憑依円堂列伝〜TS娘と時々未来人〜   作:花蕾

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誤算

「芸がないぞ!」

 

 オーガが試合再開のキックオフと共に突っ込んでくるが、亜門がそれをしっかりとカット。そして、そのままドリブルで上がっていく。ある程度上がったところでディフェンスを引きつけつつパスを送る。

 

「カノン!」

 

「おお!『ゴッドキャノン』!」

 

 受け取ったボールをそのまま蹴り出し、さらにカノン自身も走り出す。追いつくと同時に空中で回転することで勢いをつけドロップキックする。ボールはゴッドハンドのように黄金色に輝き砲弾のようにゴールへと向かった。

 

「豪炎寺さん、もう一回頼みます!」

 

「ああ!『マキシマムファイア』!」

 

 さらに豪炎寺のシュートチェインが加わる。爆炎を纏った神の砲弾はその速度を緩めず進んでいく。

 それに対しザゴメルは虚空に腕を振るう。すると青白く光るレーザーが現れる。

 

「『真エレキトラップ』!」

 

 展開されたレーザートラップがボールを絡めとった。

 

「おーっと、オーガ学園、新たな必殺技、雷門追加点ならず!」

 

 シュートを止めたザゴメルが前線に向けてボールを蹴る。その瞬間、彼の視界に一つの影が現れた。その影は空を駆けようとしたボールを掠めとり地面へと降り立つ。

 その影とは、亜門。彼はシュートを止められたと分かったと同時に動き出していたのだ。

 

「遠慮なしで行かせてもらうぞ」

 

 亜門の背中から炎の翼が現れ、その翼を使い飛び上がる。その動きにアフロディは足を止める。なぜなら、それは彼女が最も得意とする技、ゴッドノウズと酷似していたのだから。

 しかしながら、工程が同じでも結果は違う。そこにあるのは、人知を超えた神の奇跡のごとき輝きではない。そこにあるのは純然たる怒り。その証拠にそのボールは、地獄の炎を纏っていた。

 

「──『アモンズアンガーV3』」

 

 ボールを踵落としの要領で蹴り落とす。その炎弾はえらくゆっくりとザゴメルには感じた。そして、ザゴメルの視界を炎が埋め尽くした。

 

「ゴールッ!雷門追加点!怒涛の追い上げだぁ!」

 

 これで二点。この調子で行けばなんとかなりそうだ。

 

 

 

「っ、不味い!」

 

 キックオフと同時にバダップがボールを持ちカノンの前まで急速度で移動し、そのままボールをシュートと見間違える勢いで蹴った。当然、目の前にいたカノンに直撃する。ぶつかったボールをエスカバが拾い、これまたシュートの如きパスでカノンにぶつけつつバダップへと戻す。

 このままだとカノンが潰れてしまう。止めようと鬼道たちが割って入ろうとするが、ボールによる風圧で弾かれてしまう。だが、そんな厳しいボールの嵐を乗り越えたものがいた。

 

「風丸さん!?」

 

「助っ人ばかりに良い格好させれないからな!」

 

 風丸だ。彼女は俊脚を活かしてカノンのところまで到達し、ヘディングでボールを弾くことでカノンを窮地から救ったのだ。

 弾いたボールはアフロディが回収し、風丸へパスする。受け取った風丸はドリブルで上がり、進行方向を防ぎにきたDFのダイッコの前をターンで急停止しつつ加賀美へとボールを繋ぐ。

 

「加賀美!」

 

「おう!」

 

 受け取った加賀美は全身に力を込める。すると、背中から紫炎が噴出し、その炎の中で何かの目が輝く。そして、紫炎を払いのけその姿を示す。

 

「『紫電の将鳴神』!!」

 

 紫を基調とした甲冑を纏い、背中には濃い紫の外套をはためかせ刀を携えている。

 それは化身。人が作り出す気が極まり実形を得て現れたものである。 

 

「『紫電一閃』!!」

 

 紫色の雷が宙に浮くボールに注入されていき、次第に発光しだす。そして、加賀美がボールを蹴り出し、それと同時に加賀美の化身、鳴神がボールに向かって抜刀する。その軌道に沿って展開された横薙ぎの斬撃がシュートと化してゴールへと刃を向ける。

 

「『真エレキトラップ』!……何!?」

 

 その強大なシュートに息を呑みつつも、素早くレーザートラップを展開し迎え撃つ。ついに電気線とボールがぶつかり、両者の輝きがフィールド全体を包み込みあまりの眩しさに俺たちは視界を塞ぐ。

 しばらくして俺たちが目を開けると、そこにはゴールネットから転がり落ちるボールと身体中から煙を上げているザゴメルの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バダップ、なんだこの醜態は!貴様、この戦いの意味を分かっているのか!」

 

 バダップの耳にバウゼンの言葉が時空を超えて届く。

 ああ、分かっているとも。未来の世界の人類の弱体化を招いたサッカー、それを消すために訓練を重ね万全の状態で過去へとやってきたのだ。

 求められるのはただの勝利ではない、相手の心を根本から折る圧倒的な蹂躙だ。しかしながら、今の結果はどうだ。未だ4点の差はあれど、カノンたちが来てからは相手のペースに呑まれている。

 ふざけるな、ふざけるな、俺たちは

 

「負けられないのだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 試合再開の笛と同時にバダップが突っ込み、一気に豪炎寺たちを突破する。そして、ボールを蹴り上げ自身もそれを追って飛び上がる。

 

「『デススピアーV4』!!」

 

 死の槍が黒雷を撒き散らしながら唸りを上げる。間違いなく、今試合の中で最高のものだ。

 

 しかしながら、バダップたちには誤算が二つあった。

 一つ目は時空の共鳴現象。

 

「キャプテン!」

 

「いくぞ、壁山!」

 

「「『ロックウォールダム』!!」」

 

 オーガの直接介入により最低条件を満たしてしまったのだ。そのため、本来の歴史を凌駕する力を雷門メンバーにもたらした。

 

 そして、二つ目はカノンが連れてきた助っ人の存在。

 

 シュートの威力は大きく削られたが、それでも十分すぎるパワーが未だ残っている。それを確認し、ゴールの方を確認するとそこには

 

(何がおかしい……!)

 

 身体を静かに震わせている織部の姿があった。表情は見えず、それが一層不気味さを感じさせる。

 

「『ダークネス・サクリファイス──」

 

 織部はごく自然に、まるで児戯を相手とるように腕を動かす。しかし、第三者から見れば恐怖そのもの。なぜなら、彼の腕には()()()()()()()()()()()()()()

 

「──ハンド』」

 

 鴉がその存在を祝福するかのように鳴き声を上げた。




憑依円堂、ようやくオーガ戦で働く。


1/2にて私が主催したイナイレ杯が終了しました。作品数11と多くの参加がありました。ここまで盛り上がったのは、作者、読者の皆様のおかげです。参加していただき本当にありがとうございました!

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