乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です 作:N2
今回のお話も九割はオリジナルです。
ホルファート王国王都の学園では、新入生の入学で賑わっていた。
昨年の学園全体から見れば、日和見や爵位の剥奪、処刑含む取り潰しになった貴族家に戦死した学生、そして四月から専属使用人制度の廃止に伴い、在校生の感覚で言うと人そのものが学園から減り、物寂しい感傷に浸ってしまうであろうが、新入生、特に男子学生は希望と興味に満ち溢れていた。
今年からは特待生の数も昨年のオリヴィア一人から、数十人規模に増加しているのも上級クラスの新入生が賑やかな要因の一つだ。
そんな中、生徒全体を取り纏める立場となったアンジェリカは忙しくしていた。
三年生のクラリスは身重であり、二年生といえど公爵令嬢という爵位的な部分に加え、王国の英雄であるリオン・フォウ・バルトファルト伯爵の婚約者として周知されていることも大きいからだ。
「クラリスは柑橘系を含んだハーブティーか」
「つわりがね…… ティナさんは紅茶でいいそうよ。けっこう個人差が出るみたいね」
入学式を終えて一週間が経ち、後一週間もすれば新入生達も授業の選択等が済みだす頃合いだろう。ただし今年度からはお茶会への誘い方が全学年通して未知数であり、新入生の女生徒から率先して先輩を誘うアグレッシブな人物も見受けられた。
「トラブルも既に何件か発生していますね」
表情の固いマルティーナが学園の状況を伝えてきた。
優雅な所作ではあるが、固い表情のせいもあって非常に硬質的であり、慣れない人間であれば近寄りがたい雰囲気を発している。
クラリスもマルティーナのそれよりも幾分柔らかいとはいえ、マルティーナと似たような雰囲気を発しているからこそ、アンジェリカは辟易としてしまう。ただし文句が言えないのは、原因が明白であるからだ。
そう、エーリッヒが王国にいないことが彼女達の機嫌を悪くしている。
アンジェリカやオリヴィアもリオンがいないので、同じ気持ちと言いたいところだが、質がここまで異なるのは、身体を重ねたか否かという違いなのだろうかと熟考してしまう。
「特待生と貴族出身のトラブルという事か……」
アンジェリカはため息を吐いてしまった。
平民出では数少ない冒険者としての成功者を特待生として招いたが、その人物は現在十七歳だ。
その他にも大手商会の子息に冒険者ではないが、ファンオース公国の王国本土における侵攻で荒らされた土地の平民出身、その者は領主家で余っていた鎧に無断で搭乗してモンスター相手に活躍した。しかもその後に王都迎撃戦に参戦して、生き残った経緯を評価されたからこそ特待生になった者もいる。
公爵令嬢のヘルトラウダにしてもそうだが、今年度は王国と学園の態勢も変わるという過渡期、だというのに癖のある人物たちが入学していた。
そして――
「僕が一番、鎧を上手く使えるんだ!」
茶髪で癖の強い天然パーマの特待生が、エルンストとその背後に寄り添うヘルトラウダに対して吠えたのだった。
☆
貴族家の出であるエルンストと平民出身の特待生が、正に今トラブルに発展しそうな頃、クラリス達とアンジェリカ達は女子会と言う名のお茶の場で、話に華を咲かせていた。
「お前達はまだいいではないか。エーリッヒも月末に一度は
「羨ましいです。リオンさんのお顔だけでも月一で見たいですよ……」
アンジェリカとオリヴィアは、月一でエーリッヒと顔を合わすことの出来るクラリス達が羨ましいようだ。
「えぇ~、リックさん凄く面倒な役職で大変なんですよ。絶対無茶するから…… だったらバルトファルト君に代わって欲しいんですけどぉ……」
オリヴィアの安直な意見にヘロイーゼは、ぶー垂れるように反論する。
「それであれば、そもそもご主人様も王都に居る事が出来たんですよね。伯爵のバルトファルト卿とご主人様を他国に追いやるとか…… 王宮も贅沢な人の使い方をしますね」
リオンが自ら留学を希望したことを知らないナルニアは、客観的に王宮を批判してしまう。
「……心配よね」
「えぇ、心配ではありますが、わたくしは
クラリスの呟きにマルティーナは喧嘩を売るような事を言う。
「よ、よく言うわねティナさん。闇より深い愛情で、リック君を捕えようとする癖に」
「お兄様を自身の闇より暗い沼に引き摺り込もうとするクラリス先輩よりマシですが」
エーリッヒが居ないことによる機嫌の悪さが、クラリスとマルティーナ間での戦いを勃発させていた。
「「ふふふ、うふふふふ、うふふふふふふ」」
そう、この二人は地味に相性が悪いのだ!
恐らく誰もそのことには気づいては…… 誰も? いない?
その部分は色々な意見があるだろう。そう、ある筈であろうから一先ず置いておくとしよう。
ナルニアはそんな二人を見てため息を吐くだけで済ませてしまう現在は、当初に比べて相当に図太くなっていると言えよう。
「そうだな。リオンも心配だが、マルティーナの言うように仕方ないと割り切るのも重要か」
アンジェリカは即座に理解するが、この場には理解していない人物もいる。
「「そういうのも? 仕方ない?」」
ヘロイーゼとオリヴィアがシンクロして小首を傾げている。
ピキッと青筋を立てるクラリスとマルティーナを見て冷静になっているアンジェリカが苦笑しながら教えた。
「浮気の事だリビア。まぁ、エーリッヒもリオンも男だから致し方ない部分もあるとは思うがな。節度…… 自身らの立場と私達に対して、分を弁えて遊ぶなら認める度量の大きさも必要と言う事だ」
アンジェリカの言葉にマルティーナとヘロイーゼ、それにナルニアも嫌々ながらも認めるといった感じで息を吐きだした。
しかし――
「リ、リオンさんはエーリッヒさんと違ってそんなことはしません! それに浮気はめっ! ですから」
オリヴィアのエーリッヒに対する扱いが酷い。
そして唯一先ほど反応しなかったクラリスは――
「アンジェリカの言葉は模範的だわ。オリヴィアさんのは微笑ましくもまだまだね」
オリヴィアに対して小娘の甘酸っぱい嫉妬と言わないのはクラリスの良心だろう。そして促進性の添加剤に火を点ける。
「抱かれるとわかるわよ。あの熱に質量、そして甘美な言葉を知らない女に囁かれるのは我慢がならないって! あぁ、ごめんなさいねアンジェリカにオリヴィアさん。まだ、二人はわからないものね」
クラリスは憤り、二人にマウントを取る。
そして先ほどは、嫌々ながらもエーリッヒの多少の遊びは仕方がないと結論付けたマルティーナにヘロイーゼ、そしてナルニアの嫉妬心に火を点けてしまう。
更に未だにリオンに抱かれていないアンジェリカとオリヴィアの瞳からハイライトが消えてしまった!
頑張れエーリッヒ、負けるなリオン!
まだ君たちは潔白だ!
今は、まだ……
☆
義姉や姉達の女の愚痴が咲き誇っている最中、エルンストは激昂する少年の特待生と相対していた。
「君は?」
鎧を一番上手く使えると言われてしまえば、身分を問わずエルンストも黙ってはいられない。
何故ならその言葉は、吐き出した当人が意識しなくとも、自分が尊敬する義理の兄、本当の兄弟として育った経緯のある人物よりも強いと公言されたと同様であるからだ。
「僕はアームロング。平民出だが、鎧の腕を買われてこの学園に呼ばれた! そこの可憐な女性に乱暴は許さないぞ!」
「アームロング君か…… 君が何を憤っているのか、私には見当がつかないよ」
アームロングと名乗った人物は、視線をエルンストの背後にいるヘルトラウダに向けながらも器用にエルンストを睨んでいる。
「僕の事はアムロでいい! お前がその女性に高圧的に接したことを僕は許さないぞ! 恐らく高貴な出身であるのに彼女は、可憐で慈しみ深く僕に接してくれた優しい女性だ!」
その言葉にエルンストはヘルトラウダを見やるが、ヘルトラウダ自身も小首を傾げてしまう。その仕草は可憐で表情とボリュームがありすぎる胸とのギャップが暴力的だ。
現にアームロングと名乗った人物と共にいる特待生の新入生達は頬を染めだしている。
「ラウダ様、何か覚えは?」
昨日、ヘルトラウダがエルンストやロタール達と合流する前に学園内で迷っていた人物を案内したのが彼ではあるが、身分云々含めてヘルトラウダは公爵令嬢といえども敗戦国の姫だ。
自分自身自重しようという念と緊張のためアームロングが平民と知らずに丁重に接しただけであった。
そして平民出のアームロングは、発するオーラと見目麗しさで一目で判別可能な高貴な女性のヘルトラウダに一目惚れしてしまったのである。
そしてエルンストに控えるように楚々として歩くヘルトラウダを見て、アームロングはエルンストが虐げていると都合の良い自己解釈をしてしまったようだ。
実際はエルンストが、小柄でグラマーなせいで足元が同年代の女性よりも危ういヘルトラウダを考慮して歩調を緩めている。
マルガリータと同様のGカップもあるヘルトラウダは、足元が見えづらいと妹のマルガリータが良き例となって認知しているからこその配慮であった。
「……エト殿、私に様付けや丁寧な言葉は要りません。爵位を超えて立場としては貴方様が私よりも上なのです。ヘルツォークとファンオースを取り巻く状況を鑑みて下さいませ」
ヘルトラウダは確かにこのアームロングという学生を覚えてはいるが、特段気に掛ける人物ではないと解していたため、この場において彼に視線も合わせず言葉すらも投げかけない。
加えてヘルトラウダは旧公国の姫として負けた身だ。しかもエルンストよりも年下であり、戦争に政治にと心身を削る男性を立てるという価値観で生きている。
未だ十五歳という身で、柏葉付き騎士殊勲十字章と艦隊指揮殊勲十字章、空戦突撃章銀賞の略綬を制服に佩用しているエルンストに対しては、かつて敵対していた人物と言えども畏怖と敬意を拭う事の出来ない教育で育っている。
ただしエルンストとしては、姉と妹を知っており尊敬するエーリッヒから王国の男性と女性の関係性を知らされている。そしてファンオースとヘルツォークの関係性に父祖たちの想いを馳せるとはいえ、まだそこまで深く隔意は持てない。
歴史上の大元を考察するに、自分自身とヘルトラウダは同じであると少々親近感が湧いてしまうという柔軟な感覚で認識していた。
「言葉遣いは気を付けますよラウダ様。ですが貴女も卑下する必要はないでしょう。義兄上がファンオースに対して上手くやると私は確信しています。貴女も思う所はあるでしょうが、自然体で構わないと私は思いますよ」
「エト殿…… 甘いですよ。貴方様はヘルツォークのなのです。公でその優しさはご自重下さったほうがいいでしょうね」
互いにクスリと笑いあう姿にアームロングは腹が立って仕方ない。
だが彼の背後では一緒にいた特待生たちは気が気ではない。
「なぁ、アーロン君。彼を止めて貰えないか? 僕は父からヘルツォーク、そしてエーリッヒ卿との顔繫ぎを頼まれている。アムロ君が絡んでいる相手はヘルツォーク伯爵家の嫡子の筈だ。冒険者で名を馳せた君なら鎧の才能があるアムロ君を抑える事も出来るだろう?」
戦々恐々としながら事態の推移を見つめる彼は、ホルファート王国が誇る四大商会の血筋に連なる人物だ。兄がいるが王国に影響力多大な血筋だからこそ跡継ぎでは無いとはいえ、特待生として招集された人物でもあった。
現状の王国においてヘルツォーク、ひいてはラファとなったエーリッヒと懇意、せめて顔繫ぎをしたいというのは当然の思惑である。
(ちっ、馬鹿言うな。一年なら俺よりも二個下だが、ヘルツォーク? 絶対にやり合いたくない手合いじゃねぇか)
アーロンと呼ばれた冒険で功績を上げた特待生は心中で舌打ちする。
「俺は単独でダンジョン攻略をしたが、鎧は知らねぇ。平民だからな。ただよぉ、大概のダンジョンの知識は潜ったことが無くても知っている。ダンジョンのランクって知ってるか?」
「僕も大商会の血筋だ。知っているよ。SABC、このランクで発見されているダンジョンは別けられているね。アーロン君は単独でCランクのダンジョンを攻略した。Cランクでも一人でというのは、歴史上でも両手に納まる。尊敬するよ」
長めの前髪を手で優雅に払いながらアーロンを褒め称える。
「よく知っているな。ありがとよ。だがな…… 完璧に攻略されて尚、未だにSランクを付されたダンジョンなのがヘルツォークの【
アーロンの物言いに大商会の血連の特待生は生唾を飲み込む。
(まぁ、俺は転生者だからこそこの世界で満足するために稼いで遊ぶのが目的だ。あんな所作と内包する魔力量の化け物とは関わらないのが得策だろうよ)
自身が備える実力のせいでエルンストを正しく理解するアーロンは、この場は押し黙って遊んでやろうと考える女子どもをエルンストに注意しながらも物色し出すのだった。
「横暴ですよ! 受け取ってください! お前のような横暴な男から、可憐な君を救って見せます!」
茶髪の天然パーマのアームロング君は、エルンストに対して白い手袋を投げつけたのであった。
140cm代でGカップはヤバい(笑)
個人的には140cm代だとEカップしか知らん(笑)
めっちゃ細身のEが…… 一番バランスいいよね(笑)拙作のマルティーナかな?
でも細身のFって至高だと思う(笑)拙作のクラリスかな?
ノリが良くて天然あざといDも最高だと思う(ヘロイーゼちゃんw)しかも漏らす(笑)
ドMのプリ尻秘書とか鼻血物だけどね(ナルニアァァァアアア)