乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です 作:N2
また拙作を是非とも宜しくお願い致します。
オッサマー様、誤字報告ありがとうございました。
「遺体は王国軍とファンオース、それぞれに分けておけよ。捕らえたファンオース兵は、中破した飛行船に詰め込んでおけばいい」
王国軍王宮直上防衛艦隊で、小破含め戦闘可能な艦は十一隻。中破が五隻に残りは撃沈に大破といった状況であった。
十一隻は多少再編成を施した後、上空に浮かべて警戒体制を敷いている。
俺自身は一度、新ヘルツォーク艦隊の旗艦にダビデを預けて武器の補給と整備を頼んでいる。
先程までは王国軍兵や有志の学園男子がエアバイクを駆り、被弾した艦から脱出したファンオース残党兵の制圧を行っていた。
今は愛着深い古い世代の赤い訓練機で、地上への指示を行っていた。
「義兄上、地上は問題無さそうですね…… 何を飲んでいるんです?」
エルンストがエアバイクで俺の元に駆け下りてきたので、搭乗部のハッチを開いて姿を見せて手を振る。
一風変わった瓶に加え、俺があまりの不味さに顔をしかめていると案の定、エルンストも疑問を抱いたようだ。
「さっきは助かったよ。これか? 魔力回復薬だよ。まだ本隊は双方ぶつかっていないしな。念のためだ」
「あまりそういう物は身体に良くないと聞きますが……」
「魔力を回復させるだけだからな。しかもバーナード大臣経由で手にいれた白金貨1枚もする逸品だ。不味いだけで身体に影響は無いよ」
身体に影響が出る物は、文字通り反射神経向上や筋力増強、知覚力向上などのタイプだ。24時間戦うどころか短時間でボロボロになるだろう。
俺にとっては魔力回復薬が、勇気のしるしというわけだ。
「し、白金貨1枚っ!? 贅沢ですね……」
1本約四百万円もする謎薬だが、魔力があれば24時間戦えるからね。仕方ないね。
飛ぶだけなら24時間飛行しようと問題無いが、今回は小型魔力弾頭とスピアの同時使用、それに全速力での飛行もあり無茶をしたので、何が起きるか不明な戦場では、可能な限り回復させておきたい。
「辺境や貧乏男爵家の王都に住まう正妻への一月分の仕送り額みたいなものだからね。それに少し無理をしたから一応な」
半分ほど飲んだ所で、蓋を閉じてしまい込む。
「あの艦隊への突撃と同時攻撃は、遠目からでも無茶してると分かりましたからね。私の方は短時間の稼働なので、自然に回復するのに任せますよ」
ヘルツォーク家やその陪臣家は、基本的に魔力量が多い。
俺は学園では魔力量はトップクラスだけど、ヘルツォーク12家内では平均程度の筈。羨ましい事この上無い。
「ここはヘルツォークではないから、本来なら僕達が無理する必要は無い。ただ…… リオンには少しぐらい戦働きで借りを返さないとな」
「借り? ですか……」
「あぁ、修学旅行時のファンオース不意遭遇戦では命を助けて貰ったようなものだろう?」
あの時の借りを返すのであれば、リオンが総司令官のこの時がタイミング的にも良いと思う。名誉階級としての役職も無く、リオンが総司令官でもなければ、この戦いも新ヘルツォーク領軍として適当に熟していた予定だった。
「義兄上が寝ている間にリオンさんから聞きましたが、クラリス義姉さんが血を止めた時点で、義兄上の体力であれば問題無かったそうですよ。こちらもあの処置に安心はしましたが、念には念を入れてといった要素が強かったそうです。そこまで気にしなくてもいいのでは?」
そうなのか?
でもまぁ、あの戦いでマルティーナやクラリス達が無事に助かったのは、リオンのお陰なのは間違いないだろう。
俺はアンジェリカと共に迷惑をかけた側だから。
「リオンも気にしないだろうが、こういうものは返せる機会に返した方がいい。それに今回の件、皆があいつに頼り過ぎだよ」
「それ以前に縦深防御…… 防勢戦術教義があれば、これだけ広大な大陸です、超大型はまだしも他のモンスターや軍艦級飛行船ぐらいは削れたでしょうに」
エルンストは納得がいかないかのような雰囲気で首を傾げていた。
「経空脅威に対する本格的な防勢作戦が可能なのは、ヘルツォークやファンオースの…… 確かファンデルサールだったかな。そういった極一部だよ。フィールドやフレーザーですら甘いと言わざるを得ないからな。王都を我々と同じと考えてはいけないさ。先程の壊れた結界をお前も見ただろ? 驕りだよ」
机上で確認しただけだが、ファンオース公国が展開した20年前の防勢作戦は見事と言って他は無い。
「それでも
王都からフィールド辺境伯領までの本土大陸上の航路で、陣地用の浮島が存在しないのだから、エルンストのように拠点ごとに等間隔で、高射砲ぐらい設置されているほうが自然と考えるのも無理はない。飛行船の速度を少しでも落とすことがどれだけの価値を生むかという実感がないのだろうな。
それにしても
マルティーナと離れるというのは、学園入学以前から仕事上定期的に発生していたので慣れているが、クラリス達と知り合ってからこれだけの期間離れるというのは、今回初めての事だが存外寂しいものだな。
「義兄上?」
「ごほん、いや、王家の船だったか…… 未だ全容は不明ではあるが、リオンを見てわかるように使用可能なロストアイテムというものは、既存やその延長線上にある新規開発の兵器よりも強力過ぎるからな。驕りとは言ったが、彼等も仕方がないのかもしれない。それらに任せて他が御座なりになってしまうのも無理はない。我々の様に真面目に戦争をやっていると、金と労力が掛かり過ぎて頭も痛いしな」
「楽な方に流される。仰ることは分かりはしますが……」
エルンストも理解は示しているが、憮然とした表情は崩れない。
現状は長年ヘルツォーク領民に無理を強いている。しかもその事に対して領民が不満を抱いていないのが問題だろう。
だからこそ、王都に来ると何をもって彼らの幸せなのかが、俺自身よく分からなくなってしまう。
ヘルツォークの軍事における原則教理は、ホルファート王国とは似て非なるものだ。エルンストの理解がいまいちピンと来ないのもヘルツォークの状況を含めて良く分かる。
「義父上も言うように、ヘルツォークのドクトリンから、わざわざご丁寧に指摘して王国に教えてやる必要は無いからな。領民の素養ある人材を王立技術工廠に潜らせているのも、我々が王国自体よりも技術革新を先に進めて行くためだ」
要塞化させた大きい浮島をフィールドに辺境伯領として下賜してからは、王国本土に大した被害が発生しなくなったのが、王国の戦闘教義が発展しなくなった要因でもあるだろうがね。
ブラッドを見てしまうとあれだが、寧ろ歴代のフィールド辺境伯はよくやっていた。
「我々は王国貴族であると同時に潜在的には…… というやつですね」
王都大規模守護結界の
「そうならないに越したことはないだろうがな。なぁに、王国は強大だ。少しぐらい間抜けな部分があるほうが、外から見た場合、実に可愛げがあるだろう?」
「それでも、こちらから愛を囁くのは御免被りたいですがね」
肩を竦めながらユーモアで返すエルンストも相当に大人びてきている。
「言うじゃないか。だがその通りだ。嘲笑ってやるぐらいで丁度いい」
迎撃艦隊が王都郊外に集結しだしているのをエルンストと共に見据えながら、今暫し休憩と歓談に耽るのであった。
☆
天の守護者とファンオース公国が敬称する、超大型モンスターと共に航行中の公国軍本隊では、浮島型飛行空母で調整が終了した黒騎士、バンデル子爵が旗艦にてファンデルサール侯爵と顔を突き合わせていた。
「こ、このような世迷い言、信じるというのか!?」
たった今、ファンオース公国第三都市からの高速船が、群がるモンスター群に激突する勢いで公国軍本隊に到着し、公国首都と港湾軍事施設に第二都市が壊滅したとの報告を受けとっていた。
その報告内容に関する対応で、ファンデルサール侯爵と黒騎士バンデル子爵は揉め出している。
「今回、亀のように自領に閉じ籠っているフィールド辺境伯が動いた場合、我々はその対処も考えねばならん。王都まで駆け上がり蹂躙したとて、こちらも疲弊は免れん。そうなればこの本隊もジリ貧じゃ」
ファンデルサール侯爵は、この報告に関しては是非を問う必要すらないと考えている。仮に虚偽の報告で首都が無事なら良し。ここで引き返したとしても外交で有利な条約も結べる。
報告が本当であった場合は、フィールド辺境伯軍に備えなければならず、公国の復興を何よりも重大視する必要があると考えた。
どちらにしろ、この報告が来た時点で、後々の戦力保持のためにも戻るという必然が生じたのである。
死に体であったとはいえ、娘である公妃を犠牲にした価値は、ヘルトルーデとヘルトラウダの無事に見出だすしかない。ここで停戦交渉を行えば両者を無事に返還させる事も交渉案に含めることが出来よう。
そもそも王都強襲別動艦隊を編成する事すら、ファンデルサール侯爵は反対であったのだ。
「なればこそ! 王都へ一丸となって攻撃を行い、姫様方を救出した後、再度モンスターを召喚すればよいではないか! もし、この報告が事実であれば、益々王国とヘルツォークを許せる筈がないっ! 俺一人でも姫様の救出に向かうわい!」
周囲の貴族の大半は、黒騎士バンデル子爵の言葉に同意を示すかのように頷いていた。
強硬派で固められている公国軍本体において、戦場での指揮以外でファンデルサール侯爵に求められる事は無いのであった。
「バンデル、お主はこの戦争後に何を見据えておるのじゃ?」
深いため息を吐き出しながら、ファンデルサール侯爵は公国の元英雄、黒騎士バンデル子爵に問うのであった。
「何を今さらっ! 王国の貴族共を根絶やしにし、王国そのものを屈服させるのだ! 王国民をファンオースに隷属させた後、姫様方に各々の女王として王国と公国に君臨して頂くことこそが悲願。逆らう者共は老若男女、子供も問わず全て我が剣の錆に変えてくれるわ!」
「手始めに自らが仕える公王夫妻が暗殺されることも厭わずか…… 大した騎士道だな。大言壮語もそこまで行くと拍手すらしたくなるのぉ」
己の隣に虚ろな目で鎮座している元公妃に手を翳して視線を誘導させながら、ファンデルサール侯爵は厳しい言葉を黒騎士に投げつける。
「ぐっ、何が王国との和平だ! そんな惰弱な君主になど用は無いっ! 姫様方はご立派に対王国への強硬を理念としてご成長なされている。王国打倒に邁進し、その矜持を公国民すべてに抱かせることが公国の君主には求められるのだ! 我が剣はその先兵として幾億の王国民を切り刻んでやるまでの事よ」
黒騎士バンデル子爵の憤怒の気迫に当てられて、この場にいる強硬派貴族達も身動きが取れず、生唾を飲み込むことしか出来なかった。
そこに無遠慮ともいえる緊張感の乏しい下卑た笑い声を上げながら入室してくる人物が訪れる。
「ギハハハハハハ! 黒騎士の爺さんもいい具合にイカレてるんじゃねぇか。
「貴様はラーシェルの軍人
バンデルが剣のグリップ、いわゆる柄に手をかけるのを見ても、その男は全く動じる気配がなかった。
「あぁっ!? 待てよ黒爺さん。俺が用があんのは侯爵さんのほうだ。侯爵閣下さんよぉ、退職金を頂きに来たぜ」
「退職金じゃと? はて、ラーシェルからの派兵のお主らにそんな物を払う必要がそもそもあるのかのぉ?」
「知らねぇとでも思ってんのかい? 元々こっちゃぁ、派兵後は秘密裏にあんたらに組み込まれる予定だったんだ。空賊として王国の浮島を荒し、有事には軍人としてってな。ラーシェルの政変で雇い主から損切りさせられちまった俺らを、ラーシェルのお偉いさん共は、表向き公国への派兵としてこの戦争の前線で戦死させる。公国とそういう約定の筈だ。あんたらは一旦それを受け入れることを条件に派兵に加えて金の借款を組んだが、裏では空賊と軍人双方のノウハウを持つ俺らを王国に対して長ーく有効活用させたい――」
野卑な視線をその軍人擬きの男は侯爵にぶつけるが、どこ吹く風として侯爵は受け流している。
「――俺らとしちゃぁ、賊として略奪を楽しみ、特殊作戦部隊として軍内ででかい顔が出来りゃぁ万々歳ということであんたらと契約した。だがよぉ、契約先のその公国が先に潰れられちゃぁ、契約不履行もいい所だろうがよぉ」
「愚劣なっ! 貴様など栄えある公国軍に迎え入れるはずなかろうがっ!」
「おぉっと」
「ひぃっ!?」
黒騎士が柄から剣を引き抜こうとした瞬間、ラーシェルの軍人擬きは横に飛び退き貴族を盾にする。それを目にした黒騎士は、目つき険しく舌打ちをしながら束から手を離した。
それを目にした瞬間、その男は再び口を開いた。
「栄えある? ギハハハハハハ! あぁ、あぁ、栄えあるねぇ。平和な生活圏の浮島を人間ごと砲撃で吹き飛ばして浮遊石を略奪しちまうような下賤で粗暴な偉大なる公国軍様ってか! ラーシェルでも知られているぜ。そういう意味では、くっくっくっ、あーはっはっは! 確かに栄えがあるわなぁ、黒爺さんよぉ」
「愚昧が! 黙らんかぁっ!!」
黒騎士は物理的にその口を閉ざしてやろうと盾にされた貴族諸共斬り捨てようと剣を振りかぶった。
「止めんかっ!」
ファンデルサール侯爵の一喝が貴賓室全体の空気を震わせた。
一瞬動きが止まった黒騎士は、気を落ち着ける様に息を吐き出して剣を鞘に戻す。
「それで、お主の言う潰れた公国であれば、尚更お主に支払う必要がないとは思えるが?」
「外まで漏れてたぜ。そこの黒爺さんが一人でも姫さん方の救出がどうたらってな。俺達も陽動をやってやるってんだよ」
ファンデルサール侯爵は訝し気な視線をその男に向ける。間違ってもこの男にとってそのような無益な行動を取るようには思えないからだ。
「何を考えているっ! 魔装がある俺一人で十分だ。貴様など邪魔以外何者でもない! 撃ち落とすぞ」
「吠えんなよ。てめぇみてぇな木っ端貴族なんか、はなから相手する価値は俺にはねぇんだよ…… なぁ、侯爵さんよ。途中、王国本土から略奪した金品や食料があるだろうがよ。俺らの艦に最小限積めるだけで十分だ。それとあんたらの試作品も使ってやる。どうせあんたらは躊躇して使えないだろうからな」
ラーシェルの男の言葉にバンデルは驚いて問い質してしまった。
「試作品だとっ!? 誰を生贄にするのだ? まさか貴様らの仲間というわけではあるまい」
「あぁ、あんたらの言う王国の外道騎士だったか? そいつにやられて騎士生命を断たれた元黒騎士部隊員様の三人だよ。寧ろ志願してくれたぜ。こっちとしちゃぁ、ちょうどの数で大助かりだ。腕や足に後遺症が残っていようが何だろうが、必要なのはそいつが内包する魔力だからな」
航行、魔力シールド、攻撃の三つを人間タンクから強制的に吸い上げる試作品の鎧。鎧というよりも小型の戦闘船とも呼ぶべき代物だ。
主である搭乗者は己の魔力波で指示するだけで、ある程度操縦を自動的に行えるので、自身の魔力を消費する事が無いという驚異の兵装であった。バンデル達が魔装の調整を行う中、この男は今まで浮島型飛行空母でそれを扱う訓練に費やしていた。
魔石でもタンクの代用が出来る代物ではあるが、要は廃棄兵のほうが魔石よりも断然安いという事での供犠材料である。
「元とはいえ、我が部下を生贄に使用する気か!?」
「おいおい、一部とはいえ、その魔装の調整や装備に失敗して喰われた他の黒爺さんの部下達は、結局全員死んでんじゃねぇか。喰われんのと干乾びんのと、どう違うって言うんだよ。笑わせんじゃねぇぞ」
魔装の一部である右腕部を装備が出来た人物はバンデルのみであった。
当初は外道騎士に敗退して黒騎士の地位を剥奪されていたバンデルは除外され、本国から連れてきていた精鋭の黒騎士部隊員に装備調整をさせようと目論んだが、全員途中で死亡してしまいバンデルにお鉢が回ってきたというのが真相であった。
死んだ黒騎士部隊員も元々はバンデルの部下達であり、そこを指摘されるとその事については何も返せなくなってしまう。
「何故逃亡を選ばず戦場に向かう? それともそのまま逃げるのか?」
ファンデルサール侯爵は至極誰もが感じる疑念を質問した。
「あそこにはよぉ、いるんだよ。俺の全てを狂わせた赤い
天上を仰ぎ見て両手を広げながら下卑た笑いを浮かべるその男の異様な姿に、貴族達は身震いするような薄ら寒いものが、己の背筋を嘗め回すように這いずるのを顔を顰めて耐えている。
「この下衆が、軍人の風上にもおけん」
黒騎士バンデルの唾棄するように放った物言いに、その男は口角を引き裂くように不気味な笑みを浮かべた。
「そもそも順序がちげぇんだよ。軍人が先じゃねぇ。てめぇの欲が先だ。欲のために賊も軍人もやってんだよ! こちとら薄汚ねぇ浮浪児上がり。義務も義理よりもてめぇの欲が一等よ! 俺の部隊にゃそんな奴等の集まりだ。規律違反の軍人崩れや空賊、快楽殺人者まで何でもござれだ。そもそもよぉ、お貴族様っていうのはお国のために働くもんじゃねぇのか? 黒爺さん、あんたよぉ、俺らと似たような目ぇしてんぜ。貴族なんていう半端者な今のあんたの現状よりも、こっちのほうが似合ってんじゃねぇか? 素直に欲に従えよ。良ければ歓迎するぜ。ギハハハハハハ!」
「お主の好きにせい。陽動の後は何処へなりとも行って構わん」
黒騎士の殺気が振り切れる前にファンデルサール侯爵は許可を出す。
「侯爵!? このような下賤極まりない輩などに、好きにさせるというのかっ!」
「黙れバンデル。略奪品は公宮貴族院の差配事項、軍部ではない。この本隊には公宮貴族院所属の儂以上に上位の者は存在せん。この男の部隊も軍部ではなく公宮貴族院の命で手配されておる。お主ら強硬派といえども口出しはさせんぞ」
「公国のご依頼主さんは話が分かるぜ! まぁもっとも、くくくくく、その公国自体が無くなってんじゃぁ、俺にとっても意味がねぇがなぁぁ!」
下卑た高笑いと共に、元ラーシェル神聖王国軍所属、そして国家公認の秘密空賊であるシークパンサー首領の男は退出していくのだった。
退出を見届けた黒騎士はファンデルサールに向かって激昂した。
「一体何を考えている侯爵!? あんな輩を使うなどと正気とは思えんぞ!」
(貴様に正気を問われるのは片腹痛いがな。バンデル一人の襲撃で、ルーデとラウダを見せしめにその場で殺される可能性とてある。気を逸らす材料は多い方がよいだろう。バンデルを止めても儂の意見など通らんじゃろうからな)
「お主等とてあんな劇物と共に軍事行動など取れまいよ。であるならば放りだす方がよい。いざ接敵となった段階に勝手に動かれるのも困るであろうが。どうせ強硬派の主らでは、奴の手綱を握れんのが目に見えたではないか」
「えぇい、これ以上何もするなよ侯爵。そもそもお前には接敵時の艦隊指揮権しかないのだ。俺が姫様を救って来るまでそこに座っておれ。お前達、侯爵を見張っておけ!」
憤懣やるかたないとでもいうような足取りで、一部とはいえ魔装を取り込んだ黒騎士バンデルは出撃していくのであった。
あぁ、登場人物が男しかいない(泣)
一応ほぼ死体の元公妃がいますが嬉しくない(笑)
初出は第三話のシークパンサーさん。第87話でも話に上がりました。
もはやちょっと懐かしい(笑)