「間もなく後半が開始します!雷門中、メガネと栗松を下げて土門と……な、なんと、紅菊が入っています!マネージャーじゃなかったのかぁぁ!!?」
観客を含め誰もが紅菊のフィールド入りを驚いている。かく言う俺もその一人だ。
何しろ紅菊が選手登録してることすら知らなかったし。俺、キャプテンなんだけどなぁ。
雷門キックオフで後半がスタート。ボールを受け取った紅菊、目の前の幽谷を力尽くで押し退けて敵陣に切り込んでいく。
「『フラクタルハウス』!」
「そんなちゃちなもんでオレが止まるかよ!」
紅菊がタックルで壁ごと壊してMF突破。そして、そのままゴール前へ。
「おらよっ!!」
そのままシュートを放つ。その勢いはノーマルシュートとは思えないほどだ。
「『フランケン守タイン』!!うがぁぁぁぁっ!」
不乱が先程同様シュートブロックに入るが、あまりの威力に弾き飛ばされる。
「『真キラーブレード』!!」
ゆがむ空間の影響による不安定な態勢、フランケン守タインによるシュートブロックでの威力の低下、仕上げと言わんばかりに鉈は青い刃をボールを突き立てる。並大抵のシュートは止めれるだろう。なんなら帝国の必殺技すら止めれる可能性があるほどだ。
しかし、圧倒的な暴力には無意味。ボールは勢いを緩めず回転し続け突き立てられた刃を物ともしない。刃はその形を徐々に崩していき、ついにボールは鉈の身体ごとゴールネットに押し込んだ。
「ゴォォォォルッ!!後半が始まってわずか数分!雷門紅菊が必殺技を使わずに1点をもぎ取ったぁぁぁぁ!!!」
マジか……え、マジか、紅菊ってこんなに強かったの……?とりあえず、今度から姐御って呼ぼうかな。
それにしても紅菊ってどっかで見たことある感じなんだよなぁ。ベータが戦国時代で使っていた偽名と同じだけど、
そんな変なことを考えているうちに試合再開。すぐに紅菊がボールを奪い取る。もう彼女一人でいいんじゃないかな?
「『おんりょうV3』!」
おんりょうだけであれば問題はなかっただろう。
「「『おんりょうV2』!」」
「『かげぬい改』!」
「ッ!小賢しい真似を……!」
幽谷に加えて月村、武羅怒によるおんりょうの重ねがけ、さらにダメ押しと言わんばかりの八墓のかげぬい。その全てが進化しており、幽谷に至ってはV3の領域にまで押し上げている。さすがの紅菊もこれには脚を止める。
「嘘だろ……!」
尾刈斗からそんな声が聞こえる。激情に飲まれた彼らから聞いた今日初の人らしい声だ。
「ただの足力だけでこれを破ろうとしてんのかっ!?」
「こんな小細工どうってことはないんだよっ!」
ミチミチと紅菊の足に纏わりつくおんりょうの手が、ぴったりと張り付いている影が音を立てて少しずつ千切れていく。
そして、ついに引きちぎった。
「染岡!」
まさかのパスに染岡は少々驚き動きを止める。てっきり紅菊がまた単独でゴールを決めるかと思っていたのだ。
「ボーっとしてんじゃねぇぞ!」
「お、おう」
紅菊の怒号により現実に引き戻された染岡はドリブルを開始する。尾刈斗DF陣が詰めてくる。一人目を躱し、二人目は半田にパスすることで避ける。さらに三人目を半田のジグザグスパークで突破。そして、ボールは染岡の元へ戻ってくる。
(俺のドラゴンクラッシュじゃゴールすることはできない。やっぱり豪炎寺とのドラゴントルネードじゃねぇと……)
染岡は思案する。何しろ、前半に止められたときと同じ状況なのだ。GKの鉈は既に腕を回しゆがむ空間を発動済み、ゴール前に不乱が立ち塞がっている。
「何ごちゃごちゃ考えてんだ!」
「っ!!」
「この間言ってただろうが!一人でドラゴントルネード撃ってみせるって!見せろ、お前一人のドラゴントルネードを!」
「勝手なこと言いやがって……!そんなに言うなら見せてやるよ!」
円堂にアドバイスされなんとか完成系の予想図はできたものの、練習中一度も成功しなかったあの技。そのため使うつもりはなかった。
だが、ここまで言われてしまっては仕方ない。やるしかない、と染岡は覚悟を決める。
宙返りをしながらボールを前方上空へと飛ばす。染岡も跳躍し空中でボールに追いつき、炎を纏いながら後ろ回し蹴り。
「これが俺の『ドラゴンキャノン』だ!!」
ドラゴントルネードよりも赤く燃え上がった龍が雄叫びを上げながら進んでいく。
「『フランケン……うわぁぁぁ!」
不乱がシュートブロックに入ろうとするが間に合わない。
「『真ゆがむ空間』!」
ゴールに入れさせまいと鉈がボールを力強く掴もうとする。そのあまりの威力、前回の試合でのドラゴントルネードと同じいやそれ以上かもしれない威力に鉈はホッケーマスクの下の顔を歪ませる。
「いっけえぇぇぇ!」
龍が咆哮を上げる。それに合わせシュートの勢いが上がっていき、鉈を吹き飛ばしゴールへと入っていった。
「雷門染岡、新必殺技ドラゴンキャノンで逆転だぁぁぁぁぁ!」
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!」
これで逆転だ。やっぱり染岡はここという場面で決めてくる。エースストライカーは豪炎寺だが、スコアラーという点では染岡だな。
尾刈斗ボールで試合再開。
「『かみかくし』!」
幽谷がマジックの連続使用で染岡たちを抜き、かみかくしを発動。そして、
(どういうことだ……かみかくしはボールが神隠しにあったかのように消え現れた鳥居から紫のエネルギーを伴って放たれるシュート技だ。断じて、キッカーが消える技なんかじゃない)
円堂もこの技を知っている。それゆえに混乱している。
そして、ゴール前に鳥居が現れた。
その鳥居の奥で幽谷と目があった。
「『爆ファントムシュート』!!」
しまった、こいつ無理矢理シュートチェインを成立させやがった。
本来、シュートとシュートチェインを同時に一人で成立させることはできない。なぜなら、ボールにキッカーが追いつけられないからだ。
しかしならば、この方法なら別だ。かみかくしという技の性質上、鳥居からボールが出るまで若干のボールが静止する時間が生まれる。そこを使ったのだろう。
いやまあ、カラクリがわかったところで真似はしないのだが。何しろかみかくしの向こう側なんてどうなっているかどこと繋がっているかわからない完全なブラックボックス。そこにチェインのために入ろうなんて軽々しくできるわけがない。
「『マジン・ザ・ハンド』!!」
そのシュートは重い。幽谷の、いや、尾刈斗の雷門への怒り、勝利への渇望など色々なものを感じる。
「だけど負けてたまるかぁぁぁぁぁ!」
だからといってなんだ。雷門だって負けられない。ここで勝って帝国にも勝って全国にいく、そしてフットボールフロンティア優勝。そのためにも負けられない。
「ゴッドハンドだって二つ出せたんだ、マジンだっていけるはずだ!うおおおおおお!」
「ふ、防いだぁぁぁ!キーパー円堂、二体目のマジンを呼び出しゴールを守りきったぁぁぁ!」
ゴールを守ったが、それは必殺技とは言えないお粗末なもの。その証拠に俺はボールをキャッチできず弾く結果となっている。
弾かれたボールを幽谷が拾おうとするが、先に風丸がなんとか追いつく。幽谷と小競り合いの末、ボールは線の外側へ。スローインが行われるが、
「ここでホイッスル!2対1で雷門の勝利だぁ!!」
試合終了。危ない場面も多々あったが、なんとか勝ちを掴めた。
『マインドコントロールモード』
円堂たち、雷門イレブンが打ち上げにいった後、紅菊は一人尾刈斗中を訪れていた。理由は後始末。
「どこの誰だか知りませんが、本当に厄介なことしてくれちゃって」
どこからか手を加えられたとしても結果は変わらず雷門の決勝進出となった。歴史改変が起こることはなかった。だが、幽谷たちの精神は違う。弄られた彼らをこのままにしておくとどうなるかわからない。恨みのまま円堂たちにリアルファイトを仕掛けてくるならいい方だ。最悪廃人ということすらあり得る。
さすがにそれは避けなければならない。そのため、紅菊、否、
「ベータ、なんとかなりそうか」
「イエス、本来とは違う使い方なので時間はかかりそうですがなんとかなりそうです」
耳に流れてきたトウドウ議長の声にベータはそう返答する。
「ならばよし。そのまま任務を続けてくれ」
「イエス、マスター」
通信が切れると同時にベータは思考を開始する。何を考えているか、それは言うまでもなく、今日の尾刈斗戦、つまり
それに加えて、自身の本来の顔を知っている円堂と風丸のことだ。今使っているマインドコントロールモードで認識を逸らすことで彼らとの活動を共にすることができている。しかしながら、今回の試合で怪しみだしたはずだ。少なくとも、円堂はあれ?という顔をしていた。
マインドコントロールのかけ直しをしなくてはならないが化身使いには利きにくい。いくら化身そのものを今使うことができないとしても、化身の前段階とも言えるマジンを操っている時点で他より効果は低い。
困ったことになった、とベータはため息をついた。
いいところで切ろう思ってたらいつのまにかいつもの1.8倍ぐらいになっててびっくりした
・紅菊が試合に出れる条件
①別の時間軸から影響を受けている
②歴史の転換期である
③過去に大きな影響を与えない(化身を使うなど)
こんな感じです