憑依円堂列伝〜TS娘と時々未来人〜   作:花蕾

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弊害

「帝国が負けた……ああ、嘘じゃない……すまん、かけ直す、まだ俺も頭の整理が追いついてないんだ……ああ、またな」

 

 電話を切りその場に座り込む。はあ、と溜息が漏れる。

 嫌になってくる。分かっていたことだ、理事長の事故だってあの帝国の惨状だって。ああ、わかっているとも、ただの中学生である俺がどうこうできるものじゃない。覚悟もしていたはずだ。それでも、やはり心にくるな。

 しばらく座ったままで時が経ち、ある程度心の整理が着いたところでもう一度溜息を吐き立ち上がる。

 

「円堂、来ていたのか……」

 

「鬼道……」

 

 スタジアムから出たところで、同じタイミングで鬼道も別の出口から出てくる。鬼道の表情は暗い。そのまま、俺は鬼道と道を無言で歩く。その状況が数十分続いた後、鬼道は口を開いた。

 

「40年間無敗の帝国学園。俺達はその伝説を終わらせたんだ。ただ勝つことだけは考えてきた……それなのに、ボールに触れる前に試合が終わっていたんだ」

 

 先程の試合の光景を思い出す。倒れていく佐久間たち、それをちょうど見る形でグランドに入ってきた鬼道。仲間が倒れていくところを見るしかできなかったんだ、その絶望は計り知れない。

 

「寝ても覚めても、ずっとサッカーのことを考えていた。だが、こんな形で終わるとはな……俺のサッカーは、終わったんだ」

 

「……はあ、鬼道、ちょっとこい」

 

 そう言って鬼道を強引に引っ張り近くの公園に入る。その公園は少し大きく遊具のエリアと野球やサッカーをするエリアに分かれていた。そこで、俺は持ってきていたボールを取り出す。本当は鉄塔広場で使うつもりだったんだが、まあいい。

 

「よっと」

 

「……なんのつもりだ?憐れみか何かならいらんぞ」

 

「んなわけねぇだろ、こいよ」

 

 少し迷った末、鬼道はボールを弱々しく蹴る。

 

「そんなもんじゃねぇ、だろ!」

 

 俺がボールを勢いよく鬼道へ投げると、今度は蹴り返してくる。それを俺は受け止める。

 

「ほらな、お前のサッカー、まだ続いてるみたいだぞ」

 

「……そう、だな。敵わんな、お前には」

 

 心が軽くなったのか、鬼道は少し笑みを浮かべる。

 その後、鬼道から家に来ないか、と誘われ鬼道宅で話すことになった。

 

 

 鬼道の家は鬼道財閥ということもあって豪邸だ。なんか、俺がいると場違い感が半端ないな。

 鬼道の自室まで通され、そこで古いサッカー雑誌を見つける。どうやら、鬼道の実父、実母の遺品であるようだ。

 

「家族の写真一枚すら残っていなかった。この雑誌だけが残ったんだ、これだけが父さんと母さんと繋いでくれる唯一のものだった。だから、俺はサッカーを始めたんだ」

 

「鬼道……」

 

「ボールを蹴れば両親と一緒に居れるような気がしたんだ。最初は楽しかったんだ」

 

 だが、その純真な思いは周りによっていつのまにか変わっていった。サッカーは楽しいものから勝たなくてはならないものに、影山を神様のように思うまでに変化していた。

 その許せない過去に鬼道は身体を震わせ手に自然と力が入っている。

 

「そういえば、お前はどうなんだ、サッカーを始めた理由」

 

「お前と同じような理由さ。家族にサッカーをしている人物がいて、その人に影響されて始めたんだ」

 

 間違ったことは言ってない。ただ、それが平行世界の本来の円堂守というだけであって。

 

 

 

 

 

「次の相手は千羽山中だ!」

 

 次の日、2回戦の相手となる千羽山中の対策を練っていた。千羽山中は山々に囲まれ、大自然に鍛えられたチームだ。うーん、この情報だけで見ると野生中と変わらないな。

 

「彼らは無限の壁と呼ばれる鉄壁のディフェンスで未だ得点を許していません」

 

 あまりの防御の高さにみんなは声を失う。全国での無失点はそれほどまでに難しい。

 

「シュート力が難点ですが、そのディフェンスでここまで勝ち抜いてきたみたいです」

 

 今までの千羽山のスコアを見て分かるが、大体1点とロースコアで勝ち進んでいる。点を取られなきゃ負けない、を体現したようなチームだ。

 というわけでその鉄壁のディフェンスを壊すために練習を開始した。だったんだが、ミス続きだ。パスを出しても後ろを通り過ぎ、ボールをクリアしようとするもタイミングが合わず顔面に直撃してしまう。考えられないミスの連発だ。

 理由は勿論わかっている。イナビカリ修練場だ。あそこは俺たちに身体能力や技術力の大幅な強化に役立ったが、今度はそれが仇となった。短期間で急激に成長したことで、その成長具合を感覚で把握しきれていないのだ。それによりいつもと同じつもりでしていても、パスが強くなっていたり高く飛んでしまっているのだ。

 そのことを響木監督も理解しておりみんなに説明しているのだが、根本的な解決はできていない。

 やっぱ微調整できるやつがいないうちは厳しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後も失敗続きで雰囲気が悪くなっていき、さらには豪炎寺と音無が所用で抜けてしまったため、これ以上しても逆効果というわけで練習が早めに終わった。

 しょうがないから鉄塔広場の方で練習しようか、と思ったところで鬼瓦さんに呼び出された。指定された場所は稲妻総合病院。病院で何かあったけな?

 

「それでなんです、態々俺を呼び出した理由って?」

 

「……君に会ってほしい人がいる」

 

「誰に会ってほしいんですか?」

 

「君に会ってもらいたいのは亜風炉照美。帝国を負かした世宇子の元キャプテンだ」




ずっと思ってたんですけど、なんでイナビカリの弊害ってこのタイミングなんですかね?修練場で劇的パワーアップしてるのってそれより前のはずなんだが……

私のリアルの関係で来週の投稿はできるかわかりません。なるべく投稿できるように頑張りますが、できない可能性が大きいです。本当にすいません。

活動報告で憑依円堂に使わせたい技を募集してます
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=269366&uid=224876

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