憑依円堂列伝〜TS娘と時々未来人〜   作:花蕾

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祝福と部室

「「『炎の風見鶏』!」」

 

「『真ドラゴンクラッシュ』!」

 

 二つのシュートがゴールへと向かっていく。その両方が強烈な必殺技だ。全国を見てもこれを止められるキーパーは限られるだろう。

 

「『風神・雷神』!」

 

 しかし、それを覆すように二体の巨人が手を突き出し両方とも止める。

 今やっているのは、炎の風見鶏、ついでにドラゴンクラッシュと風神・雷神の反復練習だ。必殺技とは覚えれば終わりではない。むしろ、始まりと言っても過言はない。何度も繰り返し身体に馴染ませ進化させていかなければならない。

 そういえば、風神・雷神が進化すればどうなるのだろうか。ゴッドハンドや熱血パンチのように真系進化になるか、それとも皇帝ペンギン2号などのV進化、はたまたG進化になるのか、予想がつかないな。

 

「よし、もう一本」

 

 響木監督の言葉に続いて、炎の風見鶏とドラゴンクラッシュが再度放たれる。それをまた風神・雷神で受け止める。

 うん、やはり炎の風見鶏は威力が上がってきている。正面から確認していた影野の目から見ても完璧だと言う。もしかすれば、フットボールフロンティア本戦が始まる前に進化するのは不可能じゃないかもしれない。

 

「あの車は……」

 

「まあ……」

 

 みんなの目がある一点を向く。それに釣られて俺もそちらを見れば一台の高級車がそこにはあった。車の中からイナズマイレブンの一員であり雷門家の執事である場寅さんが出ていき、後部座席のドアをゆっくりと開ける。そこから現れたのは理事長だ。夏未の実父であり超多忙人。雷門中理事長だけでなく、中学サッカー協会の会長にフットボールフロンティア大会実行委員長までも勤めている。その忙しっぷりは、中学生であるはずの夏未が理事長代理として働かなくてはならないほど。

 

「諸君、全国大会出場おめでとう!」

 

 理事長からの祝いの言葉に俺たちはありがとうございます、と返す。そして、次に響木さんが監督に就任したことに驚いたということが伝えられる。理事長さんは年齢的にイナズマイレブンの実際の活躍を目にしていたのだろう。その分、イナズマイレブンの一員であった響木さんの監督就任は俺たちより感慨深いはずだ。

 

「お父様、練習を再開したいのですけど…………」

 

「いや、用事はもう一つあるんだ」

 

 もう一つの用事とは部室のことだった。どうやら、夏未から部室が相当古いということを聞いていたそうだ。それもそのはず、この部室はイナズマイレブンが使っていたもの、つまり築40年物件だ。年季ものにも程がある。

 

「ほら、こんな落書きも残っている」

 

 部室の中に入り響木監督が道具を退かし隠れていた壁に指を指す。そこには掠れてはいるが、しっかりと落書きが残っている。

 俺と風丸と秋は1年の最初にこの部室を大掃除をしたこと際にこの落書きを目にしているためそこまで驚きはないが、他の皆は気づかなかったと声を漏らしている。

 

「ところで、これから部員が増えてくることも考えればこの部室は狭いのではないかね?」

 

 実際その通りである。今の人数でも正直言ってギリギリだ。来年になったら部室から溢れること間違いなしだろう。何しろ、フットボールフロンティア本戦出場校であり40年間無敗だった帝国に黒星をつけた学校だ。どんな結果でも来年サッカー部目当てで雷門中に入学する生徒の数は予想もつかないほどの数になるはずだ。

 

「そこで新しい部室を用意したいと思っているのだがどうかね? サッカー部復活のお祝いと、全国大会出場のお祝いと思ってくれたまえ」

 

「……いえ、このままで結構です」

 

 理事長の提案について少し考えた後、俺はそう伝えた。

 この部室は俺たちが1年の頃からあり、練習試合すらできずやるせない気持ちを抱いていたときも予選を勝ち上がり歓声を上げていたときも常に雷門中サッカー部と共にあった。愛着が湧くのは自然なことだと思う。だから、せめてフットボールフロンティアの優勝トロフィーを飾るまではこの部室でいたい。

 俺がその旨を理事長さんに伝えると、聞いていた他のメンバーも納得してくれた。夏未はまだここ使うの、という顔であったが。

 

「そうか、それならいいんだ。話は以上だ! 練習頑張ってくれたまえ!!」

 

 理事長さんも良い答えを聞けたと思ったのか、俺たちが提案を拒否したのにも関わらず笑みを深くし激励の言葉をまた送ってくれた。

 練習再開だ、と部室からでていく。宍戸を先頭に学年順だ。別にそう並んだわけではないが、自然とそうなった。

 グランドに向かうまでの間、渡り廊下や教室からサッカー部への応援の声が浴びせられる。尾刈斗戦のときよりも声が多い。頑張った甲斐をより感じる。

 

「よーし、みんなフットボールフロンティアに向けてとことん練習するぞ!」

 

「「「「おう!!」」」

 

 

 

 

 新部室を拒否した件だが、みんなには言われなかったが理由はまだある。雷門家には既にサッカー部に多額の支援をしてもらっているからである。イナビカリ修練場のリフォームのことだ。あれ、最近になって夏未に領収書見せてもらったが、心臓止まるかと思ったぞ。




雷門家、マジで廃スペックな人しかいないのほんとすごい。どうやったらこうなるのか知りたい……
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