がっこうぐらし!any%RTA 『最高の結末をその手に』獲得ルート 作:音佳霰里
これから始まるのは、ただのプロローグです。
難易度はベリーハードですが、それなりにお楽しみいただける内容になっていると思います。
それではどうぞ、何も知らない哀しい少女の非日常をお楽しみ下さい…。
迷失し編 其の壱『スタート』
忘れ物は何だろうか。
そう少女は考えた。
忘れ物は本当にあるのだろうか?
そう少女は考えた。
考え続け、大人になった少女はこう言った。
『忘れてきてしまったのは、今まで無駄に浪費してしまった時間では無いのか』と。
─── Frederica Bernkastel
―――ぶおん。
誰かが何かを振る音がする。
―――ぶおん。
誰かが謝っている声がする。
―――ぶおん。
誰かが泣き叫んでいる声が聞こえる。
―――ぶおん。
誰かが謝っている声がする。
―――ぶおん。
誰かがもう駄目だ、と絶望する声が聞こえる。
―――ぶおん。
誰かが何かを振る音がする。
―――ぶおん。
誰かがもうやめて、と懇願する声が聞こえる。
―――ぶおん。
誰かが謝っている声がする。
―――ぶおん。
誰かが何かを振る音がする。
―――ぶおん。
―――ぶおん。
―――ぶおん。
―――ぶおん。
―――ぶおん。
誰かが謝っている声がする。
―――ぶおん。
もう謝る声は誰にも聞こえない。
―――ぶおん。
もう叫ぶ声は何も聞こえない。
―――ぶおん。
ただ聞こえてくるのは、誰かが何かを振る音と、雨の音。
―――ぶおん。
あぁ。私に悪い事が起きる時は、決まって雨が降っていた、そんな事を思い出す。
―――ぶおん。
耳に残る雨の音。記憶に残る雨の音。
―――ぶおん。
―――ああ、なんだ。
謝りたかったのは、私の方なのではないだろうか―――。
嫌な記憶を振り払うかのように、最後に一振だけ、勢い良く誰かが何かを振る音がした―――。
私―――『田無圭奈』は今、寝転がって天井を見上げている。
蛍光灯とコンクリートで覆い固められた、無機質な天井だ。
私はそこの向こうにある『ナニカ』を掴み取るように手を伸ばし、握りしめる。
無意識の内にやってしまっていたそんな行動に気付き、私は数時間の内に、自分自身が創り替えられてしまったかのような気持ちに陥り、戦慄する。
そうして私は、人生のターニングポイントとなった、数時間前の出来事を思い出していた―――。
『数時間前』
―――不意に意識が覚醒する。
寝起きの、少しぼーっとしている頭を回して周りを見渡してみると、通っている学校―――『私立巡ヶ丘学院高校』内にある教室の、自分の机に突っ伏して寝てしまっていたようだ。
私は変な体勢で凝り固まってしまった筋肉を解すように軽く伸びをする。
すると、背骨の辺りからポキポキと子気味良い音が鳴り、辺り一帯へと響く、そんな感覚がした。
伸びをした体勢のまま、教室内を1周ぐるりと見回してみるが、教室内には私以外には誰も居ないみたいだ。
夕焼けだけが教室内を照らしていて、どことなく薄気味悪さを感じさせる光景が拡がっていた。
そんな光景に焦りと少しの恐怖を覚えた私は、鞄をひったくるようにして掴み、足早に教室を出ていった。
玄関口まで来ると先程の恐怖も薄れてきて、自分の周りを見る余裕も出来てきた。
未だに多くの靴が残っている下駄箱の近くでは、複数の生徒がお喋りを続けていて、何だか少し邪魔くさい。
遠くの方に見えるグラウンドでは、陸上部や野球部が、大声を出しながら練習をしている。
そんな彼らを避ける様にして、私は家路に着いたのであった。
そうして無心で足を動かしていたら、私は自宅に着いていた。
白い壁に、山の稜線の様な黒い屋根。
都会にしてはかなり大きい方の家だと思っている。
手早く玄関の鍵を開け、家の中に入った私は、真っ先に居間へと向かった。
家には誰も居ない。
親が仕事だとかそういうのではなく、文字通り『誰も居ない』のだ。
居間に入ると、机の上にメモが置いてあるのに気が付いた。
そこには私の字で、
『買い物行く @16:00』
との文字が、でかでかと主張していた。
近くにあるデジタル時計を見てみると、もう15:30を示している。
それに気がついた私は、急いでバッグを用意しながら玄関へ向かう。
荷物を用意している最中に、義母の写真等が飾ってある仏壇が目に付いたが、
玄関に着き、ローファーとスニーカーのどちらを履くかを悩んだが、結局機能性を選んでスニーカーに落ち着いてしまった。
スニーカーを履き、電気等を全て消したことをもう一度思い返し、私は玄関を出て鍵を閉める。
そんないつもの行動を流れるように行ってから、私は向かった。
普段ならば近場の、それも良く行き慣れたスーパーへ向かったのかもしれない。
だが何故だろうか。
たまたま他の店に行く用があったからかもしれない。
学校が普段よりも少し早めに終わったからなのかもしれない。
だが、今となってはそれももう意味を成さない問答だ。
この時の私は、無意識的にそちらの方角を目指して進んでしまっていた。
この地獄の舞台となる、『リバーシティ・トロン』へ―――。
私の住む『巡ヶ丘市』にある大型ショッピングモール、『リバーシティ・トロン』は、かなり多くの店舗数が並んでいて、『ここに行けばなんでも揃う』とまで言われるくらいの店舗数を誇っている。
その為必然的に来る客の数は多くなり、更に夕飯前のお買い物タイムの時なんて、都会の満員電車も目じゃない位の混雑度を誇るのだ。
そうして理由で、買い物を終わらせるよりも早くへとへとになってしまった私が、ついベンチの方へ行き、へたり込むように座ってしまうのも無理はないことだろう。
『きゃぁぁぁっ!!!』
―――と、私が力を抜いた瞬間、どこからともなく悲鳴が聞こえてきた。
ここ巡ヶ丘市は犯罪が起こることは少ない都市であり、こうして街中で悲鳴が上がること自体がまれだった。
だから、私は好奇心に釣られ、階下を覗き込むようにして見た―――否、
―――そこには、阿鼻叫喚の地獄が拡がっていた。
地面は1面真っ赤に染まり、その上ではかつて人だったモノ達が蠢いている。
人だったナニカは、逃げ惑う人々を付け狙い、無防備なその体躯に向けて狂気狂気を振るっている。
「何……これ……?」
正気を保っている人間の行う事としては、絶対にありえない様な、そんな光景が目の前に広がっている。
そんな冒涜的な光景を見て怯えてしまっていた私は、すぐに気づくことが出来なかった。
―――すぐそばまで迫っている『ナニカ』の姿に。
「っ、ひっ……!」
目の前に迫る『ナニカ』は焦点の合わぬ目でこちらを見つめ、ノロノロとした動きでこちらとの距離を詰めてくる。
私が恐怖で体を硬直させていると、ようやく獲物に辿り着いた『ナニカ』は、
段々と近づいてくる手。
周りには、私という獲物を逃がすまいと取り囲む『ナニカ』。
目の前にいる『ナニカ』の手が、私の目と鼻の先にまで近づいて来て―――。
―――そこからのことはよく覚えていない。
一体何を犠牲にしたのか、何を見捨ててきたのか。
どう逃げてきたのか、どう立ち向かってきたのか。
そんな事も一切思い出せないくらい、先までの私はパニックに陥っていたのだろう。
気がついた時にはもう、スタッフルームと思しき場所の扉の前に立っていた。
そうしてその部屋の中に入り、元からその部屋にいた先客である『祠堂圭』と『直樹美紀』―――私の後輩らしいが―――と軽く挨拶を交わし、その後はこれといった会話も無いまま、今の状況に至っている。
「……」
私は自身の無気力さを呪うかのように、天井に備え付けられている電灯を、力の限り睨んでみる。
そんなことをしているうちに、こんな行動を何だか馬鹿らしく感じてしまった私は、体の力を抜く。
こうしてゆったりしてみると、私の体にはどれ程までの無駄な力が入っていたのかがよく分かる。
「くぁ……」
気の緩みと疲労が重なり合った為か重くなってきた瞼を受け入れながら、私はこの辛い現実から目を背けるように毛布を頭から被り、夢の世界へと旅立って行った―――。
タロットにおいて
『迷』→『月』
:嫌な予感が現実になったり、虫の知らせや胸騒ぎを感じることや相手のハッキリしない気持ちや態度から疑いを持ち始めること、人の行動や人間関係に幻滅すること等を示している。
また、混乱した状況に身を置き、精神的に疲れ果てることや、曖昧なままの状況や心境になり、不満を積み重ねていることを示している。
『失』→『太陽(逆)』
:目的に向かって着実に進んでいても、忍耐が続かず挫折してしまったり、自分のことしか考えられずに周囲から孤立してしまうこと等を示している。
キャラ視点がガチのシリアスしかなさそうなので次回はTIPSになります。
それはそうとRTA視点との差異に気づいた人はどれくらいいるんですかね…?