いつも通り雷門サッカー部が練習している最中、夏未の携帯電話の着信音がグランドに鳴り響く。一体誰よ、と思いながら夏未は携帯電話を取り出す。電子画面に表示されていた相手はバトラー。彼から連絡など珍しい、と目を丸くしながら、通話ボタンを押す。
「えっ、お父様が……!」
携帯電話から伝えられたのは夏未にとって最悪とも言えるものだった。
覚束ない手つきで携帯の通話終了ボタンを押す。なんとか身体の震えを抑えようとするが儘ならない。
──理事長が病院に搬送された。
その報せがきたのは、理事長が俺たちを祝福してくれた日の次の日のことだった。
「バトラー、お父様は!?」
俺、夏未、秋は報せを受けてすぐに病院へと向かった。場虎さんによるとフットボールフロンティアスタジアムの下見の帰りに事故に遭い、同乗していた関係者全員が傷を負った。その中でも特に怪我が酷かったのは理事長だった。
「夏未さん……」
「……大丈夫、大丈夫よ」
大丈夫大丈夫、と繰り返し言う夏未だが、言葉とは裏腹にその姿はとても弱々しい。普段は理事長代理として堂々とし大人びた雰囲気の彼女だが、まだ中学生。そう簡単に立ち直れるものではない。
「夏未、今はお父さんについててやれよ」
「お父さんが目が覚めた時、一番最初に夏未さんの顔を見せてあげて」
俺と秋がそう言うと、小さくわかったわ、と返事がくる。
秋と場虎さんに夏未を任せて待ち合い室から出る。するとそこには見知った顔があった。
「鬼瓦さん」
「よう、坊主」
鬼瓦刑事だ。彼も理事長の事故を知り病院に訪れていたそうだ。
「お前はこの件をどう見る?」
「……明らかに出来過ぎています。大会関係者の下見の帰りの事故、全員が傷を負い、その中でも
「ああ、俺だってそう思う。だが、今のやつに手は──」
「出せない」
「そうだ。今、そう易々とやつは動くことはできない」
そういう考えか。だが、それはどうなのだろうか。長年、帝国の総帥をし中学サッカー界の頂点に立っていた影山。一度の逮捕で影山の地盤は崩れるだろうか。いや、ありえない。権力とはそう簡単なものではない。
鬼瓦さんにその考えを伝えると苦い顔をしながら考え出す。そして、何かわかったら連絡すると言って去っていく。
俺も別れの言葉を告げ雷門中に戻るべく足を動かす。話せるだけのことは話した。鬼瓦さんがなるべく早く影山の尻尾をつかむことを願うばかりだ。
「全国中学サッカーファンの皆様!遂にこの日を迎えました!今ここ、激闘の殿堂フットボールフロンティアスタジアムはかつてない激闘の予感に、早くも興奮の渦と化しています!フットボールフロンティア、今開幕!」
全国大会開会式。実況席に座るのは、普段雷門の試合を実況してくれる将棋部の角間の父親であり、知っているスポーツ実況者を聞かれたら間違いなく名前が上がるアナウンサー、角間王将。
「各地域より激戦を勝ち抜いてきた強豪チームが今日より日本一をかけてさらなる激闘に臨みます!一番強いチームはどのイレブンなのか!?今から紹介しましょう!」
そして、次々と呼ばれる各地区代表。名の知れた強豪ばかりだ。
「──続いて関東ブロック代表、雷門中学!」
「さぁお前たち、行ってこい!」
雷門中の名が呼ばれ、俺と豪炎寺を先頭に二列でスタジアムに入場する。
「雷門中学は、地区予選大会においてあの帝国学園を下した恐るべきチーム!伝説のイナズマイレブン再びと、注目が集まっています!」
一気に歓声が上がる。帝国を倒したという実績に加え、今でもそこそこ有名なイナズマイレブンの再来ともなれば納得できるが、これだけ大きな歓声となると少しこそばゆい。
「更に、昨年度優勝校の帝国学園が特別出場枠にて参戦!関東ブロックの地区予選決勝において雷門中と激闘を繰り広げながらも惜敗した超名門中学!特別枠にて王者復活を狙います!」
雷門中の次に現れたのは鬼道率いる帝国学園。威風堂々たる面付きで行進し俺たちの隣に並ぶ。
前を向きつつ鬼道と二三言、言葉を交わす。そうこうしているうちにほとんどの出場校が出揃った。
「そして残る最後の一校、推薦招待校として、世宇子中学の参戦が承認されております!」
推薦招待校という初めて聞いた枠に加えて、完璧に無名な学校の名前に誰もが困惑する。全員が世宇子中メンバーの姿を見ようとゲートへと目を向ける。しかし、そこからでてきたのは、プラカードを掲げ羞恥で顔を赤くした先導の女性職員のみ。
「えー、世宇子中学は調整中につき本日開会式には欠場とのことです」
わかっていたことだが、やはり開会式には出てこないか。ここで出てこないメリットなんてほとんどないが、同時にデメリットもない。とはいえ、一年振りにアフロディと会っておきたかったんだけどな。あの頃から彼女は変わってしまったかどうか、それを知っておきたかった。
「以上の強豪達によって、中学サッカーの日本一が決められるのです!」
あるものは優勝を、あるものは王者復活を、あるものはサッカーへの憎しみを、それぞれが千差万別の想いを胸に、全国大会の幕が上がった。
「いつでも出撃できるよう、オーガの調整をしておけ」
「ハッ!」
そして、全てを喰らい尽くす鬼もまた時空の先で静かに牙を研いでいた。
最近、オリ技使った方が試合のテンポ良くなるときもあるかも(帝国の皇帝ペンギン2号と分身デスゾーン、ツインブースト、オーバーヘッドペンギンのシュートチェインのときとか)と思ってたりする。だけど、扱い雑になりそうだからしたくないというジレンマ