乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です   作:N2

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さて、そろそろ本編を進めないと。
お久しぶりです。そろそろ忘れられてしまったのではないかと冷や冷やしております。

ファンオース戦終了まで書き終えたら、この戦後の一幕に類する各話は並べ替えて後に持っていく予定です。


戦後の一幕4 姉妹の決意

 王宮内でのやり取りを思い出しつつも、改めて面倒事の一つである煌びやかちゃんとカチューシャちゃんの二人に意識を戻した。

 エヴァ・フォウ・ブラウン、レッドグレイブ公爵家の寄子であるブラウン伯爵家のご令嬢の煌びやかちゃん、そしてレッドグレイブ公爵家陪臣家筆頭パウラ家、アンナ・フォン・パウラ。フォンを冠しているが、下手な男爵家や辺境子爵家よりも余程力のある陪臣騎士家。

 領内のレッドグレイブ公爵家の分家筋にあたるカチューシャちゃんだ。

 

 「面倒だ…… 一途なのではないかと勘違いさせるような名前をしてるし。はぁ……」

 

 拳銃自殺をしないか不安になる二人の名前だ。いや、そっちのほうが俺には都合が良いのか?

 

 「でも、こんな所で身分の低い男達の接客なんて! 軟禁より扱い酷いじゃない!」

 

 「アンナ、落ち着いて。ねぇ、エーリッヒ君。何とかレッドグレイブに口添え出来ないかしら? 贅沢言わないから何処か辺境の男爵家か有力貴族の陪臣家に嫁がせてよ」

 

 レッドグレイブへの裏切りがなければ、エヴァが言うような婚姻は、彼女達にとっては屈辱的な状況だろう。

 だが事実上平民落ちした彼女らの身としては、甘いと言わざるをえない。

 

 「今の君達個人の身分は、平民と変わらない。今、王宮は専属使用人を廃止し、貴族男性は準貴族家からも正室を迎える事が公で認められるように貴族法を躍起になって改変中だ。僕達の代の上級クラス女子は、そもそもが忌避されるぞ」

 

 あきらメロン。

 

 「わ、私達の見た目だったら、欲しがる貴族家はある筈よ!」

 

 ヒス気味カチューシャのアンナが憤然としているが、学園に通ってる男子って文字通り君達のような美人を見慣れてるのだ。しかも中身の酷さも骨身に染みている。

 正妻にするなら、見た目より気立ての良い女の子のほうが、嬉しいのは間違いないんだよね。

 

 「下世話な話、見た目だけなら各々の領内からいくらでも探せる。それが領主の特権だろうに…… 今後は好んで派手に遊んでいた上級クラスの女性と結婚を選ぶ男はいないと思うぞ。見た目だけの女なんて遊ぶための使い捨てで十分だ」

 

 「そ、そんな簡単に…… 私は、見た目だけじゃない!」

 

 「お、男だって最低じゃないっ! だって私達は!? ……そんな、いまさら平民に何て」

 

 彼女達は貴族の中でも相当に勝ち組だった。

 生き残ったとはいえ早々納得できる状態ではないというのも分かる。ましてやよく知りもせず当主の命令に従っただけ……

 それでも命の危機が訪れてしまうのが成人後の貴族家の人間だ。学園の女性優位な状態に浮かされて、大人の、しかも男の貴族社会を読み切れないのが貴族女子の大きな欠点だろう。

 実際、下級貴族男性の貴族も酷い話、正妻に苦労させられるのは金銭面。自身の欲を満たすためだけであれば、領内で十分に事が足りる。

 領内の女性としても領主とそういう関係になるのはメリットが大きいのは明白の事実だからだ。領内の実質的最上位の妾でさえ、夫の女遊びには、夫の領主が一定のラインを弁えてさいれば黙認する事実がある。

 

 「……少々、君達に対しては僕も(しがらみ)がある。平民という立場を考慮するのであれば、数年後にはある程度の自由と幸せを約束しても構わない…… 君達とて政治の流れで不味い立場なのは解る筈。数年我慢すれば一個人としての自由と幸福、尊厳は守ってやるさ。そのほうが僕としても時間に余裕もできるし…… 波風も立たせなくて済む。だか――」

 

 「あら? それだと私の、あぁ、違うわね。()()()の意向が反映されなくて困ってしまうわ」

 

 店舗管理責任者である準男爵家出身のママさんは、女王のような威厳を振りまく豪奢な女性に恐縮していた。

 所詮、嬢王程度では、女王の足元にも雰囲気から発せられるオーラには及ばなかったか。

 

 「ち、この場所まで邪魔しに来ましたか……」

 

 つい、舌打ちが鳴るのを止める事が出来なかった。

 

 

 

 

 つい先日のファンオース公国のホルファート王国本土進攻戦にて、比較的軽微の損傷で済んだ王都は、この春休み期間に学園を来年度の通常再開に向けて準備を既に始め出していた。

 王宮から直接打診された学生や状況の機微に目敏い実家の学生達は、在校生や新入生が寮への滞在手続きが済んでいる。

 現状ヘルツォーク子爵家の嫡子であるエルンストも王宮、バーナード大臣から内々に伯爵家へ陞爵されることが伝えられていたため、学園再開は各種授与式の後でもあるので、学園寮は下級貴族の当主及び伯爵家の子息が利用する部屋を与えられた。

 

 「ラウダ公妹殿下に加えてメグが飛び級入学ですか……」

 

 「ヘルトラウダ嬢は王宮預かり、戦場で確保した手前表立って面倒を見るのはヘルツォーク家だ。身分も政治的立場も高いからね。こちらもプラスになるが彼女の護衛も必要という事に…… まぁ、なるのが必然だし、お前であれば申し分ない」

 

 体調も回復してきた俺は、エルンストのいち早い男子寮への荷解きを手伝い、そのままエルンストの部屋で今後の流れを説明している。

 部屋も伯爵家の出が使用する広いタイプ。下級貴族の当主である俺やかつてのリオンと同じ規模の部屋だ。

 

 「女子の護衛はメグとカミラ、それとナーダ男爵のご息女。男子の護衛は私とバロン男爵家のロタール…… ロタールはまだ実戦未経験ですよ」

 

 バロン男爵家は、ラーシェル神聖王国フライタール辺境伯越境戦で当主と嫡子が戦死しており、次男のロタールが跡継ぎとして学園の上級クラスに入学する。

 当主筋を二人も亡くしたバロン男爵家の支援はヘルツォーク子爵家と俺、金銭面は俺で人員はヘルツォーク子爵家が出している。

 俺と言っても金銭はヘルツォーク経由なので、バロン男爵家は全てヘルツォーク子爵家から支援が為されているという認識だ。

 だからこそ表向きは同盟領、実質は寄子の打診がバロン男爵家からあったため、冬期休暇にエルザリオ子爵と俺で道筋を整えて、エルンストとヘルツォーク陪臣十一家で実務面を担っている。

 ロタールは夏季休暇と冬期休暇、時間があればヘルツォークで訓練をエルンストと共に受けていた。

 

 「十八歳未満で実戦に投入するのはヘルツォーク本家ぐらいだ。彼も跡継ぎとしての自覚もあるし、あの訓練を受けているだけでも学園入学前では十分過ぎるさ。それにオリヴィアさんのような特待生も増やすらしい。彼等は年齢もまちまちだそうだから、特例とはいえ飛び級も問題なく処理されたそうだ」

 

 「本来のメグの代は王女二人に王子が一人いるんでしたっけ。確かにそこにラウダ公妹殿下が加わるのは…… 面倒な事この上無いですね」

 

 その他にも4バカの妹達や王子の乳兄弟がいる。しかも、リオンやお馬鹿ファイブにマリエ達がアルゼル共和国に留学、お馬鹿ファイブとマリエは、国内情勢が落ち着くまでの逃亡先という側面もあるが……

 

 実は、各方面から暗殺の恐れもあるマリエ含めた六人、ショタエルフのカイル君とカーラさんも付いてきたが、それらを交わすためにリオンが発見した浮島に保護することになった。彼らの助命嘆願のためにリオンが浮島を王宮に譲渡した経緯があった。

 もちろんヘルトルーデと神殿を襲撃した彼等五人は実家からまた廃嫡。ジルクは元々廃嫡されたままだったので、学園卒業後の男爵位は準男爵に降格されたそうな。

 ジルク、マジウケる。ただそこであのお馬鹿ファイブは、その名に相応しいお馬鹿をやりやがった。

 実家から支援が受けられない彼等の生活費は王宮からの予算で行われる。それをマリエの銅像を作るために瞬間で溶かしたのだ。これには王宮もミレーヌ様も大激怒。

 そこで、世間の感覚を学ばせるためにリオンが希望を出していたアルゼル共和国に同行させる事が急遽決定した。

 そして――

 

 「他国であの六人を見るのはリオン君だけじゃ可哀想だから、リック君も監督官として一月おきで構わないのでお願いね。彼等の生活面をチェックして、その内容如何で予算を増減させるわ。ファンオースの件で外務審議官の役職も与えてますし、アルゼルでの外交も頑張って! 宮廷階位四位下、中将で軍務審議官に外務審議官。ふふふ、よく考えたら凄い出世ね」

 

 キャハ!

 いらねぇぇぇぇぇえええ! そんな出世いらないっす!

 ミレーヌ様は俺の事が嫌いなのだろうか? ミレーヌ様のざっくりと空いた胸元を見てしまうと何も文句が言えない俺氏。

 俺は子爵…… 子爵とは一体?

 そもそもファンオースも公国時代にアルゼル共和国に領事館を持っている。今でもあるとはいえ手が回らないから無視するつもりだった。要は王宮に諮って引き揚げさせるか現状維持にするかどうかだったというのに。

 ただ、この件はリオンには内密との事。ゴネられてマリエ達を連れて行かなくなってしまったら困るそうだ。

 ミレーヌ様のリオンに対する扱いも酷いかもしれない。

 

 それは一旦さておいておくとして、エルンストが言う面倒にも更に続きがある。

 

 「リオン達の留学から着想を得たんだろうが、ホルファート健在を周辺国家にアピールするため、来年度辺りに他国から留学生を受け入れようなんて話も出てる…… ただでさえ同じ学年というのは彼等と絡む可能性も高いし、爵位が高ければ尚更だ。そんな所にメグとヘルトラウダ嬢を放り込みたいとは思わないよ」

 

 メグ、下の妹のマルガリータは独特な雰囲気で、いまいち何を考えているのかわからない。エルンストでさえ家ではからかわれて遊ばれている状況だった。

 カオスな世代に放り込んだら、俺の胃に穴が空きそう。

 

 「メグと同じ年齢…… 不安ですね」

 

 「気持ちは分かるが、要領はいいからな。やきもきさせられるだろうが、結局上手いことやる子だとは思いたいが…… だからこそ飛び級で学年を違えるのは良い案――」

 

 そこで部屋内に来客を知らせる呼び鈴が鳴り響いたため、エルンストとの会話を一旦打ち切った。

 

 「これ、良く書かれていたわ。王妃様からの言葉よりも経緯が明確になったわね」

 

 「しかし、これに使われているタイプライタ、三篇の最後にあたるヘルツォーク独立史。記載ミスが殆ど見当たらないのはタイプライタの機構が変わったせいでしょうか?」

 

 ヘルトルーデ公爵代行殿とヘルトラウダ公妹殿下が入室してきた。 

 

 「製本された物はヘルツォークにあるのでそれは草稿です。手書きの修正もあってお恥ずかしい。しかしよく気付きましたね。ヘルトラウダ殿の仰る通りですよ――」

 

 QWERTY配列。シフトキーによる大文字、小文字切り替え。Front Strike/Visible方式。タブ機能。

 これらを一つの機構で成立させたHerzog TypeⅢE。この機構で特許を取得しており、今では王国内で50%のシェアを獲得した。王宮や公的機関で便利だという事で採用されたことがシェア獲得に貢献したのが大きい。

 そこはバーナード大臣の権力と伝手が功を奏した。

 公的な書類や仕事上もタイプライタを皆が使うが、俺自身がどうにも使い勝手が良くなかったので、ヘルツォークの技術部門に相談して作ってしまったという経緯でもある。

 しかも需要がかなり見込めたため、ポータブルタイプも特許取得して製造しているのもシェア獲得の一因だ。

 

 「――タイプライタの製造はヘルツォーク、販売はリッテル商会。特許は僕がメインで持ってます」

 

 ヘルトルーデとヘルトラウダは、ファンオース公国におけるヘルツォーク史、ホルファート王国におけるヘルツォーク史、そしてヘルツォーク独立史の三篇を今まで読み込んでお勉強していたというわけだ。

 製本はヘルツォーク家にあるが、草稿は俺個人が持っている王都の倉庫にあったことを思い出し、ヘルトルーデはファンオース公爵領に戻るので、姉妹の語らいの時間を頂戴してお二人に学んで貰った。

 

 「考案元の義兄上が特許収入を半分しか貰わないので、姉上が私は恵まれ過ぎているって、私に対するあたりが更に厳しくなりましたよ……」

 

 「あぁ、共同出願者にお前の名前とバーナード大臣を出願時に記載しておいたからね。50%が僕で25%はエルンスト、残り25%はバーナード大臣だ。冬休みに出願、製造。販売先シェアの確保は大臣の力が大きい。大臣の名前に関しては、クラリスへのポイント稼ぎも当時はあったけどね。それにお前の学園生活での費用やメグも同時期になるとは当時は思わなかったが…… それも賄えるだろう。ティナには、僕のほうから注意しておくよ」

 

 それに表向きな収入を裏でヘルツォークに流すのは面倒でもあるので、民間護衛組織も含めて運営元はヘルツォークでもあるし、タイプライタも製造がヘルツォークであるのであれば、特許権の一部を持っているほうが後々の利便性も高くなるだろう。

 バーナード大臣の名前記載は、彼の名前があれば方々の面倒事が容易になるという点を見越した。後は、こいつと娘を婚約させて良かったと思ってもらうためのゴマすりの要素も占めている。

 

 「貴方はこれらを編纂しながらそんなことまでやっていたの? まぁ、貴方の仕事の一端が知れてよかったわ。その調子でファンオース復興も宜しくお願いするわね」

 

 「公爵代行殿に喜んで頂けたようで何より。ただその三篇は、ヘルツォーク開祖が関わる公国独立直前の大公家の状況だ。古い時代の大公家とホルファート王国との関りが知りたいのであれば、ファンオース城の書庫をあたった方がいいだろう。城は無事だしな」

 

 俺が発した城は無事という部分に両姉妹は痛みを堪えるかのような表情を浮かべる。

 

 「お姉様、ファンオースの苦しい状況をお姉様一人にお任せしてしまう不甲斐ないラウダをお許し下さい」

 

 「いいのよ、ラウダも王都の学園では針の筵でしょう。心を強く持って健康には気を付けなさい。それに王族(ラファ)会議に出席する折には貴女に会いに行くわ」

 

 「ヘルトラウダ殿に関してはそこまで心配する必要はないだろう。後見はヘルツォーク、今のヘルツォークに表立って面倒を掛けてくる家はない筈だ。伯爵家にも陞爵される事も大きい。それにファンオース復興に際してはヘルトラウダ殿の名前も大いに活用する。君もファンオース復興に外からだが力添えできる」

 

 俺の言葉にピンとこないのだろう、ヘルトラウダ嬢は小首を傾げている。

 

 「私の名前?」

 

 「そう、君は存在しているだけで大いに力になれるんだよ。実感は中々その時になっても湧くことは難しいだろうがね」

 

 ファンオース復興でヘルツォークが動いた場合の要因はエルンストとヘルトラウダの功績にする。ファンオース領民は俺や親父を恨もうが、次代のエルンストには感謝し、人質のような立場のヘルトラウダが、それでも苦しい中、ファンオースのために行動していると涙するだろう。

 今後のファンオースに対するヘルツォークの関わり方を軽く説明してあるヘルトルーデは、何とも言い難い表情を浮かべていた。

 

 「義兄上、そろそろ時間では?」

 

 「そうか、二人に草稿も読んで貰った事だし、最後の式典に出席しようか」

 

 本日は午後から褒賞に褒章、各種授与が行われる。

 暫く静養のため王宮の一室に軟禁状態で政務? のような仕事に参加しつつ他の式典にも出席。

 俺自身の体調が回復してからは、自領の仕事やエルンストへのヘルツォークの業務の引き継ぎ等で忙しかった事もあり、リオンやマリエと話をする時間が取れなかった。

 ファンオースとの行き来をスムーズにするために、あの駆逐艦型高速船の速度強化も急ピッチで進めた。

 元々が兵装を取り払っているためその分軽く、砲弾の積載も必要がないので、高速型の駆逐艦の二倍の速度で航行可能だったが、今では通常の高速型駆逐艦の三倍の速度は優に出せるようになっている。強度も元が軍艦なので問題にならなかったのも急ピッチで進められた要因だ。

 

 「二人は心情を鑑みて出席義務はないがどうする?」

 

 俺はヘルトルーデとヘルトラウダに問い掛けた。

 

 「……出席するわ」

 

 「お姉様!?」

 

 ヘルトラウダが驚いたように俺も内心驚愕で目を見開いてしまった。

 俺だったら両姉妹の立場では絶対に参加したくないが……

 

 「いいことラウダ。屈辱はしっかりと受け止めて耐えなさい。それすら出来ないのであれば、ファンオース復興など到底出来ないわ。悔しさを力に変えなさい。今日私達に向けられる王国貴族達の蔑み、軽侮(けいぶ)する視線を忘れないように。いつか彼等の視線を畏敬の物にしてやるのよ」

 

 「っ!? はい、必ずや」

 

 彼女達は一皮も二皮も剝けたのかもしれないな。

 

 「本意では無かったとはいえ、僕もファンオース復興に携わる…… 畏敬? ヘルツォークも絡めた戦々恐々な物にしてやるのも一興かもしれないね」

 

 僕が浮かべた笑みを見たヘルトラウダが一歩引いてしまった。

 酷い…… 僕の笑みはクラリスやマルティーナに評判が良いというのに。

 

 ヘルトルーデはエルフの里での事をふと思い出す。

 

 『いずれ貴女には人生の転機が大きな困難と共に訪れる…… 困難と同時に貴女は運命の相手と出会います。ただし貴女の運命は大きく揺れ動く、運命の変遷によってはその相手も変わるでしょう。困難の度合いは貴女の選択によって大きく変わり、運命の相手の手を取る事さえ出来れば、瓦礫の中からでさえも一筋の光を見出すことが可能となるでしょう…… その相手が勇者でも、例え悪魔でも……』

 

 「……そういえば、悪魔と契約した者ってその後は幸せになるのかしらね?」

 

 「お姉様? 物語では結局、打ち倒されてしまうのでは?」

 

 どうした急に?

 

 「悪魔は契約を遵守するというので、契約が続く限りは幸せなのでは?」

 

 エルンストが律義に答えているが、俺もエルンストの意見に賛成だなぁ。大人になると無茶振りする天使や神様よりも契約というルールを遵守する悪魔のほうが、個人的に好ましいし親近感も湧くというものだ。

 

 「でも、周りが不幸になってその契約した者だけが幸せというのもね…… 最終的には身の破滅を呼びそうなものだけれど」

 

 「公爵代行殿が何を思ってそんなことを言うのかは不明だが…… ならば自分が必要とする周囲も含めて悪魔と契約でもすればいいのでは? 世界は広いとはよく言ったものだが、個々人が関わる世界、形成する世界は存外小さく狭いものだ。ならば個人が大切にする世界全てを悪魔と契約すれば幸せになるのでは? 悪魔と契約していようといなかろうと、この世界は争いで溢れている。客観的に見て正しい領や国が滅ぼされることも現実としてままあるというものだ。納得は出来ないがね」

 

 ファンオースの苦難に心痛めて御伽噺にでも逃避しようと言うのだろうか?

 

 「……なるほど。悪魔とダンスを共にする器量が必要になりそうね」

 

 魔笛であんなモンスターを呼び出せるお前ら姉妹が悪魔みたいなものだけど。

 ヘルトラウダは頭上に疑問符を浮かべて困っているが、一人納得したヘルトルーデは俺達を急かすように退出していった。




ほんの少しだけ時系列を変化させております。

Herzog TypeⅢE 3Eはエルザリオ、エーリッヒ、エルンストの頭文字です。
モデルは1900年アンダーウッド社製になります。
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