乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です   作:N2

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ひふみん様、誤字報告ありがとうございます。

念のため。
マリエやリオン達が行った王家の船の愛情採点結果は、web版(なろう)では無料の原作様、第三章の運命をご確認ください。

ちょっと進行が遅くなってきました。申し訳ございません。

実は、ザナの化粧箱の中の大きな逸品をどこで出すかを悩んでいるんですよね。
共和国編では難しい…… でもそうなると当分先。ですがこの戦いだと微妙…… 悩みどころです。
あぁ、出したい(笑)
う~ん、共和国編で無理矢理…… それとここで無理矢理…… これってリックがラスボス化の鬱エンド時に考えていた物だから、結局お蔵入りかなぁ……


第96話 王宮直上防衛艦隊出陣前

 「うふふふ、あはははははは!」

 

 マルティーナはある一通の手紙を握り潰している。

 

 「落ち着きなさいマルティーナ。その手紙は感情に任せて書き殴っているような物だ。まだ詳細な状況は不明だぞ」

 

 「ですが!? しかし、よくもまぁ、いけしゃあしゃあと…… 王国はお兄様を何だと思っているのでしょうか」

 

 エルザリオ子爵は嗜めるように静かに言うが、マルティーナの耳には半分も届いていない。

 

 「とは言え、王国の状況が佳境であるここで認可する…… 相も変わらず王家も賢しいではないか」

 

 公国首都直撃艦隊がヘルツォーク領に帰艦後、エルザリオ子爵は一度本家ヘルツォークの屋敷に戻り、いざ、ラーシェル神聖王国への対応の再編成を行おうとした矢先、屋敷にはヘロイーゼからの手紙が既にマルティーナ宛に届いていた。

 ヘロイーゼからの手紙を母であるベルタから渡されて読んだマルティーナは、怒りを振り切って高笑いし始め出したのだ。

 エルザリオ子爵も読んだが、書き殴りのような物であり、詳細が不明過ぎる。

 

 一、エーリッヒがラファ、王族として認められた。

 二、エーリッヒの婚約は全て解消。

 

 要点を得ては書かれているのだろうが、結論のみであるこの内容では、エルザリオ子爵もどう判断していいものか解らない。しかも恐らく涙であろうか、かなり濡れて字も滲んでいる。

 字も荒く、まともな精神状態で書かれた物ではない事は明白であった。しかも保留を解消と書いているヘロイーゼは、如何に絶望して混乱していたのかが見て取れた。

 ただし、ここで王族として認めるという事は防衛の矢面に王族が立ったという、王家の面子も保たれるという事はエルザリオ子爵にも読み取れた。

 

 「でも父様、リック兄様の後追いの情報が無い。由々しき事態かも」

 

 姉であるマルティーナの雰囲気に当てられてしまい、エーリッヒとマルティーナの二つ下の妹であるマルガリータも落ち着かない様子を見せ出す。

 

 そう、ヘロイーゼはあろう事かクラリスが卒倒している最中に、本家ヘルツォークへ急いで書き殴りの手紙を出してしまっていたのだ。

 そしてエーリッヒからの後追いの手紙で、大喜びと安心しきった事により、本家ヘルツォークに手紙を出した事実を綺麗さっぱり忘れてしまっている。

 ヘロイーゼの精神状態も普通では無くなっていた事による弊害が、ここで起きてしまっていた。

 

 エルザリオ子爵は、既にラーシェル神聖王国に対処している防衛艦隊二十隻、そしてファンオース公国から凱旋してきた三十隻の再編で忙しい所にこの情報だ。

 一旦エーリッヒの情報は棚上げして、正確な追加情報を得たいというのが本音ではある。いずれ来るであろうとも思っていた。

 

 「そのヘロイーゼ嬢の手紙だけでは何とも言えん。一旦、こちらから確認の手紙を送ろうではないか。バーナード大臣とエーリッヒ宛で王宮にだな。しかし、今や王都も公国軍本隊を迎え撃つ最終準備で慌ただしい、若しくは迎撃の最中だろう。マルティーナ、こちらとて、ラーシェル神聖王国が国境付近で相当(うるさ)くしている。今は落ち着いて時期を待ちなさい」

 

 (手紙が到着した日付からの時間経過を考慮すると、既に公国軍とぶつかる頃合いの筈だ)

 

 こちらから何かしらのアクションを起こさねば、マルティーナの様子を見る限り納得はしそうにはない。そして、ここ本家ヘルツォークからでは、確認の手紙を出すのが精々でもある。

 エルザリオ子爵の中では既にマルティーナは手離れしており、エーリッヒからの指示を優先させることが念頭にあるため、強く言い含める事が躊躇われている。

 元々既にエルザリオ子爵は、エーリッヒを一人前の対等な立場の男性と数年前から認識している。そこがエーリッヒとの認識の食い違いであり、エーリッヒはエルザリオ子爵であればマルティーナの頭を抑えると考えてはいるが、エルザリオ子爵自身の考えとしてエーリッヒに嫁がせるマルティーナは、エーリッヒの指示を第一優先と考えていた。

 

 「もうこうしてはいられませんね。わたくしは王都へ向かいます!」

 

 「お前に対するエーリッヒからの指示はどうなっておるのだ?」

 

 「エルザリオ子爵、お父様の下でファンオース首都撃滅作戦に従事、締めの作戦を決行せよ。そう指示を承っています。実は作戦決行後に関しては何の指示も受けておりません」

 

 本来のエーリッヒであれば、マルティーナに「作戦決行後はエルザリオ子爵の指示に従うように」と言っていた筈ではあるが、今回に限っては何も言っていない。

 実は状況が不明確な王都での戦いのため、マルティーナに暴走の余地を残していたのである。王都は危険ではあるが、それだけ本家ヘルツォークの武力に信頼を置いているエーリッヒであった。

 マルティーナの暴走の背中を押すための新ヘルツォーク領にのみ送ったあの時間差の手紙でもある。エーリッヒからの直接の手紙を送ってしまうと、マルティーナは心中苛立ちながらも無理矢理納得して、後追い情報を待つために本家ヘルツォーク領に留まることを懸念したためであった。

 不確定要素の強い公国軍本隊に対する備えとして、こちら側の不確定要素がマルティーナの動向である。ただしあくまで不確定要素であるので、エーリッヒは期待してはいるが、マルティーナの動向を作戦には組み込んではいなかった。無論、エルンストにも内緒にしている。

 

 「五隻だ。ブリュンヒルデも用意する。エーリッヒを助けてやりなさい」

 

 「は、はい! 必ずやお兄様は死なせません! それに真相を確認して参ります」

 

 「あぁ、それとこれを持って行きなさい。こちらで製造した物だ。まだ一つだが、時間は掛かるがここでも製造可能となったという事だ」

 

 エルザリオ子爵はマルティーナに弾丸に似た何かを手渡す。

 こうして、マルティーナは急遽編成した五隻と魔道具と呼べる弾丸を手に、王都に意気揚々と艦隊で向かうのであった。

 

 

 

 

 時は少し溯る。

 エーリッヒは偵察艇を随所に配置しつつ、光魔法による信号でファンオース公国本隊の位置を受け取っていた。

 

 「動いたか、強襲別動艦隊三十隻。王宮直上防衛艦隊、全艦艇上昇後第二種警戒態勢にて待機! 鎧搭乗者は各艦の格納庫にて待機せよ。繰り返す、全艦艇上昇後第二種警戒態勢にて待機! 鎧搭乗者は搭乗後、格納庫にて待機せよ。急げ! エト、僕はリオンの所に報告に向かう。彼等がここに到着するまでには戻る」

 

 「わかりました。状況により第一種警戒態勢に移行させます」

 

 「任せる。新ヘルツォーク領の五隻は、公国の強襲別働艦隊と接触後も王家差配の指示通りの配置にて待機と伝えておいてくれ」

 

 今回の我々含む各防衛部隊の配置は、リオンや俺の指示ではなく王国軍国防参謀本部からの直接指定であった。迎撃艦隊や参陣する各貴族家はリオンの指揮下だというのにだ。

 リオンや俺を飛び越えるような指示という事は、王家の意向が色濃い物であると判断して構わないだろう。

 

 「しかし、このぽっかりと空く範囲、上空の移動すら制限されているせいで、守りにくいことこの上ないですね」

 

 「なぁに、面白いものが見れるぞエト。傲慢な王家を笑えるレベルでな」

 

 「義兄上?」

 

 静かに微笑む俺をエルンストは訝しむが、それは後の楽しみだろう。

 エルンストの肩を叩き、俺はリオンの元に向かった。

 

 

 

 

 リオンの執務室に向かうと、今から会議との事だったのでそちらに踵を返した。

 

 「僕を抜いて会議…… 迎撃艦隊に関する事項かな?」

 

 ノックをして入室すると、そこには糞陛下にミレーヌ様、レッドグレイブ公爵にバーナード大臣が鎮座しており、軍からはコルテン大将とシュライヒ中将が出席していた。

 

 「会議中失礼します。報告事項があります」

 

 俺の言葉に先ずローランドが反応を返してきた。

 

 「何だ? 申してみよ」

 

 リオンやミレーヌ様を見ると了承の意を含める様に頷いてくる。

 

 「偵察艇から公国本隊より別働艦隊が編成され、公国本隊方面を0時起点とする2時方向より王都に進軍してきております。王宮直上防衛艦隊は第二種警戒態勢にて浮上。距離を見定めつつ第一種警戒態勢に移行予定です」

 

 俺の報告に遂に来たかと会議に参加している皆の緊張感が高まる。

 

 「通信が悪い状況だと聞いていたが、よく察知出来たな?」

 

 「原始的だよリオン。等間隔に小型の偵察艇を配備して光魔法での信号、それが叶わなければ狼煙で代用させた。迎え撃つ方が不利というのはただの怠慢だよ」

 

 頻りに他の皆が感心しているが、こんなのは前世では2,000年近く前から運用されている戦場、及び防衛機構での方法の一つである。こんな物で感心されてしまうと、馬鹿にされているのでは? などと寧ろ勘繰ってしまうじゃないか。

 

 「迎撃艦隊の準備は?」

 

 「まだだ。まだ態勢が整っていない」

 

 俺の問いにはレッドグレイブ公爵が答えた。

 

 「我々防衛艦隊が先に接敵します。本隊はまだ別働艦隊よりも後方とはいえ、急がせた方が良いでしょう。別働艦隊への挟撃を提案にも来たのですが……」

 

 「無理だリック。別働艦隊が王都へ強襲をするなら、こちらは出撃準備を進めつつも避難誘導が先だ。対応は任せることになる」

 

 そもそも迎撃艦隊も数はそう無い筈だというのに準備が悪いな。

 

 「了解。まぁ、期待はしていなかったさ。別働艦隊の迎撃はこちらでやる。しかし陛下、相変わらず王宮直上の飛行は禁止ですかね? 万一の場合の王宮貴族の面々や勤務している方々の避難誘導は?」

 

 「そちらは追って指示をする。例の新ヘルツォーク領の五隻の配置は動かすなよ。避難が必要な時にはその真下付近にまで避難人員を移動させる」

 

 随分と悠長な事だが、避難が必要になる直前のローランドの顔を見れないのが残念だよ。

 俺が肩を竦めつつ了解の意を示し、そろそろこの場から去ろうとした時、焦りを含むかのような慌てたノックが会議室内に響き渡った。

 

 「騒々しいぞ。入れ」

 

 陛下の指示により、俺はナルニアに目配せをして扉を開けさせた。

 すると見覚えのあるヘルツォークの偵察員が、息も絶え絶えになりながら入室してきた。

 

 「良いタイミングだ。君、符号は?」

 

 「はっ! 申し上げます。ヘルツォークに鎮魂の火、灯せり! 鎮魂の火、灯せり!」

 

 偵察員はここまで急いで走ってきた疲れに加え、まるで緊張の糸がぷつりと切れたような様相でその場に崩れ落ちる。

 

 「見事だ! 素晴らしい報告だぞ! 誰か、彼に水を。それと休ませてやってくれ」

 

 ヘルツォークはライヒとはとてもでは無いが言えない。しかし、ホルファートに冠たる我らがドミネとは言っても過分ではないだろう。

 陛下とミレーヌ様の後方に、まるで気配を消しているかのように控えていた女中に目配せをした。

 俺の歓喜の声に驚いていたミレーヌ様は、多少慌てつつも女中に指示を出す。

 しかし、ルクシオン先生から聞いていたとはいえ、偵察員からの報告の嬉しさは一入(ひとしお)だ。あの符号は作戦が万事成功した事による符号でもある。マルティーナの無事もしっかりと確認出来たという事でもあるのだ。

 

 「リック、どういう事だ?」

 

 リオンの様に皆が疑問を浮かべているので説明を始めるとしよう。

 

 「では、先ずは端的に言います。本家ヘルツォーク子爵艦隊が、ファンオース公国の首都と防衛用軍事施設及び背後の第二都市の撃滅に成功しました。よってファンオース公国に今後の戦争継続力は皆無。ファンオース本国各国境の防衛すら厳しい状況でしょう。モンスター群のいる本隊が聞く耳を持つかは疑問ですが、降伏勧告をした後、ファンオースを王国に併呑するのは正に今! と言えるでしょうな」

 

 俺の報告に驚愕する者、ポカンと呆気に取られる者の二つに分かれている。俺は彼等が反応を示すまで待つ事にした。

 

 「あれをやったのか…… しかも完璧以上に」

 

 「凄まじいわね。ヘルツォークは……」

 

 ローランドの奴はあれを独断専行するかどうかは半信半疑だったのだろうが、ミレーヌ様は信じられないといった表情を浮かべながら言葉を溢している。

 

 「首都撃滅!? へ、陛下達はリックの作戦を知っていたのですか?」

 

 リオンは聞いていないのが自分だけなのではと、両陛下に目をパチクリとさせながらも確認しだす。

 

 「作戦原案書を読んだ事がある。勿論その時は却下したがな」

 

 片目を瞑りながらリオンに向けてローランドは答える。

 

 「成功するとは思えなかったわ。その戦力があれば、ヘルツォークが担当する国境側の防衛を充実させて欲しかったから……」

 

 「ラーシェルに対する備えは万全ですよ。そもそもがいつもの事。しかも今回はラーシェルが来ると確実に分かっていますからね。ヘルツォークにとっては、正に日常茶飯事過ぎて問題にすら成り得ませんよ」

 

 俺の返答に両陛下とバーナード大臣は呆れており、他の面々は一様に驚愕しながら得体の知れない物を見るような目付きをし出した。

 

 「さて、これで彼等公国本隊は孤立無援となったわけだが、停戦に応じるかどうかだね」

 

 「若しくはモンスターが消えるまで放って置くという手もあるな。魔笛という道具で呼び出されたモンスターだ。自然発生的なモンスターとは道理も異なりそうではあるが……」

 

 バーナード大臣とレッドグレイブ公爵が話を始めた所に、リオンから震えるような声で質問が放たれた。

 

 「待てよリック。首都と第二都市撃滅って…… 方法は? 住民達を巻き込んだのか!?」

 

 予想外というか予想通りと言った疑問がリオンから発せられるが、リオンは目を見開いて身震いしながら信じられないといった様相をしている。

 寧ろその反応には俺の方が信じられないが。

 

 「夜間都市攻撃に戦闘員と非戦闘員を分けて攻撃しろと? 王国と公国はそんなにお上品な戦争をしているわけではないぞリオン。もし知らないのであれば教えてやろう。今回公国本隊の進行路には十以上の所領がある。いや、あったと言う過去形の方が良いだろう。さて避難が間に合わなかった貴族や住民はどうなったかな? 答えはモンスターに耕されて王国本土の養分となっている頃合いだ」

 

 「だからなんだ! 住民を巻き込んで良い言い訳になるとでも言うのかよ!!」

 

 リオンは激情を露わにしているが、逆にリオン以外の面子はリオンの反応に冷ややかである。

 

 「リオン、良いに決まっている。嫌だと言うのであれば戦争をするな! 剣を持つな! 憎しみを抱くな! 現に我々王国は、既に彼等ファンオース公国以上の非戦闘員に犠牲が出ている。軍人だけで見ても国境防衛部隊に王国本土端防衛戦併せて十万以上の将兵が死んでいる。軍人だけで戦って、はい終わり? そんな馬鹿な事を言うつもりじゃないだろうな? お前は未来永劫、王国とファンオース公国は戦えと言うつもりか? 冗談じゃない!?」

 

 俺はリオン以上の激昂で以て返してやる。

 

 「し、しかしだからって!? 今回モンスターを倒して奴等を諦めさせれば停戦…… そうなったら、寧ろもう公国に戦う力なんか残っていないだろうが!」

 

 「あぁ、勿論奴らに()()()には戦争継続する力なぞ残らんだろうさ。では王国は? 王国も継戦能力は残らない。復興と各国境防衛でてんやわんやといった所。しかし公国は本国は無傷、経済基盤も何もかもが無事。この戦争における交渉は王国が圧倒的に不利な事は間違いないだろう。公国の民も王国との戦争を本国が無事な事にかこつけて望むこと間違いない。そして、早ければ1年後、遅くとも3年後にはまた、軍事力を取り戻したファンオース公国が攻めてくるぞリオン」

 

 「ぐっ!?」

 

 リオンが苦虫を嚙み潰したかのような表情で耐え、それでもと言葉を紡ごうとした所にレッドグレイブ公爵がリオンに対して言葉を投げかける。

 

 「バルトファルト子爵、ここで彼等と停戦したとしても王都にまで軍を率いて攻められた王国は、この戦争において負けたと言えるのは間違いない。しかも王国本土を王国民共々に蹂躙され、王都も少なくない被害をこれから被るだろう。寧ろヘルツォークの功績は今後を考慮すると僥倖だ。公国本隊を迎撃後は公国を併呑出来る公算も大。一体君は何に憤慨しているのだね?」

 

 そう、ここにいる面子全員が、リオンの憤慨に対しては意味不明なのだ。察している者がほとんどであっても、その理由に関しては理解不能といった所だろう。

 リオンが恐らく考えているであろう戦争における法律や倫理といった物は、例え前世であっても戦勝国には該当しないんだよ。あれは敗戦国を更に苛め抜くためのものだ。正に勝てば官軍。

 正直に言って戦勝国のほうが、敗戦国よりも酷い事をしている筈なんだがな。

 しかもこの世界には、戦争において他国間との共有する法律は存在しない。特にホルファート王国の友好国は、レパルト連合国ぐらいしか存在しないのも理由だろう。

 両国間及び複数国家の戦争に対して難癖を付ける第三国すらも存在しない。

 それは何故か?

 皆が互いに何処かしらと戦争状態のようなものでもあるからだ。それらに対して明文化された(なにがし)すらも存在しない。

 

 「リオン、そもそもが王国と公国の戦争自体が意味不明なんだ。この二ヶ国間の戦争は政治の延長ですら無い、恨み辛みからくる怨恨故の戦争。僕から見たら正直に言って理解不能過ぎる。だからこそ徹底的にやるか、お互いに同程度の損害を被らないと未来永劫終わらない。最低でもファンオース公国の首都を滅ぼさなければ、王国本土で蹂躙された地域の人間が止まらない。これから王都で蹂躙される人間も勿論止まらないだろう。教えてくれ総指揮官殿、ファンオースとの戦争を終わらせる方法を。まさか今回の超大型の対処だけで、後は知らないとでも言うつもりじゃ無いだろうな?」

 

 「……」

 

 リオンは更に歯を食いしばり、言葉にならない何かを叫ぶのを堪える表情で俺を睨みだす。

 リオンに任せるだけでは公国と王国の関係は変わらない。公国の将来における継戦能力を粉砕し、公国の住民達の意識も今後変遷させていかなければならないのだ。

 俺を睨むだけで将来の戦争も終わるのであれば、いくらでも睨めばいい。リオンとて既に俺の言った状況は理解出来ている筈。納得も出来ているだろう。感情が悲鳴を上げているだけだろうが、実行したのは俺でありヘルツォークでもある。そんな自身の感情の悲鳴なんかは無視してしまえば良いものなんだがな。

 まぁ、そこがリオンの人の善さの表れでもあると言えるか。

 

 「……この件の詳細等は後々問うとして、バーナードは公国との停戦、いや、終戦後の交渉案を外交担当大臣と纏めておけ。ふむ、公国では無いな…… ファンオース公爵家として王国への併呑後の条項だ。首都と第二都市を粉砕された公国は、どちらにしろもはや今後において国の体を成さんだろうからな」

 

 リオンはハッとするようにバーナード大臣に命じたローランドに視線を向けた後、俺の方を確認するように見てきた。

 リオンは理解していなかったのかな?

 こちらに視線を向けてきたリオンに対しては、片目のまばたきで以て対応した。これでリオン自身の感情にも納得してくれれば言う事は無いんだが。

 

 「首都と第二都市直撃の件は追々陛下より。さて、では私は防衛艦隊を率いるためにここで退席させて頂くとしましょうか。迎撃艦隊の方々にも御武運を」

 

 未だ心中落ち着かない彼等を放置するかのように、俺とナルニアは王宮直上防衛艦隊へと戻るのであった。




初めてリオンとぶつかりましたが果たして……
まぁ、ロストアイテムを持つ傲慢さを自分自身で自覚しているリオンは、そこまでエーリッヒと仲違いする事は無いでしょう。
ルクシオン先生もいる事ですし。

ヤバい子がヤバい物をまた持っている……

そうだ、改めて西瓜ペシャン公様より頂きました水着バージョンのイメージ画像を載せておきます。
この度も本当にありがとうございます。
活動報告にも載せてありますが念のため。


【挿絵表示】

ティナがエロ可愛っ!
潮里先生のイラストで、ビールのCMポスターみたいなクラリス先輩とミレーヌ様の水着イラストがあったので、ティナはこのぐらい攻めたほうがいいですね!

【挿絵表示】

ヘロイーゼちゃんのバカンスモードは、かなりハマってますね! 健康的だし一緒に遊びたい系女子No.1
やっぱりこの子は可愛いなぁ。

【挿絵表示】

ナルニアの透けているパレオが、エロくて良いですね!ティナのもそうですが、個人的にパレオ好きなんですよね。
地味に好みを把握したり西瓜まで用意する、気遣い上手のナルニアは、居てくれないと困るレベルにランクアップ!



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