乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です   作:N2

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ヴァニトゥム様、佐藤浩様、誤字報告ありがとうございます。


第43話 寄親!?

 明日から連休明けで学園が始まる夜、マルティーナを先に学生寮に送り、俺は1人でアトリー邸を訪れていた。バーナード大臣からの呼び出しだ。

 

 「素晴らしい戦いぶりだったじゃないか。この結果には、王宮も騒然としていたよ」

 

 「運が重なっただけですよ」

 

 オフリーの関連商会や諸々の調査も既に王宮が行っているが、結果はまだまだ先だろう。しかし、リオンからの証拠書類は大きいと思われる。

 捕らえられたオフリーも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とは、俺も聞いていた。嫡男は、そろそろ物言わぬなんとやら、といった所だろうな。

 

 「謙遜が過ぎるね。まぁいいか。ウェイン準男爵家は、暫くは寄親を持たせず、独力のみで領地経営をしてもらう。脅されたとはいえ、娘が空賊を手引きした見せしめだな。どこもあの領地を助けてはならない。娘も引き続き学園に通わせる。決して辞めさせる事はしないそうだ。騎士家は関わっていたから取潰しが決定だ」

 

 カーラさんの今後は地獄だな。確実に陰湿な苛めが待っているだろう。騎士家の当主は恐らく処刑、家族は平民落ちかな。

 

 「空賊にどんな形にせよ関わればどうなるか…… 良い宣伝になりますね」

 

 「まったくだ。その娘も直ぐに王宮に報告すれば良いものを。これも他の貴族家への良い教訓だ。あぁ、それと、ドレスデン男爵だが、正確には彼はオフリー伯爵の寄子ではないよ。債務が多額で娘をオフリー嬢の取り巻きにさせていたらしい。オフリー伯爵家も男爵家の娘が取り巻きにいれば箔が付くからね。オフリーの悪事には関わっていなかった。ただし、王宮への報告を欠いた事実はあるとの事で、六位上から六位下へ降格だ」

 

 ドレスデン男爵、六位上だったのか。

 親父からはオフリーの浮島よりもしっかりと整備及び自給自足のための農地は整っていると言っていたな。

 しかし、それではやはり見せしめの降格のようなものだな。

 報告を欠いた事実とは何ぞ? と言った所だろう。怪しいと思えば王宮に言えよという事だろうが、浮島の男爵家のような貴族は自領の事で精一杯だ。

 大方オフリー伯爵家への借金もファンオース侵攻戦のせいだろう。寧ろ王宮が助けてやれと言いたい。

 バーナード大臣には怖くて言えないので、神妙な表情で頷いておく。

 

 オフリーは商売で儲けつつ、領内には折々必要に鑑みて配給をしていたとの事だ。領民もオフリーの商会関連、非合法生産活動での従事が多く、しかも領民はその作業が非合法だと知らない者がほとんどだとか。

 オフリーは領民を安い労働力ぐらいにしか思ってなかったのだろう。王宮は領民に罰は問わない意向らしい。

 領主の指示に従うだけの領民に罰を問うても得るもの無く、浮島が荒廃するだけでもある。

 

 「あそこ一帯はね、20年前のファンオース侵攻戦の先発を任されたため被害が大きかったのだ。オフリーが乗っ取られたのもそれが大きい。ドレスデン男爵家には王宮も借りがあったような物だから、比較的穏便に済んだのだよ。空賊やマフィアとも関わっていないしね。あぁ、それと……」

 

 バーナード大臣が手を叩くとメイドと共に1人の学園の女生徒が入室してきた。あれは確か――

 

 「クラリスが学園で見つけて、アトリーで保護をしておいた、ナルニア・フォウ・ドレスデン嬢だ。ドレスデン男爵も心配していたそうだが、娘の安否を知ると安心していたそうだよ」

 

 リオンが開催した喫茶店にオフリー嬢と来店した娘だった。確かにこの娘はミレーヌ様を罵倒もせず、オフリー嬢に貶されたリオンを見ていただけだったしな。

 かなり清々したというような感じでニヤけていた事は確かだが。

 今のおどおどとした姿と少しやつれたように見えるのは、相当ここ数日での心労が響いたという事か。

 色っぽく大人びたピンクアッシュゴールドのセミロングを緩く巻いた髪、顔立ちは大人っぽい綺麗系か。しかし怯えているのか泣きそうな表情だな。

 身長は160cm程度で、小顔だがスタイルは平均的か。身長はヘロイーゼちゃんとマルティーナの間くらいだな。

 え、改めて見るとけっこうイケる気がする! ジロジロと見てしまった。

 

 「では、ナルニアさんは引き続き学園の上級クラスですよね。その割には怯えが強いような……」

 

 俺の言葉に目を瞑り、びくりと身体を震わせた。何をそこまで怯えるのだろう?

 疑問に思ったので聞いてみた。

 

 「彼女は上級クラスでもあったから、オフリー嬢の取り巻きを纏める立場だったみたいでね。オフリー伯爵の悪事は学園でも噂になるだろう。降格も受け、さらに娘まで寄子ですらないのに、学園生の標的にするには偲びないというわけさ。文字通り、ドレスデンとウェインじゃ王国への貢献は段違いだったからね」

 

 準男爵と六位上の男爵とじゃ比べるのも烏滸がましいか。オフリー嬢は、内心では皆にそもそも嫌われている。その取り巻きを纏めていたのだから、彼女もこのままでは苛めの対象というわけか。

 王宮はウェイン準男爵家は見せしめにするが、長年の功績あるドレスデン男爵家は降格のみ。しかし先程の話を聞くと降格すら可哀想だ。

 バーナード大臣は続ける。

 

 「オフリーが取潰しとなり、ドレスデン男爵も頼る所は欲しい。王宮はオフリーの財産を抑えるし、オフリーの浮島の管理はしたくない――」

 

 まぁ、民間に任せて利益を出して税を納めて貰ったほうが、王宮としては二度美味しいだろう。官吏に任せきりにすると赤字に陥ったら、それを垂れ流すのは目に見えているという事か。

 

 「――なので、学園を卒業したらリック君の領地だ。ドレスデン男爵家が寄子となるので、学園でもナルニア嬢の面倒を見てやってくれたまえ。女子なので、マルティーナ嬢かクラリスにでも頼るといい」

 

 ぐ、ぐふ…… は!? たまたま飲んでいた紅茶が気管に入り軽く咽てしまった。

 今、何て言った? 寄子だと!?

 

 「あ、あの、私の領地? しかも私は男爵ですし、ドレスデン男爵を寄子とするのは不可能では?」

 

 わかってはいる。俺だって独立はしたかった、というよりもしなければならない。

 バーナード大臣が何を言おうとしているのかは…… ぶっちゃけあそこは男爵程度であればまだいい。

 しかしそれ以上はきついぞ! 確かに男爵領ではなく、仮に取り潰される騎士家の浮島が無くても子爵領の規模だが、思い切りアウェー感満載だ。

 

 「リック君は今回の件で、まず六位上に昇進となる。そして学園卒業後に子爵に陞爵、五位下に昇進だ。ちなみに君の友人のリオン君は今回の空賊討伐の功績で五位下に昇進。オフリーと空賊が関係している証拠書類が大いに役立ってね。私の推薦で彼は卒業後は五位上だよ、あと最新式のエアバイクもプレゼントしておいたよ」

 

 寧ろ俺が寄子のドレスデン男爵を頼りそうだ。

 

 「リオン達から話は聞きましたが、実質リオンの単機単艦で空賊の飛行船七隻、鎧も壊れているとはいえ約70機を拿捕していますからね。妥当…… いや、それでも五位下か褒賞金ぐらいが……」

 

 少し昇進が早いなと疑問に思っているとバーナード大臣が補足してくれた。

 

 「かなり宮廷内でも金が流れてね。フィールド辺境伯やセバーグ伯爵も動いていた。ブラッドやグレッグ、彼等の廃嫡も今回の功績とリオン君からの金額で取り消されたそうだ。王妃様も最終的に動いたそうだよ」

 

 あの財宝をレッドグレイブ経由で2人の実家にも配っていたのか。出世が嫌で2人に手柄を譲ったのにその実家を味方に付けて昇進とか凄いな。いや、リオンは嫌がるだろうが。

 しかしエアバイクは羨ましいな。

 

 「今回リック君には旧オフリーの領地をプレゼントしたからね。エアバイクは無しにしたんだが、欲しければいつでも言ってくれて構わないよ」

 

 プレゼントって言っちゃったよこの大臣!? 王宮管轄にしたい勢力を抑えたという事か。ナルニアさんは目が点になってしまった。

 最近麻痺してきたけど、バーナード大臣と話をしていると、雲の上の話がポツンと普通に出てくるから困る。

 

 「いえ、もう十分過ぎます。しかし今回私はヘルツォーク子爵領の助っ人扱いだった筈ですが、褒賞といいますか、多すぎませんか?」

 

 そうなのだ。

 俺はヘルツォーク組から、先生お願いしゃっす! と頼まれた用心棒みたいなものだ。そのようなニュアンスも含めて伝えると、バーナード大臣は怪訝な顔をされた。

 

 「何を言ってるんだ。リック君は王妃様を貶した不忠者を王妃様の命令で処断した忠義者だ。褒賞を与えないと王妃様の沽券に関わる。ヘルツォーク子爵領は賠償で事が済む手筈であるし、エルザリオ子爵も大いに喜んでくれておるよ」

 

 え!? そうなの。俺に忠誠とかあったのか? あったことにしよう。まぁ、親父が納得済みならいいや。王宮官吏と色々とやり取りがあったのだろう。

 取り敢えず愛想笑いで誤魔化しておいた。

 

 しかし考えようによっては、旧オフリーの浮島の場所は悪くない。

 大雑把にホルファート王国を表すと、広大な王国本土を中心に浮島群は中間層、外縁部層に分かれており、俗に言う辺境や国境は外縁部層にあたる。旧オフリー領は中間層の外寄りだ。

 まぁ、中間層でも内寄り外寄り、外縁部層でも内寄りと外寄りがあるが。ちなみにヘルツォーク子爵領は国境沿いなので外縁部層の正に外側だな。

 

 「話は終わったかしら? 終わったのであれば学園に戻りましょうか」

 

 ノックと共にクラリス先輩が入室してきた。

 

 「ただいまクラリス。ナルニアさんの保護、ありがとう」

 

 父親であるバーナード大臣の前で、娘さんを呼び捨てにするのは恐縮だが、バーナード大臣から言われたことなのでしっかりと呼び捨てにしよう。

 それにナルニアさんは寄子の娘になるので、何かあればドレスデン男爵に申し訳ないからな。

 ナルニアさんは、学園での味方が付いたので少し安心したように思える。しかも2年生内ではトップクラスの貴族令嬢であるクラリス先輩だ。

 逆に恐縮してしまいそうだが。

 

 「お、おかえりなさい。貴方…… ん、リック君の寄子の娘さんだものね。学園でも任せて!」

 

 貴方? 他人行儀だな。すぐに直してくれたのでよかった。落ち込むところだった。

 

 「女性の事は女性に任せるよ。ナルニアさんには、明日マルティーナを紹介しよう。えぇと、確か医務室で会ってるかな」

 

 オフリー嬢の容態確認をしに行ったときに、オフリー嬢が寝るベッドサイドで我が妹様を見て震えていた娘だったからわかるだろう。

 

 「は、はい。マルティーナ様の事は姐さんとお呼びします。クラリスお嬢様も宜しくお願いしますっ! 私の事はニアと呼んでくだされば」

 

 がばっと頭を下げてきたが、(あね)さん!? 極妻系女子、それが我が妹様か…… 

 ティナは怖いなぁ。クラリス先輩もさすがに苦笑している。

 

 「まぁ、ティナが良ければね。じゃあニアも宜しく」

 

 ナルと個人的には呼びたいな。一マス空欄を空けて、〇ナルと呼んでしまいたい。

 などとアホな事を考えていると――

 

 「宜しくお願い致します。ご主人様!」

 

 とんでもないことをぶっこんできた!?

 俺とクラリス先輩の目が見開く。

 

 「ふむ、寄親の娘などは、取り巻きにはお嬢様と呼ばれているから、寄親そのものになるリック君にはご主人様というわけか…… まぁおかしくはない…… のか?」

 

 バーナード大臣も困惑していた。

 

 「ニアさん、今日は私の部屋に泊まりましょう。今後の事やお互いに色々知らなきゃいけないわ。いいわよね、リック君」

 

 もちろん同じ女性同士だし、クラリス先輩はニアにとっても今後頼りになるだろう。

 え、でも何かクラリス先輩が怖い。

 

 「い、良いんじゃないかな。ニアもクラリスを頼るといい。そうすれば学園での生活も大丈夫な筈だ」

 

 「あ、はい。クラリスお嬢様、ありがとうございます」

 

 マルティーナを見て、我々には逆らってはいけないというのが刷り込まれているのだろう。かなり従順になっている。アトリー家で仕込まれたか?

 俺なんかはどうでもいいが、クラリス先輩とは仲良くしておいたほうがいいぞ。

 しかし、このナルニア・フォウ・ドレスデン嬢、あのオフリー嬢の取り巻きをやっていたのが凄いな。

 あんな女相手だと離れそうだが、よほど実家から強く言われていたのだろうか?

 もしそうならドレスデン男爵にアトリーを裏切るなと伝えておいて、クラリス先輩の取り巻きにしようかな。今はクラリス先輩も取り巻きの女子を整理中でいないのが丁度いい。ヘロイーゼちゃんも加えれば良いだろう。

 クラリス先輩は、今現在男の取り巻きだけで、エアバイク先輩など見た目が厳つくてゴツいから、女王様みたいに見えてしまうからな。

 女子2人がいればバランスも良いだろう。マルティーナも加えていいんだが、そうなると俺も一緒だ。

 ふむ、クラリス先輩は女帝だな。

 

 その時、俺の脳天から脊髄にかけて稲妻が走り抜けた! もうこの閃きはヤバいな!?

 

 「寄子から嫁を貰う…… という事は何とっ! ニアがお嫁さん候補に浮上した!! ぶべっ!?」

 

 「あら、虫がいたみたい。ふふふ、まだ少し暑いから湧いたみたいね」

 

 クラリス先輩から鋭い平手打ちが飛んできた。

 うろうろチョロチョロ蚊トンボみたいな奴がいるんだろう。まったく、そんな奴は修正されても仕方がないな。

 バーナード大臣は呆れてもいるし、可哀想な奴を見るような憐れんだ目をしていた。

 ニアはまた入室してきた時のように、おどおどビクビクとし出してしまった。

 可哀想な娘だ。




漫画版のオフリー嬢の取り巻きが可愛いなぁ!
と思ってしまった私(笑)
漫画版が可愛いから、本当は当初この子の救済が念頭にあったのに、何故かヘロイーゼちゃんが登場してしまった(笑)
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