ありふレコード ー いつかありふれていた魔王と異世界×魔法少女みたま☆マギカ 作:十二の子
1つ、オルクス大迷宮最後の試練を突破した一同が、神代魔法「生成魔法」を獲得した!
2つ、大迷宮を作ったいにしえの解放者は、神代魔法を1つずつ計7つ大迷宮に隠し、魔法少女解放組織マギウスもいくつかの大迷宮にウワサを送り込んでいた!
そして3つ、元の世界に戻るため、まどかを救うため、マギウスに近づきういを見つけるため…それぞれの目的を持ち、ハジメたちとほむらたちは大迷宮巡り、いろはたちはウワサの探索へ!
―*―
「…しっかし、派手にやりやがったな…」
やっとのことで地下トンネルを脱出したハジメたちの第一声はそれだった。
せっかく太陽の光の元に戻ってきたから騒いでやろうかと思った彼らだったが、あまりに不粋に、辺りがえぐれまくっている。
両側が断崖絶壁で魔力が拡散するライセン大渓谷。魔物が出没する処刑場としても知られるところだが。
「魔法少女の魔力はかえって使いやすいわねぇ~魔物が多いから魔石も多いのかしら。」
「その魔力のせいで集めてない?魔物。」
「ちゃちゃっと終わらせて…あれ?弱くない?気配。」
「これくらいなら魔法なしでもいけそう?ハジメくん、雫ちゃん、優花ちゃん。」
「言うまでもないな。」「覚悟なら充分よ。」「というより覚悟するまでもないでしょ。」
放たれた砲弾が、雫の刀によって絶妙に切り裂かれ、四方八方へ飛び散った。
数十の魔物が、一斉に絶命する。
「こんなに弱くていいの?」
「というよりハジメたちがバケモノ。」
「酷い言われようねぇ~
それはそうと、まずは樹海の方へ向かうのぉ?」
「ああ。いきなり砂漠もごめん被りたいだろ。
乗ってけ。」
ハジメが、解放者の住処からいただいてきた指輪ー「宝物庫」と言い、魔力によって内部に収納したものを引き出せるーから、4輪自動車を引き出した。
樹海めざし、装甲車が爆走していった。
―*―
「また人間か!」
ハルティナ樹海入り口で、虎の亜人はうんざりした目を向けて、装甲車を降りたハジメたちを呼び止めた。
「知っているだろうが我が国は亜人以外立ち入り禁止だ!とっとと帰れ!まったくもう!」
殺意すら向けようとしてくる亜人に対し、ハジメが銃を抜きー
カキン
涼やかな音とともに、銃身が斬り飛ばされた。
|お互いで話をせずにいきなり戦うのは良くない。ねむにそう習った。|
白と青の透明感あるワンピース、そして頭にケモ耳らしきものがついた幻想的な少女。彼女が握るビームサーベルは、世界最硬金属アザンチウム製でも斬れるらしい。
「お前も、亜人か?敵か?」
香織もユエも雫も優花も、これは甘く見てはいけない相手だと気を引き締めるーが、みたまが、立ちふさがった。
「ハジメくん、違うわねぇ~」
|む…あなたも、魔法少女?|
「八雲みたまよぉ~あなたは?」
|私は「万年桜のウワサ」。
大迷宮である亜人族の大樹を依り代にする代わりに、亜人族を守るように、灯花とねむに言われた。
あなたが大迷宮と亜人族を傷つけるつもりなら、私は容赦できない。|
「別にそんなつもりはない。」
「そうだよ。私はただ、ハジメくんや雫ちゃんたちと一緒に大迷宮に挑戦しに来ただけ!」
|そう。
証拠は?|
「証拠…」
「ハジメっち、指輪指輪。」
「ああ、そう言えば。」
ハジメは、オスカー・オルクスの遺品である「宝物庫」の指輪を見せた。
|データベースと一致した。確かに、大迷宮の攻略者。
じゃあ案内する。|
「お、おいおい、コイツらは人間だぞ!」
虎の亜人は、あからさまに反発した。よそものの出入りに厳しくしてきた亜人国家の守備兵として、完全なよそもの、居候である万年桜が軽々ルールを無視していくことは許せなかったのである。
|それが?
灯花からは、勇者一同が大迷宮を攻略しに現れたら、絶対に案内するように言われている。|
「ちょっと待って。
私たちは勇者じゃないわ。」
|どういうこと?
ねむが、大迷宮にたどり着けるように絶交階段のウワサを設置した。訓練に訪れた勇者たちは、そこから大迷宮に侵入するはず、そう灯花が言っていた。|
「勇者…光輝の仲間ではあるけれど…
光輝は大迷宮には来なかったの。私たちのことは死んだと思っているかも…」
|そう。
私にとっては、大迷宮を制覇する者が勇者。灯花とねむもきっとそう。
ついてきて。|
「だから待てと言っているだろう!」
再三つかみかかる虎亜人。
|なぜ?亜人族とは言えねむの頼みを邪魔するなら許せない。|
「そうじゃなくて、そもそも大樹に行けるのは10日に1度、霧が晴れる時だけだろう。」
|心配ない。
ところで勇者たちは、どうして、神代魔法を求めるの?大迷宮を回るの?|
「俺たちはエヒトとやらに召喚されたが、日本に帰りたい。だから、神の魔法を集めれば、故郷に帰れる方法が見つかる。あるいは、わざわざ別の世界から絡みに来たお前の生みの親たちの方法を借りてもいい。」
|後者は無理。ウワサは万能じゃない。いたずらにねむが苦しむだけ。
でも、神代魔法を集めるという方向性は間違ってない。
良いモノを見せてあげる。|
そう言って、万年桜のウワサは、鎖で懐中時計のようにつながれた羅針盤のようなモノを見せた。
「これは?」
|「導越の羅針盤」。
神代魔法を7つ集めると、神の御業のような、何でもできる魔法、『概念魔法』を手にすることができる。ただ、相応の魔力と意思が必要。
これは、古の解放者が大樹迷宮に残していった概念魔法『望んだ場所を指し示す』を帯びている。
持ってみて。|
そう言いながらもウワサは鎖の片方を離さないが、ハジメは「導越の羅針盤」を手に乗せてみた。
「望んだ場所を…?
…マジか…」
「ど、どう…?ハジメくん」
恐る恐るなされた香織の質問に、ハジメは驚きで彩った表情を返した。
「香織、すげえぞ…うまく説明できないが、日本の位置がだいたいわかる。」
「ホント!?ホントだ…感覚だけど、なんかわかる!」
優花が、両手をプルプル震わせた。
「うそでしょう…」
「魔法ってレベルじゃない…」
雫とユエは絶句した。
|あなたたちも、神代魔法をすべて集めれば、この世界から出られる概念魔法を創ることができるようになる。
私も覚えてはいるけど、私はウワサ。それに、魔法少女の魔力は概念魔法には適さない。
だから、あなたたちは、あなたたち自身でやるべき。|
「わかった。
まずはこの樹海にある迷宮からだ!」
|それは無理。
この迷宮は、メルジーネ海底遺跡迷宮を突破して再生魔法を手に入れなければ挑戦できない。それに、亜人族との絆も必要。
今回は、下見で見せてあげるだけ。|
「…そうか…」
ウワサと言えども、人格を持ち、大迷宮の守護者。ハジメも、そこを曲げろとは言えなかったーが、第一印象からして、亜人族との絆を得るには無理がある。
どうしたものか…ハジメたちは、頭を悩ませた。
みたまだけは、驚愕した。万年桜のウワサが言われなければ魔法少女と間違えるほどの完成度であることももちろん、いつの間にか大迷宮全てを踏破されていたこと、にもかかわらず何度もミレナ座の調整屋に来ていたマギウス所属の魔法少女から大迷宮攻略の記憶を読み取ったことがないと言うことに。
大樹は確かに大きかったが、石板には万年桜のウワサが語るとおりの入場制限が書かれ、さらに大樹を取り巻く霧は「導越の羅針盤」なくしては絶対に超えられそうにない濃さだった。そしてなにより大樹はわびしく枯れはてていた。
―*―
のこのこと亜人族の首都フェアベルゲンへ行けるほど、ハジメたちは図太くない。
そんな彼らに、万年桜は「会いたいという人たちがいる」と案内をした。
そして。
「ウサ耳?」「ウサ耳だね。」「ん、ウサ耳…」「ウサ耳…なでたい…はっ!?」「付け耳じゃ、ない…?」
森の中で大変かしましく泣いたりわめいたりしながら、石槍や石斧を振るいピョンピョン跳ねるシュールな連中がいた。
「何だこれ?」
|兎人族、ハウリア。
私たちを樹海に連れてきてくれた。
カム、代わりに説明して。|
名前を呼ばれ、ウサ耳のおっさん(…)が涙をぬぐいながら出てきた。
「あなたがたが、勇者様ですか!?」
「…ああ、まあ、そこのウワサによればそうらしいな。」
「私は、ハウリアの族長、カム・ハウリアと申します。
娘のシアが、魔力を持つ忌み子でして、一族で守ってきたのですが、ついに樹海を追われ、帝国兵に渓谷へ追い落とされて、マギウスのお三方、灯花様、ねむ様、サクラ様に助けていただきました。
しかし思ったのです。
他の種族にもてあそばれ、あるいはただ守られるだけではなく、我々ハウリアは自分で自分の身を守り、運命を切り開いていかなければならないと。
思ったのですが…
戦いを成すことのなんと罪深いこと!」
えっ今さら…?とハジメたちは思った。
|花や虫を踏みつけたくないから激しい動きができないし、臆病だからすぐ逃げる。私には指導しようがなかった。|
万年桜のウワサも、お手上げだったらしい。
「仕方ないではないですか、武器も危ないし、こんな、虫や植物の命を奪うなど畏れ多い!
ですから私たちは、勇者様御一行に、強くなる方法を教えていただきたぶべらっ!」
「「「ああっ、族長!!」」」
「お前ら、何甘ったれたこと言ってるんだ?」
「「「へ…」」」
「そう言えば、どうやったら強くなれるか知りたいんだったよなあ…
よおくわかった。まずはその[ピーーッ]な心を[ピーーッ]すればいいんだな!?そうすれば少しはマシな[ピーーッ]になれるだろ!」
「「「ひっ」」」」」
「おい、[ピーーッ]ども、返事は『はい!』だ!」
「「「「「は、はい!」」」」」
「返事は一回!」
|任せた。さいさきよさそうで何より。|
「ええっと、万年桜さん…?アレはむしろ悪いんじゃ…」
「と、止める…?」
「それより、あの、魔力持ちの兎人が気になる。」
ユエが指さす先で、シアが「ふえぇ?」と声を上げた。
―*―
ウワサである私には、人間の気持ちがあまりわからない。
みたまは「ウワサが立会人になれば公正よぉ」と言ってたけど、どうしてこの場合、私が必要なのだろう?
でも「大迷宮攻略者とシアとの出会いを横取りしちゃった分、勇者一行とハウリアとの本来あるべきだった絆を仲介するのもわたくしたちの役目だからにゃー…」って、灯花も言ってた。
「ハジメさん…
私を、ハジメさんたちの旅に連れて行ってください!」
「は?なんでだ、シア。」
|南雲ハジメ、あなたは、シアの提案を受諾すべき。|
「それは、マギウスとしての意見か?」
|違う。
シアは、香織やユエ、雫、優花と約束している。鍛錬でシアが傷をつけられたら旅に連れて行くと。
私が、その約束の立会人。|
「…香織?ユエ?雫?優花?」
「あ、あわわ…ご、ごめんなさい、ハジメくんっ!
実は、シアを鍛えてる間に、奈落でのことを話しちゃって…」
「ん…同じ、魔力操作ができて、周りから突き放されて、辛い思いをしてきたバケモノ。それに、厳しいけど、あったかい。」
「それに、なんだかんだ言って南雲君がハウリアを鍛えてあげてるのもポイント高かったみたい…時々疑うくらい優しいのよね。」
「うんうん、わかるよ…なんてったって晴れ渡った大樹をもう一回見に行くまでの10日でユエに勝っちゃうんだから、ラブなんだね。」
「な、なんで先に言っちゃうんですかぁ!もう!」
?別に自分から言っても他人に言われても同じだと思う。
「はあ…マジか。」
親切を悔やんでいる顔…っていうのがあるらしいけど、コレかな?後でねむに聞いてみよう。
「ってか、ユエに、勝った?」
「そうねぇ…いくら調整しても身体強化しかできない適性の低い魔力だけど固有魔法との相性もあって調整倍率もいいのよぉ…」
「ん…強化してないハジメの6割。」
「魔力操作が外来じゃないから、お互いに調整すると、強化しないと抜かれるかもよぉ~。」
「おいおい…俺が調整しないで10000とかだから、素で強化して6000、調整したら50000か60000行くのか…マジか…
…それでも、危険な旅だぞ?命が幾つあっても足りないかもしれない。」
こういう会話を聞くと、ちゃんと命を持っていない私はなにかむずむずする。
「バケモノで良かったですよ。そのおかげで貴方たちに付いていくことが出来ますから。」
「俺たちの旅に付いてくるなら家族には二度と会えないかもしれないぞ。それに俺の住んでた世界はお前にとって住みにくい世界だ。」
「それでも…ですよ。それだけの覚悟を私はもう決めているんです。何があっても貴方の傍にいると。」
|交渉成立?|
「はあ…俺の負けだ。」
やった。
…結界に、誰か近づいてる?
ハウリアに南雲ハジメが持たせたアーティファクトじゃない。
…もしかしてこれは、魔法少女?
|ちょっと行ってくる。|
「ボス!大樹の近くで、見知らぬ人間族と、熊人族の連中が戦っているのを探知しやした!
どうしてやりましょうか?」
―*―
「ちょ、ちょっと待って!
私たちは決してあなたたちを傷つけるつもりは」
「巴マミ!そんなこと言ってる場合!?殺されるわよ!」
「で、でもほむらちゃん、話し合えないかな!?」
「ジンを傷つけておいて、話し合いの余地などない!マギウスといいサクラといい、魔法少女は、その上人間族!どうせ引っ掻き回すつもりだろう!」
「ま、まどか、アレは話し合いは無理…ってあぶなっ!」
「ちっ…
…いったん退くわよ!」
ここでまどかを魔女化させるわけにはいかないし…大迷宮は目の前だって言うのに!
…えっ
熊の亜人が、音もなく倒されて…誰が攻撃しているの!?
カチッ
…兎人族?でも、温厚な種族だって…それに、あんな精巧な武器は…そういうこと。
はい、没収。ついでに熊人族の皆さんは縛られてもらって。
これでよし。
カチッ
「おい、お前ら、何をした?」
「武器をかすめ取るとは、落とし前は付けさせてもらうぜ?」
…え。
―*―
ハジメたちが到着した時、状況は混乱を極めていた。
ミノムシのように簀巻きにされて樹海のあちこちに転がる熊人族たち。
大樹の近くに寄ってきた者をビームサーベルと魔力で吹き飛ばしている万年桜のウワサ。
気配を完全に削除し3次元的に暴れまわるハウリアたち。
そして、樹海を行きかうほむらの銃弾とマミのリボン。
「ティロ・フィナーレ!」
「背中がお留守だよっ!」
「アンタ、マミさんに何すんだ!」
「ふふっ、いい声で鳴きそうねえ!」
「見え透いた罠に引っかかりに行くなんて、美樹さやか、あなたはどれだけ愚かなの!?」
「かっかっか、腕が鳴りますなあ!」
「こんなの絶対おかしいよ!」
そして、シアがハンマーを振り下ろし、万年桜のウワサが魔力を放出した。衝撃波と魔力波が駆け抜け、誰もが尻もちをつく中、2人はカムの前に立ちふさがる。
「何をするんだ、シア、それにウワサ殿。そこをどけ。」
|今のあなたたちは強くなって力を振りかざしているだけ。害を与えるべき相手かどうかも判断しないのは良くない。|
「そうです。
それじゃあ、殺し、いたぶるのをを楽しみたい、帝国兵と同じですよ、父上!」
カムが、はっと息をのんだ。ハウリアたちに、冷静が戻っていく。
「わ、私たちはなんてことを…」
「まあ力を得てすぐは調子に乗るものよねぇ~。いずれ折り合いがつくわぁ~。」
「は、はい…」
「そこの新人魔法少女二人もよぉ。」
「う、うん…」
ハウリアが武器を手放したすきに、縄をほどいて逃げようとする熊人族1名。しかし、気が付くとほむらが目の前にいて銃口を眉間に突き付けていた。
「なっどこから」
「余計なことしないで元に戻りなさい。まどかに刃を向けた罪は重いわ。」
熊人族が、地面に倒れ伏す。
「ぐはっ、なんだ、この力は…!」
「『重力魔法』。南雲ハジメ、ライセン大迷宮はウワサはいないけどクセが強いからせいぜい頑張ってクリアすることね。
あげる。」
「どうも。後で詳しい話を教えてくれ。
さてと。
どうする?ここで全滅するか、生き恥晒しながら逃げ帰るか。」
「命は大切よぉ~願い1つで引き換えられないくらいに。」
「わ、我らは…生還を希望する。」
「まさか、ハジメくんが守ってると知りながらハウリアにケンカを売って、タダで帰れるって思ってないよね。よね?」
「くっ…」
「香織の言うとおりだな。
フェアベルゲンに伝えろ。『貸し一つ』ってな。」
「ぐずぐずすると後悔するわよ。」
ハジメの銃と雫の刀に、熊人族の代表は屈し、「わかった…」とトボトボ去っていった。
「「ところで、暴走してたのは/勘違いしてたのはわかったし、俺たち/私たちも悪かったが、このやり場のない怒りはどうすればいいんだ/の?」」
ハジメとほむらの視線、否、死線がハウリアを捉え、ウサ耳たちの叫び声がギャーと樹海にこだました。
とりあえず、全員一発殴らせろ/なさい!」」