憑依円堂列伝〜TS娘と時々未来人〜   作:花蕾

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雷の門戸は開かれている

「君に会ってもらいたいのは亜風炉照美。帝国を負かした世宇子の元キャプテンだ」

 

「っ!?」

 

 予想だにしない提案に目を見開く。ここでアフロディの名前を聞くことになるなんて……

 

「その顔は彼女を知っているようだな」

 

「ええ、まあ。ちょっとした知り合いです」

 

「そうか……ついてこい」

 

 鬼瓦さんが病院内へと足を進める。言われた通り、俺はその後ろをついていく。そして、歩くこと数分後、俺たちはとある病室の前にいた。

 扉の側にいた警官が鬼瓦さんに敬礼し扉を開ける。

 扉の先には、無機質な部屋にベッド、そして、そのベッドに一人の少女が扉とは反対の方向を見ながら座っていた。俺たちが足を踏み入れるとようやく気づいたのか、こちらへとゆっくりと顔を向ける。

 

「ああ、久しぶりだね、円堂くん」

 

「アフロディ……」

 

 その顔は以前見たよりも儚げで、今にも壊れそうだった。

 

「一体何があったんだ……?」

 

 恐る恐るどうしたんだ、と聞くとアフロディは少し考えた後、口を開く。続いて飛び出した言葉は病室に静かに響いた。

 

「世宇子中は影山零治の支配下にある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「始まりは一年前だった」

 

 当時の世宇子中サッカー部はできたばかり、さらに言えば部員数も試合をするために最低必要な11人もいなかった。そのため、当然のことながら部費は雀の涙ほどで活動する場所もあまりなかった。

 

「それでも、サッカーは楽しかった」

 

 仲間たちとボールを追いかけ、日々上達を感じる。不満はなかった。むしろ充実していたとまで言える。

 

「だけど、魔の手はすぐそこまで迫っていたんだ……!」

 

 突如、多額の寄付金が寄せられた。誰からかはわからなかったが、練習場所も道具も足らなかった世宇子中サッカー部には有難い話だった。その寄付のおかげで世宇子はサッカー用のスタジアムを建設し、さらには多くの最新鋭のトレニーングマシーンを得た。

 そのおかげでどんどん強くなっていった。試合をすること出来なかったが、自分達が全国でも上位に位置するレベルまで上がっていることは理解していた。

 

「いつしか、楽しさよりも強さに意味を見出すようになっていた」

 

 練習中の笑顔は消え、誰もが力を、他者をものともしない圧倒的な力を手にしようとした。アフロディが間違いに気づいたときには、世宇子中はもう後戻りできないところまで来てしまっていた。

 

「そして、みんなは奴の手に落ちてしまった……!」

 

 影山零治、彼からの誘いは圧倒的な力を求める世宇子中には魅力的すぎた。断るという選択肢は存在していなかった。

 

「そうして“神のアクア”が与えられた」

 

 影山から与えられた神のアクアは世宇子中イレブンが望んでいた力を齎した。他者を隔絶する神のごとき力。その絶大な力は世宇子イレブンの心を染め上げた。もはや、神のアクア無しではサッカーできないほどにまでなっていた。

 

「これが世宇子中の真実だ。すまないね、円堂くん、こんなものを聞かせて。でも、君には知っておいてほしかったんだ。なんでだろうね」

 

 アフロディは本当にすまないといった表情で謝罪をする。

 

「……アフロディはどうしたいんだ?」

 

「えっ」

 

 自然と言葉が出ていた。

 

「どうしたい、って、もう僕には……」

 

「このままでいいのか?」

 

「いいわけない……いいわけあるか……」

 

「なら、諦めんなよ!」

 

「じゃあ、どうしろって言うんだ!?」

 

「やることは一つしかないだろ!」

 

 それはなんだ、とアフロディがこちらの目を見る。やることなんて決まりきっている。

 

「サッカーだよ。サッカーをするんだ。そして、世宇子の奴らに証明するんだ、神のアクアなんて必要ないって!」

 

 

 

 

 

 

 河川敷、そこにはとある二人の男の姿があった。

 

「鬼道!!そんなに悔しいか!!」

 

「悔しいさ!! 世宇子中を、俺は倒したい!!」

 

 鬼道と練習中に姿を消した豪炎寺だ。二人はボールは蹴り合い、思いの丈を叫ぶ。

 

「だったらやれよ!!」

 

「無理だッ!」

 

 帝国学園は敗れた、それは揺るぎない事実だ。どうあっても覆すことはできない。帝国学園の鬼道がフットボールフロンティアのフィールドに立つことは不可能だ。

 

「自分から負けを認めるのか、鬼道!!」

 

 鬼道の諦観に対し、豪炎寺はファイアトルネードを放つ。ボールは鬼道の真横を通り過ぎ、側面の原っぱに衝突しいくらか抉ったところで動きを止める。

 

「一つだけ方法がある」

 

 そう、敗退した学校の選手がフットボールフロンティアの試合に出る方法が一つだけあるのだ。

 

「お前、円堂に後ろを預けてみる気はあるか?」

 

「何を言って……まさか」

 

 鬼道はその言葉の意図に最初は困惑したが、すぐに気づいた。思い当たるものがある。フットボールフロンティアの大会規定のとある一項。そんなことする選手などいない、馬鹿げた規則だ、とそう思っていた。

 

 

 

 

 

 偶然か必然か、場所も全く違うのに示し合わせたかのようにその言葉は円堂と豪炎寺の口から同時刻に紡がれた。

 

「アフロディ──」

 

「鬼道──」

 

「「雷門に来い」」

 

 その提案は二人の運命を大きく変えた。




初めて週一投稿休んで、先週めちゃくちゃ不安になってました。そして、定期更新しないと気持ちが落ち着かない自分がいて驚きました。

それと技募集、送っていただきありがとうございます!まだまだ募集しているので、どしどし送ってください!
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