乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です 作:N2
書きたかったんだ
まだ決闘騒ぎの結果を知らせる便りは来ないが、エーリッヒ達は、リオンの浮島に遊びに向かった。
高速型の駆逐艦を中古で購入し、乗組員も20人と最低限に絞った。
駆逐艦の乗組員は、バルトファルト男爵の浮島本島で過ごし、リオンの浮島は距離が短いのでパルトナーで送ってもらう。
リオンの浮島の温泉にお邪魔するヘルツォーク一行は、エーリッヒ、クラリス、マルティーナ、エルンスト、マルガリータの5人だ。
泊まるのはバルトファルト男爵邸である。
「初めましてバルトファルト男爵、お世話になります」
「こちらこそエーリッヒ卿、リオンが学園でお世話になっている。ありがとう。正直君には少し会ってみたかった、戦の経験がある身としては、やはり興味は尽きないからね」
「無我夢中ではありましたので、経験豊かな領軍と望外の幸運に助けられました」
バルトファルト男爵と握手を交わした。例の実子証明の愚痴を聞かされるかなと多少身構えたが、武骨さの中にも優しさを感じさせる大きい人だった。
ナーダ男爵もそうだが、辺境の貴族の人柄は素晴らしいの一言では表せないな。
バルトファルト男爵に挨拶をした後、早速リオンの見つけたロストアイテムの飛行船で浮島に向かった。
「これがロストアイテムの飛行船、パルトナーか…… でかいな、王国製の超弩級戦艦よりも大きいじゃないか……」
乗組員がいない、機械制御か。ロボットが見える。
こ、この形は、ゴリアテじゃないか!? 素晴らしいリオン君、君は英雄だ。大変な功績だ!
リオンが海に落ちないか心配になるな。
「凄いだろ」
リオンが自慢してくるが、これは凄すぎる。
「こりゃ、あの5人なんか目じゃないな。こんなものを1人で見つけて制御してるんだからな」
「レッドグレイブ家や王宮もこの船の事は知ってるだろうが、あまり大っぴらにはしたくない」
「大丈夫、弟や妹達には他言しないよう注意するさ。それにしてもアンジェリカさんとオリヴィアさん、仲良くなりすぎてないか?」
到着した時に2人も出迎えてくれたが、アンジェリカさんとオリヴィアさんがうちの女性陣を相手にした時、イチャイチャしていた。
何かの拍子に身体をくっ付け合う2人。今もしている。
あぁ、抱き付いて胸が押し潰されて…… 尊い。
エルンストが顔を赤くしてるし。
「いいんだ。あの2人は学園で疲れた俺の心の癒しだ」
あの学園女子はなぁ…… 確かに見てると癒される。
「でも公爵令嬢に伯爵令嬢がうちに来るなんてなぁ。もう親父も開き直って無心だったぞ。本来なら、子爵家のご令嬢を迎えるのにも緊張するのに」
ニックスさんが遠い目をしながら女性陣を見てた。
「さすがにあの面子だとフィンリーも大人しいな」
リオンが妹のフィンリーさんを見ながら、ざまあみろと言いたげだ。茶髪のミディアムショートの内巻きボブの快活そうな可愛い娘じゃないか。
学年はマルガリータと同じになる。仲良くしてくれればいいけどな。
「可愛い娘じゃないか。さすがに緊張する女子の面子だよなぁ。あれ!? でも以前…… あんな娘が?」
「フィンリーの王都かぶれが治ってくれればいいんだが……」
あんな可愛いらしい娘が、専属使用人をリオンにねだったのか。リオンも苦労してるな。ニックスさんは顔を反らした。
クラリス先輩とアンジェリカさんの会話が聞こえてくる。
「まさかクラリスが来るとは思わなかったぞ。もしかしてヘルツォーク領にか?」
「ええ、凄い良い所だったわ。それから屋敷の…… 良くて……」
「ほう…… それはまた品の良い…… あの作者の……」
何か良くわからない雲の上の会話をしてる。時折その会話に相槌を打ったり、質問にマルティーナが応えてる。あいつは凄いな。
☆
湯気が辺りを柔らかく包んでいる。
カコン、と乾いた音色が湯殿全体に響き渡り、独特な雰囲気は緊張感を抱く物ではなく、寧ろ気持ちを穏やかに変えていく。
「いやぁ、これは堪らないなぁ」
頬が緩むのを止める事が出来ない。あぁ、懐かしの前世の記憶の温泉だぁ。
「これはアンジェリカさん達が嵌まるのもわかる。毎日入りたい」
アンジェリカさんとオリヴィアさんは、肌が綺麗になると言って、毎日この浮島に来てるらしい。
「まぁ自慢ではあるが、さすがに毎日は飽きるぞ」
リオンはそう言うが贅沢な奴め。あの2人の湯上がりを堪能してるくせに。
おっ、やっぱり鍛えているな。無駄な筋肉がない引き締まった身体だ。
「領内の仕事で疲れるから、こっちにいる間は俺も毎日入りたいがな」
ニックスさんは慣れたように湯に浸かり、とてもリラックスしていた。
ニックスさんはがっしりした体型だ。力仕事も多いから、首から肩回りの筋肉量も多い。父親のバルカス男爵によく似ている。
「リオン、覗きとか出来ないの?」
お約束的な感じでつい聞いてしまった。
「アホ、アンジェやリビアを覗いてみろ。首と胴が離れる。あぁ、合法的に女湯に行けるコリンにお兄ちゃんは初めて叩きたくなった」
「コリンだって恥ずかしがってたろ。寧ろあの年齢の男の子は羞恥で泣くぞ」
ニックスさんはコリン君に同情しているが、確か9歳か10歳、6つ下だ。
普通ならニックスさんの言う通りなんだろうが、俺は10歳の時にエーリッヒ君に転生したしなぁ。興奮して小さいエーリッヒ君も大きくなったかもしれない。コリン君羨ましいな。
それにしてもアンジェにリビアねぇ。随分と親しいご様子で。
「兄上もそういう事を考えるのですね」
仕事で歓楽街に誘われるのをいつも期待している。それが俺という男。でも若いのと学園生という評判があるから、誘われないけど。
「そりゃ考えるさ。学園にいると常に女子の事ばかり考えてるぞ! なっ!」
その言葉に誤解だとでも言うようにニックスさんは反論する。
「それは上級クラスだけだろ。普通クラスは勉強やダンジョンと頑張ってるし」
ニックスさんは普通クラスか。羨ましいがしかしリオンが噛みついた。
「ふざけるな兄貴! 俺達だって婚活のために決死でダンジョンに挑み、勉強を頑張りと大変なんだぞっ!」
「ま、まぁ実際に上級クラスのほうが成績いいしな……」
またニックスさんが顔を背けた。
「エトはどんな女の子が好みなんだ。クラリス先輩を見て顔が真っ赤になってたよな?」
さらりとした手触りの湯を楽しみながら、普段話さないような事を弟のエルンストに聞いてみる。
鍛える事や勉強を見るばかりで、思春期の男の子っぽい会話はしてこなかったと今更ながらに気づいた。
「い、いや、ヘルツォーク領内にあんな淑やかで洗練された女性はいなかったもので」
それはある。派手な都会かぶれじゃない、王都の本物の上品な令嬢だ。うちの姉妹もそこそこだが、普段生活を共にするとやはりというか、それなりに砕けた仕草を生活上エルンストも見ちゃうしな。
「ほら、エトと同い年でうちの寄子のカミラちゃん。あの子はお前の妾候補だから、仲良くしておけよ」
「お、そんな子いるのか? 学園の上級クラスの女子は9割が専属使用人持ちの王都希望だからな。エト君は子爵家当主になるから、お妾さんはちゃんと考えていた方がいいぞ」
「俺達の母親も妾だからなぁ。上級クラスは終わってるなぁ」
リオンが尤もな事をいい、ニックスさんは他人事のようにのんびりと湯を楽しんでいる。以前リオンが殴りたいといった気持ちがわかる。リオンも顔をしかめてる。
くっ、鎮まれ俺の右手よ。
「そんなに学園って酷いんですか?」
カミラちゃんをスルーした。気恥ずかしいのか? 俺にもよく懐いていた子だ。
「僕だけの意見じゃないから信用出来るだろ」
「いや、兄上の言葉は疑わないですが、でもリオンさんと兄上ですよ!? あれだけ実績を上げている…… 何故女子は放っておくのでしょう?」
学園の女子はそこを重視しない。金があるかないかだよ。泣けてくるな。
「男爵家から子爵家の女子は、愛は専属使用人と育んで、王都に住めればそれでいいみたいだからな」
リオンの言葉にエルンストは絶句し、ニックスさんは顔をしかめている。リオンの所も正妻がそうだから、思う所もあるのだろう。
「なぁリオン。フィンリーちゃんを何とか思い留まらせて、エトの嫁にくれないか? フィンリーちゃん可愛いし。エトもそう思うだろ?」
「はい、可愛いし大人しめの良い子に思いましたが」
エルンストの評価も上々だ。今からなら専属使用人のいないフィンリーちゃんの教育も間に合う。
「俺、あいつをエト君に押し付けるとかマジで心が痛くなるんだけど、兄貴はどうなんだ?」
「俺に振るな。うちのお袋は普通なのに他の女共と来たら」
諦めんなよ! もっと熱くなれ! 姉妹だろっ!! ネバーギブアップ…… のぼせそうだ。フィンリーちゃんは女性陣に期待だな。
リオンの件を振って熱を冷まそう。
「リオンは結局嫁はどうするんだ?」
「いや、俺は今回の件で爵位返上、退学だよ。親父の寄子になってのんびりするさ」
そうなったらオリヴィアさんと結婚出来そうだな。
「あぁ前に言ってたな。でも代替わりどうなるんだ? ニックスさんは、領の仕事を長期休暇中も手伝ったりしてるし、卒業しても手伝うんだろうけど、長男が戻ってきたら?」
未だバルトファルト男爵領に戻らない長男と上手くやれるのか心配になるな。
「うぇ、ルトアート兄貴の寄子はやだなぁ……兄貴追い出してよ」
「俺もあいつの下で働きたくないが、ゾラの相手するのが嫌なんだよな。親父に任せるよ…… てかルトアートの奴仕事なんか出来るのか?」
ニックスさんの言葉に、さあ? とリオンも首を傾げているが、これが稀に辺境ではあるんだよなぁ。王都にかぶれて領に戻らないで、正妻と共に王都に籠るアホ長男が。
仕官でもしてくれたほうが、この領としては安泰だろう。ただし、正妻は長男を継がせないと仕送りの心配があるだろうから、絶対介入してくるな。
「もし、リオンが正妻や長男と折り合いが悪ければ、エルンストの所で寄子になるか? 仮に準男爵や騎士じゃなくなってものんびり出来るぞ? 」
「マジで!? ルト兄がこの領継ぎに戻ったらそうするわ。まぁ、なんかあればニックスの兄貴は助けるからさ」
リオンが食いついた。ニックスさんは、自由な奴めと悪態をついている。
全くエルンストの奴は、リオンと俺を寄子にするとか、王国と喧嘩する気か? 豪気な奴め。フレーザー家ぐらい殴ってやるぜ。ゴリア…… じゃなかったパルトナーが火を吹くぜ。
「僕が兄上とリオンさんの寄親になるとか、荷が勝ちすぎるんですが……」
何を言ってるんだ? お前は屋敷でどかっと座ってりゃいいんだ。羨ましいぞ。
適当に、言葉を慎みたまえ。とか言っておけばいい。
最終的にエルンストの目が、潰れそうな気がしてきた。
エルンストが何故かぐったりしてきたので、男共は湯から上がり、湯上がり女子を見て楽しもうとワクワクして待つ。
漢共の時間は終わった。
トイレを探してピンチにはならなかったな。
アッーーー♂
よかったのか?ホイホイついてきて
コリンにはまだ早かったのだ。忘れていたわけではないんだ……
9歳か10歳だからね。仕方ないね。
コリンを女湯に入れたらリオンが嫉妬した。