東方旅人形   作:犬上高一

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遅くなりました。春先というのは慌ただしくてなかなか筆が進まないものです。


第12話 上海と嫉妬

地獄のある所に薄暗くて気味の悪い橋がありました。その上には一人の少女がいます。

 

「つまんない・・・。」

 

そう言って川を見下ろしていた少女は橋に乗っていた石を蹴っ飛ばす。

旧地獄の端にあるこの橋に誰かが来る事など滅多にない。ましてやその橋が“いわくつき”ともなれば自然と誰も寄りつかなくなるモノです。

そしてそこにいる少女もまた同じでした。

 

 

―――――の、少女の頭上を飛んでいるのは絶賛地底観光中の上海。

何か地味にお土産下げてるし。

 

そこで、ふと下を見て先程の少女に気が付く。上海はゆっくりと少女の隣に降りて行きました。しかし少女はじっと川を見下ろすだけで上海に気付かない。ムッとした上海は少女のスカートを思いっきりめくってやりました。

 

「―――――――――――――――ッツ!!!!?//////////」

 

スパッツ・・・か・・・。

 

「い、いきなり何よ貴女!?妬ましいわにぇ!!」

「wwww」

 

先程の衝撃が大きかったのか、噛んでしまう少女。と、それを聞いて大笑いする上海。

 

「――――川に沈めるわよ――――」

「しゃんはい・・・。」

 

今のはたぶんごめんなさいって意味だと思う。

 

「まったく・・・いったい何だっていうのよ。この人形は・・・。」

 

猫を摘まみ上げる様に上海を持つ少女。ぷらーんぷらーんと振ったりしてみます。

 

「・・・ねぇ貴女。なんでこんな所に来たの?」

「しゃん?」

 

何気なく抱いた疑問を口にするも上海は首を傾げるだけだ。少女は「なんでもないわ。」と言って上海を橋の手すりに置き再び川に視線を落とします。

水と呼んでいいか分からない程の黒い川。明るく照らせばよく見えるだろうがわざわざそんな事をする気にもなれません。

 

「もう帰ろうかしら・・・。」

 

ボソッとそう言った少女。ハッとして隣を見ると涙目の上海がこっちを見ていた。

 

「あ、ちがッ・・・・!?今のは貴女が来たからじゃなくて・・・その・・・。」

 

はぁ・・・と溜め息を吐いて訳を話しはじめました。

 

「今日はここで酒を飲む約束をしてたのよ。でもあいつ、約束はきっちり守るはずなのに3時間待っても来ないし・・・。」

 

3時間も待ってたんですか。

 

「どうせ私との約束なんか忘れて一人で勝手に楽しい事してるのよ妬ましい・・・。」

 

―――妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい羨ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい。

 

黒いオーラを発しながらぶつぶつ呟く少女。まるで黒魔術で悪魔でも呼び出しそうな勢いで負のオーラを放つ少女に上海はポンと手を置きます。

 

「え・・・?」

 

上海が差し出したのは一本の酒瓶。上海はそれをお土産屋で買った(何で地獄に土産屋があるんだ?)盃を取りだし酒を注ぎ、透明な酒の入った盃を少女に差し出しました。

 

「・・・何よ・・・くれるの?」

 

コクリと頷いた上海を横目に少女は盃を受け取る。まぁタダだしくれると言うなら貰っておいて損は無いだろう。そう思い酒を一口飲んでみる。

悪くない味です。冷えた体に酒がしみこみます。

 

「(どうせあいつは来ないだろうし・・・たまには・・・。)」

 

そんな考えで少女はいつのまにか酒のお代わりを貰っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっという間に酒は無くなり二人は持ち合わせていたするめをしゃぶっていました。

 

「ふ~ん。それで大切なご主人様の所飛び出してきた訳。」

「しゃんは~い・・・。」

 

するめをしゃぶりながらそんな話をする二人。大体上海が来てから1時間ぐらいたった頃。橋の向こうから人影が歩いてきました。段々と近づくその姿は薄明かりに照らされて徐々に姿を現していきます。上海の何十倍もある高い背と『少女の何倍も大きい胸を持つ女性』の頭には一本の赤い角が生えています。鬼です。

 

「あ・・・。」

「おいーっす。」

 

そう言って気楽に手を振る女性に対し少女は頭から勢いよく体当たりを繰り出しました。

 

「いきなりどうしたんだ?」

 

その少女の渾身の体当たりをいとも簡単に受け止めます。女性は素で聞いて来るが少女はまるで聞いてはいなません。

 

「4時間の遅刻よ!!いったいいつまで待たせれば気が済むの!!妬ましいわね!!」

「え・・・?」

 

来るなりそう言われた女性は頭をぽりぽり掻きながら

 

 

 

 

 

 

 

「だって、約束の時間は明日だろ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

一拍おいて少女の頬がぽっと赤くなりました。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・/////」

「(耳まで真っ赤にしちゃってあーもー可愛いなぁぁぁあああああ)」

 

顔を耳まで真っ赤にしてポカポカと叩く少女に対しじゅるりと涎を垂らしてニヤニヤしている女性。と、そこで女性は橋の手すりに置いてある酒瓶と2杯の盃に気が付きました。

 

「誰か一緒に居たのか?」

「え?あぁ、さっきここに・・・あれ?」

 

少女が辺りを見回すと先程までそこにいた上海の姿はありません。

代わりに先程まで彼女がいた場所には、小さな紙袋が置かれていた。その中には土産屋で売っているお菓子が入っていた。少女が中を見ていると紙が一つ入っていました。下手な字で「よかったね」と書かれてました。

 

 

薄暗くて気味悪い橋は、明るくて少し賑やかな橋になりました。

 

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