日曜日、俺たちは河川敷に来ていた。目的は勿論練習だが、今回は少し違う。なんと、響木監督が伝説のイナズマイレブンに招集をかけてくれたのだ。伝説の面々との練習だ、当然大変身になる練習になると思っていた。
「おいおい」
イナズマイレブンの面々は40年間のブランクがあり、さらにサッカーに対するモチベーションもない。その状況で試合をすればどうなるかはすぐわかる。
連携のれの文字すらないグダグダなプレイ、さらには悪態を吐き捨てていく。こうなることを知っていた俺でも気分が悪い。
「なんだ、お前たち!」
さすがに見かねた響木監督が声を上げる。
「俺たちは伝説のイナズマイレブンなんだ!そしてここに!その伝説を夢に描いた子供たちがいる!」
響木監督の声にイナズマイレブンの面々は顔を上げていく。
「俺たちにはその思いを背負う責任があるんだ!その思いに応えてやろうじゃないか!本当のイナズマイレブンとして!」
「本当の、イナズマイレブン……!」
イナズマイレブンDFの浮島は昔を思い出す。馬鹿みたいに仲間たちとサッカーボールに向かって走り泣き笑い様々なことがあった日々。ああ、そうだ、俺たちはこんなもんじゃない。
「そうだ、俺達は無敵の、イナズマイレブン!」
高らかにそう叫ぶ。先程までの情けないやつらはもういない、ここにいるのは、
「証明しようぜ、伝説は真実だと!!」
──伝説そのものだ。
ボールを持ち上がっていく宍戸に対して、中間さんが圧力をかけるように動く。そこで宍戸はサイドから上がってきた少林にパスを回そうとするが、
「しまった!」
菅田さんがそこをしっかりカット。そして、そのままFWの民山さんにパス。
「『クロスドライブ』!」
「『真熱血パンチ』!」
ボールを受け取った民山さんはそのままゴールを狙う。それを俺が弾く。
「民山、いくぞ!」
「おう!」
「「『イナズマ落とし』!!」」
弾かれたボールは備流田さんの元へ。即座に民山さんと連携し上空からゴール目掛けてシュートを行う。
「っくそ!『真爆裂パンチ』!うがっ!」
貫くような稲妻に目を細めつつもなんとか止めようと動くが得点を許してしまう。
こちらのキックオフで再開。染岡が勢いよく切り込んでいきゴール前まで進んでいく。
「『ドラゴントルネード』!」
「ふっ、見せてやろう。これが元祖ゴッドハンドだ」
豪炎寺との連携シュートで同点、とはならなかった。響木監督がゴッドハンドを使い、ドラゴントルネードを止めたのだ。
「さあ、浮島、見せてやれぃ!」
響木監督がボールを大振りで投げる。その先にいたのは浮島さんと備流田さん。
「備流田ァァァァ!」
「おう!」
二人は挟むようにキックすることでボールにスピンをかけながら上げる。そして、そのボールに向かって備流田さんは上から、浮島さんは下からオーバーヘッドキックを同時に行う。
「「『炎の風見鶏』!!」」
ボールからは二対の炎の翼が現れゴールへと羽ばたいていく。俺はゴッドハンドで対抗するが、容易く破られてしまう。40年ものブランクがあり身体の衰えもあるというのに、この威力。全盛期がどれほどの威力だったか、想像するだけでも恐ろしい。
「浮島、もう一度見せてやるか!」
「おう!」
「「『炎の風見鶏』!」」
試合が再開し一進一退の攻防を繰り返していたが、ここでイナズマイレブンにシュートチャンスが訪れた。そして、先程同様に炎の風見鶏を使用し追加点を奪いにきた。
「止めてみせる!『マジン・ザ・ハンド』!」
今度は俺の手の平にボールは収まった。
「なっ、あれは円堂監督だけが使えたキーパー技……!」
「マジン・ザ・ハンド……!」
俺がマジン・ザ・ハンドを使ったことに驚くイナズマイレブンOB。それもそのはず、マジン・ザ・ハンドはイナズマイレブンの監督であった円堂大介だけが唯一使え、イナズマイレブンの正キーパーである響木監督ですらマスターできなかった技だ。円堂大介の孫だからと言ってこの技が使えるなんて想像できるはずがない。
試合が終わった。なんとかギリギリで1点を返せたものの届かず2-1で俺たちの負けとなった。
その後、OBの方々と色々な話をした後、せっかくお手本もあることだし何かイナズマイレブンの技を習得することになった。
まあ、当然イナズマイレブンの秘伝書に書かれてるのは、イナズマ落とし、イナズマ一号、炎の風見鶏だけではない。俺の知らない技がいくつもあったし、今回はそれを実際に見せてもらえた。そのため、何を教えてもらうか、ということはすごく悩んだ。
そして、話し合いの結果、技の威力が最も高かったことが決め手となり、炎の風見鶏になった。
挑戦するのは、風丸と豪炎寺。実際にプレイを見たOB達からの推薦による人選だ。
「うおっ」
「くそっ」
何度か試しにやってみるが、上手くいかない。OBのアドバイスをもらいながら調整を行なっていくが、それでも完成が見えてこない。
「じゃあ、お願いします!」
「よし、小僧どもしっかり見とけよ」
技の完成系を落ち着いて見たら何か掴めないか、そう思いもう一回お手本を見せてもらう。
「そうか!この技の鍵は二人の距離だよ!」
それを見て、気づいたのはベンチにいた影野。問題点を理解し豪炎寺と風丸に説明する。影野からの説明で得心がいき、なるほどという声を漏らす。
それを踏まえて再度挑戦する。
「『炎の風見鶏』!」
「見事……!」
そして、ついに炎の翼がゴールに突き刺さったのだった。
【?????】
「これが、これこそが神の力だ!」
そう言って放たれた赤いエネルギーを伴ったシュートは少女の腹に突き刺さる。少女は口から逆流した胃酸を吐き出すもなんとかその場で踏ん張る。威力を失ったボールは地面に落ち、コロコロと転がりながら戻っていく。
「もう分かっただろう、この圧倒的な力。そして、俺たちはそれに選ばれた。それなのに何故この力を受け入れられない?」
「君たちこそ、なぜ理解できない……?そんな紛い物の力に価値なんて……ない!」
「まだそんな世迷言を!『リフレクトバスター』!」
尚も否定する少女に向かって再度シュートを放つ。今度は耐えきれず少女の身体は吹き飛ばされ地面に叩き落とされる。それでも彼女は立ち上がる。彼女はメンバーの間違いを止めなくてはない。それがキャプテンである彼女のやらなくてはならないことなのだから。
「──もういい」
響き渡る低い声。それと同時にグラウンドにいたものたちは動きを止める。
「彼女は何をしても受け入れられないそうだ。ならば、彼女は諸君らのキャプテン、ましてやチームメイトではない。敵だ、神の力を得た諸君らの反逆者だ。そんな彼女に何をしてあげるべきか、聡い君たちなら言わずとも分かるだろう」
グラウンドにいる少年たちは即座にその言葉の意味を理解した。もはや加減はいらない。ニヤリと獰猛な笑みを浮かべ、彼らは与えられた絶大な力を外敵を叩きのめすため行使する。
(約束は守れそうにないな……すまない、円堂くん)
数々の必殺技によって引き起こされた災害と見間違う景色を視界に捉えながら、少女、アフロディの頭に最後に浮かんだのは、果たせなくなった少年との約束、それに対しての謝罪だった。
円堂大介のノートって実際どんだけの必殺技書かれてんでしょうね。あのページ数から考えると、登場してる数以上はありそうなんだよなぁ。
余談
憑依円堂くんは忘れないうちにノートに必殺技、化身についてまとめていたりします。未来ではそれが残ってたりします