乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です   作:N2

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そろそろ、戦争本編を進めないとなぁとは思っています…… すいません。
もしかしたら、もう一話は戦後の一幕を続けるかもしれません。
エピローグ後も幕間はやる予定ですが、こういうお堅い部分を省いて日常回気味にしたいので、先んじて記載していっている感じです。
さすがに二年生編は、このような先取り形態はとれそうにもありませんし。

いつもお読み頂き、且つ変則的な進行にお付き合い頂き本当にありがとうございます。

以下、ただの小芝居

ミレーヌ「やってみせなさい、リック君」
リック 「何とでもはなりませんよ!?」
糞陛下 「強制だぞ」

₍₍ᕦ((▼w▼))ᕤ⁾⁾ ₍₍ʅ((▼w▼))ว⁾⁾

糞陛下 「逃がすか」

   ₍₍((▽人▽))⁾⁾
   ₍₍((▼w▼))⁾⁾

恐怖の妹「やってしまいます! こんな王国なんか!」(ブチギレ)

  ₍₍ ʅ((▼w▼))ʃ ⁾⁾

リオン 「ローランド・ラファ・ホルファート!」(出世させられた)

₍₍ᕦ((▼w▼))ᕤ⁾⁾ ₍₍ʅ((▼w▼))ว⁾⁾

リック 「爆弾を抱えさせられたんだ、色々とな」(女とか女とか)

₍₍ᕦ((▼w▼))ᕤ⁾⁾ ₍₍ʅ((▼w▼))ว⁾⁾
   ₍₍((▽人▽))⁾⁾
   ₍₍((▼w▼))⁾⁾

ルク君 「厄介なものですね。貴族というのは」

  ₍₍ ʅ((▼w▼))ʃ ⁾⁾

リック 「ここだろうが何だろうが地獄しかないぞ!?」

   ₍₍((▼人▼))⁾⁾
   ₍₍((▼w▼))⁾⁾

??? 「貴方には、死神が纏わりついているわ。エーリッヒ」

     (゚Д゚)



戦後の一幕2 王位継承順位

【王位継承資格順位】

 ① ホルファート王の長男。

 ② ①の長男及びその男の子孫。

 ③ ①の次男以下の男子及びその男の子孫。

 ④ ホルファート王の次男以下の男子及びその男の子孫。この場合、①から③までが準用される。

 ⑤ ①から④までにつき、王が自らの兄弟を後継者として選んだ場合には、当該兄弟が継承する。

 ⑥ ホルファート王の兄弟及びその男の子孫。この場合、①から④までが準用される。

 ⑦ ホルファート王の伯叔父及びその男の子孫。この場合、①から④までが準用される。

 ⑧ ホルファート王の長女及びその子孫。この場合、①から④までが準用される。

 ⑨ ホルファート王の次女以下の女子及びその子孫。この場合、①から④までが準用される。

 ⑩ ①の長女及びその子孫。この場合、①から④までが準用される。

 ⑪ ①の次女以下の女子及びその子孫。この場合、①から④までが準用される。

 ⑫ レッドグレイブ公爵家の継嗣以外の男子及びその子孫。この場合、①から③までが準用される。

 ⑬ レッドグレイブ公爵家の女子及びその子孫。この場合⑧と⑨に準拠し、①から④までが準用される。

 注 王太子が選出された時点において、協議の末⑤から⑦までの継承権は剥奪される。その他ラファ会議において、有事に際し認められる場合、⑧から⑪までの継承権は剥奪されるが、⑬に関しては、別途協議の上剥奪とする。

 附則 王国内事情における種々の状況に鑑み、ラファ会議により王位継承権に関しては、都度協議の上進めていくこともあることを留意する必要がある。

 

 わ‶っか‶ん‶ね‶っ!?

 

 そもそも俺が該当するのは⑫、ふ~ん、へぇ、あっそう、めっちゃ下じゃん。ぐらいの感覚でしかなかった。

 偉大なる糞陛下の庶子、というか男児も第二王子のジェイク殿下ぐらいまでしか記憶していない。ただし、ユリウス殿下が王太子を剥奪されたり、第一王女が婚約していたりとで、かなり順位に変化が生じているとは聞いている。

 それに実は、そこで()()()()()()()()()()で頭が一杯になっていて、俺自身はもうそれどころじゃなくなっていたというのが事実だ。

 

 「ち、ちなみに僕は何位なんでしたっけ?」

 

 どうせ十何位とか二十位程度だろう。三桁の可能性もありそうだしね。

 ちなみにユリウス殿下は俺の下だそうだ。マジウケる! 

 味噌っかす同士、仲良くしてやらんでもないかなと考えてしまうな。

 

 「王族(ラファ)会議で聞いていなかったのかい?」

 

 バーナード大臣は呆れている。

 

 「いや、ここ数年、第一王女のエリカ様の婚約やユリウス殿下の王太子剥奪の件で動きが複雑だから、後で過去の議事録を確認しろと言われまして…… 会議もつい先日でそんな暇なかったですし。どうせ末席なのだから、別にそのうちでいいかなと。あはははは……」

 

 議長を務めていた陛下がそう言い、周囲も特に物申す事がなかったので、さらっと流されたのだ。

 頭に疑問を浮かべていたのは、初参加となった俺とファンオース公爵代行殿だけだった。

 

 「私が伝手のあるラファから確認しておいて良かったよ…… 六位だ。まったく、陛下は戦争前の段階でかなり先を見越していたのだろうね」

 

 何故それを仕事に活用しないのだ、とバーナード大臣は憤っている。

 

 「……は? はぁぁぁぁああああ!?」

 

 お茶を含んでいなくてよかった。間違いなく噴き出してバーナード大臣に粗相をしてしまっていた所だ。

 

 「⑤から⑦はユリウス殿下が王太子に任命された時点で継承権が剥奪されている。王太子が解かれたからといって復帰させてはいないそうだよ。そしてフレーザー侯爵家と第一王女が婚約した時に⑧から⑪までも剥奪されている。これは後にフレーザー侯爵家の子に継承権が発生してしまうから当然ともいえる。まぁ、慣例という事だね。よって他の王女もこれを機にといった具合らしい」

 

 ローランド直系の男子とギルバート殿を除いたレッドグレイブ公爵家の子供しか、王位継承者がいないのかよ!

 最早、嫌がらせの範疇を逸脱しているぞ!

 

 「ア、アンジェリカはこの状況で王位継承権を何故、保持しているんですか?」

 

 「ユリウス殿下の暴挙で婚約破棄。その上、王位継承権まで剥奪したら、レッドグレイブの面子そのものが無くなってしまう。王位継承権を保持しているレッドグレイブ公爵家は、王族(ラファ)会議内で王家の次に権勢を誇る。そこは王族会議を構成する皆が配慮していたとの事だ」

 

 王族(ラファ)会議は王家直轄領と王族そのものにしか影響力、決定事項は無いとは言え、宮廷貴族で構成される王宮議会でも不可侵の領域。

 しかも今後は、取り潰しや転封で王家直轄領も増えるので、王族会議の重要性も高まるのが目に見えている。

 バーナード大臣のように大身の宮廷貴族は、名ばかりのラファ達とも付き合いがあるのだろう。

 王国本土内での政策で王家直轄領とも関りが出てくるので、そこは必然的にそうなっていくとは想像できる。

 

 「ユリウス殿下を除いた王子って五人だけですか? もっといそうなイメージでしたが……」

 

 俺の実母に粉かけようとしていたぐらいだ。正規の側室以外の女性とも子供を作っていそうなイメージがある。

 

 「勿論いるにはいるが、準貴族家出身やまして平民出の女性との子供には王位継承権は与えられない。政治的な道具にはなるがね。貴族家から迎え入れた側室との間には、今のところ五人しかいないんだ」

 

 あのタコ!

 じゃぁ、その五人以外の男子は、正に遊びでヤッてるようなものじゃないか!

 王様だから別にいいけど、ローランドがただ遊んでいるのはムカついて仕方がない。

 

 「しかし、会議内でこの戦争の件で僕を陞爵させることは無いと明言していましたよ。子爵で王位継承権一桁って…… ただ、宮廷階位を四位下に昇格させるとは言ってましたが」

 

 陞爵は、ヘルツォークを自らの裁可だけで動かした独断専行の件と相殺と言っていた。

 それは構わないが、宮廷階位を上げる意味はわからなかったのだ。相殺の件と昇格の件も粛々と決議は進んでいって、俺やファンオース公爵代行殿は蚊帳の外といった具合だ。

 ヘルトルーデが、「貴方も報われないわね。うちに来る?」なんて言っていたが、ファンオース公爵領復興だなんて、面倒臭すぎてやる気がしないので、丁重にお断りしておいた。

 それに既にヘルトルーデ公爵代行殿への婿入り相手は決定したのだ。まぁ、おそらく補佐に欲しいのだろうと思い、代わりにリオンを薦めておいてやった。

 今後は表面上、あいつって暇そうだしね。仕方ないね。

 

 「リック君の宮廷階位の件は、この後ミレーヌ王妃から説明があるよ。今はリオン君と打ち合わせしているが、そろそろこちらに来るだろう」

 

 キャッキャウフフのお茶会の閉めがミレーヌ様との打ち合わせとか、リオンと俺の温度差は一体何だろう?

 まぁ、いいか。俺もミレーヌ様との話し合いを楽しむこととしよう。

 お義父さんは退出してもよろしくてよ。

 

 

 

 

 バーナード大臣は退出せずに俺とともにミレーヌ様を迎え入れた。

 別に残念だとは思っていない。

 

 「時間を取って貰ってごめんなさいね。リック君もいくら治療魔法で快癒したとはいえ、まだ間もないというのに」

 

 治療魔法とルクシオン先生の処置後、翌日に目を覚ましてまだ数日。正直に言って身体は辛いというのが現状だ。

 ただし各所で忙しいので打ち合わせ等は参加している。半分はローランドの苛めだな。

 

 「会議程度であれば。半分はうわの空になってしまう時もありますが…… ミレーヌ様もお疲れのように見受けますが?」

 

 まだ血が足りないせいか、ルクシオン先生に処方された造血薬を服用している。

 

 「うわの空って、それは大丈夫と言えるのかしら? 情けないところを見せて重ねて申し訳ないけど、これからする話にも影響してくるのですよ」

 

 顔色が優れていないのが一目でわかる。薄幸な感じの影を背負っているような装いが、妙に男心をそそられてしまうな。

 新たに淹れられたお茶が美味しく感じられる。

 給仕が下がるとミレーヌ様は口を開いた。

 

 

 

 

 「ぶっ、ごほっ…… えっ!? 昨日未明、ユリウス殿下がヘルトルーデを襲撃したっ!」

 

 危うくミレーヌ様に紅茶をぶっかけてしまうところだった。

 

 「えぇ、今は牢に入れているわ…… リオン君とヘルトルーデさんが今頃話を聞きに言っています。情けない話、つい先ほど、彼に母としてユリウスを助けてほしいと懇願した直後です」

 

 憔悴したような表情を浮かべるミレーヌ様。

 詳しい話を聞くと、ユリウス殿下はヘルトルーデへの婿入りが嫌で、夜這いではなく本当に襲撃を企てたらしい。

 婿入りの件は俺も知っていた。王族(ラファ)会議で決定した件でもあるからだ。

 王太子では無くなったとはいえ、王位継承権を持つ正真正銘明らかである現ホルファート王の第一王子。ファンオース公爵領民を含めた、ヘルトルーデやファンオース公爵領自体を王国は軽く扱っていないという事を示す良い政治判断だと構成するメンバー全員が納得した。

 しかし、この襲撃の件でユリウス殿下の婿入りは白紙撤回。王宮も恥を掻かされ、締結されたファンオースとの条約も譲歩する結果となるだろうとの事だ。

 バカ殿がぁ! 

 結局その会議にまた俺も出ることになるだろうが!

 ユリウス殿下がどんなにアホでも、ミレーヌ様が母親という時点で、あいつには勝利が確定されている所が腹立たしい。

 くそっ、私の母になってくれるかもしれなかった女性だというのに!

 

 「困ったことに殿下以外の四人も問題を起こしてね」

 

 バーナード大臣もため息を吐きながら、四バカが起こした問題を説明してくれた。

 どうやら神殿の祭器、聖女のアイテムを回収しに来た神殿関係者を叩き返したらしい。ただしその中にはマリエに生きていてほしくない者達がいて、毒入りの酒を持参していたとか。

 神殿に処刑されると考えた四人は鎧を持ち出して、王都の神殿本部に殴り込みをかけるまでに至った。

 

 「マリエって今回の戦いでは最後まで戦場にいたんですよね…… 王国軍含め多くの人間が確認してますし」

 

 実はこの件はベストと言わないが、悪くはないとも俺は考えてしまう。

 王国本土端では聖女らしからぬ無様を晒したマリエだが、王都での迎撃では王家の船に乗って戦っている。多数の人間がそれを知っているのだ。

 マリエを殺したい神殿の人間は、王国本土端防衛戦で散った神殿の関係者かもしれないが、同じ神殿内でもマリエを擁立する派閥もありそうだ。聖女は信仰の対象として根強いし、王国の民だって今回のマリエの参戦もいずれ知るだろう。現に王都の民は既に知っている。

 正直に言って個人的には、宗教組織にこれ以上幅を利かされるのは真っ平ごめんだ。ならばマリエの身柄は王宮で預かるか、人知れず消すほうが無難だろう。

 俺の考えとしてもマリエは戦争も頑張っていたし、殺されるのは忍びないとも考えてしまう。

 

 「彼等六人の件は、王宮が便宜を図ることは無い。彼等は全方位を虚仮にしたも同然だ。後はリオン君がどう出るかだね」

 

 そう、バーナード大臣が言うように、あのお馬鹿ファイブは全方位を虚仮にした。王宮内ですら処刑を是とする意見が出てきても仕方がないだろう。

 これ、リオンでどうにかなる案件なのだろうか?

 

 「マリエが下手に神殿に担がれるのも個人的には困りますので、彼女だけならそれこそ王宮の目から離れているウェイン準男爵領で匿ってみては? あそこの娘、カーラさんもマリエと仲が良いみたいですし。あ、他の五人は遠慮します。カイル君だけはおまけでいいですけど」

 

 実は神殿本部からもヘルツォーク関連に領内への教会設立の打診が、一年程前から煩いぐらいなされている。元々がヘルツォークや俺自身にとってもいらない組織でもあるので、マリエが神殿側として確固たる居場所を確立されると非常に面倒だ。

 暗殺よりも余程この可能性のほうが、個人的には高いと考えている。

 

 「ユリウスの件がどうなるかですね。あの六人、引き離すと碌なことを考えそうにないですし――」

 

 確かに、無駄に優秀な面を発揮して大惨事を起こしそうだ。

 無能な働き者よりも、優秀で馬鹿な働き者が一番質が悪いな。優秀で馬鹿という一文矛盾が異様にしっくりくる不思議。

 

 「――リオン君とは別件で、リック君にはお願いがあるのです」

 

 眉が垂れ下がり、気疲れを表情に浮かべながら、胸元の開いた瀟洒なドレス姿でテーブル上を前かがみに加えて上目遣いで懇願してくるミレーヌ様。

 そうだ、リオンだけではなく貴女には頼れる人間が他にもいるのだ。

 ミレーヌ様に「私は永遠に貴方達の間にいたいの」などと言われたら、最強の天パとは違い俺は許してしまいそうだ。

 

 「是非、聞かせて頂こうではありませんか!」

 

 ただでさえ不足気味の血液が、頭から少なくなり何処とは口にすることも憚られる場所に集中していったため、眩暈を引き起こし思考が鈍化していく。何故か理由はわからないが、俺の視線はミレーヌ様のご尊顔と胸元から離せないのであった。

 普段だったら七十五分の一秒で胸元を確認して、視線は女性の目に固定するんだけどね。

 血が足りてないからね。仕方ないね。二重の極見(きわみ)が発動できなかったよ。

 

 

 

 

 テーブルの上には厚めの書類が二種類置かれている。ご丁寧にペラいちの任官証書などという見たくない文字まで見えてしまった。しかも三枚。 

 頭の中がぐわんぐわんと揺れだしてきた。

 

 「大丈夫、リック君? あのね、ユリウスの婿入りで王国とファンオース公爵領との融和実現のための象徴になる筈だったのだけど、ユリウスの件でご破算になるのは確実――」

 

 それはそうだが、俺には関係がない筈だし。

 

 「――ただ、ユリウスの婿入りとは別にファンオース復興に際しては、それだけでは心許ないという話になっていました」

 

 「そ、そもそもユリウス殿下は、象徴とファンオースの領民感情を抑えるためであって、復興人員は王宮の役人や治安維持、軍事統制のために王国軍やフィールド辺境伯軍あたりを派遣するのでしょう? 政治的な決定は、今後のためにもユリウス殿下やヘルトルーデ公爵代行殿も加わるのでしょうが……」

 

 ユリウス殿下もヘルトルーデ公爵代行殿もまだ御年十六歳。手厚い王国のバックアップ体制があって然るべきだ。

 

 「ファンオース公爵領は広大です。従来の統治機構が失われており、それを担っていた旧公国貴族も壊滅的な状況、ただでさえ現状隙だらけの所に即座に手を打たなければ、他国の介入を許してしまいます――」

 

 ファンオース公国の政治を担っていた人物達を建物ごとまとめて数百人規模で吹き飛ばした、とてもとても酷い輩がいるらしい。関係者や小役人を含めたら一万人を超えるとの事…… 何て勿体ない!?

 ヘルツォークだよっ! ってか原案は俺だよっ!

 

 「――ですので、元々復興統治責任者として軍事的な実績、そして領の統治及び発展の実績も兼ねたリック君の名前が挙がっていたのです。有力な王子が婿入りし、且つ王族が強権を以って軍政下に敷く。形の上では併呑していますので、軍政下に敷くのは復興までですけどね。その後は王宮から派遣される監督官程度でいいだろうと結論付けました」

 

 「じ、実績といってもほとんどが周りの手助けがあったからですよ。それに結局のところ私も殿下達と同じ年齢、舐められて統治どころでは済まなくなりそうですが…… 初老程度のラファに任せたほうがいいと思いますよ」

 

 実務面まで若造とか舐めてんのか! 王国やっぱり殺す!

 そんな具合にファンオース領民がなっても知らないぞ。

 

 「何を言っているのです? ヘルツォークの財政面と物質面での発展に寄与。それにまだ期間が短いとはいえ、旧オフリー領の改善策施行に事業面の管理監督、時に直接的な運営。戦争における事前準備に危機管理能力。戦略想定から戦術策定、そして何より貴方の名前があるだけで、ラーシェル神聖王国は二の足を踏みます。ヘルツォークと貴方の名は、レパルト連合国にまで知れ渡っているのですよ」

 

 そ、そんな頭のおかしい人、俺は知らない……

 

 「リック君、今は王国も各国境線で攻め込まれたりしている。造反した貴族達もいるんだ。中々ファンオースだけに人手は割けないのが現状なんだよ…… 情けないことにね」

 

 バーナード大臣から詳細な説明がなされた。

 聞く所によるとラーシェルとは逆側の空域でも普段大人しい中堅国が、ホルファート王国に対してちょっかいを掛け出しているらしい。それも複数。もはや四方八方からといっても大袈裟ではないそうだ。

 王国内の貴族の対処、ファンオース公国に蹂躙された王国本土の復興、各国境沿岸への王国軍の派遣などで、実は王国の内情も相当に切羽詰まっているのも事実。

 モットレイ伯爵家にフレーザー侯爵家、そしてヘルツォークが絡んだラーシェル神聖王国側が、比較的余裕があるのが皮肉が効いている。

 

 「一先ずヘルトルーデさんの婚姻関係は保留と公表し、王族で継承権のあるリック君を名誉中将に特進させて、臨時的に軍務審議官と外務審議官に任命します。ファンオース復興統治に関する全権を与えますので、何とか上手く対処して欲しいの…… 一応、王国内の態勢を整える期間も考えて、任期を一年と想定しています」

 

 ……! 一年!?

 短いのか、長いのか?

 違うちょっと待て、それって派遣されるって事だよね!

 

 「いや、ちょっと待ってください。さすがにそれ――」

 

 俺の言葉を遮るように室内にノックが響き渡った。

 つい反射的に言葉を飲み込んでしまい、ミレーヌ様は小首を傾げながらも入室するように促した。

 

 「失礼します。王妃様、バルトファルト卿がローランド陛下に話があるそうです。陛下からも王妃陛下とバーナード大臣も同席するようにとの言伝を授かって参りました」

 

 「あら! ユリウスの件で算段がついたのかしら! ごめんなさいリック君、先ほどの件お願いね。では、大臣も陛下の下に参りましょう」

 

 ササっとミレーヌ様は退出してしまった。

 

 「今後の君の躍進にも今回の件は大いに役立つ筈だよ。クラリスも納得するだろう…… リック君の領に関しては、私も責任を持って面倒を見るつもりだ」

 

 「ちょ、実は――」

 

 急いで声をあげたが、バーナード大臣も悪びれた表情を浮かべながらも、ササっと退出してしまった。

 

 「子爵!? 大丈夫ですか?」

 

 俺は眩暈が酷くなり机に突っ伏してしまった。

 伝言を携えてきた女中が慌てて声を掛けてくるが、いやに遠く聞こえるような感覚がする。

 

 「く、車椅子で治療院の僕が滞在している部屋に、送ってください」

 

 王宮の敷地内にある治療院から現状は活動している状況だが、吐き気もしてきたのでとてもではないが自力で戻れそうにない。

 

 「先日ティナが、身籠ったって…… クラリスも…… お義父さんに伝えれば、まだワンチャン。う~ん……」

 

 「し、子爵! すぐに車椅子を用意して運びます!」

 

 治療後に目覚めたら、妊娠したとマルティーナから伝えられたのだ。疑問に思うところが無いとは言えなかったが、魔力が感じられるとかどうの言ってた。間違いないのだろう。

 身重の妻達がいるんだ。彼女らがどう納得すると言うのだろうか?

 一年もファンオースなんて嫌だ! 誰が説明すると思っているのだ! 考えるだけで恐ろしい!

 

 嫌ぁぁぁぁぁぁああああああ!

 

 その辺りでプツリと意識が途絶えてしまった。 




ファンオースが完全敵対国家でしたので、外務省には対策局が存在しておらず、戦後直ぐにファンオース公爵領対策局が設置。
レパルト連合国局、アルゼル共和国局、ラーシェル神聖王国局、神聖魔法帝国局、その他各国統合局があり、その上に外務大臣、外務副大臣、外務大臣政務官、外務大臣補佐官、外務事務次官、外務審議官二人、そして各大臣級及び各次官級(局長より上位そして大臣補佐官未満が次官級と表現)秘書官がつきます。
ホルファート王国では政治機構と官僚機構が分かれておりませんので、事務次官の上の役職も上位として王宮内に存在します。例としてフィアのバーナード大臣ですね。改めてあの人やっぱり偉いんだな……

エーリッヒはアルゼルとファンオースを跨いで外交実務を行うために臨時的に外務審議官としての役職を与えられました。本来ならば宮廷階位四位上(状況次第で四位下でも可)からの役職になります。
全権大使はあくまで局付の外務トップですが、審議官は全権大使決議事項を飛び越えて相手国と自国との調整及び取り消し会合が行えます。
相当に相手国と大使に不満を与えてしまいますが……
アルゼル自体が王宮にとっても不測の事態になってしまいましたけど。

軍務省は主に国防政策・軍事建制・編制計画・動員計画・予算に関する事項、軍需行政を担当。
軍艦局、軍務局、兵器局、整備局 経理局、人事局、医務局があり、局長以上は各省の役職は同じとなっております。
ちなみに衛兵関連は内務省管轄になります。ややこしいですが、フランプトン侯爵が衛兵局を掌握できたのは軍務省と管轄が異なることが理由でした。
ファンオース公爵領の軍務関連の監査及び監督に関する全権をエーリッヒは与えられております。
軍政下における司令官の立場も兼ねております。

ちなみに普通クラスの生徒が仕官して宮廷貴族になった場合、課長補佐クラスで終えます。課長、部長や局次長以上は準男爵以上で世襲制。

ざっくりと王宮内における宮廷貴族の職位イメージを設定しております。

リオン君もなんかの副大臣とか政務官ぐらいやればいいのに(笑)

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