乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です 作:N2
原作様の登場人物の設定とは、異なってくる部分が出てきます。
あくまで二次創作上の設定です。
ご聡明な読者様方には、ご寛恕くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。
【人生の墓場へようこそ】
そう書かれた我らが偉大なる糞陛下からの手紙をアインホルンの甲板上にて、リオンから借りて読ませて貰っていた。
「墓場…… あいつだけ未来、というか異世界に生きてるんじゃないのか?」
リオンが腹立たしげに吐き捨てている。
「ダヴィンチだって、結婚ほど愚かしいものはないって言ってたみたいだからなぁ、生涯独身の癖に…… いや、独身だからか? でも貴族にとって貴族間同士の結婚は義務だから、愚かどころか墓場ですらないんだけどな。自身が言う墓場内とやらで、宴会騒ぎしながら遊び放題のあいつは、一体何を言っているんだろうな」
ローランドの言いたい事はわかるが、このホルファート王国だと結婚しないわけにはいかない。平民でさえ、かなりの率で結婚しているのだ。
「しかし、この歳で婚約っていうのもなぁ」
歳か…… 王国の英雄殿は遊び足りないのかな?
「あの婚約式で扉を開かれた後もバタバタしていたのは笑えたよ。それに素晴らしき結婚は、盲目の妻と耳の不自由な夫との間で生まれるんだって。リオンは幸せな結婚が出来るよ」
サムズアップして答えてやった。
「五月蝿いな、あんなの普通ビビるだろうが…… 俺は何も聞かされてなかったんだし。それより何それ? どこ情報?」
「モンテーニュだったかな? ほら、オリヴィアさんはリオンに盲目っぽいし、リオンは難聴系じゃん! ピッタリだね」
ウインクしてやった。
ぐはっ! リオンに蹴られた。
難聴系じゃなく鈍感系だったか。
「お前だけには言われたくないぞ!」
「そ、そういえば終戦直後、アトリー邸に行った時――」
ローランドの手紙の影響か、誤魔化すために会話の流れでリオンに話をしてしまった。
☆
「もうお父様も知っているわよ」
「形は大事だからね。一応僕のほうからも正式に伝えた方がいいだろう?」
ホルファート王国の大臣職に歴代就いているアトリー家。今ではすっかり慣れてしまったその立派な屋敷のリビングのソファーにて、クラリスと共にバーナード大臣がいらっしゃるのを待っていた。
「私は、まだ貴方に静養していて欲しいのだけれど…… 修学旅行での戦いについ先日の戦い。傷は治療魔法で塞げても、まだ疲労は残っている筈なのに」
「この混乱した状況だ。そうも言っていられないさ」
治療魔法で、
「……やっぱり、病院の特別室にでも閉じ込めた方がいいのかしら? 手足を
ふぁっ!?
「ク、クラリス! 怪我っていうのは、適度に動いた方が治りがいいんだよ」
たぶん。
最近はマルティーナはもちろん、ヘロイーゼちゃんでさえ俺を軟禁する方向にシフトしそうなのだ。ナルニアはその件に関してはノーコメントだし。
ペロッ、と舌を出してあっかんべーをしながら言うヘロイーゼちゃんは、愛嬌がほとんどだろうけど。
仕事を理由に何とか自由を得ている状態だが、おかしい……
俺は学生じゃないのだろうか?
「で、でも! そうしたら暫くゆっくりと一緒に過ごせるじゃない」
少しいじけ気味にむくれているクラリスはとても新鮮で可愛いが、言っている事はかの有名なMISERYさん案件だ。
クラリスやマルティーナになら、もうそれもいいかもなどと思ってしまう俺は、既に手遅れかもしれない。
「王国本土は復興やらで忙しいだろうけど、夜には時間は取れる筈だから。僕がするような事は無いだろうしね」
王国本土復興用にリッテル商会の手引き、本家ヘルツォークの鉱物や鉄鋼関連の納入に関するエルンストへの段取り。引き続き新ヘルツォークで王都決戦前に受注していた王都や王国軍への物資納入ぐらいだろう。
まだ退院したばかりで
まさかあんな辞令が下るとは、思いも寄らなかった。
「クラリス、お義父さんを待つのにこの態勢は…… 話の内容も内容だし、離れたほうが……」
「うふふ、イヤよ」
クラリスは珍しく甘えん坊モードで、俺の右腕に抱きついたままソファーに座っている。
「僕個人としては嬉しいんだけどね」
姿勢を正したかったが、クラリスの手前いまいち締まらない態勢のままバーナード大臣が入室してきた。
「君も大変なのに足を運んでもらってすまないね。今日は改めて報告との事だが?」
「はい、クラリスの妊娠の件です。婚約式すらもまだだというのに。申し訳ありません」
戦後のバタついた最中に発覚したのだ。
気付いた切っ掛けはクラリスの自覚症状からの医師による診断ではなく、マルティーナだった。
「婚約の件も
褒章関連の式典前にと終戦直後から開かれたラファ会議では、毎回俺も相当に腸が煮えくり返りつつも頭と胃が痛くなったので、喜んでばかりはいられないんだよなぁ。
まだクラリス達に伝えていない事項もある。公言解禁は正式辞令が降りてからだ。
「マルティーナが言うには、大別して男と女では魔力の質が決定的に異なるそうです――」
性別判断に関しては、高位の王族や上級貴族は宮廷医師に診せるとは聞いた事はある。
話を聞いた時は、陰と陽の気みたいな感じかなと圧倒されたもんだった。
確かに受精した段階で生物学的には雌雄は決定されるが、前世でさえエコーからの形、付いているかいないかでの判断だったというのに、我が妹様は頭がおかしい。
「――まだ性別はお義父さんに伝えていないとの事だったので、改めて報告にきました。お聞きになりますか?」
戦後直ぐはクラリスの機嫌も悪かったが、マルティーナと会って妊娠の件を伝えられてからは、すこぶる機嫌が良い。
「あぁ、頼むよ。クラリスがリック君の口からと言って勿体つけてね。気になって仕方が無かったんだよ。それにマルティーナ嬢も懐妊したそうじゃないか」
マルティーナはファンオース首都撃滅作戦決行後、ヘルツォーク子爵領に戻ってから気づいたそうだ。
マルティーナに関してはまさかのホールインワン。
学園に託児所があるとはいえ、学園在学中に妊娠するのは大変だろうからと、卒業するまでは避妊薬を服用する筈だった。
神殿と王国共同製作の魔法薬。各国にも同様の物があるが、服用したら三日間は妊娠しない優れ物。避妊用のゴムが無いので、イタす前かイタした後一日以内で服用すれば妊娠しない優れ物だ。
遊びまくっている王都に住まう貴族女性や学園の女生徒には必須アイテム。
そう、筈だった。
服用する筈だったのだ。
マルティーナは緊張と興奮によって、避妊薬の存在すら意識の中からお空の彼方に飛んで行ってしまったのだろう。何となく想像は出来る。
意外な事にクラリスも緊張や興奮、バタバタしていた事もあって、何度かクラリスとは既にイタしているが、忘れてしまう事があったらしい。
クラリスが初めて見せたおっちょこちょいな所が、けっこう可愛いいのでホッコリしてしまった。
ヘロイーゼちゃんだけが言い付け通りに服用しているそうだ。言う事を聞くしっかり者な一面に嬉しくなった。
ヘロイーゼちゃんはジト目でクラリスとマルティーナを見ていたけど。ジト目可愛い。
「クラリスは男の子。マルティーナは男の子と女の子の双子のようです」
「うふふふふ!」
クラリスが上機嫌なのは、一先ず男子を身籠ったからだろう。貴族女性は相当なプレッシャーだとも聞くから、安堵の念も強いみたいだ。
欲張りな我が妹様が、ご満悦なのは言うまでも無い。
「おぉ! それは幸先がいい。君の血縁が多くなるに越したことはないからね。我が家も十分な支援を約束しようじゃないか。式典などが終われば、王国内の貴族家も整理されていく。大変な中とはいえ朗報だよ。私も仕事のしがいが出てくるというものだ」
満面な表情を浮かべて喜ぶバーナード大臣の顔を見る事ができて、俺の肩の荷も降りたといっていいだろう。現金ではあるけど、支援の確約も嬉しいし一安心だ。
☆
「どうだい? 潔いだろう? それに子供は卒業後の予定ではあったけど、結果としては良かったかもしれない」
胸を張ってリオンに報告した。
「マルティーナさんはともかく。クラリス先輩は狙っ――」
「ん?」
リオンが俺から聞いた話を咀嚼したかと思ったら訝しみ出した。
「――いや、何でもない。ってか妊娠って!? 身重の奥さん達を放っておいて、単身赴任とか俺よりヤバくない?」
達、という所に業が深い気がしないでもないが、気にしないようにしよう。
クレアーレ博士からマルティーナは妊娠四週目、クラリスは十週目だと聞いている。クラリスは悪阻も始まり出していた。
クレアーレ博士とは、リオンが聖女(偽) 親衛隊の隊長としてエルフの里の古代遺跡で発見したらしい。
ルクシオンと同時代に研究所として新人類との戦争終盤に活躍していたそうだ。
どうも口振りからすると魔素に強く魔力適正も高いエルフ種や亜人種を製作していたとか…… とんでもないMADである。
最強のコーディネーターとか作れそう。
俺が何かの弾みで死んじゃったら、全裸の器として復活させて貰おうかな。
そんな危険で軽めの女口調の人工知能のクレアーレに対して、俺は一応敬意を込めて研究所のAIとも言うので博士と敬称を付けて呼んでいた。
「僕はファンオースとアルゼルとで忙しい…… ホルファートを呪い殺したいぐらいにね。ほれっ」
あぁ、ヤバいさ。
ヘロイーゼちゃんは可愛くも心苦しいレベルの反応だったが、クラリスとマルティーナはマジでヤバかった…… いや、たぶん今現状でもヤバいのだ。
俺自身も多少苛立たし気にリオンに用意したものを放り投げた。
「え!? 何これ?」
「臨時アルゼル共和国特命全権大使のバッジだよ。10年間外交進展の無い前全権大使は大使に降格だ」
俺の突然の言葉にリオンは鳩が豆鉄砲を喰らったような表情をし、絶叫が響き渡った。
「な、なんじゃそりゃぁ!? おいっ!」
リオンが叫ぶ心情もわかるが、王国にも事情がある。
「純然たる伯爵という立場で、ただの学生として留学なんて出来る筈がないだろう? これはもう、お前の功績や希望云々以前の対外的処置だ。王国に所属する伯爵、しかもリオン、お前は英雄だ。お前自身の背後には、望む望まないに関わらず常に王国がある。向こうもそう見ざるを得ないだろう。全権大使というのは、アルゼル共和国に対する牽制の意味合いも大きい」
「いやいやいや、責任めっちゃあるじゃん!? ていうか……
リオンが周囲を見回して人がいないことを確認し、それでも声のトーンを落として続ける。
「ほら、共和国があの乙女ゲーの二作目の舞台で、確認しとかないと気になるって。そんな無茶苦茶な役職なんかに気を回せないぞ」
危険が危ないってか?
ぶっちゃけ共和国がどうなろうが王国にとっては魔石の輸入先が減るだけで、常から依存しているわけではない。増産体制の拡充なりで対処は可能な問題だ。
「まぁ、これはお前の行動にも責任が発生するという意味合いが近い。一先ず安心しろ。爵位はお前が上なのに申し訳ないが、僕自身が外務審議官の役職を与えられている。外務省内でも僕の上には五人しかいない。こと外交に関しては僕の方がお前よりも上位の役職だ。責任は僕が取るから、お前も自覚して欲しいという事だよ」
糞が、ローランドの奴、嫌がらせに能力を全振りしていやがる。
「な~んだ! 先に言ってよ。責任取る立場がいるんなら一先ずは安心だわ。そういうのは先に言うんだぞ! 全くリックも人が悪い」
ヤレヤレみたいな態度を取り出しやがった!?
こいつっ!? そもそもお前が留学するなんて言わなければ、俺はファンオースに専念して、時折自領に戻って婚約者達といちゃらぶ出来たんだぞ!
「ちなみに僕はファンオースの関係で、軍務審議官の役職も与えられて派遣されるんだ。一月おきにファンオース公爵領とアルゼル共和国を! アルゼルはお前が起因してるんだけどな!」
軍務省と外務省の次官級の役職を二つとか有り得ない。
俺が仮に過労死した場合の要因はローランドかと思っていたが、実はリオンの件も大きいのでは無いだろうか?
「やっぱりさ、俺は思うんだよね――」
リオンが神妙な態度で俺を真っ直ぐに見つめる。
「――世界平和って尊いなって!」
キラッとしたその笑顔に初めて拳を叩き込んでしまった。
「ぐはっ!?」
「ふ、ティナとクラリスが王国を滅ぼすという恐怖を考えるんだな」
俺はキメ顔でそう言った。
「嫁の管理ぐらいお前が何とかしろっ!」
殴り返されてしまった。
ふぅ、少し考えただけで膝が震えてきてしまったではないか。
「リオンには一つアドバイスをしてやろう」
「どうした急に」
人生の先輩として、そしてやはり可愛い従弟に対して教えてあげた。
「女の子は抱いた後の方が大変だ。実は抱く前には兆候は有れど、ヤンデレ化もメンヘラ化もしないのだよ。よく覚えておけ」
口元を拭い、老成された雰囲気を醸し出しつつも忠告をしてやる。
アンジェリカは普段めっちゃ強気だけど、ただの可愛い依存系っぽいが、オリヴィアさんはヤバそうだからな。
「ど、どどどどどどどど! 童貞じゃないし! へ、変な心配しなくてもいいし!」
何故か斜め上の反応を返されてしまった……
え!? それってもしかして前世でも…… 俺はリオンの名誉のために思考を放棄してしまった。
色々と先取りしました。
暈している部分も多いですが、二年生偏とでもいうべき先々の内容にもこの話の設定は適用されていく感じです。
悪阻が始まったクラリスはお預けですが、ティナはそれでも母体に負担が掛からないように求めたそうです。
ナニがなのかなぁ(笑)
メンヘル(メンタルヘルス)とそういう女の子に限って頭がメルヘンチック(お花畑)という事、そしてメンタルやられているという言葉の三者が合わさって、20年前にはメンヘラという言葉がさるチャライ系の方々では言われておりました。
後は男に依存するお金持っているお嬢様系ギャルを総じてメンヘラ系って言ってましたね。ひどいな
アニメやギャルゲー界隈より全然早いよ。
敢えて言おう! オタク業界よりも先取りであると!
ちなみにそのころヤンデレは無くて、あいつ病んでるよなぁぐらいでした(笑)
念のためですが、前書きに重ねて申し上げます。
原作様の登場人物の設定とは、異なる部分が出てきます。
あくまで二次創作上の設定です。
ご聡明な読者様方には、ご寛恕くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。