またコミケ行けるようになりたいですね。
女性「すみません、新刊1部お願いします」ピヨピヨ
奈緒「ありがとうございまーす! 500円です!」
女性「あ、そのコスプレ『魔法少女ZZイオリン』のフルアーマーミ・ハルカスタム? いい趣味してるわねぇ…」ピヨヨヨ
奈緒「いやぁーすっかりハマっちゃって! 実は今回が初コスプレなんですよ!」
女性「そう! じゃあ後でコスプレエリアも楽しみねぇ。それじゃ、頑張ってくださいねー!」ピヨー
奈緒「どうもありがとうございまーす!」
奈緒「くぅぅぅーっコミケ楽しいーっ! 来てよかった! 来れてよかった!」
奈緒「仕事以外でこんなカッコするの初めてでちょっと不安だったけど、ほかにもこれだけコスプレしてる人いりゃ全然浮かないな! 顔バレの気配全くないのもこの際気兼ねなく楽しめるってことで、ヨシ!」
奈緒「けどなんだな、さすがに知り合いに見られたらバレちゃうだろうけど。つーかバレたら死ねるなぁ!」
加蓮「うぅー、あつーいくさーいつかれたー…」
凛「えっと、配置番号的に…この机の並びのはずだけど」
奈緒「ファーーーッ!?!?!?」
奈緒「なっなっなななななんでなんで!? 加蓮ナンデ凛ナンデ!? なんでここにいるんだっ!?」
加蓮「ん? ねえ、あそこにいるのって…」
奈緒「やばいこっち見たこっち来たこっち来るっ!」
奈緒「くそぅどうする…あいつらにこんなカッコしてるとこ見られたら一生話のネタにされる…! あるいは事務所中に…!」
奈緒「こ、こうなったら徹底的に白を切りまくってごまかすしかないッ!」
加蓮「やっほー奈緒ー?」
奈緒「はぁーい♪ よろしければこの本見ていってくださぁーい♪」(裏声)
凛「…え? 奈緒だよね?」
奈緒「いーえ人違いですぅー♪ 私はフルアーマーミ・ハルカスタム! 通称フルハルカスですよぉ~♪」(裏声)
加蓮「………………」
凛「………………」
奈緒(さ、さすがに無理がありすぎるかっ!? かえって傷を深くしちまっただけかっ!?)
加蓮「」ヒソヒソ
凛「」ヒソヒソ
加蓮「…あ、そっか人違いかぁ。すいません、うちらの友達に似てたもんですから」
凛「…ほんと、よく似てるよね。ちょうどあれだね、隠し事をごまかそうとしてる時の奈緒にそっくり」
奈緒「………………」
奈緒(…バレてない! いやまだ怪しまれてる段階かもしれないけどこのまましらばっくれ続ければワンチャンあるかも!)
奈緒「そ、そーでしたか! そのお友達もコミケに来てるんですかっ?」(裏声)
加蓮「そうなんですよ。最近なんだか付き合い悪いなーって思ったら隠れてなんかやってたみたいで。それでいろいろ調べてみたらアニメのコスプレしてコミケ行くらしいってわかって」
凛「マキノとか都とか喜んで協力してくれたよね」
加蓮「そうそう。アタシたちから隠し通せると思ってんのっていうか」
凛「それでせっかくだから盛大に冷やか…晴れ姿を拝もうと思って来たんだけど、コミケってすごいね。こんなに暑い中これだけ人が集まるなんて」
加蓮「この暑さと人ごみのなか散々探させてくれたんだから、見つけ次第スマホのストレージいっぱいになるまで写真撮ってやらなきゃね」
奈緒「た、大変でしたねー♪ そっそそそそれじゃお友達探し、頑張ってくださいっ♪」(裏声)
加蓮「あ、写真撮ってもいいですか?」
奈緒「う゛ッ」(地声)
奈緒(ば、バレてる!? やっぱりバレてて、わかった上でわざと…!?)
奈緒(どうせバレてるなら今のうちにネタ晴らししといた方が被害は最小限か? で、でもここまで来て、ここまでやっておいて…)
奈緒(ここまでやっといてバレてたとかなったら切腹もんだわ)
奈緒(…そう、バレてない。バレてないったらバレてない。バレてないんだってば)
奈緒(となればここで写真撮影を断ったら怪しまれちまう…こうなりゃ最後までフルハルカスになりきるしかない!)
奈緒「も、もちろんいいですよぉ♪ それじゃあアニメ初登場時の決め台詞を…」
奈緒「お、お…恐れ、ひれ伏し、崇め奉りなさいっ♪」(裏声)
加蓮「」ピロリーン
凛「」カシャカシャカシャカシャ
奈緒(どんだけ撮るつもりだよ! けどこうなったら写真一枚も百枚も同じだ! やってやる!)
奈緒「後ろの人もっ! ちゃーんと見えてるからねーっ♪」(裏声)
奈緒「リボンがなくたって…たかが石ころひとつ、フルアーマーミ・ハルカスタムで押し出してやる!」(裏声)
奈緒「退かぬ! 媚びぬ! 省みぬっ!」(裏声)
凛「あ、奈緒と同じとこにホクロある」カシャカシャカシャカシャ
奈緒「う゛ッ」(地声)
加蓮「この写真SNSに上げてもいいですかー?」ピロピロピロリーン
奈緒「え゛ッ」(地声)
凛「仕事でもこんなにフリフリの着ないもんね。プロデューサーが見たらなんて言うか…」カシャカシャカシャカシャ
加蓮「もー凛ってば、すごく似てるけど奈緒じゃないんだから。もう本物よりそっくりってぐらい似てるけど、奈緒じゃないから」ピロロロロロロ
凛「だからこそみんなに見せたらすごくびっくりするんじゃないかな。もちろん奈緒もね」カシャシャシャシャシャ
奈緒「お゛ッ」(地声)
奈緒(こ、これはどっち転んでもあたしは助からないやつじゃ…)
比奈「ただいまーっス。あれ、凛ちゃんに加蓮ちゃん?」
奈緒「げッ」(地声)
凛「あ、比奈。もしかしてここは」
比奈「アタシのサークルスペースっスよ。そこに置いてあるのもアタシの描いた本っス」
加蓮「へー、話には聞いてたけど実際に比奈さんの漫画見るの初めてだなぁ。絵うまいね!」
比奈「いやぁそれほどでも。にしても締め切りギリギリキリキリまで休み取れるか危うかったんスけどなんとかねじ込めてよかったっスよほんと。今回はお手伝いの奈緒ちゃ」
奈緒「んもークリスチーネ荒木先生ったらー! 本名で呼んじゃダメじゃないですかぁー!」(裏声)
比奈「え、なに? なんスか? 急にペンネームで呼んだりして…」
奈緒「イベント中はちゃんとあたしのこと『フルハルカス』って呼んでくれなくっちゃー☆ 崇め奉りなさいっ♪」(裏声)
比奈「ど、どしたんスか奈緒ちゃ」
奈緒「そこに跪いてッ!!!!!」(裏声)
比奈「えぇ…えーと?」
加蓮「あー…比奈さん、ずいぶん奈緒にそっくりな友達いたんだね?」
比奈「え? え?」
凛「うん、私たちすごくびっくりしたよ」
凛「奈緒とほくろの位置から眉毛の太さまでそっくりで」
加蓮「奈緒が最近見たっていうのと同じアニメのコスプレしてて」
凛「奈緒だったら私たちに絶対見せてくれないアニメの物まねまでしてくれて」
加蓮「こんなにたくさん写真撮らせてくれて」
凛「もしこの人がほんとに奈緒だったら、今頃このビッグサイトが大火事になるくらい顔から火を出してるよ」
加蓮「ほんと、明日が楽しみだねえ」
比奈「………………」
奈緒「コロシテ…コロシテ…」(震え声)
比奈「あっ」(察し)
凛「それじゃあ『戦利品』もたくさん手に入ったことだし、私たち帰るよ」
加蓮「比奈さんとフルハルカスさんも頑張ってねー」
比奈「あ、はいっス。暑いので水分補給だけはほんと気を付けて」
奈緒「いのちみじかしこいせよおとめ…あかきくちびるあせぬまに…あいははてしなきバイオレンス…」(裏声)
比奈「奈緒ちゃん、奈緒ちゃん。何があったかはおおよそ把握したっス。けど済んだことだからしょうがないっス。なのでその辛そうな裏声はもうやめるっス」
奈緒「比奈さん…比奈さん…あたし…」
比奈「まあアレっスよ、オタ活してると身内バレは通過儀礼みたいなもんス。アタシも今までイベントからアキバまで、何度非オタの知り合いと鉢合わせて気まずい思いをしてきたことか…」
比奈「けど、それで世間体を気にして自分を捻じ曲げちゃうようじゃおしまいっス。好きなものは好きと、誰が相手でも胸を張って言える自分でいられることが、好きなものを最大限楽しむための基本っスから」
比奈「もちろん、言うは易しっていうか現実はそんな簡単じゃないこともありまスけど。でも他人からどうこう思われることなんて、自分の気持ちに嘘をつくよりずっと『どうでもいい』かなって」
比奈「後ろ指さされ組、笑わば笑え、上等っス」
奈緒「比奈さん…」
奈緒「…じゃあ比奈さんなら、さっきのあたしみたいなことしても平気でいられるんだな?」
比奈「いや平気ではないっス。そもそもこういう事態になって不必要に傷口を広げるようなことはしないっス」
比奈「最初から奈緒ちゃんだって認めとけばよかったんじゃないかと」
奈緒「ぅうぅううわああああぁぁあぁあああああああ!」
奈緒(こうして、あたしの初コミケは忘れえぬ思い出を刻むこととなった)
奈緒(それでも16時の閉会の頃にはあれだけ受けた羞恥も忘れていたぐらいには楽しかったし、やりきったという達成感があった)
奈緒(その後の撤収から比奈さんとの打ち上げも最高だった)
奈緒(なんだかんだで、あたしは今日という日を笑い話にできるんだと思う)
加蓮「ねぇねぇ奈緒~、昨日アタシたち『コミケ』っていうのに行ったんだけどさ~」
凛「この写真の人どう思う?」
奈緒「あっあっあっ」
加蓮「びっくりするぐらい奈緒にそっくりだよねー」
凛「ほんと。奈緒もこういうカッコしたら似合うんだろうなって思うよ」
奈緒「あっあっ…え?」
加蓮「でも奈緒、恥ずかしがってアタシたちには見せてくれないでしょこんなの」
凛「アニメのコスプレしてるからどうこうだなんて思うわけないのにね」
加蓮「もしこういうことするんだったら隠さないで教えてくれてもいいのになあ」
凛「もう加蓮、このコスプレしてたの奈緒じゃないってば」
奈緒「………………」
加蓮「あっプロデューサー! 見て見てこの写真!」
奈緒「わかったわかったよクソクソチクショーーーッ!」
奈緒(以後、趣味でコスプレする時は凛と加蓮にも正直に話すようになった。それから二人がイベント会場まで茶化しに来るのも恒例になった)
奈緒(けどあたしも、あれ以来別人のふりをしてごまかそうとすることはなくなった)
奈緒(それが自分の気持ちに嘘をつかなくなったということなら、やっぱり恥ずかしくても喜ばしいことだと今では思う)
加蓮「ほら奈緒あのポーズしてよ、こないだ一緒に見た話のやつ」ピロロロロロロ
奈緒「だああああもう撮るなーっ!」
【了】