ありふレコード ー いつかありふれていた魔王と異世界×魔法少女みたま☆マギカ   作:十二の子

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 ありふレコード 前回の3つの出来事

 1つ、ミレディ・ライセンはウザい!

 2つ、ミレディ・ライセンはウザい!

 そして3つ、ミレディ・ライセンはウザい!




 訂正:1つ、マギウスは重力魔法を獲得した!

    2つ、ほむら、マミ、まどか、さやかは重力魔法を獲得した!

    そして3つ、ハジメ、香織、ユエ、雫、優花、シア、みたまは重力魔法を獲得した!


11 「高校生どころか中学生よりも子供っぽいって言われた…」「「「愛子様お気を確かに!」」」

―*―

 

 湖畔の町、ウル。

 

 巴マミ、暁美ほむら、鹿目まどか、美樹さやかの4人の魔法少女がこの町に来たのは、ほむら以外の3人がホームシックを起こしたからに他ならない。

 

 生成魔法、重力魔法、そして樹海を離れてから神山に行き魂魄魔法で計3つの神代魔法を入手した彼女らであるが、すでに見滝原の自分たちの家に2か月以上帰らず連戦している。いくら魔法少女が苦痛を感じにくいとはいえ肉体的にも精神的にも限度があり、ソウルジェムが濁る速度も速くなりつつあった。

 

 ほむらは一計を案じた。ウルの町では稲作をしているらしい。そこで日本食らしきものを食べればメンタルも回復するだろう。1か月を過ぎれば消滅するかと思われた時間停止も失われていない(ほむらはいろいろと考えたが、時間遡行が平行世界へ渡る能力だとすれば、魔法少女がいすらしない平行世界だから時間軸がもともとずれている、あるいは異世界のことだから考えても仕方がない、と結論付けた。止まるものは止まるのだ)からいざとなれば何とでもなるし、そうでなくとも換金できる魔物素材はたんまりある。

 

 何より、海底遺跡、活火山、氷雪洞窟の3迷宮については生身ではいけない(4つ以上の迷宮クリアが必要な大樹は論外)ので、迷宮に行くつもりならばハジメたちを待つ必要がある。寄生型と思われそうだが、ソウルジェムもヒビが入ったり割れたりする物性がある以上融点や低温脆化しないとも限らず、そして魔法を使ったところでソウルジェムの強化はできない。ほむらは各種武器を見せた代わりに便乗くらい許してほしいと考えた。

 

 そうして、休養日として養生しながら米料理に舌鼓を打つこと、数日が過ぎた。

 

 「それはようございました…実は、大変申し訳ないのですが…香辛料を使った料理は今日限りとなります。」

 

 奥の方で宿主がVIP客にしている会話を察知して、まどかが、あからさまにガッカリの表情をした。

 

 「えっ!? それって、もうこのニルシッシル食べれないってことじゃん!?」

 

 VIP客もそう思ったようである。 

 

 聞いてみれば、香辛料の産地である北の山脈で魔物が異常発生しているらしい。

 

 「…魔女の仕業かしら?」「トータスに魔女はいないはずよ巴マミ。」

 

 「しかし、その異変ももしかするともう直ぐ収まるかもしれませんよ。」

 

 店長の言葉を聞いて、魔物討伐に名乗りを上げようとしていたさやかが、腰を下ろす。

 

 「どういうことですか?」

 

 聞くのは、召喚勇者たちの教諭、畑山愛子ーまどかたちはVIPが勇者たちの分隊でありトータスの農耕を改善できる技能持ちの愛子と護衛隊であると知っていたが、しかしマミもほむらももともとぼっちなだけに、教師と高校生の集団になかなか話しかけられずにいた。

 

 「実は、今日のちょうど日の入りくらいに新規のお客様が宿泊にいらしたのですが、何でも先の冒険者方の捜索のため北山脈へ行かれるらしいのです。フューレンのギルド支部長様の指名依頼らしく、相当な実力者のようですね。もしかしたら、異変の原因も突き止めてくれるやもしれません」

 

 愛子たちはピンと来ないようだが、護衛騎士たちは一様に感心半分興味半分の声を上げた。そしてまどかたちも、まさかと顔を見合わせた。

 

 「マミ、わかる?」

 

 「いえ…でも、私や暁美さんレベルの気配遮断なら魔法少女の魔力を隠せるものね…」

 

 「あっ、マミさん!」「これね。」「水臭いなあ…」「やっぱり。たかりに行ってくるわ。」

 

―*―

 

 ライセン大迷宮で重力魔法を覚えた(かっぱらった)ハジメたちは、フューレンで「行方不明の貴族三男ウィル・クデタを捜してほしい」という依頼を受けて、やってきた。

 

 「おっこめ、おっこめ♪」

 

 「みたまが食べ物に普通の感性。熱でもある?」

 

 「でも、久しぶりのご飯だよ?ハジメくん、何食べる?」

 

 おそろいにしようね、という香織の無言のプレッシャー。

 

 「やっぱり王道を行くカレー…この世界ではニルシッシルって言うんだっけ?にするか。」

 

 「いいわね。福神漬けはあるのかしら。」

 

 「ふくじん、づけ…?ハジメさんの世界の食べ物ですか?食べてみたいですぅ!」

 

 「シア、ウチのカレーは、とっても、辛いわよ?」

 

 「優花さん、それはちょっと…」

 

 「雫ちゃん、そう言えば甘口が好きだっけ?」

 

 「か、香織、そんなことないわよ、5辛だっていけるわよ!」

 

 「そうねぇ~前10辛を持ち帰ってキウイとのりで味付けしたらとってもおいしかったわぁ~。」

 

 「みたま、そののりって漢字二文字の方だよな?一文字じゃないほうであってくれ。

 

 っと、みんなどこに座る?」

 

 「その前にお客さんねぇ。」

 

 「は?」

 

 ピシャッとカーテンが引かれ、誰かと誰かがゴチンと頭をぶつけた。

 

 「南雲君!?それに、白崎さん、八重樫さん、園部さん、八雲さん!?」

 

 「「「「先生!?」」」」

 

 頭をさするスーツのちびっこを見て、ハジメ、香織、雫、優花が思わず一声、そして、しまったと口をふさぐ。

 

 「やっぱり…やっぱり貴方たちなんですね?生きて、ちゃんと、ちゃんと…」

 

 「え、えっと…」

 

 「いや、人違い「南雲ハジメ、たかりに来たわ。ミサイルのコピーはできた?」まだだ軍事技術の力ってすげえ。悪いけどトマホークとSSM1の複製はもう少し待ってくれ…っておい暁美ほむら、空気読めよ!隠しようがないじゃねえか!」

 

 ハジメ、あからさまに、頭を上げて髪をファサァしているほむらに恨みの目線。

 

 「やっぱり南雲君なんですね!」

 

 「…くそ、覚えてろほむら…

 

 さて、飯だ飯だ。」

 

 「巻き込みたくないもんね。」「そうね。」「帰れとか言われたくないし。」「ん」

 

 「ちょちょちょっと待ってください!なんで普通にスルーしようとしてるんですか!?」

 

 「んーっと、十七夜ならもう少しうまくやるんだろうけど、失礼するわねぇ~?」

 

 みたまが、ベールを愛子先生にかける。

 

 「あれっ、なんか力が湧いて…」

 

 ハジメはハジメで、注文を取りながらみたまに「後で読み取れたこと教えろよ」のアイコンタクトーこれで彼らに話すことは何もない。

 

 「ちょっ、南雲君たち、まだ話は終わっていませんよ。何を物凄く自然に注文しているんですか。大体、こちらの女性達はどちら様ですか?そしてなんでそんなに姿が変わってるんですか!?」

 

 「依頼のせいで一日以上ノンストップでここまで来たんだ。腹減ってるんだから、飯くらいじっくり食わせてくれ。それと、こいつらは…面倒くさいからみたまから聞いてくれ。」

 

 「こっちがユエでシア、ハジメくんが5股かけてる相手よぉ~♪

 

 それとこの子とそっちの3人は私と同じ迷い込んだ魔法少女、中学生。神浜とトータスはちょっとだけつながってるみたいねぇ。

 

 それでこの4人はいろいろ頑張ってたのよぉ~。調整屋さん感心♪」

 

 「頑張ってたってなんですか!?」

 

 「他人の頑張りを軽々しく理解できると思わないことね。私や、この子たちが味わってきたのは、気軽に話していいような体験ではないわ。」

 

 ほむら、これでもループを数え入れれば、愛子先生より年上である。しかしただでさえマミの胸の大きさを見て、それから年下に説教された愛子は涙目。

 

 よほど、その情景を腹に据えかねたのか。

 

 護衛の騎士が、拳をテーブルにたたきつけた。

 

 「おい、お前!愛子が質問しているのだぞ!真面目に答えろ!」

 

 ハジメが、はあとため息をつく。

 

 「ちょ、ちょっと転校生、なんで揉めてるの!?」

 

 「美樹さやか、あなたはどこまで愚かなの?」

 

 場外でもいざこざが発生している。

 

 「そうよぉ?お食事は行儀良く、気持ちよく食べなきゃぁ~。」

 

 「「「「「いやみたまがそれ言う!?」」」」」

 

 「ふん、行儀だと?その言葉、そっくりそのまま返してやる。薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、お前らの方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳を切り落としたらどうだ?少しは人間らしくなるだろう。…あと、お前、今ニルシッシルに何かけたんだ?」

 

 「今の一言、聞き捨てならないわね…」

 

 マミが、呟きながらゆっくりと立ち上がり、変身した。

 

 ハジメたちも怒りのまなざし。みたまだけは慣れたことなのでシアと顔を伏せつつニルシッシルにマスタードをかけている。

 

 「な、なんだその目は!無礼だぞ!神の使徒でもないのに、神殿騎士に逆らうのか!」

 

 ハジメが、魔法式のミニ三短機関銃「ドンナー」片手に立ち上がる。かわいいものを侮辱された雫も刀を抜こうとしている。

 

 「な、なんだ…うわぁ!?」

 

 床を這ってきた無数の黄色いリボンが、護衛騎士隊長デビッドをミノムシのごとく縛り上げた。まどかが窓を慌てて開ける。雫が刀を一閃すると、リボンはマミから切り離されて、頭だけ出した黄色いデビッド玉の完成。

 

 「な、なにをする…やめろ…」

 

 「ああ、良かったな。

 

 マミがそうしてくれるなら、遠慮が要らない。」

 

 ハジメは、わざわざ実弾に換装し、ご丁寧に連射した。リボンは銃撃に耐えるので、衝撃でデビッドが窓の外へ放り出され、気絶する。

 

 殺気立っていた残りの騎士も、まどかたち4人の魂魄魔法とハジメたちの「威圧」を重ねがけされて、剣を抜く前に落ちた。

 

―*―

 

 「みたまさん、先生からお願いです。」

 

 「高くついても知らないわよぉ?」

 

 「覚悟しています。

 

 …南雲君と白崎さんと八重樫さんと園部さんを、クラスに、連れ戻せませんか?」

 

 「無理ね。」

 

 「そんな…どうして!」

 

 「私の話をするわ。ほむらちゃんの話は重すぎるから。

 

 神浜市はね、歴史的に、西と東に別れているの。

 

 私は大東区、古くて貧しい東側。

 

 でも、特待生で、西の進学校、水名女学園に進むことができた。誰もが、賞賛してくれたわぁ。」

 

 「それは、良かったのではないのですか?」

 

 「それからよ。

 

 水名のみんなは、ことあるごとに私をさげすんだ。

 

 そしてある時、私の一番の友達が階段から落ちてけがをした。彼女は『私が突き落とした』と言った。

 

 水名にいられなくなって大東学院に戻ってきた私を迎えたのは『どのツラ下げて戻ってきたんだ』という視線、声。

 

 神浜を恨んで、神浜を滅ぼす存在になることを願い契約を結んだ私は、裏切られるとはどういうことか知っている。

 

 断言するわ。

 

 無能呼ばわりされた末に檜山大輔に突き落とされた彼は、絶対に、自分を裏切ったクラスには戻らない。そして、彼を捜しに行こうとしないクラスメートたち、とりわけ、みんな仲間だと言っておきながら裏切った光輝くんの背中を見た、香織ちゃんたちも。」

 

 「…そんな…」

 

 「それでも、忘れさせないことくらいなら、できるかもしれないわねぇ?」

 

 「そうですか…

 

 …私は、あきらめません。」

 

―*―

 

 翌日。

 

 ウィル捜索のため旅立とうとしていたハジメたちは、北門でたむろする愛子と生徒たちを見て目をむいた。

 

 「何してんだ?」「こうなると巻き込まざるを得ないから話したくなかったのよね…」

 

 「む、八雲、いつにもまして騒がしいな。」

 

 たまたま鏡を抜けてやってきていた八雲みたまの数少ない友達である和泉十七夜(いずみかなぎ)も、眉を顰める。

 

 「ところで、南雲君、だったか?

 

 幸い今日は学校もバイトもない。自分も、八雲が言うところの行方不明者の捜索に、力を貸そう。」

 

 「はあ…先生たちともども、付いてくるのは勝手だが同行は却下だ。俺たちとは移動速度が違いすぎる。」

 

 「む、失礼だな。これでも東をまとめる魔法少女、七海くらいの実力はあると自負しているぞ?先生方の面倒を見てもいい。」

 

 「言うじゃないか、気に入った。

 

 よし、全員乗ってけ。」

 

 「恩に着よう。」

 

 ハジメはかくて、1台の魔力駆動トラックを供出する代わりに、神浜の最高戦力に貸しを作ることに成功した。

 

―*―

 

 トラックは、元がほむら所蔵のタンクローリーとは思えないほど滑らかに山脈を登り、小川にて停車した。

 

 「む、八雲、おかしな魔力があるな。」

 

 「十七夜の言うとおりねぇ。ハジメくん、止めてちょうだい。」

 

 「ああ。」

 

 しばらく歩くと、川沿いに盾や剣の破片が点々と散らばっているのが確認できた。

 

 さらに、川が大きくえぐられて、木が折れている。

 

 「この妙な魔力はなんだ?魔女に似ているが…

 

 …ここで、挟み撃ちされたようだな。南雲君、下流だ。」

 

 「ベテランって言うのは伊達じゃねえな…

 

 …マジかよ。気配感知に掛かった。感じから言って人間だと思う。場所は……あの滝壺の奥だ」

 

 「生きてる人がいるってことですか!」

 

 「滝の中みたいねぇ~。…十七夜。」「ああ、気付いている。備えておこう。」

 

 「ユエ、頼む」

 

 「…ん

 

 『波城』『風壁』」

 

 アイコンタクトで、滝が2つに割れて、滝つぼの向こうの洞窟の中に倒れ眠っている青年の姿があらわになるーと同時に十七夜が飛び込み、その手で青年に触れた。

 

 「これが、南雲君の捜すクデタ氏のようだな。君たちはコイツを連れ帰り、ついでに身の程知らずに冒険者になろうとしたことを説教するといい。

 

 自分は、戦わなければならないようだからな。」

 

 固有魔法は「読心」。みたまが「調整する時に心の中のイメージが見えてしまう」のに対し、十七夜はただただ心を読むことができる。

 

 「んぅ…ん!?あなた方は…」

 

 「君は助かった。だが礼ならば、依頼を受けてここまで来てくれた南雲君たちに言うべきだろう。」

 

 十七夜は駆けだそうとする。

 

 一方で、やっと助かった実感がわいてきたクデタは、泣き崩れた。

 

 「わ、わだじはさいでいだ。うぅ、みんなじんでしまったのに、何のやぐにもただない、ひっく、わたじだけ生き残っで…それを、ぐす…よろごんでる…わたじはっ!」

 

 ハジメが、近寄っていく。十七夜も、足を止める。

 

 「生きたいと願うことの何が悪い?生き残ったことを喜んで何が悪い?その願いも感情も当然にして自然にして必然だ。お前は人間として、極めて正しい。」

 

 あらためて、ハジメがどれだけ辛い思いをしたのか察した香織、雫、優花が顔を伏せ。

 

 「だ、だが…私は…」

 

 「それでも、死んだ奴らのことが気になるなら…生き続けろ。そいつらの分も背負って。これから先も足掻いて足掻いて死ぬ気で生き続けろ。そうすりゃ、いつかは…今日、生き残った意味があったって、そう思える日が来るだろう」

 

 「…生き続ける」

 

 「南雲君、なかなか見どころがあるな。八雲もそう思ったのか?

 

 …最近の東の魔法少女たちとは大違いだ。」

 

 「調整屋さんは中立。ノーコメントよぉ。

 

 …頼まれればマギウスの3人だって調整する。

 

 そんなことより、無駄な時間を喰ったわねぇ~。」

 

 「のようだな。八雲は隠れていろ。」

 

 上空で、巨大な黒龍が、口から炎のブレスを吐いた。

 

―*―

 

 む…堅いようだな。

 

 「南雲君、済まないが自分のムチではダメージを与えられないようだ。援護に徹しよう。」

 

 「ああ。

 

 シア、一瞬でいい、上へ吹き飛ばせるか?」

 

 「もちろんですぅ!

 

 おらっしゃぁーーっ!」

 

 お、狂犬傭兵のような戦い方だ。ハンマーであれだけの巨龍を吹き飛ばすか。

 

 「よし。

 

 ほむら、礼を言うっきゃないな。

 

 これでも喰らっとけ!」

 

 ドズン!

 

 おや、紛争地の映像で見たぞ?RPGー7、だったか?

 

 龍は落ちたか。さてどうする…

 

 …なかなかえぐいことをするな。龍とはいえ、尻に杭を打ち込もうなど、まるでヴァンパイア・ドラキュラのような所業だ。

 

 ビクビク震えているな。これならば…

 

 「南雲君、どいてくれ。

 

 その心、少しのぞかせてもらう!」

 

 む…!?

 

 「この龍、人の心を持っているな!

 

 首下に羽根のペンダントがある!それを壊してくれ!」

 

 「わかったわ!あたしに任せて!」

 

 カキン。

 

 ーアッ────ーなのじゃああああ────ー!!!ー

 

 「うるさいっ!」

 

 おっと、どなってしまった。

 

 ーし、静かにするから、お尻のそれ、早く抜いてたもう…ー

 

 「む、テレパシーか。

 

 にしても、妙な魔力のペンダントだな。貴様、このペンダントをどこで」

 

  ーアラもう聞いた?誰から聞いた?

 

 受信ペンダントのそのウワサ

 

 自身がないとき、怖いとき、疲れたとき

 

 何も考えたくないとき、悲しいとき、ただ寝たいとき

 

 そんなときは、これヒトツ!

 

 付けたら心も頭のパーッとマッシロ

 

 どんな感情もなくなっちゃう

 

 だけど使うときは気をつけて!

 

 スピーカーの持ち主に言われたことはなんでも聞いちゃう受信機になっちゃうって

 

 ペンダントの持ち主の間ではもっぱらのウワサ

 

 ナンデモイッテー!ー

 

―*―

 

 ペンダントから広がったウワサの結界の中は、酷い文字化けがえんえんと人を鬱にさせようとするいつもの光景である。

 

 ハジメに杭を引き抜かれた黒龍あらため龍人族の妖艶美女、ティオ・クラルスは、何かに目覚めてしまったらしく「あひぃい──ー!!す、すごいのじゃ…優しくってお願いしたのに、容赦のかけらもなかったのじゃ…こんなの初めて…」などとほざいている。十七夜は読心を解いた自分の判断を褒めた。

 

 「な、南雲君たち、これは…?」

 

 「先生、これがウワサの結界ってやつだ。魔法少女のうち数名が、神浜から持ち込んだらしい。」

 

 「その言い方をされると慙愧に耐えないな。

 

 …む。」

 

 結界の遠くで、無数の魔物がひしめいている。その中に、白いマントとフードをして目元を隠す少年の姿。

 

 「し、清水…」

 

 クラスメートの誰かが呟いた。

 

 「おい、ティオ、どういうことだコレは?」

 

 「うむ、順番に話す。

 

 妾は異世界からの来訪者について調べる為、隠れ里を飛び出してきたのじゃ。街へ降りる前に一度しっかりと休憩をと思い、山脈の間で眠りについていたのじゃ。

 

 竜の姿のまま。その眠りについた時、あの男、白いフードの男が現れ、妾の首にペンダントをくくりつけた。男は恐らく、ペンダントの力を使って妾の自由を奪い、洗脳や暗示の力で妾を操ったのじゃ。闇魔法に関しては、天才と言えるじゃろうし、ペンダントの力は妾の心をこの空間に閉じ込めた。

 

 この空間は妾から考える力を奪う。いくら妾と言えど、流石に耐えられんかった…」

 

 「…もしかしなくても、あの魔物の群れも…」

 

 「同じ結界の中ってことは、同じくペンダントで洗脳されてるわね…『ウワサさん』の口上からして、その男に従わせる魔法かしら…」

 

 結界が解けていく。どうやらいたちのさいごっぺだったらしい(このウワサに手下はいない、あるいは手下・とりつき型のウワサであるようだ)。

 

 「…ふざけるな」

 

 ウィルが、激情をぶつけた。

 

 「…操られていたから…ゲイルさんを、ナバルさんを、レントさんを、ワスリーさんをクルトさんを!殺したのは仕方ないとでも言うつもりかっ!」

 

 「言うしかないだろう!」

 

 即座に、十七夜が反論する。

 

 「どこにでも、理由のない悪意は転がっている!

 

 貴様こそ、知らない間に誰かを傷つけていることがないと言えるのか!?」

 

 いつか魔女になるかもしれないと知る十七夜のような魔法少女にとってー魔女となって心が失われた時、意識がない間に犯してしまう罪、そんなことの責任はとれない。

 

 「言える!そもそも大体、今の話だって、本当かどうかなんてわからないだろう!大方、死にたくなくて適当にでっち上げたに決まってる!」

 

 それにー十七夜だって、大東区の人間だ。

 

 「嘘でないことは、この和泉十七夜が証人になろう。

 

 そもそも、この世界の人間は亜人を差別していると言うではないか?

 

 差別に声を上げないこと、そのどこが、『理由のない悪意』に加担していないことになる?」

 

 西の人間は、知らずに、東の人間を傷つけ。そして東の人間は西の人間を数百年も恨み続ける。そのどこが、今のティオとウィルの関係と異なるのか?

 

 「亜人は亜人だろう!」

 

 「そう、西の人間はいつも言ってきた。『東は汚らわしい』『東は学がない』『東の人間は危ない』…

 

 貴様もまた、誰かに対し、無意識にでもそのように思い、そしてさげすみ、傷つけたことがあるはずだ。

 

 そうであるならば、貴様とこの龍人と、何が違う!

 

 恥を知れ!」

 

 いつか、神浜だけではないートータスも、いったんまっさらにして、そうすれば、そうしてはじめて、人間と魔人と亜人が手を取りあえる日が来るのかもしれない。

 

 「自分は町に向かう。この魔物が町の人を傷つけるかもしれないならば、知らずに誰かを傷つけるかもしれない自分が戦うのはもはや義務だからな。」




 まるでヴァンパイア・ドラキュラの所業…いや、十七夜さん、あなたいずれ…

 理由のない悪意。この2次創作は仮面ライダーの影響を受けているので、鎧武語録です。そういや十七夜さんも貴虎兄さんっぽいところあるからな…(もともとの居場所での仲間に恵まれないとか)。
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