憑依円堂列伝〜TS娘と時々未来人〜   作:花蕾

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前書きが思いつかなかったので初投稿です


スパイとスパイ

「これでよし。これで私の首も繋がる……!」

 

 雷門中サッカー部顧問である冬海卓は朝早くから車庫で作業をしていた。何故彼が作業しているのか。それは快進撃を続けているのを見て心を入れ替えて、というわけではない。

 

「先生!」

 

「ふぅ、君ですか。驚かさないでください」

 

 聞こえてきた声の方を向けばそこにいたのは部員の土門飛鳥。冬海と同じ帝国からのスパイである。

 

「こんなところで何をしていたんですか?」

 

 土門は嫌な予感がしていた。冬海の表情から見るに碌なことじゃないの確実、だが同時に帝国が鬼道たちがそんなことをするはずがないと相反した感情が渦巻いていた。

 

「さあ……ああ、一つだけ忠告しておきます。このバスには乗らない方がいいですよ」

 

 土門は表情を歪ませる。

 

()()()()()()()()、そこまで言うということはバスに乗れば何か大変なことになるのだろう。冬海が去った後、土門はそれが何かを知るためにバスを確認する。帝国に通っていた彼にとってバスの点検は容易い作業、なんなら爆弾の解除すらできるほどだ。帝国学園は何を教えているのだろうか。

 

(ッ!ブレーキオイル……!)

 

 そこまでの高等技術を使うことなくあっさりとわかった。ブレーキオイルが全て抜かれていたのだ。

 

「これも総帥の命令か……!俺は一体どうすれば……」

 

 これを誰が命令したか、それはすぐに予想がつく。帝国学園の総帥、影山零治だ。

 自分はどうすればいいか何をすべきか、土門には選択が迫られていた。

 

 

 

 

 

 

「円堂くん、ちょっと良いかしら」

 

 練習に行こうと教室から出てきた俺を待ち構えていたの夏未だった。

 

「サッカー部に関わる大事な話があるわ。理事長室まで来てちょうだい」

 

「わかった。風丸、半田、さっき行っといてくれ」

 

 夏未の後を追って理事長室までいく。着いた瞬間、差し出されたのは一枚の紙。その内容は冬海先生がバス細工を行ったということだ。

 

「これをどうするつもりだ?」

 

「もちろん確かめるつもりよ」

 

 まあそうなるだろうな。というかそれしか道がない。これが本当だったら大事だ。確かめて大丈夫だったらそれでよし、まあ十中八九ダメだろうが。

 

 そういうわけでやってきたのはグランド。

 夏未が珍しくいた冬海に声をかけた。

 

「遠征のバスの状態確認をしたいので動かしていただけませんか?」

 

「バ、バスをですか!?」

 

 なんとも煮え切らない様子。

 それに耐えかねた夏未が一喝。冬海は身体を縮こまらせてバスの方に向かっていく。

 部員たちも二人に着いていく。

 

「ただ発進させて止まるだけの話です。早くエンジンをかけてください」

 

 バッテリーが上がっているなどと言って冬海はバスを動かさない。問答を繰り返すが、冬海はできないと繰り返す。

 

「ここに手紙があります。これから起きようとしたであろう恐ろしい犯罪を告発する内容です。冬海先生、バスを動かせないのは貴方がバスに細工したからではありませんか、この手紙にあるように」

 

 夏未はそう言って手紙を取り出した。

 

「フフフ、ハハハ。そうですよ。私がブレーキオイルを抜いたんですよ」

 

 そう言って笑いながらバスから降りてくる。追い詰められているというのにその表情は清々しい。

 

「あなた方をフットボールフロンティア地区予選の決勝戦に参加させない為です。そうなると困る人がいるんですよ」

 

「……帝国の学園長か」

 

 豪炎寺の呟きにビクリと冬海が反応する。

 

「帝国の為なら人の命がどうなってもいいと思っているのか!」

 

「君たちは知らないんだ!あの方がどんなに恐ろしいかを」

 

「ああ!知りたくもない!」

 

 豪炎寺は去年の夕香ちゃんのことを思い出したのか声を荒げる。

 

「貴方のような教師はこの学校から去りなさい!この言葉は理事長の言葉として思ってもらって結構です!」

 

「クビですか。いい加減こんな所で教師をやっているのも飽きてきた所です……しかし、雷門中に入り込んだ帝国のスパイが私だけとは思わないことですね。ねぇ、土門君」

 

 夏未からのクビ通告に冬海は開き直ったかのようにそう言い立ち去った。とはいえ、最後の最後で爆弾落としていきやがった。

 一斉に部員たちが土門に猜疑の目を向ける。

 

「……冬海の言う通りだよ、みんなすまねぇ」

 

「土門くん!」

 

 そのまま土門は止める暇もなく走り去っていく。その後を秋が追いかけていく。それなら土門本人の方は秋に任せよう。俺がいくより昔馴染みの秋の方が説得しやすいはず。となれば、俺がしなければならないことはみんなへの説明だ。

 

「みんなこれを見てくれ!」

 

「これはさっきの手紙?」

 

「これがどうしたんだ?」

 

「見覚えがないか、この字」

 

 俺が広げた手紙をみんなが覗きこむ。

 

「これは土門さんの字……?」

 

 ようやく気づいたようだ。土門の字は他と違ってやや特徴的だ。じっと見れば誰が書いたかはわかる。

 

「でもどうして?」

 

「土門はスパイだったんだろ!」

 

「でも助けてくれたのは、あのバスの細工を知らせてくれたのは土門だろ」

 

 栗松たちは言葉を詰まらせる。たしかに土門はスパイだった、それは土門自身が認めたことだ。疑いようがない真実だ。それゆえ信じられない、だが助けてくれたことを思うと揺らいでくる。

 

「だったら信じようぜ土門を。同じチームでサッカーをした仲じゃないか」

 

 そう言うとちらほらとそうだなという意見が上がる。これなら大丈夫そうだな。

 

 この後、秋に連れ戻された土門から直接な謝罪を受けこの件は丸く収まった。

 よしこれで帝国学園戦に向けて練習、とはならない。

 

「出場校は必ず顧問及び監督、コーチが居ることが項目に記されているのですが」

 

「それがどうしたんだよ」

 

「それなら冬海先生が……あ」

 

 それはさっき追い出したんだよなぁ。

 

「夏未さんは知ってたんすか……?

 

「も、もちろんよ!だから、貴方達は早急に新しい監督を探してきなさい!」

 

 夏未が顔を赤くしてそう答える。他の教師に頼むという案が上がったが、冬海先生という前例がある以上同じことになりかねない。紅菊にしてもらうという意見もあったが、等の本人が選手登録しているためできない。というわけでみんなで新監督を探すことになった。




なお冬海先生は1年後とある中学で校長を務める模様
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