一之瀬の加入から数日後、俺と豪炎寺と鬼道は雷門中付近の公園で話していた。いつもならこの時間は練習をしていたのだが、流石にここ最近練習しすぎてたようで響監督から今日は休むように、とお達しがあった。
「こちらのスタイルはカウンター主体になるだろうな」
次の対戦相手である木戸川清修は、二回戦の相手であった千羽山と真逆のオフェンス重視のチームだ。そのため、鬼道は次の試合の戦術をカウンターで考えたようだ。
「円堂は守備の徹底を、豪炎寺は攻守の切り替えに注意してくれ」
「任せておけ!」
「……ああ」
豪炎寺の返事にいつもの覇気がない。普段の練習では気にしてない様子だったが、やはり次の相手が元チームメイトというのは中々くるものがあるだろう。
なんか気分転換ができるようなものがあれば、この近くでそういうのはあまり詳しくないんだよな。何しろ小学生時代はずっと河川敷でサッカーしてたせいで、駄菓子屋にも全然行ってなかったからな。精々、雨の日にカードゲームしていたぐらいだ。
「よし、作戦会議は一旦終了。気晴らしに少し歩こうぜ!」
「なっ、おいちょっと待て……ったくしょうがない、俺たちも行くぞ」
「ふっ、ああ」
「久しぶりだな。決勝戦から逃げたツンツン君」
しばらく散歩をしていると、とある三人組に呼び止められる。
「俺たちは武方勝!」
「友!」
「努!」
「「「3人合わせて武方3兄弟!!」」」
そう名乗りをあげポーズをとる三人。彼らは木戸川清修のスリートップだ。確か、原作だと彼らは駄菓子屋に行ってるはずだが……ちゃんと行ってるわ、制服のポケットからいくつかの駄菓子がはみ出してる。
「んで、なんのようだ?」
「ま、なんつーの、準決勝の相手に軽くご挨拶、みたいな?」
まあ、要するに次の対戦相手への偵察と挑発をしにきたということだ。スタメンが大会中に練習せずに相手学校まで偵察に行くのはどうか、と思うが。
そして、彼らの要件はそれだけじゃないらしい。
「宣戦布告しにきたんですよ」
「「「俺達は豪炎寺を叩き潰すと!!」」」
武方三兄弟曰く、豪炎寺は決勝戦の重圧にビビって木戸川清修を捨てた臆病者だ、と。事情を知ってる身からだと何言ってんだこいつになるが、知らない彼らからしたら豪炎寺は逃げた裏切り者という認識になるのも無理もない。
「ま、せっかく挨拶に来たんだし、今の豪炎寺クンの力を見てみたいなぁみたいな?」
「……悪いがその気はない」
「おやぁ?また逃げるつもりですか、やっぱりお前は臆病者の卑怯者だ!!」
すらすらと罵倒の言葉を放つ三兄弟。自分に向けられているものじゃないとはいえ、嫌な気分だ。
これ以上聞いてられないので、他の道に行こうとするが、三兄弟が行く手を阻む。
「あん?」
「逃げるなんて流石臆病者の豪炎寺クンのお仲間だ。これだったら準決勝も楽勝、みたいな」
「はあ、そこまで言うんだったらお前たちの実力を見せてみろよ」
「円堂、相手をしなくても……」
「こうでもしないとこいつら一生退かないだろ。んで、やるのかやらないか、どっちだ」
「卑怯者の豪炎寺クンと違って逃げるわけがないっしょ。勿論受けて立ちますよ」
というわけで、俺たちと三兄弟は場を河川敷に移す。
勝負の形式は必殺技ありのPK戦。俺がゴールにつき、三兄弟がシュート位置に着く。
「「「それなら武方三兄弟の力……見せ付けてやりましょうかァ!!」」」
そう言って長男、勝がボールを蹴り上げ、それに合わせて努が蒼炎を纏い反時計回りに回転しながら跳ぶ。
「これが豪炎寺のファイアトルネードを超える技!『バックトルネード』!」
上空からかかとでボールをゴールに向かって蹴り落とす。
「『爆裂パンチ』!」
それに俺は連続で拳打をいれ、ある程度威力が弱まったところでアッパーをしクリアする。
「「そらそらァ──!!」」
そして、俺が止めたと同時に勝、友の両名がバックトルネードを打ち込んでくる。プライドとかないんか。
「『真熱血パンチ』!そして、もう一つは『熱血ヘッド』!」
一つは熱血パンチで、もう一つは熱血パンチと同じ要領で気を集め額で弾き返す。
豪炎寺を意識してるだけあってそれなりの威力だが、流石に進化してるファイアトルネードの方がまだ強いな。
「なっ、三つとも止めるなんて……」
信じられないような顔してるが、その顔したいのこっちだぞ。名門木戸川清修にまで行ってすることが、その狡いやり方してる方が信じられん。
というか、ギャラリー増えてるな。宍戸に一之瀬、アフロディ、他にも雷門メンバーがちょくちょくいるな。
「「「だったら、見せてやるぜ、武方三兄弟最強の必殺技を!!」」」
バックトルネードを止められたことが相当堪えたらしく、三兄弟は奥の手を出す。
勝が蹴ったボールを努が空中でさらに蹴り上げる。そして、友が勝の背を足場に大ジャンプしボレーシュートを決める。
「「「『トライアングルZ』!!」」」
そして、ポーズを決める三人。
なるほど、確かにポーズを決めるほどの威力だ。このシュートは、帝国のデスゾーンにも引けを取らない。
「『マジン・ザ・ハンド改』!」
だが、それなら止められる。マジンの右手がボールを受け止める。
「いくら加減したと言っても俺たちのトライアングルZが止められるなんて……」
「有り得ないっしょ……!」
「何やっとるんだ、お前たち!」
三兄弟が結果に呆然としてると、土手の方から聞き馴染みがない声が聞こえてくる。そちらを向けば、無精髭を生やしガタイがいい男性がいた。あれは、木戸川の監督の二階堂さんだな。たしか、元サッカー選手で今は教師やってるはずだ。
「サッカー選手ならば試合で正々堂々と戦え!!」
「「「わ、わかりました!!」」」
「お前達は先に帰ってろ!」
「「「は、はい!」」」
監督直々にそう言われ、三兄弟はボールを抱え走って帰っていく。それを見届けた後、二階堂さんは豪炎寺の方を向く。
「久しぶりだな、豪炎寺。フットボールフロンティアでの活躍は見ている。元気にサッカーを続けているようでよかった、がんばれよ!」
「二階堂監督……!ありがとうございます!」
豪炎寺は久しぶりに会った恩師と軽く会話を交わす。そうしているのを見ていると、一之瀬が何かに気づき二階堂さんと共に来ていた木戸川の生徒に向かって話しかける。
「西垣……!?西垣じゃないか!」
「……いち、のせ……い、一之瀬か!?」
彼の名前は西垣守。木戸川のDFで、一之瀬や土門の幼馴染である。
まさかの再開に盛り上がる一之瀬たち。邪魔をするのも忍びないので、そっと俺たちは場を離れた。
それから数日後。
「皆さま、フットボールフロンティアもいよいよ佳境!本日はAブロック準決勝!昨年準優勝の名門木戸川清修、対するは今大会台風の目となっている雷門中!一体どんな試合になると言うのか!」
準決勝がついに始まろうとしていた。
少し大きめな改変要素で、雷門中や木戸川清修のブロックがAブロックとなってます。
そのため、試合順が少し変わっています。本来は雷門対木戸川の前に世宇子の準決勝がありますが、私作では入れ替わってます。ご了承ください