乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です   作:N2

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霧空様、佐藤浩様、誤字報告ありがとうございました。


第36話 ヘルツォーク子爵艦隊VSオフリー伯爵合同艦隊

 上空12,000Ftで待機している駆逐艦からもブリュンヒルデの砲撃にて、小型艇が撃ち墜とされるのを目視できた。

 

 おぉ、飛行船正面から砲撃出来るようにした甲斐があったな。さすがローベルト、やるな。

 

 「全機突撃準備! エト、強襲後は時計回り旋回。俺は逆回りで旋回して、コンタクトだ! いいなっ」

 

 「はい、カウント願います」

 

 「全機合わせろ! 3、2、1、行くぞ!」

 

 何故か戦闘機が無いこの世界、鎧があるからか? 怖すぎるし、飛行船同士の戦いも多く、浮島を傷付けないようにするためなのか、急降下爆撃の記録が無いからな。

 浮遊石があるからか、高出力の動力炉が発展していない。動力源は魔石、技術力のあるヘルツォークで片手間でも構わないから、開発をしてみるのもいいかもしれないな。

 さて、思考はそれぐらいとして、蜂の一刺しとまではいかないが、見せてやろうじゃないか。

 

 小隊2つに分隊が一つ、青空に躍り出る。疎らな雲を掻き分けて、空に炎を生み出すために。

 

 

 

 

 「オ、オフリーのお嬢様が…… て、敵艦隊が砲撃態勢に移行するぞ!? シールドを、ぐわぁ!?」

 

 中央に位置していたオフリー伯爵直属の飛行艦隊は、交渉のために出た小型挺が撃ち落とされて、浮き足立っていた。

 他の寄せ集めの艦隊も同様だ。飛行船が向き合って交渉事は、貴族間では稀にある。

 そもそも騙されて集められた者達は、まさか砲撃が放たれるとは夢にも思わない。

 

 「こ、攻撃を受けているぞ!? 何処からだ?」

 

 「わ、わか…… ぎゃあっ!!」

 

 オフリー伯爵直属の艦隊は、エーリッヒとエルンストからの小型魔力多弾頭の直撃を受けて、鎧の展開指示を出す間も無く混乱に陥ってしまった。

 特にエーリッヒからの攻撃は、魔力誘導にて全弾ブリッジを直撃され、飛行船自体の破損以上に艦隊の指揮系統に大打撃であった。

 

 エーリッヒは艦隊直上にて、急降下から90度横方向へ旋回し、オフリー艦隊左翼に位置する、マフィア3家連合の飛行船六隻のブリッジにスピアを突撃させて、中で魔力爆発を起こさせた。

 元々魔力で操作して操る武器のため、スピアは魔法の起動装置として親和性が高い。エーリッヒとエルンストのスピアには、魔力動作する小型の機銃も組み込まれているためそれを爆発させたなら、さながら炸裂弾のような武器に様変わりだ。

 エルンストは、艦隊の真下まで少し大回りをしながら旋回しつつ、飛行船の真下をスピアで直撃させて爆発させた後に、敵艦隊後方でエーリッヒと合流した。

 

 オフリー伯爵艦隊十二隻が、中破とまではいかないが不確実中破し、マフィア3家連合艦隊六隻が不確実中破する打撃を与えたが、ブリッジ直撃による指揮系統が破壊され、統率出来る者が失くなり、空を右往左往することしか出来なくなってしまった。

 

 

 

 

 ヘルツォーク子爵艦隊は、特殊任務の強襲後、砲撃態勢を整える事に成功。

 敵艦隊からはまだ砲撃は無く、態勢すらも整っていない。

 しかし、魔力シールドを今作戦ではメイン展開させる、軽巡洋艦十五隻を前に並べ、その後方上空より戦艦級四隻を含む十五隻が砲撃態勢に入った。

 

 「鎧を発進させなさい。三個大隊を射線上空に待機。二個大隊を前面軽巡洋艦の護衛に。下から淑女を覗き見ようとしてくる破廉恥な鎧を叩き落としなさい!」

 

 マルティーナは鎧の発進後待機場所を指示する。こちらのメインは艦砲射撃だ。鎧の任務は飛行船の護衛であり、むやみやたらに敵艦隊に突撃する必要はない。

 

 「鎧発進後に上部艦列にて一斉砲撃。エーリッヒ様達は気にするなよ。こちらの砲撃に当たるようなミスはするまい」

 

 「ローベルト、下部艦列も今なら砲撃に加わっても大丈夫では?」

 

 下部艦列は、敵艦隊からの砲撃に備えている。

 ローベルトは、敵艦隊の態勢やエーリッヒ達に直上から攻撃されて、慌てふためく気配のような物を経験から感じとった。マルティーナは直感のような物だろう。

 

 「そうですな。敵はまだ鎧すら展開出来ていない。全艦から砲撃させましょう。三射目以降はシールド待機へ変更という事で」

 

 「わかりました。全艦発射用意!」

 

 下部艦列もシールドを解いて砲撃準備に入る。敵艦隊からは鎧が疎らに出撃し出すが、ヘルツォーク子爵艦隊に向かってくる気配は無い。

 

 (まったくお兄様ったら、こうまでお膳立てを整えてくれるなんて。んふ! あぁ、何て素敵なのでしょうか!)

 

 「全砲門撃ちなさい!」

 

 マルティーナ号令の下、ヘルツォーク子爵艦隊からの砲撃が始まった。

 

 

 

 

 「エト、残りの武器は?」

 

 「スピア六基と通常兵装のみですっ、はぁはぁ」

 

 魔力弾頭は俺もエトも撃ち尽くしたか。俺はスピアが残り二基。後はライフルとブレードのみだ。

 エトは息が荒いが仕方ない。正直俺も怖かったし、無理せずに艦隊の下部から大回りすれば良かった。身体が痛い。

 

 「エト、上がってくる鎧を撃ち墜とすぞ。何、クレー射撃のような物だ。こんなの訓練前のウォーミングアップだろう?」

 

 「姉上の砲撃がおっかないんですが……」

 

 俺もだ。

 結構な圧をヘルツォーク子爵艦隊からは感じる。整然と纏まった艦隊が砲撃態勢を整える姿には、空恐ろしく身震いしてしまう。こちらを向いているから尚更だ。

 

 「砲撃が始まった! エト、敵艦隊前面に出るなよ。来たぞ、敵さんはオート発進だ。鴨撃ちどころかただのクレーだぞ!! 撃ち落とせ」

 

 「了解です!」

 

 マルティーナからの一斉砲撃が始まり、おそらく独断なのだろう、敵鎧が混乱極まるといった様子でポツポツと上がってくるのをエトと2人で撃ち落とす。

 この規模の艦隊ならば、鎧の数は少なくて150機、多くて300機といったところか。

 

 「エト、スピアはもう飛行船相手に使うな。いつも通り近づいてくる鎧相手に使え! 動線を誘導してライフルで落とせよ」

 

 まぁそれは、離れた飛行船から上がってきた鎧相手だな。近場は本当にクレー射撃状態だ。

 離発着が戦時状態でもオートなのが、いっそもう憐れだな。

 しかし、さすがに数が上がってきたな。まるで砲撃に追い立てられた蠅のようだ。

 

 「兄上、敵飛行船からちらほらと白旗が見えますが……」

 

 「は、煙で見えないな。というか的だな、俺がスピアで旗を射抜いてやる。お前は気にするな」

 

 見渡すとちらほらと白旗が見える。残りのスピア二基を使って次々に撃ち落としていく。

 

 「白旗振る暇があれば、さっさと着水して動力を切れ。戦場で白旗上げて浮いてる飛行船なんぞ、罠としか思えん」

 

 「確かに…… 空賊ならまだしもラーシェルの哨戒挺までそれをやりますからね」

 

 エトも俺の捨て台詞に苦笑しながら、クレー射撃の要領で、敵鎧を撃ち落としている。

 しかし、直上から強襲された艦隊は脆いものだな。統制が取れないから、砲撃や対空攻撃も満足に行えない。射線の保持が出来ないから味方に当たる。

 現に味方に攻撃を当てている艦まである。混乱の最中なので、味方に撃たれたと気付けないだろうが。

 それでも対空機銃は散見されるため、俺とエトもさすがに止まりながら射撃は出来ない。鎧にも取りつかれる。

 

 「二個小隊はどうだ?」

 

 「軽巡洋艦六隻を中破ないし大破させてますね。今は鎧と戦闘中です。かなり墜としてます」

 

 エルンストはよく見えているな。

 そろそろ頃合いか。この任務の出来としては十分過ぎる。無事な艦は九隻だが、味方が邪魔で身動きは直ぐには取れないだろう。それに――

 

 「来たぞエト、後方に父上の艦隊五隻、それに敵左翼に別行動の五隻だ」

 

 分隊飛行をしながら、敵鎧を撃ち墜としていると、後方と敵左翼から五隻ずつ、計十隻のヘルツォーク艦隊が見えた。自然と口角が上がるのが止められないな。

 

 「完成しましたね。包囲撃滅陣…… こうも見事に決まるとは」

 

 敵右翼側には無いが、ヘルツォーク子爵艦隊は斜め方向、敵正面から敵右翼側に艦隊隊列を組んでいる。オフリー合同艦隊は、包囲されたと感じているだろう。

 その配置だと敵艦隊は全て射程範囲。左翼先頭の安全確保のために二個小隊には、敵右翼を徹底して叩いて貰ったというわけだ。

 

 「相手は艦隊のような何かだっただけだ。大方、旅行艦隊か何かだったんだろうさ」

 

 エトが驚いているが、相手は軍隊ですらないような奴等だ。索敵、艦隊行動もお粗末過ぎる。

 あの2線級のフライタール艦艇員達が素晴らしいぐらいに感じる差だ。

 

 「信号弾を発する。父上の旗艦まで後退だ」

 

 信号弾とは言っても、要は光魔法の点滅だ。敵の目眩ましにも使えるが、こちらの眼もやられる事がある。

 グラサンとノースリーブは勘弁なので使わない。

 

 「エト、各小隊の援護に回るぞ、遠足は父上の所に帰るまでが遠足だ」

 

 「これを遠足と呼べるのは兄上だけですよ」

 

 エトは真面目で慎重だから仕方ないか。

 

 「父上の艦で補給後は、また出撃するかもしれないぞ。気楽にしておけ」

 

 「短時間とはいえ、けっこう消耗してるんですがねっ!」

 

 軽口をお互い叩きながらも敵鎧を撃ち墜としていく。エトも立派になった。

 というよりも、もう学園では実戦過程を学ぶ必要があるか疑問だな。魔法と領地経営ぐらいか?

 

 「確かになぁ、俺は学園で鈍ったよ…… かする程度とはいえ被弾している」

 

 脆かった膝部や肘部は強化したが、近接戦を行わなかったため、この戦いでは特に意味はなかったな。

 

 「いや、それは被弾した飛行船からの破片では? こちらからは余り目視出来ませんよ」

 

 「そうか…… ほら父上達が砲撃態勢に移行した。射線の上に出るぞ」

 

 こうしてエルンストと分隊行動をしていると、角有りと角無しの同型機。ラーシェル神聖王国とホルファート王国の最新型同士の合の子で魔力運用のスピア有り。

 ギュ○イとク○スのヤクト○ドーガみたいだな。

 リックをやったの!? 

 エトに言われないように注意しよう。

 誰かさんに取り入って、ブリュンヒルデの艦長と艦隊司令の地位を手に入れた女なんだからさ。

 まったく、誰かさんにも困ったものだな。

 

 エーリッヒは、再度光魔法で信号を発して、軌道を各小隊に伝えて、エルザリオ子爵の待つ重巡洋艦へ退避していくのであった。

 

 

 

 

 「図面上の形の上では、自陣から敵艦隊の約8割に打撃を与えて中央突破ですか。ふふふ、お兄様は頭がおかしいですね」

 

 マルティーナは、魔力光学映像で光魔法による信号が見えた事に安堵する。

 オフリー伯爵艦隊から吹き上がる煙とヘルツォーク子爵艦隊の砲火で、エーリッヒやエルンストの姿が早々に見えなくなってしまっていたからだ。

 今やオフリー艦隊を三方向から艦砲射撃で攻撃している。

 前面展開している鎧、三個大隊は、敵鎧を撃ち墜とすために、上部及び左右から敵鎧に統制射撃を有機的にポジションを変えながら与えていた。

 

 「ふむ、まぁ、敵の鎧も数はそれなりですが、バラバラ過ぎて個別に撃破されていきますな。訓練された36機の編隊からの統制射撃。それが三個大隊…… 相手になりませんな」

 

 ローベルトは次々に敵鎧を撃ち墜とす技術に、長年ヘルツォークの鎧搭乗者の技術を見ているとはいえ、惚れ惚れとする。

 オフリーの合同艦隊、寄せ集め艦隊ともいうが、鎧は225機しか集まらなかった。

 もちろん艦隊戦がメインではあるが、数は飛行船の数に比して若干少ないとも言える。

 ヘルツォーク艦隊も鎧の数は少ないが、練度がそもそも違い過ぎる。初陣の者とて鎧の搭乗訓練時間は300時間を超えている。率いるのは、実戦はもちろん訓練も充分過ぎるベテランだ。

 二個大隊はしっかりと下方から迫る敵鎧からの護衛のために、下部列の軽巡洋艦に張り付いている。

 その数は五個大隊180機、エーリッヒら特殊強襲任務10機、エルザリオ率いる五隻に最低限の護衛として二個小隊8機、敵左翼を強襲する五隻に最低限の護衛として二個小隊8機、総鎧数206機だ。

 エルザリオやエーリッヒは、300から500機は欲しいと考えているが、人員を訓練したり鎧を揃えたりと金も掛かるし時間も掛かる。計画はあるが、無理せずに数年はかけるか、もしくは中座させるかは臨機応変に行く予定である。

 

 オフリー合同艦隊は、エーリッヒ達特殊強襲任務の分隊と二個小隊に96機墜とされている。

 勘のいい鎧搭乗者は、真下に出撃して白旗を掲げながら、着水している物が15機は存在していた。

 統制の取れていない114機など、三個大隊からしてみれば、文字通りの鴨撃ちだ。

 

 「お父様の後方からの砲撃も始まったわね。しかも…… あらあら、セオリーを無視して下部からの砲撃だわ! 着水なんかさせないつもりね」

 

 マルティーナが乗艦する旗艦ブリュンヒルデは一番上空に位置している。さすがに艦隊の合間を飛び回っていたエーリッヒ達は見えなかったが、魔力光学映像からも後方のエルザリオ率いる艦隊が、オフリー合同艦隊から上がる煙の合間から見えている。

 

 「鹵獲品や捕虜なぞは正直いりませんからな。叶う限り焼き落とす腹積もりでしょう」

 

 「下部二艦と上部二艦の四隻は敵左翼側へ向かわせなさい。艦列は崩さないように。別艦隊五隻を援護、いえ、十字砲火ね。我が艦隊も下部シールド解除して一斉砲撃よ! お兄様をこれ以上出撃させてはなりませんっ!」

 

 「下部列軽巡洋艦、シールド解除、一斉砲撃放て!」

 

 マルティーナの指示に特に問題は無いだろうとローベルトも判断し、即座に指示を出す。

 

 「あはっ! 選り取り見取り! まるで鴨の焼ける香ばしい薫りがここまで届くかのよう。うふふふ、これでは鴨撃ちが病み付きになりそうね…… 見なさい、艦隊から人が溢れて落ちていくわ! しっかりと焼いてあげましょうね。んふぅ! ふふふふふふふ!」

 

 甘美な表情が艶かしく、身を捩る姿には色気が溢れんばかりである。

 しかし、もうローベルト以外、得も言われぬ恐怖に支配されたブリュンヒルデの艦艇員達は、マルティーナを直視出来ず、ただ己の職務を遂行するのみであった。

 

 着水航路に入ろうとした飛行船は、エルザリオ率いる艦隊の砲撃で撃ち墜とされていく。

 既に十隻は撃沈されていたが、十五隻から二十六隻と一斉砲撃が増したヘルツォーク艦隊は、瞬く間に残りのオフリー合同艦隊を大破させていく。

 無事だった運送業の飛行船五隻は着水航路中にエルザリオ率いる艦隊砲撃にそのまま沈められた。

 マフィア率いる3家合同艦隊の四隻は、別艦隊五隻とヘルツォーク艦隊からの援護四隻にて容赦なく撃沈されていった。

 

 

 

 

 エーリッヒとエルンストは重巡洋艦のブリッジでエルザリオ子爵に迎えられて推移を見守る。他の二個小隊メンバーは格納庫で待機している。

 エーリッヒもエルザリオ子爵を前にして、口調は普段通りに戻っていた。

 

 「しかし、下方向からの攻撃ですか」

 

 「いつも上を取れるとは限らんからな。頭を抑えられた場合の訓練も想定しているが…… さすがに敵ももう攻撃してくる余裕もないか。それに着水航路に入る艦を狙えるからな…… 何、この燃えた空で白旗なんぞ見えんよ。着水して動力を切る、そして白旗を揚げなければ戦意有りだろう? ヘルツォークはそう取らざるを得ん」

 

 まぁヘルツォークは確かに。エトもその通りだと頷いている。要するに、着水なんぞさせん。全て撃ち墜とすというヘルツォークの意志だな。

 

 「目敏い敵鎧は即着水してましたがね。オフリーの手の者にしては判断が早いですね」

 

 「エト、その鎧達はかき集められた者達で、民間護衛組織か運送業の者とかかもな。だからさ」

 

 護衛組織やおそらくあれは運送業の飛行船の奴等だろう。まぁ可哀想ではあるが、おそらく右翼だったのが運の尽きだ。二個小隊にがっつりとやられている。

 いや、この場にいる限り撃沈させるがな。

 左翼はマフィアだな。王都であのペイントはリッテル商会から聞いたことがあったから知っている。

 六隻は操舵不能に出来たが、残りは別艦隊が始末するだろう。ここからでもその六隻は既にマルティーナ達に沈められている。

 

 「父上、後はオフリー伯爵領本土の浮島の制圧ですね。寄子はどうします?」

 

 「何処の家が参じたかわからんからな。この艦隊でオフリー伯爵領の浮島を制圧し、別艦隊五隻で寄子の浮島を二隻ずつで臨検させるさ。ドレスデン男爵とウェイン準男爵だな。残り一隻で騎士家を見て回る」

 

 「確か飛行船を持っているのは、ドレスデン男爵家だけですしね。一応、本隊は無事です。何隻か制圧組に回しては? 威圧感は増すでしょう」

 

 寄子や騎士家、大したことはないだろうが、軍艦級の飛行船は迫力がある。浮かんでいるだけでも効果的だろう。

 

 「そうだな。本来なら被害が出ている想定だが、お前達の急降下強襲で慌てた奴等からは、反撃はほとんど無かっただろうからな。十隻は制圧に回すか」

 

 「ええ、散見された敵艦からの砲撃もシールドで防いでましたよ。味方撃ちまでありましたからね。笑いを堪えるのが一番大変でしたね」

 

 やはりヘルツォーク子爵艦隊のほうを気にしてしまい、折を見て確認していた。その分エトが二個小隊を見てくれていた事には助かった。

 

 「気になった事はあったか?」

 

 「やはりスクランブルの対応ですかね。ヘルツォークは問題ないでしょうが、今後は会敵前には、鎧の発進、タンクデサント、最悪でも搭乗は済ますべきでしょう。一応ヘルツォークは搭乗は済んでますし、マニュアル発進は可能です。強襲されても、鎧は撃ち墜とされる間抜けは晒さないでしょうがね」

 

 親父から質問されたので答えるが、強襲する身として思った事だ。タンクデサントでもされていたら、強襲後は逃げていたかもしれない。いや、それでもあのレベルならクレー射撃出来たか。

 ただし、二個小隊のほうに被害が出ていた可能性が高いだろう。乱戦らしい乱戦にならずに二個小隊で鎧を38機、エトで23機、俺で35機墜としている。

 

 「会敵前に発進させておくのは、緊張で精神的な疲労も大きいが、タンクデサントは有りかもしれんな」

 

 「統制取れていなければ、敵艦からの砲撃に巻き込まれますがね。半分タンクデサント、半分は待機ぐらいでしょうか?」

 

 このような局地戦であれば、発進待機もまだ大丈夫だろうが、もっと大規模で合同軍になると可能な限り温存したい。

 とち狂った味方の対応や、墜ちた味方の救出に使い潰される。

 長時間飛行訓練をしていても飛ぶのには、神経も気力も使う。無駄には飛びたくない。

 

 「待機からスクランブルが可能なヘルツォークは問題無いが、タンクデサントは取り入れようか」

 

 鎧に乗っているんだ、人の持つライフルの狙撃を恐れる心配はないから有りだな。敵からの狙撃がくるようであれば既に戦闘状態だ。タンクデサントも糞もないだろう。

 

 「さて、終わりだな」

 

 親父の言葉通り、浮いている飛行船はいなくなった。海の藻屑となった飛行船から、果たして浮遊石がサルベージ出来るのかどうか。

 大破して浮いている飛行船がたった四隻、しかもあれは直に沈むな。

 我が妹様も親父も容赦がない。

 請け負ってくれたフレーザー侯爵家に期待しようか。最近フレーザー侯爵家の歩み寄りのようなものを感じているが、俺と親父は知っている。

 フレーザー侯爵家は、ヘルツォーク子爵家の監視役だという事を。

 それでも利用出来るものは利用するさ。ヘルツォークは王国に敵意はあっても、決して敵対はしないのだから。




誰かさん…… その女には御褒美で、麦畑でちゅっちゅ、ちゅっちゅしてやって(笑)

退くんなら、敵の向こう側に退けばいいじゃないか!
天才だな(笑)

頭がおかしい作戦だ。

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