乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です   作:N2

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次話で王都とアルゼルの描写に移行します。

すいません、戦闘シーンが書きたくなってしまい、2話後ぐらいのお預けになってしまいます。
本当に申し訳ございません。2022/08/08


第120話 四月、ファンオース国境防衛

 朝、執務室で書類の山を片付けていると隠れるように覗いてくる人物がいた。

 

 「何だ公爵代行殿? 遠慮するとはらしくないじゃないか」

 

 領内のゲバルト、要は貴族による政治的思想から起こる内ゲバは、前のファンオース公国王都侵攻戦内における、首都撃滅において強硬派がほぼ一掃されたため起こっていない。

 ただし、国境の脆弱さを突いてラーシェル神聖王国が、浮島強奪を目論んでいるためにその軍務処理で追われていた。

 今までの旧ファンオース公国とラーシェル神聖王国との金銭借款やレンドリース関連、公国は技術供与をしていたが、それ以上に金銭の借款と兵装供与のほうが遥かに大きい。

 ラーシェル神聖王国からしたら、それでホルファート王国の軍事力消耗に防衛力の散漫を引き起こすことが出来る。十分に自国のメリットが大きいからこそであったが、ファンオースが公国から公爵領に併呑された事により、俺の権限で過去の対国同士の契約を全て白紙、要はラーシェル神聖王国からの()()()()()を踏み倒すと宣言した。

 だって契約主体のファンオース()()は消滅したからだ。

 勿論、はいそうですかとラーシェル神聖王国側が納得するわけがない。直ぐ様軍事行動を起こしてきた。

 俺からすれば、その分ヘルツォークの空域の圧力が減るので申し分ないという事だ。そしてファンオース公爵領もラーシェル神聖王国に対して、ご丁寧に返済出来る現状では無い。ファンデルサール侯爵もヘルトルーデも飲み込むしかないというのが実情だ。

 

 「……頭、どうやら正常に戻ったようね。安心したわ」

 

 「君に肩まで揉ませたことは申し訳ないが、僕は冷静だったよ…… そう、冷静にアームロングとやらを誰にも気づかせずに抹消しようとしていただけだ。死体含めて痕跡を残さないようにね」

 

 そう言った後に何故かサインの筆圧が強くなってしまった。

 

 「この三週間で貴方の対人、しかも暗闘能力の異常さは思い知ったわ。暗殺者17人、捕えて処刑に利用した者は11人。2人は恥ずかしい事に城勤めの女中で、腱と舌を断ち切った後に復興作業地区の娼館行き。そして4人はその場で仕留めた…… 手紙に書かれていたあんなぽっと出の平民に意識を割くのはおよしなさいな」

 

 呆れた声の中に畏れを滲ませてヘルトルーデは入室してきた。

 甘いなヘルトルーデ、そうやってレベル1の勇者を放置するからダメなんだ。勇者が出たら、レベル1の時点で魔王が直接赴いて処断すれば、後はヘルツォークの楽園だ。

 あれ? ナチュラルにヘルツォークを悪魔の軍勢扱いにしてしまった…… これは良くない。

 俺が認識するヘルツォークはコミュニスト共が宣う、まやかしの楽園ではない。俺にとってのアルカディアそのものだからな。

 だからこそ、ファンオースもユートピア程度にはしたいものだが…… 

 そう、貨幣性も勿論許そう、まぁ王国所属だから致し方ない。表面的な財産共有制は否定しようじゃないか。だがその実、根本をヘルツォークの意向が最優先される。ヘルツォーク主体に視点を変えれば、ファンオースの貨幣性も財産共有制すらもヘルツォークの恣意性で左右してやるという事だ。

 フハハハハ、まさしく俺やヘルツォークのユートピアにしてあげようじゃないか。

 俺そのものが力を失うか、死んだ後は両領がやりやすいようにしたらいいだけだ。しかもそれ以前に、俺以上にエルザリオ伯爵かエルンスト、もしくはその両名が人道的にファンオースを扱うだろう。

 何故なら、俺には無い明確な遺伝子、人種を祖としているからだ。そう、ファンオースとヘルツォーク間では、王族(ラファ)自体が外からの遺物。要はただの取るに足らない外的要因だからだ。

 

 「大丈夫だよヘルトルーデ、ファンオースの幸せは、俺の存在でもって約束しようじゃないか」

 

 ラファのみだけで薄くファンオース、そしてヘルツォーク開祖と繋がっているとはいえ、ラファと知られてしまった俺は、実母の件を抜いたとしても、本質的にヘルツォークからは憎まれる存在だ。

 俺を受け入れた彼らが、聖人レベルで懐の広さと人が良いだけ……

 ヘルツォークの人達の良心に甘んじてはいけないと常々思う。

 

 「その笑み…… いいわ、でも忘れない事ね。ファンオースは、ヘルツォークの大元。血や肉、魂の根幹が同じなのよ。貴方の独りよがりが通じるのかしらね」

 

 ヘルトルーデが不敵に微笑む。

 軍人、そして狂った人殺し…… 恐らくこの世界で、それらの忌むべき最たる俺に対して退かずに屈せず、真っ向から言葉を投げかける事が出来る彼女を見てしまうと……

 

 「自分に…… 血が流れていないのを疎ましく、劣等感が拭えないよ」

 

 小さく息を軽く吐き出すように呟いたその声は、直ぐに室内に掻き消えてしまう。

 

 (は? はぁぁああ!? 何よその弱弱しい笑みは! 貴方、そんな人物じゃないでしょうが!!)

 

 ヘルトルーデが驚いているが、俺自身は確かにラファではある。しかしファンオース、そして勿論ではあるがヘルツォークの血は入っていないんだよ。

 レッドグレイブの歴史において、眼の上のたんこぶとして存在したファンオースとの婚姻はしなかったからだ。本家も分家も。

 両方とも公爵、かたや大公だ。傍系含めて記録は詳細に残っていた。

 俺の実子証明時に調べた結果、残念ながらファンオースとヘルツォークの血縁は、俺の中には無かったよ。

 

 「貴方って、実績の割には案外小さい事に拘るのね…… あの王国の英雄殿は、そういうのを気にするタイプではなさそうだけれど。気にするのは本人ばかりなりとはよく言ったものだわ…… はぁ、それよりも国境を黙らせて欲しいわね。御爺様は領内の説得と取り纏めのために地方都市間を内游。私もそれに附いていって演説を行うわ…… 王族(ラファ)会議出席のため、五日後にはファンオースを発って王都に行かなければならない。貴方がいるうちに何とかして欲しいわね」

 

 ヘルトルーデは腕を組みながら、お前は大丈夫なのかと問うように見据えてくる。

 

 「公国国境警備艦隊とフィールド辺境伯軍で奮戦して押し留めている箇所か…… ラーシェルも踏み倒し宣言と王国の混乱時期という事で本腰をいれて来てるな。一応、僕と侯爵で膠着状態を維持出来ると見越してはいるが……」

 

 かつてのファンオースは、周辺諸国から見ても規模的には小国だった。ラーシェル神聖王国とは、対ホルファートという外交カードで友好を築いていたが、その他の国とは特段友誼を結んでいるわけではない。強いて言うならアルゼル共和国との経済取引程度。

 ファンオースを獲ろうとラーシェル神聖王国とホルファート王国以外の国々からも脅かされる事が、殊の外多いというのは統治に関わるようになってから知った。

 そこで、ファンオース軍精鋭として黒騎士部隊と双璧を成していたのが、東西南北に司令部を持つファンオース国境警備艦隊。

 ファンオース中央軍はもはや見る影もないが、防衛本部に属する国境警備艦隊が健在、そして防衛本部長のファンデルサール侯爵も生き残っている。

 旧ファンオース公国軍参謀本部第二部員からなる、防衛本部機構が機能しているため、何とか国境線を維持出来ていた。

 まぁ、敵国の攻勢が強い箇所に穴埋めとして、フィールド辺境伯軍を運用しているために維持出来ているとも言えるが。

 首都防衛司令部及び中央防衛軍は、ホルファート侵攻への増員に駆り出され、残りは首都撃滅により壊滅。

 

 「貴方のせいで、国境警備艦隊には予備が無いのよ。貴方がアルゼルに離れた場合、フィールド辺境伯軍の意識散漫、ラーシェル神聖王国の攻勢が強まる事が想定されるわ。正直、フィールドの士気が下がれば、ラーシェル神聖王国側の防衛司令部は陥落するわよ。本島にまで手を伸ばす可能性も……」

 

 ラーシェル神聖王国はそこまで強引に事を進める国じゃない。良くも悪くも暴力より外交で利を得たい国だ。

 長年ヘルツォークと小競り合いしているが、ヘルツォークが王国から見放されていたため、外交で賠償金や浮島が取れない。ならばとフレーザー侯爵領にちょっかいを出そうとしたら一大艦隊が必要になる。そうなれば王国は戦争に舵を切る。

 たが、ラーシェル神聖王国側としても王国との国境で軍事の手を抜いてしまうと、ホルファート王国とレパルト連合王国に外交で付け込まれる。

 実際のホルファートの外交力はあって無いような物だが……

 ラーシェル神聖王国フライタール辺境伯軍との戦争で、ラーシェル神聖王国から賠償金が支払われたのは、ミレーヌ様がレパルト連合王国も動かして外圧を掛けたからだ。

 ファンオースは王国所属の公爵領となった。少ないながらも王国軍も派遣しつつ、統治官としてのラファも赴任させた。

 ラーシェル神聖王国としては、ファンオース本島にまで手を伸ばす気は無いと確信してるが…… 

 その辺りは侯爵とも見解は一致してる。踏み倒した借款関連があるので、こちらは気にせずに外交で賠償金の額をある程度落とし所を付けて行けばいいという認識だ。

 だからこそ、無理に損失を出すようなこちらから攻勢に出ず、膠着状態を維持するに努めているのが実情だ。

 

 「今は公国とは違う。ファンオースも王国の一部だ。踏み込む深さは、ラーシェル神聖王国も神経を擦り減らしている筈だよ」

 

 「そうかしら? 国内の復興に粛清等、王国もファンオースも規模こそ違えど状況は同じ。本来的には今がラーシェルにとって攻め時…… でも頑強なフレーザーとヘルツォークの国境よりもファンオースのほうが圧倒的に手薄じゃない。王国が来ない、そんなふうに結論付けられたら溜まらないわね」

 

 ふむ、ラーシェルは王国が嫌いだが、同時に恐れてもいる。野蛮だと揶揄するが、いうなればそれは強さに恐れている裏返し。

 ただし状況判断がまともであれば、ラーシェルにとっては攻め時でもある。レパルト連合王国への対応力を残してもファンオースぐらいは墜とせるだろう。

 

 「しかし、侯爵とも僕の見解は一致したぞ。踏み込んでこないのは王国を恐れているからだと。だからこそ、国境警備を担う国境防衛司令部がある浮島か、その近辺の軍事用の浮島で手を打つつもりだと……」

 

 「貴方がいるからに決まっているじゃないの。お祖父様も防衛戦略で編成と補給、動員計画。要は内的戦略思考がメインで外的は戦術思考…… 貴方のほうが、敵国の心因要素を勘案するのが得意でしょうに。何故、敵国の自分に対する評価を加味しないのよ…… 貴方って偶におバカよね」

 

 溜息を吐きながら、腕を組んで肘先を指でトントンしだした。ちょっと機嫌が悪い仕草だ。

 

 「失礼な! まだ未熟だったとはいえヘルツォークにいた時の僕は、確かにラーシェル神聖王国にとって脅威だったかもしれない。だが、勘違いしているようだから言っておくが、ラーシェル神聖王国が真に恐れているのは義父上、エルザリオ伯爵だ。二十一年前のファンオースとの戦争の後、自領に戻った義父上は、負傷して瀕死の先代に代わり国境防衛を最前線で鎧に搭乗して指揮を執った。話にしか聞いていないし、敵の詳細は不明だが、ラーシェル神聖王国の聖騎士とやらを一騎打ちで討ち取り撤退させた。それ以降ラーシェル神聖王国は、エルザリオ伯爵を恐れて探り合いをメインとした小競り合いしかしてこなくなったんだ」

 

 ヘルツォークにとっての地獄の四週間。

 ファンオース派遣で十隻に減らされ、ヘルツォーク防衛艦隊二十隻も戻った時には十隻まで損失していた。

 派遣残存艦隊と残存防衛艦隊を編成して十隻でラーシェル神聖王国軍三十隻、後詰の十隻を退けた消耗戦。疲労困憊のエルザリオ伯爵が、温存されていた敵のエースオブエースのような相手を討ち取ったからこそ、ラーシェル神聖王国も退いて終わることが出来た戦いだったのだろう。

 ヘルツォーク内では若い人間は二年前のフライタール辺境伯越境戦が記憶に新しいが、三十代後半以降は今でも地獄の四週間が語り草となっている。

 まぁ結局、親父が哨戒にまでは出陣することがなくなって五年、油断していたヘルツォークを待ってましたと言わんばかりに空賊を兼ねた特殊部隊、シークパンサーに襲われてヘルツォークらしからぬ姿を晒してしまったわけでもあるが。

 

 「……魔王ブルートロスト(血錆)。ファンオースでも勿論、知っているわよ。騎士らしからぬ戦い方に込められた皮肉な名ね。でもね、ラーシェル神聖王国は諜報も周辺各国内では随一よ。第一陣の私との遭遇戦、そして本命の王都侵攻での戦い。詳細な結果は既にラーシェルの本国で知られているでしょうね。そして第一に彼らが警戒して恐れるのは、守護神様を倒した王国の英雄殿ではなく貴方だと思うわ」 

 

 理解できない次元を超えた頂上同士の戦いよりも、結果として理解の及ぶ俺の方が現実味があるという事か。そこを突かれると、国内及び王宮対策として、黒騎士バンデル撃墜の手柄をリオンに押し付けたという、同様の判断をした俺からするとぐうの音も出ない。

 

 「……しかしねぇ、公爵代行殿。王国やヘルツォーク(我々)は、ファンオースを復興する立場にいるのだから……」

 

 個人的には攻め側に転じたくはないと考え、政治家っぽく適当に誤魔化そうとしてみたが――

 

 「じゃあ、貴方がアルゼル共和国に向かった後は、私が司令官として旗艦に乗艦して対処するわ」

 

 は?

 いきなり撃たれたような気分を味わった。

 

 「自分の立場を理解しているのか? ルーデ、言葉というものはよく咀嚼し、吟味してから口に乗せるように」

 

 全く、リオンにも伝えてあげたい言葉だな。後、マルティーナにも。

 二人とも「はいはい」と言って流しそうだけど。

 

 「王国の英雄殿にも感じたけど、自分に向かって投げつけているように思えるわ。流行っているのかしら?」

 

  こ、このアマ!

 

 「ぐ、じゃ、じゃぁ、フィールド辺境伯軍が頑張るようにブラ子をフィールド辺境伯軍の艦に突っ込ませようじゃないか」

 

 「ブリアナですぅ。ちょ、わたくしは確かに美しく色気で兵を鼓舞出来ますがぁ、でも皆退いちゃうと思いますよ。だって美しいわたくしを死なせたくないと思いますからぁ」

 

 ミニスカであざとく胸元を強調するメイド服でお茶を淹れながら文句をいうブリアナちゃん。

 クラリスには及ばないとはいえ、上流階級の育ちの良さもあるのか味が良いお茶を淹れるのが何とも言えない。それはジル子ことジュリアもそうだ。同じ茶葉を使えば、マルティーナやマルガリータと同程度のお茶を淹れる事が出来るスペックが微妙に腹立たしい。

 現状は一日18時間近く職務を熟している俺を、ブリアナとジュリアの二交代で雑務に勤しんでいる。

 あれ? 今思うと11歳から明確な休日を取ってないんですけど……

 学園の授業、要は通っている時間がある意味職務を離れた休みだったのかも。

 え、大丈夫? 俺死ぬんじゃね? まぁ、前世でも明確な休みは、日曜日の週一程度だったけど。海外出張時の方が休めたという不思議。

 それなのにファンオース出張って休みが無いですが何か?

 ブリアナの甘ったるい口調にヘルトルーデが苛立ちながらお茶を飲んでいる。

 お前は年下のブリアナやジュリアを気にし過ぎじゃないかな? 美しさは両名にも引けを取らないというのに…… 

 胸か? 胸なのか!?

 

 「まぁ、実際の所エルンストの件もある。公爵代行殿の不安も分かった。戻るのは一日早めたいから、ヘルツォークの手勢を率いて僕が出陣しようじゃないか。強襲用重装備型の黒騎士部隊の鎧が余っている。それを使わせてもらおうか。カラーリングは艦内で出来るし、それで何とかしてやる」

 

 二十一年前に採用された大型の鎧だ。当時の黒騎士バンデルも搭乗していた鎧。勿論、拠点及び艦隊強襲用として適宜改良及び更新されている機体だ。

 大型の高威力ライフルに魔力弾頭ポッドが四基、計二十四発魔力弾頭が撃てる代物。機敏と速度は現在の黒騎士部隊に配置された鎧よりも劣るが、攻撃力は段違いと言えるファンオースの主力機である。

 黒騎士部隊の鎧の魔力感応装置とフレーム、ヘルツォークの技術で出力向上に加え、ラーシェルと王国製を併せた兵装を可能としたダビデには及ばないが、魔力感応波の設定を俺専用に調整すればそれなりのことが出来るだろう。

 

 「ねぇ、貴方が前線に出るんじゃないでしょうね? 艦隊の指揮を旗艦から行うならまだギリギリ許せるわ。でもね、鎧に乗るのは…… 貴方、自分の立場を考えなさい」

 

 「鎧に乗らない僕に何の価値がある? 今の僕なら鎧に乗りながら、各種フレームと基幹魔力感応装置の設定を調整可能だ。僕もまだ若い、自分の技量の成長を実感しているよ」

 

 魔法整備技師は、測定装置を用いて搭乗者に合わせたり基本設定を組むが、戦時下においては測定装置でいちいち合わせる暇はない事が多い。補給含め被弾して艦に戻った鎧の整備は魔力整備技師の感覚で行う事が常だ。

 だったら、汎用機だろうが飛びながら自分に合わせて安全機構を切断してチューンアップも可能。

 フハハハハ、今の僕なら女癖の悪いデコ助程度には、敵の機体を強奪して自分専用に魔力感応装置(OS)に各種魔力感応フレームを書き換える事も可能だろう。

 ヘルトルーデが、モウヤメルンダ! と言いそうな表情を浮かべている。

 

 「う~ん、閣下が出るならぁ、わたくしも赴かないといけませんかもぉ。家からも見ておくようにと言われていますしぃ。事務処理はジュリアに任せちゃいましょう」

 

 いや、見た目は妙齢でも14の小娘とか邪魔なんですが…… 

 ブリアナ単体で戦線に送れば、フィールドは右往左往しながら退く事に専念しそうだが、俺が艦を率いてラーシェルを退かせる戦いにブリアナがいたとなれば、フィールドの士気が後々も保たれる可能性もあるかもしれない。

 

 「四日後にはファンオース城に戻るから、君も内游演説の日程を一日早めろ。書類は溜めておけばいい。戻ってから王都出発までに決済する。処理しきれない残りは侯爵に任せる」

 

 「わかったわよ。後任が貴方より優秀な可能性は低いでしょうから、死なないようにお願いするわ」

 

 俺の目を見て意志を覆すことが難しいと悟ったヘルトルーデは、深いため息をこれ見よがしに吐きながら退出していった。

 

 復興と治安維持に従事しているヘルツォークの人員で編成した五隻で、ラーシェル側国境に向かった俺は、そのままラーシェル艦隊を五隻で、防衛艦隊を素通りして強襲した。そして、その強襲で怯み隊列を乱したラーシェル艦隊に対し、元々防衛にあたっていた艦隊を攻撃に転じさせる波状攻撃で崩すことに成功する。

 その強襲が功を成し、ラーシェル神聖王国軍を壊滅に近い状態にまで追い込み、撤退を余儀なくさせる事に成功したのだった。


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