後半は帝国のキックオフから開始される。鬼道が豪炎寺と染岡を佐久間とのワンツーで躱す。
「『クイックドロ──あれ、ボールは!?」
「半田、上だ!」
半田がクイックドロウで奪おうとするが、既にそこにボールはない。鬼道がヒールリフトでボールを浮かせていたからだ。
「抜かせないっス!」
「ふっ、だが抜かせてもらおう!『イリュージョンボール改』」
壁山が巨体を活かして止めようとするが、鬼道のイリュージョンボールに惑わされ突破を許してしまう。
そのまま鬼道は佐久間たちが上がってくるのを待たずにシュートモーションへと入る。ボールを上げ鬼道自身も飛び上がる。そして、慣れた口笛を吹きペンギンを呼び出す。地中から現れたペンギンたちはドリルのように回転しながら空中のボールを啄む。
「『オーバーヘッドペンギン』!」
最後に鬼道が下からオーバーヘッドキックする。青紫エネルギーに包まれながらペンギンを伴ってボールはゴール目掛けて突き進んでいく。
「『スピニングフェンス』!!」
「『ザ・ウォール』!うりゃぁぁぁぁ!」
風丸と壁山がシュートブロックに入るが、ボールが止まる気配はない。二人を吹き飛ばしボールはゴールへと進んでいく。
「『マジン・ザ・ハンド』!」
ボールは俺の手のひらに収まる。思っていた以上の威力だ。二人のシュートブロックがなかったら止められなかったかもしれない。
「みんな、反撃だ!」
俺が蹴ったボールは放物線を描き、上がっていたマックスにまで届く。受け取ったマックスは辺見のスライディングをジャンプで避け少林にパス。
「『竜巻旋風』!」
少林はボールを股で挟み身体を捻り回転させながら地面に落とすことで砂埃を発生させる。それにより帝国DF陣は近づけない。
「染岡さん!」
帝国DFと距離を十分取れたことを確認すると少林は染岡にパス。少林の竜巻旋風のおかげでゴール前は開けている。
「これでどうだ!『真ドラゴンクラッシュ』!」
「どんなシュートだろうと無駄だ、パワーシールドの前には無意味!」
パワーシールドとドラゴンクラッシュがぶつかり合う。しかしながら、誰の目から見てもパワーシールドが破れそうにない。それはこのまま何もしなければの話だが。
「パワーシールドは衝撃波で出来た壁!弱点は薄さだ!遠くから飛んできたものは跳ね返せても至近距離から押し込めば!」
豪炎寺だ。パワーシールドの弱点を前半の内に理解していた彼はパワーシールドと拮抗しているボールに向かってシュートチェインを行う。
「ぶち抜ける!『ドラゴントルネード改』!!」
徐々にビビが入っていき、ついにパワーシールドが砕けた。
「ゴール!雷門、源田のパワーシールドを破りついに同点に追いついた!」
「あと、もう一点取って勝つぞ!」
帝国ボールで試合が再開。
豪炎寺たちがスライディングなどで奪いにかかるが、流石は帝国。最小限の動きで躱していく。
「いくぞ、円堂!これが俺たちの全力だ!」
「『分身デスゾーン』!」
「『オーバーヘッドペンギン』!」
「『皇帝ペンギン──
「「──二号』!」」
洞面が放ったボールを鬼道がオーバーヘッドキックで地面に落とす。そして、そこに位置していた佐久間が前へと出し寺門と咲山がさらに押し出す。
前半のデスゾーンに皇帝ペンギン二号のチェインでもやばかったのに、さらにチェインを重ねてきたか!俺はそのシュートの脅威に唾をごくりと飲み込む。
「みんな、少しでもシュートの威力を弱めるぞ!」
ここで動いたのは雷門DF陣。風丸が指示を出し各々が技を発動させる。
「『スピニングカット』!」
「『ザ・ウォール改』!」
「『スピニングフェンス』!」
しかもそれは単独ではない。
栗松の足から発せられた青い衝撃波が壁山のザ・ウォールに纏われより強固な壁となる。しかし、それすら死を纏ったペンギンは粉砕する。
次に現れたのは竜巻。しかも先程粉砕された岩の破片が竜巻中で舞っておりその凶暴性は非常に高くなっている。流石にこれには応えたのか何羽かのペンギンが地へと堕ちる。
「サンキュー、みんな!!絶対に止めてみせる!ハァァッ!」
身体中の気を両手に集め、さらにそれを増幅させる。そして、気が解放された瞬間現れたのは二体のマジン。
「『風神・雷神』!!デリャァァァァァッ!」
二体のマジンがペンギンたちを抑えんと腕を突き出す。
ペンギンが一羽、一羽とその姿を消していく。
「……ぐ、うわぁっ!」
最後の一羽がいなくなると同時に二体のマジンが崩れていく。されど、ボールは必殺技としての威力はなくなっても前への推進力は残っていた。だれもがボールがゴールネットを揺らす、そう思っていた。
「俺だって、俺だってぇぇ!ウオオオオオオ!!」
そこにいたのは土門。必死にゴールは割らせまいとボールへ足をぶつける。歯を食いしばり渾身の力を込める。その結果、その右足は振り切られた。
「なん、だと」
「ボールを繋げ!」
「『ローリングキック』!」
半田が空中に舞ったボールに必殺シュートを行うが、ゴールとの距離は遠い。ロングシュートを視野に入れられた必殺技ではないローリングキックはゴールに辿り着くまでもなく失墜していく。しかし、それでいいのだ。なぜならこれはシュートではなくパスなのだから。
「ピンポイント!」
ボールはぴったりマックスの足元へ。そのままマックスは上がっていく。帝国DF陣がボールに奪いにかかる。
「なっ」
「へへ、さっきお手本は見たからね」
驚くのも無理がない。マックスがやったのは鬼道が行ったヒールリフトを用いた突破法。並外れた器用さを持つ彼は、その技術を一度見ただけ習得したのだ。最後の仕上げと染岡にボールを渡す。
「これで逆転だ!『ドラゴン──」
「──トルネード』!」
「もう同じ手は食らわん!『フルパワーシールド』!」
染岡、豪炎寺は先程同様の手段でゴールを割ろうとするが、キーパーの王者はそれを許さない。展開された衝撃波の壁はパワーシールドより分厚くさらに広範囲となっている。流石の豪炎寺もこれを押し込むことはできない。
「くそ!」
「まだだ、まだボールは生きている!」
フルパワーシールドにシュートは弾かれてしまった。だが、ボールはまだ白線を超えていない。
豪炎寺が万丈とボールの競り合いを制したことで雷門は再びシュートチャンス。
「染岡、やるぞ!」
「おう!」
その技の着想を得たのは御影専農戦だった。試合終了のホイッスルが鳴るギリギリでファイアトルネードを打ち合う自身と御影専農のFWたち。そこに豪炎寺はファイアトルネードの新たな可能性を見た。
「「『ファイアトルネード
豪炎寺と染岡が息を合わせ同じタイミングで左右から炎を纏った足を振り抜く。
「『フルパワーシールド』!!」
その業火のシュートは障壁すら燃やし尽くす。衝撃波を軽々と破ったそのボールは源田を吹き飛ばしていく。
「負けてたまるかッ!」
前線から戻ってきていた鬼道が最後の壁として立ち塞がる。ダークトルネードを発動しシュートを止めようとするが、このシュートはそれでは止まらない。鬼道は身体ごと弾かれ、ボールはネットを揺らす。
そして、鳴らされる二つのホイッスル。一つは得点を告げるホイッスル。もう一つは──
「か、勝った……?」
──試合の終わりを告げるホイッスルだ。そして、それは雷門の勝利、俺たちが全国大会への切符を手にしたことを意味していた。
これで帝国戦はタイトル通り終わりです。
帝国のシュートチェインの補足
正確には、分身デスゾーンにオーバーヘッドペンギンとツインブーストと皇帝ペンギン二号をチェインしたもの。
オーバーヘッドペンギンで地面に落とし皇帝ペンギン二号で前へと打ち出す、という動きがツインブーストの応用となっています