例えばこんなホロライブALT【hololive alternative-bibliography】   作:ちゃんどらー

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百花繚乱花吹雪  10

 

 莫大なイワレを揺蕩わせて踊る白狐は、名の通り吹雪の如く。

 雪が、風が、氷が舞う。彼女が刀を一振りする度に其処には冬の様相が吹き荒れる。

 冷たい翡翠の眼差しの奥には光がなく昏い感情が渦巻いている。

 剣戟は鋭く速く。蒼い刀身が煌めき、同時に氷の刃が幾つも振りきられる。叩きつけられる雪は視界を奪い、急所へと迫りくるつららは肌を容易く貫くだろう。

 しかし、だ。

 あやめは再び業と不知火を含めた“壱式・纏焔”を用いて己への強化を試みている。フブキの放つ雪やつららや氷を、纏った鬼火で打ち消していた。

 高火力で出力している鬼火はあやめを傷つけることはない。近づく冬の脅威の悉くを溶かして水へと戻し、その度に蒸発を繰り返し、またフブキが雪や氷を生み出す。

 

「……だるいなぁ」

 

 ち、とフブキから舌打ちが漏れる。

 相性の問題は確かにある。自分が放つ雪や氷は、ミオやあやめのような火とはやはり相性が悪いのだ。

 

 豊穣を担うシラカミが操れるイワレは―――“冬”。

 芽吹きの春も、繁栄の夏も、実りの秋も……三つの季節を豊穣という世界改変にも近しい大地への干渉力に捧げているフブキに残っているのは、眠りを齎す冬だけなのだ。

 長い年月をかけて固定化された彼女達の存在は、ニンゲンや他のカミからの認識によりてチカラの指向性がある程度定められてしまう。

 アヤカシから派生したカミであるから、アヤカシの時にあったチカラもある程度は使うことが出来るとはいえ、メインとしての能力はそうあれかしと願われたチカラに依存する。

 水分の凝固という物質的な定義ではなく、雪や氷などの冬を連想させるモノの現出や操作……いわば概念の具現化がカミが扱うイワレであろう。

 故にフブキは蒸発させられると扱えないし、空間への現出というカタチで冬を再構築するしかない。

 

 ただ、対処のしようはいくらでもある。

 

 一方あやめは、業と不知火は纏われてはいるが、ある程度オートであやめを護っているようで、死角からの攻撃にも軽々と対処していた。

 つまり、マルチタスクで戦闘状況を処理しながらも、あやめは近接戦闘へと大きく意識を向けられているのだ。現状ではあやめの方に分があると言える。

 ただ、近接戦闘での剣戟の応酬を繰り返しているが、あやめはその戦い方に疑問を持っていた。

 

(おかしい……ミオちゃんのような膂力があるわけでも速度があるわけでもなくて、ただ雪や氷やつららをばらまくだけの戦いでミオちゃんとこいつが互角以上になる? いや……)

 

 ありえない。

 そう結論付けたあやめは大きな薙ぎ払いでフブキを吹き飛ばして距離を置いた。

 数度の剣戟で分かった。

 斬術の技量は高い。それこそミオと打ちあってきたのだろう技術力の高さは見て取れる。身体のこなしもいいし、運動能力も相応にあるのだろう。

 そういえば、と思い出す。ミオが戦闘中になんと言っていたかを。

 

 追いつけなかった、と言ってはいなかったか。

 

 静かに、ただ静かにフブキは刀を下げていた。

 その瑞々しい唇から、小さな祝詞が紡がれる。

 

――シラカミが纏うはカクリヨの冬。覆え、隠せと祈りて舞い踊らん――

 

 一陣の風が彼女に集まった。

 北からの冷たいその風は、冬の訪れを告げるような寂しさで。

 

「凍至・寂々」

 

 刹那、あやめの視界からフブキの姿がぶれた。

 

「……っ」

 

 轟、と燃え盛った鬼火が蒼の刀を受け止めていた。

 反応できなかった。ミオとの戦闘が終わって制約の掛けなおしをまだ行っていないあやめでは、その速度を観ることは出来てもついて行く事が出来なかったのだ。

 先ほどのミオとの高速戦闘と同速かそれ以上の速度に、このままではまずいと頭に警鐘が鳴り響く。

 バフを掛けなおすには三つの制約を相手に破らせなければならない。 

 思考に潜る間にも纏っている鬼火に剣戟が幾重も刻まれていく。

 

「使わないでいいの? それ」

 

 平坦な声音での質問。翡翠の瞳が怪しく輝いていた。

 

「その勾玉、イワレとは違うけど同質の力が込められてるよね?

 紫色の雷に凝縮された生命力の塊。長い時間をかけて貴女の為に練り込まれた……ああ、そう、それが“魔力”っていうんだ」

 

 防御だけで精一杯だった。

 あやめは答えない。鬼火に斬撃が届くたびに削られてしまうから、その度、鬼神の力を鬼火へと渡さなければならない。

 翡翠の瞳からの視線は、常に勾玉を捉えていた。

 

「……千年の時を超えてきた大魔法使いで魔界学校の同級生。あらゆる魔法を極めることを目標とする勤勉さを持ち、外界とのつながりを厭わずに世界ともつながろうとする優しい子。悪戯好きだけどからかわれることも多くて生意気だけど思いやりが深かったり、種族如何に関わらず誰のことも蔑視せずに対等に扱うような人格者。

 生徒会長の貴女と共に引きこもりのネクロマンサーを救ったことがある。保健室の先生の所でさぼることもしょっちゅう。子供のような思考回路と口の悪さを持っているが、それは頭の良さの裏返しでもある」

 

 驚愕。

 つらつらと唇から流される情報に、あやめは目を見開く。

 

「な、なんで……」

 

 あやめしか知ることのない情報であるというのに、違う世界のカミがあやめの友達のことを知っているはずがないというのに。

 ガギリ、と目の前で蒼い刃が止まった。

 胸元の勾玉からゆっくりと上がってきた翡翠の視線は、まるで全てを見透かすかのようだった。

 

「貴女のことを本当に大事に想ってるみたいだね……紫咲シオンちゃんは」

「なんでっ……なんでお前がシオンちゃんのことをっ」

 

 冷たい眼差しはそのままにため息が一つ。

 

「この忌まわしい眼は他者の確率事象を見通す特別な眼。観測したモノや人物の歴史(イワレ)が既知のモノになるんだよ。鬼族や貴女に対しても使ってたのに事象の観測がなかったから効かないのかなって思ってたけど……それだけその勾玉に込められた想いが強かったってことだね」

 

 そして、と続けた。

 

「貴女のこともようやく見えた。ニンゲンの呪いを喰らいながらも呑まれず混ざって昇華した異端の鬼神、百鬼あやめ」

 

 すっと、あやめを襲っていた剣戟が途切れる。

 背を向けて離れたフブキが舞うように刀を一振り。

 

「ケガレにも似たニンゲンの悍ましい怨念のチカラを喰らうことで糧とした貴女が同格以上のモノと戦う場合、三つの制約を相手に破らせることによって鬼神の力を制御しなければ、悪鬼としての鬼神の力に飲み込まれる危険性がある。“喰霊”でミオの力を封じた時の優越でその制約が切れた今、わたしに対しての制約を強いてない貴女を追い詰めるとそうなるんでしょう?

 さらには、悪鬼の側面を持つ鬼神の力は己の傷が増えるごとに増していき、瀕死の重傷を負った時に怨念(ケガレ)を解き放ち暴走する。元々その紫の勾玉……ううん、紫も含めて“三つの勾玉”は、暴走した貴女が垂れ流す悪鬼のケガレを吹き飛ばした上で貴女を強制的に紫咲シオンの元へと送り届ける為の装置」

 

 そうでしょ、と冷たい瞳で問いかけた。答えは分かっていると確信したうえで。

 事実だ。あやめの鬼神の力は諸刃の剣であり、制御するための条件を満たさなければ自身の暴走という事態を引き起こしてしまう。

 先代の鬼神もそれで身を滅ぼしたのであり、鬼の一族の鬼神として君臨してチカラを振るうことをしなかった大きな理由の一つである。

 

「はは、其処まで見通せるかー」

「ニンゲンから受けた深くて昏い怨念、しかも千年以上も熟成された呪いとすら呼べるモノを開放することがどれだけ危険なことか、ミオを観測して観たマガツケガレで良く知ってるから。この街を壊させるわけにはいかないし、攻撃し続ければ暴走すると分かっててもただで逃がそうとも思ってない。ミオが居なくとも……わたしがミヤコのカミとして貴女のケガレを浄化出来るから。だから使えばいいよ。貴女の友達との力ってやつを」

 

 刀を担ぎなおしたあやめは大きく一息。危険を読み取ってくれて攻めることを辞めたフブキに少しだけ気を許した。

 

「そりゃシオンちゃんの力を借りれば別の戦い方も出来るんだけど……それじゃ目的が、ね」

 

 にへらと微笑みを向けても、フブキの表情は動かない。

 

「少しはお話してくれる?」

「時間稼ぎに付き合う気はない」

「つれないなぁ。まあ、余だってあんまり時間かけたくはないんだケド」

 

 身体に纏う鬼火がゆらめいて、またあやめは刀を構える。

 

「余のことを観測して全部分かったって顔してるね」

 

 一寸だけ、フブキの気配が変わる。

 耳鳴りに似た音が脳髄に鳴り響き、一つの可能性をまた映し出す。瞬時に齎されたその情報は、フブキを驚愕させるには十分だった。

 

「そのチカラは完璧じゃない。十全に余のことを識ることが出来るなら、暴走の可能性を示唆して刀を止めたりしないんだ。ほら……常に更新しないとダメで、お前自身が識っていても対応できるとは限らないんだから」

 

 じわり、とあやめの身体から滲むチカラの断片は昏い揺蕩いを見せて。

 懐から取り出したのは美しい碧色をした勾玉だった。

 フブキはこれから彼女が行うことを読み取った。されども止めず……冷たい瞳の奥を更に凍らせてあやめを見やった。

 

「暴走の抑制は最終手段。まだ人間様達の想いと対話しきれてない未熟な余を護ってくれる為に作ってくれた始まりの想いだから、あの子達のそういう想いが強くてお前が観測出来ただけで……本当の使い方は別にある」

 

 舌を出した。

 甘い果物を食べるように、あやめは碧色の勾玉を愛おしげに見つめ、舌先に乗せたそれをゆっくりと嚥下した。

 

 ぼう、と彼女から碧の力が溢れだす。

 昏い鬼神の力はソレと同化していき、あやめをゆっくりと包み込んだ。

 ひらり……と蝶が飛ぶ。碧の羽根をした一羽の蝶が、ゆっくりとあやめに溶け込んでいった。

 

――余が喰い重ねるは冥府の理。死者が想念を慮り、慈しみ、愛し、抱き進まん――

 

「こっちを使うしかないから……借りるね、るしあちゃん」

 

 ぽつりと優しい微笑みと共に零した独り言は、慈愛に満ち満ちていた。

 

「百鬼流……鬼神術式。零式・喰霊―――“屍鬼母神(シキモジン)”」

 

 ケガレとしてあやめに纏わりついていた鬼神の呪いは、彼女が取り入れたチカラによって裏返り、暖かい光となって包み込む。

 フブキは観測して識る。あやめが何をしたのかを。

 

 取り入れたのはネクロマンサーの力。あやめの後輩で寂しがり屋な女の子の力。

 天才ネクロマンサーの少女は、独りぼっちの寂しさを紛らわす為にと大量の屍と契約しており、その数はゆうに百万を超えるという。

 “ふぁんでっどちゃん”と彼女が呼ぶその屍達は、肉体を持たずとも魂だけでその少女を守護し、付き従い、また彼女のことを愛する恐怖の軍勢だとか。

 その少女の名は『潤羽るしあ』。ネクロマンサーという死者の想念のプロフェッショナル。故に……あやめが彼女の力を喰らえば、ニンゲンの負の想念である鬼神の悪鬼としての力を制御できるようになるのも必然。

 

 鬼子母神(キシモジン)という存在を知っているだろうか。

 ウツシヨにある概念であり、鬼神の一人でもある。鬼の子を育てる為にニンゲンを喰らっていた彼女は、釈迦による戒めにより改心し、種族問わず全ての子を愛する鬼神へと至ったのだという。

 罪は消えることなく、呪いを受けようとも、それでも子を愛することを誓ったその存在は、呪いさえ飲み干してニンゲンを理解しようとしたあやめの歴史(イワレ)に概念的に相似していた。

 友である反魂者の少女の力を借りることで、未だ御しきれぬ死者の想念を制御できるのならば……それこそ十全に、鬼神としての覚醒を迎えられるというモノ。

 

 ただし、ミオの時に使わなかったのは手を抜いていたからではない。自身で御せるチカラを使うことこそが最も最善であり。

 当然、己を過ぎたるチカラにはリスクが存在するのだから。

 

 ゾクリ、とフブキの背筋に怖気が走った。

 紅の瞳に時折浮かぶ碧の光が、あまりにも病的だったからかもしれない。

 

「ふふ……かわいいかわいい人間様達。余の為にチカラを貸してくれてありがとう。いつも一緒に居てくれてありがとう」

 

 トーンが少し上がったその声は幼さを含み。

 

「え? いいよって? 問題ないって? 余の為だったらどれだけでも大きなチカラを貸してやるって?

 うふふ……こんな時だけ優しい声音でそんなこと言ってぇ……余の言うこと聞いてくれるんだぁ……ふぅん……」

 

 あどけない笑みであるはずなのに、声に陰りが出はじめて。

 

「ねぇ……そんなにるしあちゃんの力は居心地がいい? 余じゃだめなの?」

 

 ハイライトの消えたその瞳と、フブキには見えない者との会話は見ているだけで頬を引きつらせるには十分で、加えて、儀式のような彼女の寸劇から眼をそらしてはいけないと本能が告げる。

 それはまるで……背中に包丁を当てられているかのように。

 

「ああ、もう。余がどれだけ語り掛けても呑み込んでも、いっつも余を壊そうとしてくるくせに……るしあちゃんの言うことだったら聞くんだねぇ……へぇ。

 いいのよ? 怒ってないもん。人間様達の恨みも呪いも、るしあちゃんは抱きしめてくれるもんね?」

 

 拗ねたような表情から一転、あやめは呆れたようにため息を一つ。

 

「それでいいよ……今はまだ。また余が、何回だって、人間様達の呪いなんて……食べてあげるから。ずぅっと一緒に居てあげる。余が……余だけがお前様達の想いを繋いで行けるんだから」

 

 恍惚とも呼べる瞳には狂気が浮かぶ。

 執着と妄執と愛情がないまぜになったような、どろりと粘性の高い感情が其処にあった。

 

 シオンのような大魔法使いであれば、あやめに影響を与えぬように調整出来た。ではネクロマンサーの少女は調整出来ないのか。

 違う。そうではない。

 潤羽るしあというネクロマンサーの少女は……他者の想念に対して共感と共鳴を以って包み込む劇場型の反魂帥。

 あやめにとっても、他者の力の吸収は魂の共鳴と同化に等しい。

 似通った力の使いかたであるが故に、そして潤羽るしあという少女が依存性の高い精神感応能力を持っているが故に、あやめが彼女の力を使う場合は魂の汚染濃度の高い毒物となってしまう。

 更には、ニンゲンの魂にとってネクロマンサーの術式は猛毒だ。依存性の高い薬物の如く、あやめの為の呪いであれど、それが別人への依存へと切り替わってしまうのだ。鬼神の想念が、潤羽るしあという少女に向けて飛散し浸食することもある、ということ。

 

 人格が溶けあいそうになる。ヘタをすれば自我が崩壊しかねない。せっかく懐柔し始めた想念さえ引き裂かれるかもしれない。そんな危険性を孕んだ手段だが……

 友達の力だからこそ、あやめは賭けに出られる。

 

(時間制限以内に終わらせる。人間様達の想念がるしあちゃんに向かいきる前に)

 

 強制的な自己バフの開放。

 ミオに三つの攻撃を超えさせた時よりも十全に、あやめの身にはチカラが溢れていた。

 ミオから受けた傷も回復し、鬼火の勢いは否応にも増している。

 

 フブキは気付く。

 そこかしこの中空に浮いている魂のようなナニカに。

 

 ふい、と一つを刀で斬ってみた。イワレを込めた刀で斬ると……ソレは淡い光を放って消えた。

 ゆっくりとそれらはあやめの方へと流れていく。後に、じわりと彼女の中に溶け込んだ。

 ああきっと先ほどの寸劇を止めていたら、これらが自分に襲い掛かって、その想念で取り殺そうとしてきたのだろうなと気づく。

 

「さっき斬ったのは子供の魂の欠片。鬼神に喰われて呪いに縛られ、余の中で分裂して増え続ける呪いの一つ。この世界の理にも従うようになって……今のでお前が成仏させてくれた。

 でもダメなんだよね。一つ二つ切ってもダメ。余の中の人間様達の魂はもう、呪いに縛られ過ぎて分裂を繰り返し過ぎてどれが本当の自分かも分かってない。だから大変なんだ……余がそれぞれの個を認識して、皆に応援してもらえるようになるってのは」

 

 それはどれだけ気の遠くなる作業なのだろうか。

 フブキは少し、彼女の内側を覗き込めた気がした。

 

「……開放しようとは思わないの? ニンゲンの魂を自由にしてあげようって」

「ホントはそれが正しいのかもしれないね」

 

 聞いてみたくて問いを投げると、あやめは寂しそうに答えた。

 

「でもさ、哀しくない? 其処にあった想いを、たとえ呪いであっても、なかったことにして投げ捨てるなんて」

 

 にししと歯を見せて笑ったあやめの美しさに、フブキの胸がズクリと疼く。

 

「何千年と繋がる呪いだけど、余は時間をかけて浄化していきたい。でも殺されてなんてあげない。理解してもいらない。イヤならぶつかって消えてくれてもいい。

 それでも、人間様達の想いは余を壊そうとしても、チカラを貸してくれるようになったヒト達は何度も連れ添ってくれるから―――」

 

―――見れなかった景色を一つでも多く、見せてあげれたらなって

 

 おかしな関係で過ごしているあやめと鬼神の呪いが繋いでいる答えに、フブキの心に一陣の風が吹く。

 

 嗚呼、と吐息が漏れた。

 目の前の鬼をどうにかしなければ、と。

 フブキにとって、あやめの出している答えは毒だった。

 

 ヒトの心にさえ縛られない彼女の存在そのものが……○○○ましい。

 

 ジジジ、とまた頭にノイズが走る。

 百鬼あやめを慕うニンゲン達と、楽しそうに笑うあやめ。

 四角い隔たりがあろうと其処には確かな絆が出来上がっていて、双方向に向かう想いがあった。

 何十、何百、何千、何万、何十万と……彼女と彼らの絆は繋がっていた。

 

 一つ一つと繋げていく鬼の少女は、この世界でもその世界でも愛されている。

 

 

「そう……じゃあもう遠慮はいらないね」

「ああ、いらない。余一人の力で勝ちたかったけど、さすがに舐めてた。ごめんね」

「別に。わたしも―――」

 

 ついて出そうになったことをフブキは呑み込む。

 

―――ニンゲンや先代、ミオの想いを借りてる事には代わりないから。

 

 神木とミヤコとカクリヨ。

 ヒトとカミとアヤカシ。

 此処に集う全てはシラカミの豊穣があるがこそだ。

 故にフブキこそがこの地の恩恵の全てを受けられる。

 

 自分に宿るイワレの大きさは感じられる。

 まとわりつく想念が、ミヤコを、土地を護れと(こいねが)う。

 

 あやめのように、心の底から想われて得たチカラとは違って。

 土地に対する無機質な願いと望み。

 

 嗚呼、とまたため息が出た。

 

 

―――其処に自分だけの為の想いは宿っているのだろうか

 

 

 また、尻尾がズクリと疼いていた。

 

 傷ついたミオにもう一度ちらりと目をやって、胸の内に燃える静かな炎だけを頼りに、フブキは再びあやめへと刃を向けた。

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。


天才ネクロマンサーに精神汚染されそうなお嬢……
ヤンデレあやめちゃん見たい
フブキちゃんとの戦闘は次回からが本番


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