乙女ゲー世界はモブの中のモブにこそ、非常に厳しい世界です   作:N2

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kaigene様、神薙改式様、誤字報告ありがとうございます。

時系列はほんと無視してください。
本来はだいぶ後に乗せるような閑話ですが、つい勢いで書いたので、時系列や細かいところは無視して頂ければと思います。

お話の流れ的にあのジョークグッズには、リック達は関わらないだろうから、ついふざけて書いてしまいました。

ですので、1年も終わりに近づいたころのお話になります。

現段階ではif的な感じですかね。大まかにはその通りではありますが。


余談 ルクシオンがジョークグッズを改良してみた

 各国境戦線が激しくなる中、いち早くファンオース公国とは和平をすることとなった。

 俺自身は父上より新ヘルツォーク領で静養せよと言われたので、本家ヘルツォーク領でのラーシェル神聖王国対応は親父達に任せている。

 今は学生寮にも寄りたかった事もあり学園に来ていた。

 そして、リオンは王宮に半ば閉じ込められているため、今はこの場にはいない。だというのに本日は、ルクシオンに空き教室に集められていた。

 集まったメンバーは、俺、マルティーナ、クラリス、ヘロイーゼ、ナルニア、アンジェリカ、オリヴィアの7人である。意味がわからない。

 

 「ルクシオン先生、リオンもいないのに何? 単独行動とか凄いね」

 

 理由がわからないので聞いてみるが、この人工知能は案外自由だ。リオンにほんわか付き従っているようにしか見えないのが不安だ。便利だけど。

 

 『実はマスターから頼まれたことがあります。これです』

 

 空き教室内に布で隠されていたオブジェが現れる。え!? 何これ?

 

 「「こ、これは!?」」

 

 アンジェリカとオリヴィアさんが驚愕して固まってしまった。

 

 『王家の船に載せられていた愛情を計測する装置です。元のシステムデータがありますので直ぐに再現できました。しかも改良済みです。より適切なコメントが発せられるでしょう』

 

 球体にドヤ顔などないんだろうが、何故かルクシオンがドヤっている気がしてならない。

 

 「おいルクシオン、リオンから頼まれたと言っていたな。まさかエー、あ、兄上が使用するのか?」

 

 顔を恥ずかしそうに染めるアンジェリ可愛い。

 アンジェリカにはちょっとした罰として兄呼びをさせているのだ。オリヴィアさんも微笑んでいる。

 痛っ!? ティナ、睨みながら抓るんじゃない!

 

 『マスターが今後を見据えてどうしても知っておきたいそうです。アンジェリカとオリヴィアは見ているだけで構いません。女性陣にどういう機能か教えてあげてください。あの5人の結果も含めて』

 

 ルクシオンがそう言うと、女性陣だけで集まってごにょごにょとしている。うっ、何か獲物を見るような目で一瞬見られたような。

 

 「ねぇ、何あの装置? 女性陣は凄く楽しそうなんだけど……」

 

 『……点数を競うんですよ。そうですね、70点以上なら取り敢えず良し。80点以上なら喜んで良いでしょう。90点以上なら歓喜する筈です』

 

 ルクシオンがざっくり説明するが、全くもって意味不明すぎて嫌な予感がする。しかもルクシオンは女性陣にも聞こえる様に響かせる。

 そのルクシオンの声を聴いて、女性陣の闘志が燃えているのは気のせいだろうか。少し斜に構えて眺めているナルニアが印象的だ。

 

 「行くわよリック君! まず最初はニアとあそこに乗って!」

 

 クラリスがノリノリだ! 珍しくはしゃいでいるな。

 

 『では、第一回ドキドキラブラブ度チェック! ルクシオンバージョンforエーリッヒ』

 

 ちょ!? ラブラブ度チェック? これはダメな奴だ!

 

 「これはですね。あそこに乗った男女の愛を数値化する機械です。その性能は折り紙付きで、古いタイプの物に私とアンジェ、それにあの5人とマリエさん、王様とミレーヌ王妃様が乗って証明されてます。それをルク君が改良したので安心ですね!」

 

 オリヴィアさんが説明してくれるが、何を安心すればいいのかわからない。というよりもローランドとミレーヌ様の数字が知りたい。

 後、君達2人で乗ったの!? やっぱり百合か! 百合なのか!!

 

 「だ、駄目だ! 愛を数値で測ってはいけない!! 愛は偉大なんだからぁぁぁ……」

 

 女性陣四人に掴まれて引っ張っていかれてしまう。298円でコンビニで売っているかもしれないけど、愛を測るとは何て恐ろしい。

 

 そしてナルニアと俺が乗ってしまった。いや乗せられてしまった。

 俺の場所は青で、ナルニアの場所はピンクだ。少しソワソワしているニアが可愛い。

 するとステージから音声が聞こえてきた。ルクシオンの声と同じだ。

 

 『男性――84点! 女性――87点! これはほぼ相思相愛に近いですね。この後一発寝てしまえば、90点台も狙えるでしょう! もし既にイタしていたら、慣れ親しんだカップルと言っても過言ではありませんね』

 

 ――え? てか最後のコメント何なの。過言ばかりだよ!

 全員が俺とニアを見て驚いている。思いのほか数値がお互いに高かったということか?

 

 「あ、あのご主人様、えっと、そんなに私の事を想ってくれてたんですか?」

 

 ニアが俯いた状態から上目遣いでチラチラとこちらを伺ってくる。綺麗系なのに仕草が可愛くてギャップに萌えるな。

 

 「もちろんだよ。状況的なストレスもあって大変だろうに良くやってくれている。いつもありがとう。ニアこそ高い数値で嬉しいね」

 

 「いえ、あの、やっぱりご主人様は頼りになるし、素敵です」

 

 『男性――85点! 女性――90点! 男性も女性も上がりました! 直ぐにでも御休憩することをお勧めします』

 

 だからこのふざけたコメントは何だルクシオン!? 他の女性陣が険悪になったじゃないか!!

 

 「はいはいは~い! ニアばかりズルい! 次私ね! えへへ、リックさんの数値気になります!」

 

 ぶっちゃけヘロイーゼちゃんの数値は俺も気になる。そしてヘロイーゼちゃんが装置の上に乗る。

 緊張してきた。

 

 『男性――96点! 女性――100点! 文句の付けようがありません。今すぐにでも子供を作るのが宜しいでしょう!』

 

 コメントがそっち方面しかないのはリオンが監修でもしているのだろうか? でもこの数値は素直に嬉しい。

 

 「や、やった! 私とリックさん凄い!! そ、相思相愛ですね! えへへ」

 

 可愛い。飛び込んできたので抱き留めて頭を撫でてしまった。あぁ、ヘロイーゼちゃんの感触は小柄でつい力を入れてしまう。

 

 「ぁあん、リックさん、強い」

 

 エロウィーネ!

 ハッとして振り返ると歯軋りするような何かを握りつぶすような不穏な音が聞こえてくる。

 

 「い、異様に高いですねお兄様?」

 

 「リック君はいつの間に手を出していたのかしら? それとも出されていたの? ほら、次は私とよ」

 

 俺の肩が握りつぶされそうになっているが耐える俺氏。

 ルクシオンはとんでも無いものを作りやがった!

 

 「あんた凄いわね」

 

 「ニアだってめっちゃ脈ありじゃん! 嬉しいんでしょ?」

 

 「ま、まぁ、そりゃぁね……」

 

 ニアは照れて言葉を濁しているが、あの2人は仲が良いな。寧ろこの装置に乗ってみて欲しい。

 ヘロイーゼちゃんとは別の意味で緊張してきた。てか怖い。

 

 『男性――97点! 女性――115点! いやぁ凄いですね! でも100点を超えるとその相手に対して心に何かしらの傷や病が発生しているので、早く対処してあげてください。お勧めの処方は、ご休憩からの一泊です。避妊なんて野暮な事しちゃダメですぜ旦那!』

 

 ぶっ壊れてんじゃねぇのかルクシオン!! お前の修理が先だ!!

 

 「凄いわ貴方! ねぇ、何で100点じゃないの? 私は100点を超えたわ。褒めて! ねぇ、何で? ねぇ……」

 

 クラリスはとても嬉しそうだが、目が仄暗くグルグルし出している。言葉も交錯していてよくわからなくなってきた。

 

 「数点なんて誤差だよ。ほら、あの5人はマリエに対してどうだったんだい? あの点数であれだけマリエに夢中なんだ。僕はもっとクラリスに夢中だよ」

 

 「そ、そうよね! ブラッドが98点だったみたいだけど、クリスなんか87点だったわ! もう、貴方ったら! 今日は泊っていくわね!」

 

 ハハッ! 目に少し光が戻ったようで何よりだよ。

 ていうかお馬鹿ファイブの点数は知らなかったけど、上と下でそんなに開きがあったのか。クリスも結構マリエにお熱だったと思うが、逆に80点台は意外だな。

 よくわからんうちに、何か知らんがクラリスのお泊りが決定した。

 

 「おぉ、ある意味真打の登場だな。しかしクラリスは情が深いな」

 

 「ちょっと怖いですね…… 結局両方とも」

 

 アンジェリカとオリヴィアさんが呑気に感想を言っている。

 

 「さぁ、お兄様! 皆にわたくし達の愛の深さを見せつけてやりましょう!」

 

 お前は俺に執着しなければ、国を傾ける事がもしかしたら出来たかもしれないほどの美女になれるというのに。何故こんな不憫になってしまったのか…… 俺の何がいけなかったんだろう?

 

 「な、何でそんなげんなりした表情何ですか!? もう! 早く来てください」

 

 ういッス。

 あぁ、怖い。緊張とかじゃなくて恐ろしい。

 

 『男性――98点! 女性――測定不能!!』

 

 ――は!? 周囲一同キョトンとしてしまった。そしたら直ぐにルクシオンと同じ電子音が喋り始めた。

 

 『もうね、あれよ! 男性は何でこんなになるまで放っといた? もうこの女性の心は重傷だよ! 心に大病を抱えているよ!! 放置プレイも度が過ぎるとこんな怪物が生まれるんだよ! あぁもう、対処法は3日間掛けてダース単位で抱いてやるのがいいでしょう。ていうか直ぐヤレ。もしかしてヤッてこの状態だったら、1回だけで放って置いたんじゃねぇだろうな? ていうか中途半端に1回だけとか、もしくは避妊なんかするから逆に拗らせるんだよ!』

 

 あまりのコメントの酷さに全員が呆けてしまう。

 

 「そうか、ティナは手遅れか……」

 

 つい俺はボソッと呟いてしまった。

 

 「ち、違うんですっ! ただわたくしはお兄様に触れただけで気持ちよくなったり! 触れられたら力が抜けて気持ち良くなったり! 抱き寄せられたお兄様の匂いで、感極まって腰が砕けて意識が飛びそうになっちゃうだけなんですっ!! お兄様が近くにいないと駄目なだけで、決して…… こ、壊れてなんていません! 普通ですから!!」

 

 我が妹様が凄いことをカミングアウトしている。

 そうかぁ、ティナは普通かぁ。

 ティナは一人遊びが必要無いくらい、実は絶好調だったわけかぁ。

 

 「マルティーナ、お前……」

 

 「うぅ、可哀想に……」

 

 おい、アンジェリカとオリヴィアさんがマルティーナを余命が少ない女の子扱いしてないか?

 

 「ティナちゃん大丈夫? そんなに病んでたんだね。気付いてあげられなくてごめんね」

 

 ヘロイーゼちゃんが介護するように涙ぐみながらティナに手を差し伸べようとしている。

 

 「で、でも大丈夫ですよティナの姐さん! 3日間ぐらいご主人様とベッドに籠ってぐちゃぐちゃにされちゃえばいいんです!」

 

 ニアのアドバイスも大概酷いのに、割と適切っぽいのが頭痛い状況だ。

 

 「今日は私今日は私今日は私今日は私今日は私今日は私今日は私今日は私今日は私今日は私今日は私今日は私……」

 

 あっ!? クラリスの目がまたグルグルし出した。

 

 「もう!? 何なんですか!? わたくしは大丈夫ですからぁぁぁああああ」

 

 ティナが叫び出したので耳打ちする。

 

 「ティナ、僕の数字はやっぱり一番お前が高かったね。ティナもどうやら凄い僕に対して愛情があるようで嬉しいよ」

 

 ぱぁっとティナが笑顔になる。チョロ可愛っ!!

 

 「お兄様!! ですよね! ですよね!! にゅふ、にゅふふふふ」

 

 「あっ、ティナちゃんが復活した! 何かズルい」

 

 ヘロイーゼちゃんは近くにいたせいなのかティナへの耳打ちを聞かれてしまったかもしれない。

 ウインクして謝っておこう。

 ヘロイーゼちゃんも若干不機嫌気味とはいえ、ウインクしながらべーっと舌を出してきた。やっぱりこの娘は可愛いわ。

 

 「おい、ルクシオン。あのコメントは何だ? リオンの適当監修か?」

 

 あのコメントの酷さは、絶対に誰かしらの偏見に満ちていると思ったので聞いてみた。

 

 『確かにコメントはマスターの監修が入ってますが、対処法は恋愛行動学からの算出です。良かったですね、対処法があって。しかもあのコメントの対処法で上手くいきそうじゃないですか。感謝して欲しいぐらいです』

 

 マジで!? え、あれって、ものっそい適当っぽいけど? まぁいいか。

 

 「ほら、クラリス。行こう! ニアもね。後、いつかリオンに文句言ってやる」

 

 「は、はい! うふ、うふふ」

 

 「あ、今行きますご主人様」

 

 ニアはアンジェリカとオリヴィアさんに一礼して駆けてきた。

 あっ、そうだった。

 

 「アンジェリカ、罰はこれでお終いだ。一回僕を兄と呼んでくれたしね。またこれからは、お前は僕の友達の彼女? なのかな。そして僕は、お前の彼氏? の友達ってところだ。さっさとリオンとの関係を決めてこい。じゃぁまたな」

 

 振り返って笑顔でアンジェリカに告げた。

 アンジェリカの罰というよりも俺に対するご褒美みたいになってしまったな。

 

 「あ、兄上には! 今まで、重ね重ね本当にお世話に…… ぐす、あ、ありがとうございました」

 

 後は、オリヴィアさんとリオンに任せよう。

 十分俺は報われたから、アンジェリカが気にする必要は無い。

 

 「ねぇ貴方! 今日は泊っていいんでしょ?」

 

 「何ですかどさくさに紛れて! わたくしです」

 

 クラリスとマルティーナが睨みあう。こっちが解決してないなぁ。

 

 「クラリス様とティナ姐さん両方で良いんじゃないですか?」

 

 ニアが凄い案を出してきた。

 

 「あら、私はいいわよ。どうせティナさんは直ぐにダウンして気持ちよく寝てしまうんでしょうしね。私とリックはその後、ゆっくりねっとりと熱い夜を過ごすわ」

 

 クラリスも凄い宣言し出した。

 

 「わ、わたくしだって、いつまでも敏感チョロティーナではないんです!! 証明して見せますから!!」

 

 「ズル~いッ!? じゃぁ、私も混ざるぅ~!」

 

 ティナがチョロ宣言したと思ったら、ヘロイーゼちゃんがティナに抱きついて更に混ざる宣言してきた。

 

 「クリーニングの手配かけておきますね。まだ王都も混乱してるからやってるのかしら?」

 

 悪いねニアにはいつも気を使わせて。

 

 「ニアはこれからはあまり気を使わなくてもいいよ。自然体で付き合っていこう」

 

 ニアは驚いたような表情を一瞬浮かべ、そして笑顔に変わり返事をしてくれた。

 

 「今後とも宜しくお願い致します! ご主人様!!」

 

 漸く慌ただしい1年が終わろうとしている。しかしこの4人ともいい関係を築けることが出来たのは幸いだ。これからは領内整備に開発、王都での商会絡みの件や独自業務もある。

 慌ただしいのは同じだが、巻き込まれるというよりも、未来のためになるという事が実感できる慌ただしさであろうから、自然と俺も笑みが零れてしまう。

 

 そして後日、王宮、というよりもミレーヌ様からとんでもないことを任されてしまう。

 嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!




ちなみに、こんなアホな恋愛行動学はおそらく有りませんので悪しからず(笑)

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