(喧嘩カ?強盗?ハァ…見テクルカ。)
レ級は、帰る足を反対方向に向けて、商店街の方へ歩いて行く。
「おら!くたばれ!」
「グワーッ!」
青年に、男達が殴る蹴るを繰り返す。しかし、青年は諦めずに立つ。ボコボコにされ、よろよろになっても。拳を構える。
「彼女達に…手を出すな…!」
「しぶといやつだぜ。」
そんな青年に、1人が蹴りを入れる。
「グワーッ!」
青年が倒れ込み、男達が笑う。そして…。
「もう良いだろ?やっちまおうぜ?」
「それもそうだな…。」
そう言って、男達は鉄パイプやら角材を持ち出す。青年はそれでも、立とうとする。
「これで、終わりだ!」
1人の男がそう言い、男達は青年に襲いかかろうとした…。その時だった。
ガシッ!
「?」
振り下ろそうとした鉄パイプが動かない。男達が後ろを見ると、レ級が片手でそれを掴んで止めていた。
「オマエ達…ナニシテンダ?」
レ級は、男たちを見る。レ級はガチギレの…MK5(マジでキレる5秒前)の顔だ。
「ヒッ!」
レ級は殺さないように加減しながらも倍返しと言わんばかりにボコボコにしていた。青年はそれを見つつ、気を失った。
「オイ、大丈夫カ?」
「はっ!?」
青年…酒屋の息子の目が覚める。そして、周りを見る。
「ここは…?」
「オマエの店ノ前ダ。」
レ級が答える。酒屋の息子が見渡す限りは、男達はいない。そんなことを考えていると、レ級が口を開く。
「オマエガ気ヲ失ッタ後ニ来タンダ。ソイツラハ逃ゲタゾ?」
「…そ、そうですか…。」
酒屋の息子は腫れた顔に手をやる。応急処置を施されていた。
「あの…これを…。」
「?」
レ級が受け取ったのは、自身の財布だ。酒屋の会計後に落としたのだろう。そして、今までの一連の流れを感じ取った。そして、ため息を短く吐いた。
「話ヲ聞ケルカ?」
「え?あ、はい…。」
「ソウカ。」
レ級は無表情だった。
「馬鹿カ?」
「え?」
酒屋の息子は、いきなりのことに目を丸くする。レ級は続ける。
「オレガ、人間相手ニ怪我スルト思ッテルノカ?アンナゴミクズ100人イテモ怪我一ツ負ワナイ。ソレナノニ、無駄ニ怪我シテ、恩ヲ売ルツモリダッタノカ?」
「……。」
「ソレニ、守ッテナンテ頼ンデナイ。勝手ニ目ノ前デ怪我サセル方ガ、オレニトッテ腹ガ立ツ。」
レ級が嫌な顔をする。いつもの顔ではなく、本当に嫌悪を表した顔だ。
「2度ト、コンナコトスルナ。」
「でも…。」
「?」
「好きな人に乱暴するって奴がいて、例え怪我すら負わなかったとしても黙って見ていられないんだよ…。」
「……。」
酒屋の息子は、レ級に言う。
「ハァァ…。オレハ深海棲艦ダゾ?」
「知ってる。」
「人類ノ敵ダゾ?」
「知ってる。」
「戦争シテイタ時ハ、何人モ…。」
「知ってる。」
レ級は、コイツに何を言っても無駄だと感じた。
「結論ヲ言ウ。オ前ノ、今言ッタ 相手トノ恋ヤ愛ハ実ラナイ。応急処置ヲシタノモ、助ケタノモ、酒ノ礼ダ。他意ハナイ。」
「……。」
酒屋の息子は、レ級の言いたいことを何となく理解する。
「それでも、俺は諦めずにやってみるよ。」
「……。ソウカ。好キニシロ。」
酒屋の息子はレ級に差し出された手をとって起きる。
「ハァ…。」
「それで、女神様…今日はありがとうござい…。」
「女神様ヤメロ。」
「レ級様…。」
「様付ケモヤメロ。」
「レ級さん…今日はありがとうございました。」
酒屋の息子が頭を下げる。
「何礼言ッテンダヨ。…紛イナリニモ、助ケヨウトシタンダロ。ナラ礼ヲ言ウノハ、コッチダ。」
レ級は少し前に進む。
「アリガトヨ、馬鹿。」
振り向きざま、少し笑顔をしながら言う。夕陽の太陽も映っていて、とても綺麗で幻想的で…。
「!い、いえ!」
酒屋の息子は突然の笑顔にドキリとしながらも返事をする。
(本当に…綺麗だ…。)
レ級が去り、酒屋の息子はそんなことを思った。いつもの獰猛な笑みではなく、年頃の少女のような、感謝も混じる安心も混じっているような笑顔。レ級は、おそらく、いつもの獰猛な笑みのつもりなのだろう。きっと、夕陽が眩しくてより一層幻想的で綺麗に見えたのだろう。しかし、どんな笑みだったとしても、酒屋の息子にとっては笑ってくれたと言う大切な思い出となったろう。
「デ、アイツ、ボコボコニサレテイタ。」
レ級は支部に戻り、帰ってきた港湾棲姫と話す。北方棲姫たちは既に寝ている、深夜だ。
「オレ達ハ怪我ナンカシナイノニナ。」
「……。フーン。」
港湾棲姫は、含みある笑顔で、レ級の話を聞いていた。
「ソレニ、恋ナンテスルカ?人間デ言ウ、戦車ヤ戦艦ト結婚シタイッテ気持チダゾ?」
レ級は可笑しそうに笑う。
「不思議ナコトデハナイワ。」
「エッ?」
微笑んでる港湾棲姫に言われ、笑い顔のまま固まった。
「ソウイウ人間モイルワヨ。ソレニ、空母棲姫ハ人間ト結婚シテルシ。」
「…ソウイヤ、ソウダナ。」
レ級は空母棲姫のことを思い出す。もはや三児の母だ。
「デモ、ソンナ関係ニハナラナイダロ。」
「サァ、ドウカシラ?」
「?」
「ダッテ、気付イテル?今日ノ話スル時、ズット笑顔デ楽シソウデ、ソノ時バッカリ。」
「ハ…?」
「意外ト、オ似合イカモシレナイワネ。」
港湾棲姫は、話をお開きにしようと、湯呑みたちを片付けにキッチンに行く。しばらく、レ級は1人で何も言わなかった。
「ハァ!?」
『深海棲艦 五島支部』は今日も平和です。
レ級の様子が…?なんて、どうなるかはまだ決まってないです。後日の会話等もありましたが、また別の機会に見れるかもです。
シリアスじゃなくてコメディ…ってコト!?
誰を登場させたいか
-
集積地棲姫
-
戦艦棲姫
-
駆逐棲姫
-
南方棲姫
-
空母棲姫
-
軽巡棲姫
-
重巡棲姫
-
水母棲姫
-
潜水棲姫
-
離島棲姫
-
船渠棲姫
-
護衛棲姫
-
防空棲姫
-
泊地棲姫
-
飛行場姫
-
その他