例えばこんなホロライブALT【hololive alternative-bibliography】 作:ちゃんどらー
「タマゴかけ牛丼一つ!」
「はーい! 少々お待ちくださーい! 失礼しまーす! ぼんじり定食のおかわりでーす!」
「わぁ、ありがとー」
快活に響く給仕娘の声は喧噪の中でもよく通る。
頭に生える耳をピコピコさせてお辞儀をした少女を見送って、座敷の上座に座る黒の少女――大神ミオは運ばれてきた定食をすすっと目の前に持ってくる。
瞳に星を浮かべたように輝かせ、彼女はもう目の前のごちそうにくぎ付けである……が、先ほどのおかわりの言葉通りに、ミオが食べる定食は何度目かである。そう、二回程度ではない。
積まれたお皿はまだ崩れるほどではないが、ニンゲンが食べるにしては多すぎる量ではあった。
しかして彼女はニンゲンではなくこのミヤコのカミ。食欲すらヒトの範疇で計れるモノではない。
上品ながらも豪快という器用な食べ方で食を進めていくミオは、目の前でじっと正座で座っている白の少女――白上フブキには触れることなく。
下唇を歯で噛んでナニカを堪えるようにミオを見つめる瞳は切なげに。くぅ……と可愛らしい空腹のメロディが鳴ったことから、どうやらフブキは
術式で創られている店のホログラフのメニューを宙に浮かび上げては、きつねうどんの項目を恨めし気に見つめるばかり。本当は今すぐにでも食いつきたいというのが、口の端から垂れるよだれでよくわかる。
ところで、彼女の隣に据えられている七十センチはあろう大きさの布袋が何やらゆらゆら揺れているが、フブキもミオも知らんぷりである。何かを主張するように激しく揺れてはいる。しかしてミオとフブキが重ねた術式によって、その布袋が訴えたいであろうことは封殺される。
「ん~、美味しい」
「あ、あのぅ……そろそろ白上もごはん食べたいなーって……」
幾つ食べても飽きない。そんな表情のミオを見て、もはや我慢の限界だとフブキが声を出す。そんな彼女に、ミオはにっこりと……とても素敵な笑みでこう言うのだ。
「そうだねぇ。うんうん。必死で……本当に必死で神木にこびりついたケガレの浄化をして、ニンゲン達の不穏分子をあやめと一緒にぶっ飛ばして、鬼族がこのミヤコで暮らしていけるようにニンゲン達を説得して……大変だったなぁ。別行動で自分のお仕事をしてた白上さんもお腹すいちゃうよねぇ?」
「……」
ニコニコと浮かべた笑みは穏やかに見えるのだが、有無を言わさぬ迫力にフブキの表情が固まる。
「いやー分かるよ? 世界の混在化に紛れさせて白上神社と神木とミヤコの位置関係を弄って、先代と先々代の白上と大神の御霊を祀る白上神社の本堂を定着した豊穣から剥がして移動するのは大変だったもんね? ちゃんと自分のお仕事終わらせて偉いよフブキ♪ 神社側にとどまっての遠隔操作術式での仕事だったけどね?」
弾んだ語尾は機嫌がいいように思えるも目が笑っていない。
「そ、そうでしょー? 白上だってちゃんとお仕事したわけだし、ほら、こんなに大きなチカラ使ったのなんて初めてだから疲れちゃったなー! あー、疲れた疲れた! きつねうどん二十杯はいけちゃうなー!」
どうにか紡いでも、ミオはうんうんと頷くだけで食べていいよとは言わない。
勝手に頼めばいいのだが、とある事情によってそれが出来ない。
座敷に正座させられているフブキは現在、ミオに逆らえない。
「ふふ……そうだねぇ、自分と同じチカラを持ってる誰かさんに勝手に罰だーとか言って最後の調整の日に自分のイワレだけ貸し与えてお仕事させて、自分は新しくお引越しした白上神社でお菓子食べながらウツシヨと繋がって見れるようになった新アニメでの推しを見てきゃーきゃー言ったりしてなかったら……食べてもよかったねぇ」
「すみませんでしたぁ―――!」
ゴツン、と床に額を叩きつけたフブキ。ものの見事なDOGEZAだが、間違いなく自業自得である。
ふむ、と一つ唸ったミオは一つ提案を行った。
「……釈明を聞こう白上被告人。情状酌量の余地があればウチは許そう」
「だってだって! マク○スとかクラ○ドとかで主人公張ってたあの人が声優さんなんだよ!? 無理でしょ! 術式展開とか言っちゃってさ! こう、目隠しを上にずらしたらあんな綺麗な目が! ああもうほらなんなんだよあいつぅ! ボク最強だし、じゃねーんじゃ! ずるいんだよ! 顔がいい声がいい最強とかずる! グラ○ムみたいな演技もいいけど逆に自信満々だけど過去に絶対ナニカあったみたいな闇を感じつつも絶対的強者の風格を出しつつおちゃらけもしてでも真剣になるとこは真剣で……あんなの視るしかないじゃんかぁ! それに―――」
つらつらと言葉が並べられていく。早口で語る様は間違いなくウツシヨのオタクのソレであるが、ミオは笑みを崩さずにフブキの話に所々で頷いていた。
「―――そりゃ白上だって我慢しようと思ったよ? でもほら、推しをリアタイで見ることは推しに対しての誠意を示す為に当然の行いというか、カクリヨとウツシヨで時間が違うとはいえこっちで放送されてるならちゃんと正座して全力で推し事として観なきゃだめなわけで推しがカクリヨに来てくれたことに対しての感謝をリアタイでしっかりと表さないとこれから二度とウツシヨから白上の大好b―――」
「ふぅん、フブキちゃんは余とミオちゃんが頑張ってる間に自分だけテレビでアニメを見て美味しいお菓子を食べてたのに、なぁんにも反省してないんだな?」
「ひょぅわ!?」
驚愕と共に、フブキの尻尾が爆発したかのように逆立ち大きくなる。
背後から突然声を掛けられて飛び跳ねた彼女が振り返ると、其処には悪戯っぽい笑みを浮かべた鬼が一人。
「にひひ、余~だよっ」
「おっ、あやめ、いらっしゃーい。今フブキの懺悔タイムしてたとこ。ウチが裁判官役ね」
「ほほーん。じゃあ余は検事でもしようかな?」
「えっ、白上が被告人だったら……弁護人がいないんだけど!?」
訴えかけるもあやめはミオの隣に座ってポチポチとホログラムの電子メニューを弄って注文を進めていく。
ミオはフブキの声を聞こえないふり。
「お、横暴だぁ! 弁護人のいない裁判なんて不当だ!」
「フブキ? 顔に書いてあるよ? 異議あり! って言いたいだけでしょ?」
グッと言葉に詰まった。
鬼の子はそれを見てからからと笑う。
「あははっ! 残念だったなーフブキちゃん。被告人が黒いのだったら弁護人にしてあげても良かったけど、今回はフブキちゃんだからダメだぞ」
「そうそう。クロは共犯者だけどある意味でフブキの被害者だからね」
「そんなぁ……」
しゅんと項垂れる狐耳が愛らしい。
ミオとあやめは小さく呆れの吐息を漏らす。
「反省しなさい」
「黒いのもだぞー?」
すっと、あやめがフブキの隣で揺れる布袋に目をやって言う。
ゆらゆらと揺れていた布袋に小さな術式を飛ばし、フブキとミオが中から出られないように掛けていた術式を破って“ソレ”を外に出してやった。
七十センチほどの大きさの“ソレ”は、目つきの悪い眼で三人を睨みながら布袋から這い出てくる。
現れたのはデフォルメされた狐のようなナニカ。
フブキとは逆の色合いをした、まるで黒上がマスコットになったかのようなぬいぐるみ。
とりあえず目が怖い、じっと誰かを見やるその人形は、ウツシヨでは“ミテイル”と呼ばれているマスコットの色違いであった。
「……おいフブキ。てめぇよくもこんな布きれに長い時間閉じ込めてくれやがったなぁ」
ああん、とヤンキーのような声を出してフブキに詰め寄る“ミテイル”の圧力に、フブキは僅かに引きながら応える。
「えーと、ほら、その状態の黒ちゃんをニンゲンに見せるわけには――」
「ああ? こんなとこに連れてくる必要もないだろ。あたしは白上神社に居るだけで豊穣を伝ってこのミヤコに干渉出来るんだぞ。それにイワレを蓄えてる間の仮初の姿とはいえ使える術式は変わらないんだ」
「いや、あの……」
ずいずいとにじり寄り更に増す圧。どす黒いイワレを纏う黒上だが、見た目がマスコットなので傍目から見るととても残念でしかなかったりする。
「フブキぃ? 口答えしなーい」
ジト目で見てくるミオの眼と、真ん前で圧を掛けてくるミテイル黒上。くつくつとにやけながらメニューを操作し始めるあやめとフブキを助けてくれる味方は居ないらしい。
「五日間でミヤコの場所から何から
「うぅ……」
「ウチが気づいてなかったらリピートしようとしてたもんねー? 口からよだれ垂らしてさ、蕩けた顔で変な笑い方して」
「うぅうううぅ!」
「いい気味だバーカ」
頭に両手をやっていやいやをして伏せてしまったフブキに、ミオは呆れたように鼻を鳴らし、あやめはからからと声を上げて楽し気に。
黒上はのしっとフブキの背に乗ってその短い手でてしてしと背中を叩く。
「神木と白上神社をミヤコから引き離すとかいうバカでかい作業で今までため込んだケガレ全てを吐き出させたことはミオが主体だから仕方ない。カミとヒトが一度距離を置くべきだってのは信仰の見直しの為に賛成だったし鬼族をミヤコに常駐させることでニンゲンの監視を出来るのもいいことだ。日々溜まるケガレが鬼族のチカラとして吸収されるだろうからこれまでみたいな溜まり方もしないようにもした。
企画と計画、打開案の提案をしたのはお前だからあたしもミオも百鬼も納得したし今回の対応に文句はない」
慰めのような言葉に背中を見ようと顔を向けたフブキのおでこをミテイル黒上はべしりと叩く。
「いたぁ!」
「だ・が! あたしはお前の使い魔じゃない! 調子に乗るなバカが!」
「くうぁあ……ツンデレ黒ちゃんかと思ってトゥンクしたのにぃ! ひどいよぉ!」
「あっはは! そればっかりはフブキちゃんが悪いでしょ」
「あやめちゃぁ~ん! 助けてぇ」
「もー、しょうがないなぁ」
ひとつ、ふたつとメニューを叩いてからのんびりと立ち上がったあやめは、ゆるりと優しく黒上を抱き上げた。
「はなせ! 百鬼! やめろ!」
「だーめっ。黒いのは余と一緒に来るの♪」
「くっ……こんな身体じゃなきゃ……」
じたばたと暴れるも短い手足で鬼神に勝てるわけがなく、彼女は項垂れてされるがままに元の場所に腰を下ろしたあやめの膝の上でおとなしくなった。
「ミオちゃんも。そろそろ許してあげよ? フブキちゃんも反省してるみたいだし、いつまでも食べれないままだと
横目で見られながらの提案に、ミオは僅かに眉をひそめながらも目を瞑り……小さく吐息を落とす。
「……そうだね。しょうがないなぁ。あやめに免じて許そう」
「ミオ~」
うるうると瞳を潤ませたフブキに、ミオは苦笑を零しながらも彼女の大好きなきつねうどんを慣れた手つきでメニューから注文した。
三人と一匹?の間になんとはなしの沈黙が一寸。
打ち破ったのは……鬼の少女。
「それにしてもミヤコの遷都とは思い切ったもんだ。神木の周りも豊穣のチカラとかいうので山にしたし、ミオちゃんたちの住処の神社も神木のとこにあるから遠くなったわけだけど」
「黒ちゃんがおっけーしてくれたからね。|白上達がこのミヤコから出ていっても問題ないように《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》ってのが条件だったから、確率事象の観測で視えた、一番ニンゲンとの確執が起きにくい配置に地殻変動をして概念固定する必要があったんだよ」
「あたしらのいるこの世界とは別のカクリヨを元にしたってわけだが、世界がまるごと混ざるなんていうバカげた改変が起きてなきゃこんな大がかりな術式での世界干渉なんざ出来ねーぞ。現にもうこの土地に対しての干渉は難しくなった……いや、もとにしたカクリヨに引きずられやすくなったって言ったほうがいいか?」
「“クロニクルの世界線”だっけ? ウチとしては別世界に似せたのは抵抗があったけど……ミヤコがよりよくなるなら楽しみでもあるかな」
それぞれの思考を語りながら、まじめな話へと移った彼女達。語り始めて間もなくだが、すすっとふすまが開けられる。
「はーい、失礼しまーす。お飲み物をお持ちしましたー。緑茶のピッチャーと冷酒。お茶のグラスは四つ、おちょこも四つです」
机に並べられるそれらを見つつ彼女達は一旦話をやめる。それぞれの前にグラスとおちょこを並べて飲み物を注いでいく。
お料理はもう少しお待ちくださいと伝えつつ下がっていった店員を見送って、黒上が己を抱きしめているあやめを睨んだ。
「おい、この身体で飲ませるつもりか」
「んー、それ人形が媒体だしさすがにまずいよね? 変化して間に合わせてくれない?」
「え!? 今日お酒飲むつもりだったの!? あやめちゃん。変化しても人形はそのままだから後が大変になるよ。身体を口寄せして入らなきゃ……ミオ、封印解いて」
「こうなるの知ってたから解いてあるよ。あやめから話は聞いてたからね。誰かさんが居ない間に」
「なぬっ!? 白上が知らないうちにあやめちゃんとミオ仲良くなりすぎでは!?」
「そりゃサボってた間に大変だったからなぁ、ひひっ」
「うぐぅ……掘り返さないでぇ……」
「おら、早く口寄せしろフブキ。あたしも既に聞いてんだよ。お前のせいでこれ以上予定が遅れるのはナシだ」
「白上だけがのけ者にされていた事実に悲しむ暇も与えて貰えない……もうすぐ三人で出掛けるのにこの疎外感に耐えろと……あんまりだぁ」
よよよ、と泣き崩れながらも術式を展開してあやめの横に虚数空間を出現させ、黒上はその中にぴょんと飛び込む。
数瞬の後、本来の姿となった黒上がのそりとその空間から出てきた。
フブキの色違いな見た目なれど初めのようなケガレは纏っておらず。きつめの視線でジト目を向けられたフブキはその翡翠で彼女の深紅を受け止める。
互いに何も言わない。もう話し合いは終わっている。
結局あの戦いはあやめとミオの勝利で終わった。
こうして四人が顔を並べている時点で黒上の望みは叶わなかったわけだが……それ即ちあやめとミオの自分勝手が押し通されたということだ。
封じられていたフブキも開放され、事の顛末は翡翠の瞳で理解した。
和解した黒と白、そしてあやめとミオは四人で協力してミヤコを整え、別の世界線を参考にして混ざり始めたミヤコとその周辺をケガレ対策を踏まえて作り替えた、というのがこれまでのこと。
黒上はカミとして認知されミヤコを任され、このセカイに起こった異変をより深く知り、混ざった他のセカイの情報を集める為にフブキとミオはあやめの友とまず会いに旅に出るというのがこれからのこと。
フブキの隣におとなしく座る彼女の杯にも酒は注がれている。
黒上はじっと杯を見つめた後に三人をちらちらと見回した。
身体もある。心もある。意思もある。
一己の存在として確立された彼女にとって、これは初めてのお食事会。
にしし、と鬼が笑い。
ふふ、と狼が微笑み。
くすくすと狐が喉を鳴らす。
不機嫌そうな黒の少女は唇を尖らせて……その頬は、仄かに桜色に染まっている。
気恥ずかしさか、はたまた嬉しさなのか。胸に来る暖かさはあるが自分のガラじゃないと彼女は俯いてしまう。
当たり散らすのも違う気がして、彼女は口をつぐむことを選んだ。
「こっからは堅苦しいことは抜きってことで。余はミオちゃんやフブキちゃんや黒いのとこう出来るのを嬉しく思う」
ゆるりと杯を掲げるあやめは、この時を、この宴を開く為に頑張ったのだと胸を張る。
声を受けた三人も三様に杯を掲げた。黒上だけはうつむいたまま。それでもいいか、とあやめは苦笑を一つしてから言葉を繋いだ。
「なんかあったらまたぶつかり合ってでも話せばいい。こうして杯を交わすんだから、これから余達は皆トモダチだっ!世界がどうとか、過去がどうとか、未来がどうとか……小難しいことは皆で越えていこうな!
んじゃあ、もう待てないし……新しい門出と、新しいミヤコ、そんで新しいトモダチとの繋がりと……
―――乾杯っ
笑顔で合された杯は小さく音を鳴らす。
キィン、と耳鳴りがして彼女達は一幕の光景を見やる。
フブキと、ミオと、あやめがこの店で宴をしている光景を。
其処に黒上は居なかった。
ふっと、誰かが噴き出し皆も続く。
だけど今、この時が全てなのだとそれを笑って吹き飛ばした。
何処かのセカイではそうなのだろう。誰かの観た彼女達の
しかし此のセカイでは違うのだ。
始まった酒宴は誰も知らない組み合わせで、誰も知らない戦いの終幕で、誰も知らない物語の始まりの出来事。
それでいいじゃないか、と四人は笑う。
これは自分達だけの物語だ。
これから自分達だけの物語を紡いでいけばいい。
ウツシヨで四角く切り取られた窓から自分達と同じ名を持つモノを想ってくれる
自分達の
後になって思い返して、こうやって誰かに話して聴かせ始められるよう。
“
楽しそうに笑う声が、その店では朝方まで止むことは無かったらしい。
▽▼▽
遷都という、ミヤコ初まって以来の出来事が落ち着きを見せる前に、鬼族という新たな隣人との暮らしと新しい生活の始まり、それを祝してミヤコでは祭が開かれることとなった。
カミの住むこのミヤコでは、神事を含めてニンゲン達による祭は昔から行われてきた。
しかしこれほどまでに深くカミ達と関わった祭はなかっただろうとニンゲン達は思う。
何故ならこれは、カミ達が開くカミ達による祭事なのだから。
ヤグラが組まれ、スピーカーから流れる音楽が陽気に街を活気づけ、人々は皆が笑顔に溢れている。
呑めや歌えや、騒げや踊れ。ニンゲン達は彼女達の溢れる笑顔に見惚れて、その心の底から楽し気な声に動かされて集まって騒ぐ。
建てられたステージは大きく、其処には三人の少女達が舞い踊る。
自分はいい、と恥ずかしがり屋な黒の少女は表に出るつもりはないらしい。
今はまだそれでいい、と白の狐娘は彼女に伝え、鬼と狼の少女達も頷いた。
いつか一緒に遊ぼうね、とあの暁の空に約束を交わしたから。
ただ、演奏隊としては参加することにしたようで、恥ずかしいからとミテイル人形でドラムを叩いていたりするが……。
そんなステージで、三人の少女は笑顔を振り撒く。
あの時に観たセカイのように……否、それすら越えられるように、と。
華やかな衣装で踊り可憐な声で歌う彼女達を囲むように、煌びやかなイワレがまるで祝福するように舞っていた。
彼女達のもう一つのあるべき姿。ニンゲンとの心を繋げて、想いを紡いでいく。
今はミヤコから離れた神木から、桜吹雪がミヤコまで舞い始めた。
一つの歌が終わり、風に乗ってやってきた花びらを手に、三人で見合った彼女達は笑顔で頷き合う。
あやめを真ん中に、フブキとミオが彼女を挟んで並んだ。
そうだ。歌う曲は、決まっている。
ありがとう、とニンゲン達に伝えた彼女達は笑顔で曲名を声高らかに放った後……三人で、否、四人で自分達と“セカイ”を繋いだ。
『色付く想ひは刹那、百花繚乱花吹雪――っ』
読んでいただきありがとうございます。
これにて第一章、百花繚乱花吹雪を終わります。
ホロライブALTのPVとホロアースの設定から妄想させて頂いた話ではありますが、楽しんでいただけたなら幸いです。
感想など頂ければ第二章以降の励みとなります。
第二章以降は骨組み段階ですが、拙作で観たいホロメンの子などおっしゃっていただけたら参考にさせて貰うかもしれません。
ではまた