豪炎寺が一切足を止めることなく、ボールを運んでいく。事実、彼の前に障害はなかった。
「なぜだ?」
「どうして動かない……」
なぜなら、目前の相手──オーガは誰一人として動いていないのだから。
「だったら、遠慮なく行かせてもらうぜ!」
「いけ、染岡!」
豪炎寺が勢いよくパスを出す。染岡がそれを受け取りシュートを撃とうとした瞬間、オーガのDF、サンダユウが強風が現れるほどのスピードでボールを奪いとった。
「何っ!?」
サンダユウがボールをFWのミストレに向けて軽く蹴る。きたボールをミストレは胸でトラップし受けとるが、そこで風丸がカット。そのまま、豪炎寺へとダイレクトでパスを出す。そして、
今回、動いたのはMFのドラッヘ。彼はマークについていたマックスを飛び越え、先程と同様に目に止まらないスピードでボールをカットしたのだ。
「っ!また!?」
ドラッヘはFWのエスカバへとパスを出す。しかし、浅い。辿り着く前に鬼道がカット。そのまま攻め上がるが、同じようにペナルティエリア前でボールを奪われてしまう。
永遠とそれが繰り返されていく。そして、変化がないまま前半が終わった。
「どうしてシュートを打たないんですか?」
「そうですよ!あんなにシュートチャンスはあったのに!」
確かにペナルティエリア前までは行けていたし、外から見たら絶好のチャンスに見えただろう。
「打たなかったんじゃない……打てなかったんだよ」
「そうは見えなかったぞ」
「染岡くんのツメが甘かったんじゃないの?」
「わからねぇ……なんかこうどうもスッキリしねぇ」
染岡は否定するが上手く説明できない。そこで豪炎寺が口を開く。
「攻め切れない、と言えば分かるか?もう一つ、深く入り込めないんだ」
恐らくだが、前半のシュートチャンスはオーガが作り出したもの。それを直前で奪うのが、彼らの作戦だったのだろう。
そんなことをして何になるのかと思うが、これは効果的だ。作り出されたとはいえシュートチャンスはシュートチャンス、当然こちらも打ちにいく。それを意図的に、さらには一番効果的なタイミングで潰す。そうすれば、オフェンス陣に多大な精神的負荷をかけることができる。
「みんな、落ち着け!前半は確かに変な感じで気持ち悪かった。だけど、相手のペースに呑まれちゃだめだ、後半は切り替えていくぞ!」
「後半戦、キックオフです!前半のような展開が続くのかぁ!」
オーガから試合が再開する。ミストレがバダップへとボールを下げドリブルを開始する。
「おーっと、今度は雷門動かない!!意趣返しのつもりかぁ!!」
対する染岡、豪炎寺はあえて動かない。二人を突破しバダップはミストレへとボールを返す。その瞬間、鬼道が動き出しスライディングでボールを奪い取る。
「一之瀬!」
「土門!円堂!」
一之瀬へとパス。それに続いて俺、土門も上がる。そして、そのまま一点で交差、木戸川清修戦で習得したあの技が放たれる。
「「「『ザ・フェニックス』!!」」」
この暗雲が立ち込めるスタジアムだと不死鳥の輝きがより一層感じられる。大翼をはためかせゴールへと突き進む。それに対し、ザゴメルは稲妻を右手に纏わせ飛び上がる。
「『真ニードルハンマー』!!」
右手をハンマーのようにボールにぶつけ、そのまま貫く。止められるとは思っていたが、真か……これはかなりやばいかもしれん。
俺がゴールへと戻っていく最中、バダップとすれ違う。
「フェイズⅢ、スタート」
聞こえた単語はその短いワードだった。
ザゴメルからボールは前線のエスカバへ。受け取ったエスカバはそのままシュート体制に入る。彼の後ろには小さな赤い砲台が8個現れた。
「『デスレインV3』!」
エスカバがボールを蹴ると同時に、砲台群からも球状のエネルギーが放たれる。シュートの威力を少しでも下げようとディフェンス陣が間に入るが、あまりの威力に吹き飛ばされてしまう。
「『風神・雷神』!」
受け止めんと二体のマジンが両手を広げる。だが、死の雨はそんな抵抗を許さない。マジンを容易く穴だらけにし俺ごとゴールネットへと叩きつけた。
「マックス、栗松大丈夫か!?」
俺はなんとか立ち上がれたが、シュートブロックしようとした二人がうずくまって立ち上がれない。近づいて声をかける。意識はあるが、これではプレー続行は不可能だ。二人をベンチに運び、交代で半田と影野が入った。
こちらのキックオフ。染岡が豪炎寺にボールを渡した。その瞬間、エスカバ、ミストレが同時にタックル。諸にそれを受けた豪炎寺は吹き飛ばされてしまう。
ボールを奪ったエスカバはバックパス、バダップへと渡る。それを見て染岡は次は自分が標的だと理解した。それでも彼は逃げなかった。
「……野郎!」
「ふっ!」
ボールを奪おうと走り出す。それに対しバダップはボールを蹴り上げる。ボールを射線上にいた染岡を吹き飛ばし上空へ。バダップもそれを追って跳躍し、ボールを足で挟みこむ。
「『デススピアーV4』!!」
強烈な力で挟まれたことにより、ボールは槍状の鋭利な凶器へと変貌しこちらへ牙を剥く。
「止めるぞ!」
鬼道たちがシュートブロックに動く。しかし、近づくことすら許されなかった。シュートの威力による風圧だけで鬼道たちを吹き飛ばしたのだ。
「今度こそ……!『風神・雷神改』!」
俺の想いに応えたのが、二体のマジンはいつもよりも大きな体躯で輝きを放っていた。しかしながら、そんなちゃちなものでは圧倒的な力というものには叶わない。
「がはっ…………!」
マジンを貫きボールは俺の身体をくの字に曲げながらネットを揺らした。
そこからは悲惨でしかなかった。まず、交代で入った半田と影野がオーガのラフプレーにより負傷した。続いて染岡と一之瀬が、その次が……どんどんみんなが傷ついていった。そして、俺も度重なるシュートによりボロボロになっていた。電光掲示板は6-0とオーガの隔絶した力を物語っていた。
「円堂守、サッカーを捨てろ。お前たちの下らないサッカーが、言葉と情熱がチームメイトを傷付けているのだ」
「何言ってやがる……!みんなを傷つけるようなプレーをしてんのはそっちだろうが」
「事実、お前たちのサッカーのせいで未来では人類は弱体化してしまった」
「んなわけねぇだろうが!」
サッカーによって弱体化する?そんなトンチキな話は存在しない。そうでなければ、遥か彼方の未来でのあの子供たちは生まれない。
「ならば、ここで消えろ!さもなくば、サッカーを捨てろ!」
そう言いバダップは止めを刺さんとシュート体制に入る。俺も受け止めようと動こうとするが、身体が悲鳴を上げる、不味い。
デススピアーが放たれ、無防備な俺の身体へと迫る。しかし、それが俺の身体を貫く前に上空から飛来した青い球体によって止められた。
「──間に合った!」
その球体から現れたのは俺と似たような風貌をし同じようにバンダナを巻いた少年。
「初めまして、曾祖父ちゃん!俺、円堂カノン、皆と一緒に戦うために未来から来たんだ!!」
「未来から来たなんて信じられるか?」
一旦タイムを貰い、ベンチで集まる。俺にしたように皆にもカノンは自己紹介するが、半信半疑の様子だ。プロトコル・オメガとの戦いを経験している風丸と秋はそこまでまだだが、やはり未来からというのは中々信じてもらえない。
「はい!」
そこでカノンがジャケットの内ポケットからノートを取り出す。いや、このノートが一体……ん?
「あっ、これ俺のノート!?」
急いで中を確認する、間違いない、完璧に俺のノートだ。それも、俺が忘れないようにと前世の記憶を書き記しといたやつ。え、これ残ってんの?明らかに残っていちゃいけないものだぞ!?
「信じてみる価値はありそうだな」
「俺も信じよう」
鬼道、豪炎寺は俺の様子から本当だと感じ結論を下す。
「残念だったね、チームオーガ!勝手に歴史を変えてサッカーを排除しようとするお前たちを、俺は許さない!」
「たった一人で何が出来る」
「一人じゃないさ!俺が遅れたのは最強の仲間を集めて来たからなんだ!」
そう言うとカノンはニヤリと笑い、視線を上げる。そして、空に向かって叫んだ。
「皆、出てきてくれ!」
空に亀裂が入る。徐々にそれは広がっていき、ついにガラス細工のように砕け隠されていた青空が姿を現す。それと同時に飛来してくるものが三つ見える。一つは稲妻のように、一つは炎の翼を雄大に羽ばたかせ、最後の一つは悪魔が如き禍々しい翼を携えて降りてくる。
……いや、どちら様???
はい、というわけでついにコラボが始まります。今話は空ぶち破ってるだけですが、次話からは自己紹介&試合が開始されます。次回もお楽しみに!
イナイレ杯、現状9作品!予想よりも多くの作品がきて幸せです!まだまだ参加お待ちしております!