乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です   作:N2

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薊様、なわた様、誤字報告ありがとうございます。


第31話 打ち合わせinアトリー邸

 アトリー邸に22時に着いた俺は、バーナード大臣に招き入れられて、オフリー伯爵家との経緯を伝えた。

 

 「ミレーヌ様からのお墨付きなら問題ない。ははは、あそこも終わりだな」

 

 「リッテル商会から戦力の規模を確認したのですが、実際の所はどうなのでしょう」

 

 王宮のほうがその辺りは詳しい、というよりも査察などで把握しているのではと俺は考えている。

 長期休暇のクラリス先輩のヘルツォークへの滞在も戦力保持の査察が名目だ。

 ヘルツォーク子爵家は、ラーシェル神聖王国のフライタール辺境伯との戦争後の報告は正確にしていたので、そのままを査察結果として淡々とバーナード大臣が王宮に通した。娘を査察に赴かせて結果を通すなど、バーナード大臣の力業ではあるが。

 

 「王宮への戦力報告はあそこは確か三十隻だったが、リッテル商会の数字が正確だろう」

 

 「嘘の報告を王宮にしていると? しかも多く?」

 

 「あそこの査察は派閥の捏造だ。それだけ力があるとも言えるが、戦力が少ないと規定数を保持せよと王宮に言われるからね。多く報告する所が多い。保持しなければ、その分金はかからんからな。直接他国との戦争の矢面に立たない家なぞ、予め招集規定数のギリギリを保持などざらにある。何せ王宮が飛行船を貸し出す貴族家もいるからね。招集されたら金で飛行船を揃えるというわけだ。だから、飛行船を持っていない男爵家も出てくる。六位下の男爵家は一隻で済むから、というわけだ」

 

 俺の駆逐艦一隻と俺とエルンストだけで、制圧出来る貧乏男爵家が多そうだな。情けないのと憤慨で溜め息しか出ない。

 そんな奴等貴族なんぞにするなよと言いたい。

 まぁ、浮島を管理させて王宮には税が、チャリンチャリンと入るほうが楽なだけか。

 王宮が、そもそも浮島の貴族家を軽く見ているのが実感出来たな。徒党を組まれるのは嫌だが、干上がろうが、荒れ果てようが最悪お構い無しか。王宮にとっては、浮島の浮遊石の価値が多大なだけだろう。

 放っておいて勝手に税が入るならそれでいい、干上がって無くなっても構わないという事だな。

 事実として荒れた浮島や王宮直轄の浮島も多数ある。

 

 ホルファート王国にとっては、オフリー伯爵家とヘルツォーク子爵家が最悪地図から消えても問題ない。

 元ヘルツォークの浮島に、王国軍の駐留部隊を置けばそれでいいという程度だ。

 仮にホルファート王国を裏切るとしてもヘルツォークの問題点は、ホルファート王国を裏切っても行き場が無いのが大きな問題点だ。だから王国の思惑がそうでも王国のために働いている。

 

 「強大な王国軍を保持するホルファートは、そもそも主要な貴族家以外は、消えようが増えようが問題無いという事ですか」

 

 「王国として見ればそうかもしれないが、王宮内ではそんなことはないがね。オフリーが消えれば喜ぶ勢力もある。私やヴィンス殿の所とは敵対派閥だからね。私も中立派とはいえ、オフリーの派閥は弱体化してくれたほうが助かる」

 

 となるとバーナード大臣にも恩は売れるか。確かに王国全体なんて大きい考えは不要だな。そんなものは王が考えていればいい事だ。

 貴族は先ず自分の家や領内、立場が大事だ。だから王国全体利益の足を引っ張る輩も当然いる。

 

 レッドグレイブやアトリーがどちらかはわからないが、どちらも名門で長い歴史がある。そちらに付くのは間違いではないだろう。

 相手の派閥の首魁も名門で長い歴史はあるかもしれないが、今回の件はこちらに大義名分があるので気にしても仕方がない。王宮内の暗闘は偉い人達の仕事だから関わっちゃいけないな。

 

 「仮にヘルツォークが負けた時は、もちろん領内まで侵入させずに停戦交渉をしますが、勝つ時は、オフリーの本拠地まで攻め上がりますが問題ないですよね。相手の交渉などこちらは受け付けません。文字通り地図からオフリーの名前を消しにいきますが」

 

 オフリーは決戦で勝てばそこで止まるだろうが、ヘルツォークがどこまでやっていいかの確認はしておこう。

 オフリーはあんな国境沿岸まで攻めるメリットはない。賠償で手仕舞いがセオリーだ。

 

 「ふむ、そこまで出来るのであれば、やってもらって構わんよ。根回しはしようじゃないか。ただし、オフリーの財産や鹵獲品は、一度王宮に全て預けて差配を待ったほうが印象はいいね」

 

 他の有力貴族家から、それでは賊と変わらないという意見を抑えるためかな?

 

 「損害の補填や賠償が、オフリーの財産や物資で保証されるなら、後は好きにして頂いて構いませんが」

 

 「寧ろそこは確約するよ。それほど王宮も厚顔無恥ではないつもりだ」

 

 であれば、もう後はこの情報を元に戦争をするだけだ。ヘルツォークにとっては原始的な戦争だ。「種籾も家畜も全てよこせ」を存分に味わわせてやるさ。

 王宮に一度全て預けるけど。

 

 「ありがとうございます。正式な宣戦布告書状は明日お持ちします。ヘルツォーク子爵家からも届くでしょうが」

 

 明日は父上、エルザリオ子爵も近隣やオフリーの近隣にもオフリー伯爵家に対する宣戦布告を喧伝するだろう。いや、ギリギリを見越して明後日以降かな。

 

 「話は少し変わるけど宜しいでしょうか?」

 

 「何だね?」

 

 「ウェイン家という準男爵家はご存知でしょうか? 実はリオン・フォウ・バルトファルトに直接空賊の討伐依頼をしたのです」

 

 俺は関係無いが、知っていて何も言わないのは後々問題かもしれない。しかもあの場にはクラリス先輩もいた。既に聞いている可能性もある。それに準男爵家までは、俺も直接関わる家以外は知らなかったりもする。

 

 「クラリスから聞いたが、あそこは王国の直臣だ。しかも寄親はオフリー伯爵家だ」

 

 直臣なら王宮に頼むか、寄親がいるなら寄親へ頼むだろう。しかし、オフリー伯爵家の寄子がこのタイミング? いや、オリヴィアさんは、昨日執り成しを頼まれていたから既に動いている案件だ。

 

 「この依頼はオフリー伯爵家とは無関係ですかね?」

 

 「王宮にも寄親にも頼まず、バルトファルト男爵に頼むのは不可解と言えるが…… 空賊か、オフリー伯爵の黒い噂もあるが……」

 

 リッテル商会も言ってたな。

 

 「しかし、その場にはアンジェリカさんもいました。かなり厳しい目をしてましたから、レッドグレイブも動くのでしょうか?」

 

 「バルトファルト男爵も動くとの事だから、フォローぐらいはするのだろうがね。彼は単艦で、しかも単機だろう?」

 

 そう、リオンが依頼を受けた事に驚いたぐらいだ。おそらく、空賊相手に単機単艦でやれると考えたという事だが、やはり冒険者は頭にネジが存在していないらしい。

 

 「時系列的にオフリーとヘルツォークが戦争する件は突発なので後になるのでしょうが、その前段階にあたるリオンに対する依頼に、オフリーが関わっているかが気になりますね」

 

 「そこは不明だが、一先ずヘルツォークはその件は無視してよいだろう。そもそもオフリー伯爵家そのものと戦争だからね。バルトファルト男爵の件は、アンジェリカ殿がいたのなら、レッドグレイブが見張るだろう」

 

 それもそうだな。リオンの手助けに少し手勢を回す事も考えたが、明日にでも聞いてみるぐらいでいいだろう。

 

 「わかりました。本日は夜分に時間を頂きありがとうございました」

 

 さっと手土産を出しておく。いつもの事だからもう反射的になってしまってるな。

 

 「リック君は毎回気を使ってくれるね。あぁ、そうだ、リック君はクラリスの事を先輩と呼んでいるそうじゃないか」

 

 ん? おかしいだろうか?

 

 「はい、1学年上の先輩ですし。何か不味かったでしょうか? そうであれば、お嬢様かクラリス様に直しますっ!」

 

 不味いぞ、少し馴れ馴れしいという事か! 確かに身分が違い過ぎた! くそっ、こんなところで不興を買うことになるとは!!

 冷や汗が止まらなくなってきた。

 

 「それは困る。いや、といってもそうは歳は変わらん。君は5月生まれだろう。クラリスは1月生まれだ。先輩なぞ付ける必要はないから、クラリスと呼び捨てにしてやりなさい」

 

 は!? そんな事する奴は不敬で首と胴が離れそうだが、バーナード大臣は真剣だ。

 何だ? 俺は何を試されている…… くっ、ロマンティックじゃないドキドキが止まらない!! しかも凄い胸が苦しくなる。土下座したほうがいいのだろうか?

 

 「よ、宜しいので?」

 

 とりあえず聞いてみた。わからないからね。恐る恐るバーナード大臣の顔を伺う。

 若者をいじめないで頂きたい!

 

 「もちろん構わないよ。あの娘も色々とあったからね。親しくしてやってくれると嬉しいよ」

 

 バーナード大臣はにこりと伝えてきた。表情からは何か腹芸があるようには見えないな。まぁ処されないのであればそのぐらい何て事はない。

 確かに呼び捨てならば親しい先輩と後輩だ。

 あれ!? 何かおかしくないか…… バーナード大臣はニコニコしている。まぁ不味くないという事だな。

 クラリス先輩もジルクとの件で、思ってた以上に傷ついているという事か。それに美人だし王宮貴族の大家の娘として、男性から鬱陶しいアプローチもあるのだろう。

 勲章持ちの俺が、取り巻きとは言わずとも親しくしていれば、変な輩の防波堤になるという算段か。

 

 「では、僭越ではありますが、クラリスと親しみを込めて呼ばさせて頂きます」

 

 「おぉ、クラリスも喜ぶだろう。頼むよ」

 

 全く、バーナード大臣も過保護じゃないか。クラリス先輩は愛されているな。王宮貴族の重鎮にしては、バーナード大臣も情の深い人だ。

 まぁ、今後はクラリス先輩の縁談も慎重に名家を探す事だろう。

 こちらは未だに嫁さんも貰えん……

 

 事前の情報は確認した。この情報を明日、戻ってきた駆逐艦の連絡員に渡した後は、作戦立案等は父上に任せよう。ただし、少し攻撃案に手を加えさせて頂くが、ヘルツォーク子爵家の決行日待ちだ。

 0時を回ろうかという夜分に俺は、学生寮へと戻るのであった。

 

 

 

 

 初日の打ち上げが終わった後、リオンは部屋でルクシオンと会話をしていた。

 打ち上げはダニエルにレイモンド、ついでと言わんばかりにヘロイーゼ嬢も参加していた。

 理由は、エーリッヒとマルティーナがクラリス先輩と出て行く時にエーリッヒに相手を頼まれたからだ。

 普通に和気藹々と男子達も変な緊張をする事がなかったのは僥倖と言えた。

 

 「確かに今のあの娘なら、結婚相手にありだよな」

 

 『ヘロイーゼですか? しかし若干胸部の数値がマスターの基準を満たしていませんが?』

 

 ルクシオンが淡々とリオンの好みの部分を指摘してくる。

 

 「俺は別に胸だけで女子を見てない! それにあの子それなりにありそうだよ」

 

 最終的におっぱいと結婚しそうな気がしていたが、それは言わぬが花というものだろうとルクシオンは黙っていた。

 

 「どうした?」

 

 黙っているルクシオンに疑問を感じ、リオンは声をかける。

 

 『浮気する奴は最低だ』

 

 「何が言いたい?」

 

 『これは実はマスターのお言葉です。王妃を口説いたマスターにお聞きします。浮気は最低ではなかったのですか?』

 

 「違うんだ。この気持ちを抑えられなかったんだ。それにリックは愛人志望だぞ! もっと悪いじゃないか」

 

 『エーリッヒはよくわかりませんが、マスターはご自分の発言が次々に刺さりますね。あまりの見事さに感動すら覚えます』

 

 「学園の思い出だぞ。男子は婚活メインで女子は火遊び。あながちリックも間違っていないじゃないか。それにあの人なら有りか無しかで言えば、有りだろ!」

 

 『王妃ですよ。無しですね』

 

 リオンとルクシオンはさらに他愛もない会話を続け、折りを見てルクシオンが本題を切り出す。

 

 『マスター、あの女子に力を貸すのは本当ですか?』

 

 「学園祭が終われば連休に入る。そこで助けに向かうさ」

 

 『マスターが助ける理由はないはずです』

 

 リオンは溜め息を吐きそのルクシオンの言葉を心中で肯定する。しかし、オリヴィアを介して正式に依頼されてしまった。

 完璧な騙し討ちであるが、拒否してしまうとオリヴィアは、依頼を受けたが解決出来なかったとみなされ、リオンは知人からの依頼すら、受け入れられないとみなされてしまう。

 騙し討ちなので、話にならないと突き返す事も可能だが、リオンはこの空賊を放っておけない理由があった。

 

 「今回カーラから討伐依頼された空賊がなぁ、主人公の必須アイテムを持ってるんだよ」

 

 『ゲーム的な理由で参加しなければならないと?』

 

 「主人公が、リビアが聖女としての能力を発揮するためには、3つのアイテムが必要だ。そのうちの2つは自分で回収する事になる。そのうちの1つを空賊が持っているから、退治しないと回収出来ない…… それに空賊のイベントなんて、本来なら2年生になってからなんだが」

 

 聖女のアイテムとは、王都にあるダンジョンに隠された【聖なる腕輪】。

 カーラに討伐依頼された空賊が持っている、【聖なる首飾り】。

 最後はホルファート王国で1番大きな宗教組織、神殿が管理している【聖女の杖】である。

 最終的にオリヴィアが聖女になるためには、この3つのアイテムを手に入れる必要がある。

 神殿から聖女と認められれば、杖は入手できるが、あとの2つは自力で回収しなければならない。

 

 『王国の正規軍は頼れないのですか? ウェイン家は直臣ですが、寄親は伯爵家だったはずですが?』

 

 「その寄親の伯爵家がオフリーで、リックの所と戦争になる。こんなのゲームにないぞ…… だからその空賊から首飾りは奪っておきたい。リックが手にしたら譲って貰わなければならないしな。一番不味いのが、オフリー伯爵家が無くなって、その空賊の所在がわからなくなる事なんだよ」

 

 『そのオフリー伯爵家と空賊に繋がりがあるという事ですか。そもそもどうしてマスターに依頼をしたのでしょう?』

 

 「お前も喫茶店で見てただろ。本物の屑女だからな。罠に嵌めようとしてるんだよ」

 

 リオン自身はゲームで事の顛末を知っている。自分が成り上がりで馬鹿にされるなか、オリヴィアがチヤホヤされるのが気に入らないというそんな程度だ。

 学園に入学してまだ間もないというのに、一体何に対してオフリー嬢の怒りに触れてしまったのかは、リオンにはわからなかった。

 事実は、婚約が解消され、さらには賭けでも大損を招いた原因のリオンが標的となってしまっている事に、リオンは気付いていない。

 オフリー嬢にとってオリヴィアは、リオンと仲が良く平民のため利用しやすかっただけであった。

 

 『話を聞く限りでは、オリヴィアが解決しなくてもよろしいのですか? 聖女の装備は本人が回収するべきかと。このままでは、オリヴィアの相手はマスターという事になりますよ』

 

 ルクシオンの言葉にリオンは溜め息を吐きながら答えた。

 

 「5馬鹿が頼りにならないからな。お前がいる俺のほうが向いてるし、今のリビアには無理じゃないか? それなら、代わりに俺がやるほうが効率的だ」

 

 『マスターは過保護ですね』

 

 「それと、リックとオフリーの戦争は情報集めと監視を頼む。空賊のイベントやそもそも決闘のイベント…… 時期が違い過ぎる。リック自身はゲームのイベントに巻き込まれているだけのような気がするが、存在感が大きすぎるからな。後は空賊が持っている聖女の首飾りの行方にも、影響が出てくるかもしれない」

 

 リオンにとってはマリエの存在がイレギュラー過ぎるが、エーリッヒの存在も無視出来なかった。

 

 『いっそのこと共闘してみればいかがですか?』

 

 「嫌だよ! あっちはがっつり殺し合いの戦争だぞ! 空賊程度だったらお前もいるし、殺さずに済むだろうが、戦争になるとわからん。俺は精神的に殺すのは嫌だよ」

 

 『なるほど、ではやはりエーリッヒはマスターの懸念されている転生者ではないということです。彼は躊躇せずに殺せますから』

 

 ルクシオンの言葉を考えてみるが、リオンが殺人に忌避感を覚えるのは、前世での情操教育や社会的倫理観が大きい。

 しかし、この世界の環境に適応してしまえば、転生者でも戦争において殺す事は可能だとも思っている。

 前世の世界とて、自国は戦争をしていた時期もあるのだから。

 

 「その件も含めて今回のリックとオフリーの戦争は監視を頼むよ」

 

 『わかりました』

 

 そう言ってルクシオンは黙り、リオンも思考に没頭していくのであった。




リオンの基準において若干足りないとは……CからDはありそうだぞヘロイーゼちゃん。
細いからね。カップ数はあってもトップはあまりないかも。

もしくはルクシオンは、トップの数字だけで判断したのか!? リオンの基準値は88ぐらいだろうか?
でもアンダーが65なら85でEカップだ。

昔、ワコ○ルの人が仕事で言ってた。それを仕事で私に聞かせてどうしろというのだと当時は思ったなぁ。
へぇ、じゃあ何カップですか? と聞きそうになったのは笑い話ですね(笑)
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