ハーフタイム、控室に集まっている雷門イレブンの雰囲気は最悪だ。理由はもちろん、御影専農のプレイだ。
「あんなふざけたプレイしやがって……」
勝つためという理屈はあるが、あれはやりすぎだ。いくらルール的に問題がないといえど、中学サッカー協会から厳重注意、最悪失格処分まであり得る。
「荒れてますね」
「じゃあ、あんなの見てなんとも思わないのかよ!」
「はあ、そうは言ってません」
声を荒げる染岡に紅菊は冷静に否定する。よくよく見れば、普段より笑顔が怖いような気がする。
「そこでみなさん、一つお話しがあるのですが」
後半が始まる。御影専農ボールから始まったのだが
「おーっと!御影専農、前半同様にボールを後ろに下げ全員ディフェンス!1点を追う雷門には厳しい展開だ!」
予想通り、攻める気がないらしい。なら
「みんな、守りは任せた!」
「ああ、いってこい」
「あいつらの鼻明かしてやれ!」
紅菊発案その一、キーパーである俺が攻める。本来ならキーパー不在という大きな不利になるが、攻める気がない御影専農相手にはそんなデメリットはなくなる。
「なっ、キーパーが攻めてくるなど……!」
俺の動きが理解できず、御影専農メンバーは足を止める。おかげで容易にボールを奪えた。さらに妨害もなくすぐにゴール前に。
「いくぞ!『グレネードショット』!」
青いエネルギーを纏ったボールを俺は身体を捻って打ち出す。
「くっ、キーパーがシュートするなど不可解だ。だが、シュートしたとき豪炎寺修也のファイアトルネードがチェインされる可能性は94.52%……!」
確かにそうだ。俺の視界にも炎を纏って飛び上がっているのが見える。ただし、
「『ファイアトルネード』!」
「何!?染岡竜吾がファイアトルネードを使うだと!そんなデータは存在しない!」
発案そのニ、染岡のファイアトルネード。
公式戦で雷門が唯一披露していないものだ。なんなら俺も忘れてた。
「『ロケットこぶし』ィィィ!」
想定外の事態により発動が遅れたせいか、杉森はロケットこぶしを発射する暇なく、そのままシュートを殴りつける。
ロケットのような推進力で腕を加速させボールを飛ばした。
「今だ、豪炎寺!」
「何をするつもりだ、円堂」
「このままシュートだ!」
「はあ!?」
「なるようになる。俺を信じろ!」
「ったく、しょうがない。よし!」
落ちてくるボールに合わせて一回転しながら場所を入れ替え、俺は左から豪炎寺は右から同時にボールにキックする。ボールは黄金色のイナズマを纏い発射された。
「この数値は我々の知るデータを遥かに上回っている!あり得ない!あり得るかぁぁぁぁぁぁ!」
杉森は必死の形相でボールを受け止めようとするが、身体ごとボールはゴールネットに刺さった。
「遂に雷門、まさかのキーパー円堂と豪炎寺の連携シュートにより御影専農に追いついたぁぁ!」
「このような展開になるなど、確率的にあり得ない!」
「あり得ないなんてことはない。いつか宇宙人が攻めてくるかもしれないし、未来からサッカーを消しにくるやつもいるかもしれない」
「そんなことはありえない」
あり得ないと思うかもしれないけど本当のことかんだよなぁ。
「そうとは言い切れないだろ。可能性が0でもやってみなきゃわからない」
御影ボールから試合再開。
「くっ、こうなったら、どんな手を使ってでも雷門を潰すんだ!」
杉森たちの頭の電極から流れてきたのはインプットされていないラフプレーの指示。当然反論するが、監督の富岡は何かに怯えているようで叫び散らしながら再度ラフプレーを命じる。
「オフェンスフォーメーション、シルバー1!」
「なっ、命令違反だぞ!」
富岡は杉森の反逆に目を剥く。
一瞬戸惑ったものの、下鶴たちは実行可能な杉森の指示を受理し上がっていく。
「『スーパースキャン』」
「それはディフェンスの技じゃなかったのかよ!」
最適な動きで相手を交わしパスを繋ぎ、一気にゴールまで。土門が止めに入るが、到達するより先にボールは空中へ。
「いくぞ、『パトリオットシュート』!」
「『真熱血パンチ』!」
ボールは弾かれ外へ。御影専農メンバーがコーナーキック。ボールを再び下鶴に。
「これ以上やらせるかよ!『キラースライド』!」
今度は土門のキラースライドが決まりボールを奪う。次は雷門がボールを繋いでゆく。
「『ヒートタックル改』!」
豪炎寺がDFをまとめて抜き染岡へとパス。
「「『ドラゴントルネード改』!」」
「『シュートポケット』!」
前半同様シュートポケットで対抗するが、今度は弾くことすらできずゴールへ。これで逆転だ。
御影専農のキックオフ。それに込められた力はあまりに弱い。ベンチの方を見てみれば監督である富岡が姿を消している。逃げたか
「『真ドラゴンクラッシュ』!」
ボールを取った染岡は呆然としている御影専農メンバーを無視して進んでいき、シュートを放つ。
「入れさせてたまるかっ!」
杉森は、危険度がレッドだと叫ぶ耳障りな電極を引きちぎる。
「『シュートポケットV2』ゥゥゥ!」
シュートポケットが進化した。空気の膜で弱まったボールを杉森ががっしりと掴んだ。
「俺はこの戦い負けたくない!みんなも同じだろう!最後まで戦うんだ!」
杉森の言葉に御影専農メンバーが反応し、頭の電極を外していく。それを見た杉森は持ったボールを豪快に投げた。
ボールを追いかける御影専農の姿は先程までのデータに従ったお手本のようなものではない。むしろ、泥臭い、という言葉が似合う。
次第に試合のボルテージは上がっていく。
「いけ、豪炎寺!」
そんな中、ボールを奪った半田が豪炎寺へとパス。そのまま豪炎寺はシュートの体勢へ。
「『ファイアトルネード』!」
「させるか!」
その瞬間、反対から下鶴と山岸が同時にファイアトルネードをボールに叩きつけた。
結果は互角。3人はそのままグラウンドに叩きつけられる。蹲るなか、上がってくる杉森を目に下鶴はなんとかパスを出す。
杉森はそのまま突き進んでいく。風丸たちがディフェンスにいこうにも御影専農メンバーがマークしている。
「いくぞ、円堂ォォォォ!」
「こい!『ゴッドハンド』!!」
放たれたシュートの威力はキーパーのそれではないほどだ。ジリジリと後ろに下がるが、なんとかゴッドハンドで受け止める。
「キーパー円堂、杉森渾身のシュートをゴッドハンドで防いだぁぁぁ!ここでホイッスル!2-1で雷門、準決勝に駒を進めた!」
なんとか勝てたな。前半、御影専農が追加点を狙ってきていたら負けたかもしれない。
「すまなかった」
杉森と下鶴が試合後、先日の発言について謝りにきた。気にしてない、と伝える。
「それと」
「ん?」
「このチームで戦える最後の試合の相手が君たちでよかった」
「……そうか。そう言ってもらえて嬉しいよ」
俺たち雷門イレブンと違い、御影専農は杉森を含め数名が三年、つまり来年はこのメンバーではないということだ。
「また、いつかサッカーをしよう」
「ああ!」
こうして、御影専農との戦いは終わった。
次の日、サッカー部部室。
そろそろ俺たちの次の対戦相手が決まる。試合が授業と被っていて観戦することができなかった。
確か、次は秋葉めい──
「尾刈斗中に決まりました!」
へ??????
【悲報】秋葉名戸、唯一の出番失われる
はい、というわけで準決は尾刈斗です。よろしくお願いします