乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です 作:N2
何でだろうなぁ、書いちゃったんだなぁ。
あれを思い出したせいだなぁ、ゲーマーズ(笑)
あ、時系列とか無視して下さい。
でもそうですね。強いて言うならば、修学旅行前ぐらいかなぁ。
宜しくお願い致します。
俺、エーリッヒ・フォウ・ヘルツォークは、学園でお茶会を開催しようとしていたら、クラリス先輩がボードゲームを持ってきた。
「ク、クラリス、これは……」
人生ゲーム!? この世界版の人生ゲームじゃないか!!
「お父様が付き合いのある方から貰って来たのよね。良ければやってみない」
しなを作りながら色っぽく言うクラリス先輩にコロッとやられた俺は、じゃあメンバーを集めましょうという事で、安易に請け負ってしまった。
あの胃に穴が開くかのようなストレスを味わう事も知らずに――
☆
「今日はお茶会とは一風変わった趣向を凝らして、ボードゲームをやりましょう」
俺とクラリス先輩、マルティーナはその場の雰囲気でテンションが高めだ。
「おぉ、これは!? まさか……」
リオンが俺と同じように驚いている。何故だ? やった事があるのだろうか?
「ふむ、人生ゲームか。要はダイスを転がして、マスを進み、マスのイベントによって色々と変化がつくというわけか」
「でもアンジェ、場合によってはマスの指示にプレイヤーが従って、別途行動しなければならないみたいですよ」
アンジェリカさん、オリヴィアさん、説明ありがとう!
「そして最終的には、ゴールした時にお金が一杯貯まったプレイヤーが勝ちということですか」
我が妹様が一番大事な部分を説明してくれた。
この人生ゲーム貴族版、言うなれば恋愛、結婚、出産に叙爵や陞爵、戦争や領地経営とまぁ何でもござれのボードゲーム。
前世の人生ゲームと似たり寄ったりだから、気楽に楽しめるだろう。
「ふふふ、勝負事には気合いが入るな」
やる気満々の公爵令嬢様。
いや、お気楽にしたほうがいいよ。ボードゲームで力入れすぎると友達失くしちゃうから! ドカポ○になっちゃうから! ドカ○ンだけは止めて!!
「ア、アンジェ、もっとお気楽でいいんだよ。こういうのは」
さすがリオン! 経験者か!? ド○ポンの恐ろしさを知っているというのか!?
何故ならこのゲーム、貴族版なのだ。相手を蹴落とそうが、ワインに毒を仕込もうが何でも有り。
「うふ、楽しみね」
物凄い笑顔でとんでもない物を持ってきやがったよ、この大臣の娘! まんま○カポンじゃねぇかっ!!
よく説明書を読みもせずにメンバー集めをした、その時の俺を殴りつけてやりたい。
だって戦争マスとかで領地とか奪えるし、襲撃出来るし、死んだら数ターン回復にかかるし。
「エーリッヒ様、顔色がよくありませんが? あら、リオンさんも?」
「いや、楽しみだな~ハハッ」
(おい、てめぇこんなのに俺を巻き込みやがって!)
(僕も開けるまでわからなかったんだよ!)
俺とリオンはアイコンタクトで会話をする。
ニュ○タイプのようで、ちょっとテンション上がってきた。
「まったくあたしだって暇じゃないんだけど! 勝ったら何か奢りなさいよね!」
マリエール、じゃなかったマリエ、俺は何でこんな奴を呼んでしまったんだ…… 助けてヘロイーゼちゃん!
「吠えるな! 貴様には負けん」
「あらあら、子供は元気よね」
アンジェリカさんもクラリス先輩も、もう互いの婚約者に対しては思う所はないみたいだが、でもマリエにそんなにいい感情は持ってないよね。
「では、貴女が負けたら、その髪と目の色を物理的に変えます」
「な、な…… ちょっとあんたの妹怖すぎるわよ!?」
「ま、まぁ、落ち着こうティナ、ゲームは楽しまなきゃね」
「エーリッヒ様がそう言うなら……」
ぶつぶつと文句を言うティナの頭を撫でておく。物理的に変えるとか、もうどうやるのかわからないんだけど。
「ま、まぁ、マリエさんともこういうのは初めてですし、せっかくだからやりましょうよ。でも貴族じゃないのに私が、このゲームをやってもいいんでしょうか?」
貴族じゃない事を気にする、ほんわか癒し系巨乳のオリヴィアさんが、申し訳なさそうに首を傾げている。
やはり俺の癒し枠のヘロイーゼちゃんが足りない。ゆるぽわお漏らし系だけど、癒しでもあるんだ!
「ゲームなんだから気にするな」
「きゃ、もうくすぐったい」
あ、百合が始まった。マリエがドン引きしてリオンが癒されている。
「ま、まぁ取り敢えずは始めようか!」
参加者は、俺エーリッヒ、リオン、クラリス先輩にマルティーナ、アンジェリカさんにオリヴィアさん、そしてマリエの7人。
俺は笑顔で、キラッと開始を宣言した。
もう帰りたい。
☆
「きぃぃいい! また死んだじゃない! 二回目よ! インチキじゃない!?」
おぉマリエよ。死んでしまうとは情けない。
クラリス先輩に強奪された後に、畳み掛けるようにアンジェリカさんに襲撃されて殺されてしまったマリエ。
2人って仲いいの? アンジェリカさんとクラリス先輩の大人っぽい女性の百合も見てみたいよ。
「ま、まぁまぁ、僕が助けるから」
そう何と! 結婚マスで俺とマリエが結婚してしまったのだ。結婚したら財産を共有する部分があるのだ! まぁ現金だけど、領地とかは共有じゃないので順位に差がつくというわけだ。
お金を出せば、回復ターンマスを有利に出来る。
「お兄様と結婚お兄様と結婚お兄様と結婚お兄様と結婚お兄様と結婚お兄様と結婚お兄様と結婚お兄様と結婚……」
痛い!? 脇腹を肘でガツガツするのは止めて! 的確に肋骨に当たってるから!
マリエと結婚してから、我が妹様の機嫌がマッハで悪くなっていった。
そういえばマリエは従姉妹だから結婚出来るなぁ、とか呟いたら、クラリス先輩のマリエ潰しが始まった。アンジェリカさんもここぞとばかりに連携。
レッドグレイブは武闘派だな。腹黒と武闘派のタッグ、隙がないなぁ、そんなのを敵にするマリエはアホだなぁ。
「じゃ、じゃあ私の番ですね。あ、6です! やった! あ、結婚マスです」
おぉ、結婚組が増えるな! オリヴィアさんがサイコロを振る。
「わ、私か! リビアと!」
「アンジェ」
え、見つめ合いだしたんですけど!? もしかして!
うおっ! 抱き締めあっておでこをくっ付けあっているだと!? いけっ! もっとやれ! あぁ!?
「お兄様は見ちゃダメです」
我がままな妹様に目を塞がれた。背中が弾力に富んだ柔らかさが気持ちいい。マリエはつるぺったんだからなぁ。
「おい、何考えてるかわかるんだからね」
我が妹様が怖いのか手は出してこないが、マリエから殺気を感じるな。
目から手を離されたが、リオンは顔が真っ赤でマリエは俺に怒りながらドン引き、器用だな。
クラリス先輩は冷た~い目で相変わらずマリエを睨み付けている。マルティーナはスキンシップをしたせいなのか、ちょっと機嫌が良くなった。チョロ可愛!
「俺は平和にいきますよ、と…… げ!?」
リオンはこれまで順調に来ている。3位だったな。爵位も男爵だ。
このゲーム、騎士爵から始まって、微妙に気を使っているのか伯爵までで陞爵は終わりだ。それ以降はこの世界では、王族が絡む爵位だから配慮してるのかも。
「結婚マスか…… 多いなぁ」
その辺りのルートの時期なのかな。
あ、でもその結婚マスって――
「あ、アンジェと結婚だって、リビアはどうなるんだ?」
「えぇ、アンジェと別れちゃうんですか!?」
「いえ、アンジェリカとオリヴィアさんの結婚は継続で、そこに新たにリオン君が加わるみたいね」
そう、クラリス先輩が言うように貴族版だから重婚オッケーなのだ。結婚マスでも相手を別れさせる種類もあるけど。
「おぉ、両手に花だ」
リオンが感極まっている! あの3人、オリヴィアさんもアンジェリカさんもリオンが好きだし、リオンも2人の事が好き。
そして何より! オリヴィアさんとアンジェリカさんが百合!! 何あの3人の平和と愛に満ちた空間。おかしくない。
ある意味、もうゴールしてるよ。
「悪いな! くひひひ」
「グヌヌ!」
くそっ、リオンにしてやられた感が半端ない。
「やったー! あたし復活!」
マリエは興味無いのか必死に復活しようと頑張ってる。
でもお前の借金が重いの。
そうこのゲーム、資産とは別で手持ちの金がマイナスになると強制的に借金でゼロに戻される。そして定期的に利息を支払う事になるが、利息が払えないと借金となり、さらに利息を払う。
借金の複利!? 誰がこんなアホな事考えやがった!! ラーファンは呪われているのかと言いたい!
結局今のところマリエが騎士爵でドベ、それに引き摺られた俺は6位で準男爵、5位に準男爵のオリヴィアさん、4位に我が妹様が男爵、3位がリオンで男爵、2位は子爵のアンジェリカさん、そして1位は子爵でクラリス先輩、腹黒っ!
「さて、とにもかくにもダメ嫁の借金を消さなきゃ、と…… ん!?」
強制離婚マス。相手の不義が発覚して4以上のマスだと離婚。6だとさらにサイコロを振って他の未婚メンバーと結婚か。
お前は俺の実母かと言いたい。
「666666666……」
ティナ、怖いよティナ。
ススッとクラリス先輩が寄ってきて耳元で囁く。
「666666666……」
クラリス、可愛いよクラリス。
痛い! また我が妹様がガツガツと肘を入れてきた。
「早く振れ」
こいつ、オリヴィアさんとアンジェリカさんを侍らせながら、笑顔で言ってきやがった。
「あぁ、金蔓が……」
俺をお前の金蔓にするな! ラーファンめ!
「はいはい、よっと」
マルティーナとクラリス先輩が食い入るように見ている。あ、マリエもか。もうリオン達3人は別の世界に行っている気がするな。
「「「6っ!!」」」
もう俺よりも周りの反応が凄いな。
「お、お兄様早く次を」
「大丈夫、信じているわ」
「借金はいやぁぁぁあああ!」
これゲームだから! お遊びだから! 学園女子特有の火遊びでもないからね!
え、何これ…… めっちゃ胃が痛い。リオンは殴りたい。
「はい……」
もうあまり考えずに振ろう。
マリエは真っ白になっているが、それは離婚する場合は、相手に借金を押し付ける形で、離れていくほうがリセットされるからだ。
ふ、借金が似合う女。借金系女子、それがマリエだ。
ちょっとお腹の痛み治まった。
「やったわリック君! 結婚よ。大丈夫、現金が無くてもアトリーで養ってあげるわ!」
おぉ、さすがヘルツォークの女神クラリスぱいせん!
「な、何言ってるんですか!? お兄様は渡しません」
クラリスぱいせんの胸で抱き留められて癒やされていると、我が妹様が渾身の力でダイスを叩きつけた。
叩きつけた!?
ダイスがめり込み、指し示すマスは、強奪マス!
強奪マスは相手の資産を奪うマス! しかも男子だけは金蔓で資産扱いなので、奪えるという貴族女子仕様!
ゲームでもかよ! リオンもその説明書きを見て目を見開いている。
そう、この国では男子は資産、物扱いなのだ。動産かな?
ダイス固いなぁ、その手があったかぁ、ティナは凄いなぁ。クラリス先輩の胸は柔らかくて気持ちいいなぁ。弾力はティナのほうかなぁ。
もう俺は現実逃避していると――
「ぶべっ!?」
怒れる我が妹様にクラリス先輩から引き剥がされて床に叩きつけられた。
ダイスじゃないんですけど。
「決着を付けましょうクラリス先輩」
「ふふ、いいわね。譲らないわよ」
2人とも魔力強化したスイングで、ダイスを叩きつけて6を連発し出した。マジで!?
「取り敢えず、終わるか」
リオンがガッツンガッツンとダイスを叩きつける2人を見ながらそう言った。
「借金が消えないのぉぉぉぉおおお」
マリエがうわ言というには大きな声で、真っ白になりながら呻いている。
「解散!!」
胃痛がマッハの俺はリオンに賛成した。ガッツンガッツンといつまでもその部屋では、ダイスの音が鳴り響いていた。
☆
青い顔をしながらげんなりと、リオンは今頃3人でシッポリしてるのかなぁ、とか考えて学生寮へ向かっていると我が癒しが現れた。
「ど、どうしたんですか? 物凄い顔が青いですよ」
ヘロイーゼちゃんが俺の顔を見てビックリしている。愛人系の顔立ちから、ホラー系の顔立ちにクラスチェンジしてしまった。
「いやぁ、すごーく胃が痛くてね……」
「胃薬ありますけど飲みます?」
おぉ、何故そんなものを?
「いや、女の子ってわりと胃薬や痛み止めや整腸剤とか常備してますよ」
表情に出ていたのかヘロイーゼちゃんは、察して答えてくれた。
「ありがとうイーゼちゃん!」
「ふぇ!? ふぇぇ、ど、どういたしまして? えへへ」
感極まって抱き締めてしまった。まさか胃を癒してくれるとは! 胃やし系女子!?
「何をやってるんですかお兄様?」
「あらあら、学生寮の前でいけないわね」
マルティーナとクラリス先輩が笑顔で歩いてきた。
「「決着がつかないから、お部屋にいこうと思って」」
ハモった。シンクロし出したなこの2人。
「ふぅ、イーゼちゃん、胃薬ダースで頂戴」
「た、大変ですね。はいこれ、では、では」
俺にサッと胃薬の小瓶を渡してイーゼちゃんは帰っていった。
リオンはシッポリで俺はこれからガッツリだな。
誰だ友情破壊ゲームなんかテンションあげてやろうとしたのは! 俺だよ!!
アンジェとリビアの娘のリビアンちゃんの出番が!?
まぁ人生ゲームだからピンだしね。いらないかな(笑)
潮里潤先生のツイッターのリビアンちゃんイラストで癒されよ!