ありふレコード ー いつかありふれていた魔王と異世界×魔法少女みたま☆マギカ   作:十二の子

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 ありふレコード 前回の3つの出来事!

 1つ、ハジメたちはフューレンで海人族の幼女ミュウを助けた!

 2つ、ほむらのせいで殺気立つフューレンの裏社会が、ハジメたちと対立した!

 そして3つ、みたまは、ハジメたちに殺しをさせないために常盤ななかの協力を受けた!


14 不幸が溢れるその迷宮

―*―

 

 オルクス迷宮のおひざ元、ホルアド。

 

 そのギルドは、異常なまでに殺気立っていた。

 

 だから、銀髪のその集団が入ってきた時、誰もが一目見てそいつらをにらみつけたー男1人に女7人、男の腕には幼女とくれば、「ふざけたハーレム野郎だ」と思うのも無理はない。ただ、相手が悪かったので、「威圧」を浴びて一瞬で土下座を余儀なくされたが。

 

 「あんだあ? えらいピリピリしてやがる…」

 

 「ひう! パパぁ!」

 

 「「「「「「「よしよし…」」」」」」」

 

 「あらぁ…

 

 …赦してあげるから、その代わりに、みたまお姉さんに何があってこんな雰囲気なのか話してくれないかしら~?」

 

 「は、はい、話しますとも!」

 

 ハジメに殺されるかもしれない、そうおびえていた男たちにとって、みたまは、救いの女神に見えたのだろう。

 

 一方で、ハジメ、香織、雫、優花もまた、ギルドの奥から扉をバタン開いて飛んできた男の姿を見て驚く。

 

 「「「「…遠藤(くん/君/っち)?」」」」

 

 「今、南雲と白崎さんと八重樫さんと園部さんの声がしたような…」

 

 「その4人ならそこよぉ~」

 

 「…は?八雲さん、お前生きてたのか!

 

 ってか、そこって、え、でも…お、お前、南雲なのか?」

 

 「はぁ…ああ、そうだ。正真正銘南雲ハジメだ。」

 

 半信半疑というふうで4人を見回し、それからユエ、シア、ティオ、最後にミュウを見やって、遠藤は疲れたような声で「みんな…変わったなあ…」と呟いた。

 

 「って、浦島太郎になってる場合じゃねえ!お前ら迷宮の深層から自力で生還できる上に、冒険者の最高ランクを貰えるくらい強いってことだよな? 信じられねぇけど…」

 

 「まあ、そうだよね」「その通りね」「それで?」

 

 「なら頼む!一緒に迷宮に潜ってくれ!早くしないと皆死んじまう!一人でも多くの戦力が必要なんだ! 健太郎も重吾も死んじまうかもしれないんだ!頼むよ、南雲!白崎さん!八重樫さん!園部さん!」

 

 「みたいねぇ…それに、ウワサが関わってるの?」

 

 「そうだ!リミットが、後」

 

 ひらひらと落ちてきて遠藤の頭の上に乗った紙には、こう書いてあったー「0:30」

 

 「…正直、天乃河を助けに行くとか、まして檜山を助けるとか冗談じゃないんだが…

 

 …ウワサが関わっているとなると、出しゃばったほうがよさそうだな。

 

 話を聞かせてくれ。」

 

―*―

 

 ティオを、ミュウのお守りに残し。

 

 オルクス迷宮90層に降りる方法はいろいろ考えられた。ハジメの武器で床をぶち抜く、ユエの重力魔法で床を圧縮していく、などである。

 

 だが結局、迷宮前に並ぶ露店でフクロウ幸運水が配られていたことが最適解をもたらした。

 

 「遠藤、コレか?」

 

 「ああ、コイツを飲んでから、1時間ごとにカウントが降ってくるようになったんだ。」

 

 「なるほど。」

 

 ハジメは、ゴクリと急須の中を飲み干した。そして眼帯をはぎ取り、魔力を見れる義眼をあらわにする。

 

 24と書かれた紙が虚空から現れてハジメの頭上に落下しようとしたその時、ハジメの義手が伸びて、紙を足でぶら下げるフクロウすなわちミザリーオウルのウワサをむんずと捕まえた。普通の人には見えない存在でも、魔力までは隠せなかったわけだ。

 

 バタバタもがくミザリーオウル。腰のタライがカタカタ音立てて揺れる。

 

 ウワサは、うわさを現実にするための存在。だから、うわさを現実にできない邪魔が入ったら、結界に引きずり込んで無理にでもうわさを現実にしようとするー

 

 ー結界が開き、ミザリーオウルがハジメをぶら下げて結界へ飛び込もうとしたその瞬間、香織、ユエ、雫、優花、シア、みたま、遠藤までもが一斉に結界へ飛び込んだ。

 

 何事かとあたりが騒然とする中で、結界の入り口はカメラのシャッターのごとく閉じていった。

 

―*―

 

 天乃河は、完全にボロボロになっていた。

 

 坂上も、血を流し倒れている。そしてアリナはと言えば、目を覚ます気配がない。

 

 上空をミザリーオウルが乱舞し、生徒たちの絶望を、不幸を、運命を呪う気持ちを集めてはどこかへ飛び去って行く。

 

 「わ、私、あの人の誘いに乗るべきだと思う!」

 

 恵理はとうとう、投降するかと言い出した。今からでも遅くない、と。

 

 「ダメだ!

 

 魔人族はともかく、マギウスとかいう連中はうさん臭すぎる!あたしはこんなやつらの道具になるのはごめんだね!」

 

 杏子はそう言いながら、もし自分に幻覚の固有魔法が復活すれば何とかなるのにと思った。その己へのいら立ちも、ミザリーオウルが主の餌に持っていく。

 

 「そうかい。

 

 じゃあ、あんたらには死んでもらうことになるね。

 

 アハトド!」

 

 女魔人族の号令で、魔物が突っ込み、鈴の防御結界にひびが入る。

 

 これ以上耐えられないー鈴は死を覚悟した。

 

 障壁の隅に、文字が映る、「繝溘じ繝ェ繝シ繝ェ繝・繝医Φ縺ョ繧ヲ繝ッ繧オ」と。

 

 そして、防御魔法の結界が、ウワサの結界と融合した。

 

 「何!?」

 

 光の鎖に締め上げられた魔物が、難読漢字の群れを背景に真っ二つに切り裂かれる。

 

 「「鈴ちゃん、助けに来たよ/わ。」」

 

 「え?カオリン?シズク?えっ、えっ?」

 

 「今治すからね!」「鈴に恵理、ここから先は私たちに任せなさい!」

 

 「ハジメくんたち!ウワサの本体はあっちよぉ!」

 

 「おう、ちょっと待て、この魔物たちつぶしてからだ!っと後5分か!」

 

 「みたまっち、あたしが行くわ!」

 

 「いや優花、全員連れてったほうが早い!」

 

 「ん、これしきの魔物、私独りの防御結界で充分。」

 

 「私、ウワサと戦うのは初めてですぅ!」

 

 「え、何だ…まさか、南雲?

 

 じゃあ、香織、雫、やっぱり生きてたのか!なんでそんなに変わって…」

 

 天乃河がよろよろ立ち上がる。しかし香織はおざなりに回復魔法を投げつけるばかりで振り向きすらしない。

 

 魔人族は呆気にとられた。会話の間にも、精鋭の魔物たちが瞬殺されているのだ。

 

 「ど、どうなってるんだい…?

 

 ウワサたちも手伝っておくれ!」

 

 ミザリーオウルのウワサが、飛び回りながらタライを落とす攻撃を繰り出すーが、その攻撃も、ユエの障壁に弾かれている。

 

 その時、フードマントに仕込まれた通信機が、女魔人に命令を伝えた。

 

 「こちら天音月夜でございます!

 

 ミザリーリュトンを、誰か守ってくださいませ!」

 

 「ちっ、仕方ないね!マギウスのため、魔人族のため、解放のためだ!

 

 魔物たち、いったん退くよ!」

 

―*―

 

 ハジメたちはぞろぞろとミザリーオウルが嫌がる方向へ迷宮を進んでいく。道中、魔物は相変わらずいなかったが、ところどころに飛び散る血と肉片はミザリーオウルが魔物を倒してしまっていることを表していた。オルクス迷宮90層は天乃河たちが気付かない間にとっくの前からウワサの結界となっていたのである。

 

 一方で、神浜の地下水道では、マギウスの手下である「黒羽根」「白羽根」のフードマントの魔法少女たち、そして彼女らを束ねドッペルまでも繰り出した天音月夜・月咲姉妹が、環いろは、七海やちよ、由比鶴乃、そして表返った深月フェリシアによって戦闘不能になり、結界最深部への侵入を許してしまった。

 

 そして、結界の最深部。

 

 土壁のオルクス迷宮90層の中でもひときわ広くドームのようになった空間の真中で、そのウワサはデンと構えていた。

 

 角杯であり長靴であるような形状の金色の巨体。つま先には目玉が1つついている。そして足の甲にあたる部分には女魔人族が立ち、周りを魔物が取り巻き、上空を数百のミザリーオウルのウワサが飛び交っている。

 

 ーアラもう聞いた? 誰から聞いた?

 

 ミザリーリュトンのそのウワサ

 

 アブないアブない魔法の戦い、あんまり死なないそのワケは、地下に潜む大きな角杯!

 

 若人たちの不幸を吸い取って、ミスもつまづきも不安も、何でもご都合主義に解決させちゃう!

 

 だけど角杯はもうイッパイ!中身チャプチャプ溢れてしまって、

 

 角杯は不幸を配ることにしたって、戦う少年少女の間ではもっぱらのウワサ!

 

 ナンテコトー!ー

 

 「いいか行くぞみんな!」「行くわよ環さん、鶴乃、フェリシア!」

 

 ハジメたちトータス勢とやちよたち神浜勢は、ほぼ同時に、銃弾や矢や炎を飛ばし、剣や槍やハンマーを向けた。しかし、その時、地面がグラグラ揺れ、石が天井から落ちてきて攻撃を迎撃した。

 

 「厄介な…」

 

 グラグラッ「あいてっ」「きゃっ」

 

 攻撃しようとすると、地面を揺らしたり石を落としたりして妨害するらしい。しかもミザリーオウルたちも、タライを次々と墜としてくる。ハジメは限りなくイラっとした。

 

 「あら?

 

 南雲ハジメ君、だったかしら?」

 

 「七海さんか。最近見なかったな。」

 

 「みたまには何回か調整してもらってるんだけどね。

 

 それで、このウワサ…」

 

 「うんうん、私の固有魔法が『幸運』なんだけど、それを消しちゃってるみたいなんだよねー。」

 

 「なるほど、察するにこのウワサは不幸を俺たちに振りまいてるってことか…

 

 ありゃ、ジャムったぞ。」

 

 ハジメがカチカチとドンナーの引き金を引くと、ポンと音がしてついに銃口から火が噴き出た。暴発である。ハジメでなければ頭が消し飛んでいてもおかしくなかった。

 

 「おいおいどーすんだ?」

 

 ぽっくり折れてしまった槍を手に、杏子が言う。

 

 「こういう場合、攻撃しにくいところ、例えば杯の中とかが弱点ってのがテンプレだよな。

 

 魔物は俺たちでなんとか片づける。そんでもってそっち、あーっと近接じゃない方がいいから環さんを打ち上げる。それで頼めるか?」

 

 「は、はい!」

 

 いろははハジメの眼光に射すくめられてかなり震えたが、気丈に返事して見せた。

 

 「気を取り直して、行くぞ!」

 

 ハジメはもう1丁の機関小銃「シュラ―ゲン」を構えなおし、速射を開始した。呉キリカにしてやられたからというものの時間低下を上回る射撃速度を実現しようとしてきた鍛錬の成果がさえわたる。

 

 香織の光の鎖、優花の短剣の嵐が攻性防壁の役割を果たし、それに守られた雫とシアが刀とハンマーで魔物たちに襲い掛かる。

 

 「ちっ、これはなかなか手ごわいねえ…

 

 『落牢』!」

 

 女魔人族が手を向けると、やちよが石化の魔法を帯びた砂の竜巻で包まれた。

 

 グラグラと、またも床が大きく揺れ、立っていられなくなるーが、雫もシアもミザリーオウルを足蹴に八艘飛びし、ミザリーリュトンは手下のミザリーオウルが巻き添えになることを恐れて石を天井から落とす攻撃ができないでいる。さらにハジメは地面にしがみついたその瞬間に錬成を開始し、手榴弾を山のように生成した。

 

 初手、ハジメが、手榴弾を一斉に放り投げる。

 

 二手、ユエが、天井に重力魔法をかける。

 

 石は落ちることができなくなり、手榴弾は上向きの引力で浮かび上がる。

 

 「全員伏せろっ!」

 

 ハジメが1から今造り上げた物なのだから、どんな不運でも不発と言うことはあり得ない。爆発がドームを満たした。

 

 魔物たちの断末魔で何も聞こえず、煙で全員何も見えない中で、ユエが重力魔法を天井の一点に集める。

 

 いろはが引き寄せられて天井に張り付けられた。

 

 「あっ、煙のスキマから…

 

 お願い、届いて!ストラーダ・フトゥーロ!」

 

 太い光矢は、杯の中に満ちる不幸を貫き、雲散霧消させた。

 

 杯が崩れ去っていく。

 

 結界が消滅していき、落下中のいろは、それに地上の鶴乃、フェリシア、杏子の姿が徐々に薄らいで消えていった。

 

 くす玉が割れ、紙がひらひら「おめでとう」。

 

 

―*―

 

 「ぐはぁ!?」

 

 逃げようとしていた女魔人族は、突き飛ばされて転がった。

 

 「悪いけどタダで帰るわけにいかないの。」

 

 三叉槍で女魔人族を地面に押さえつけるのは、石化の魔法を浴びていたはずのやちよ。

 

 「く…はは。仕掛けたときから詰みだった訳だ。」

 

 「そうね。

 

 話したくないでしょうけど、こちらにも事情があるの。

 

 『梓みふゆ』『環うい』『里見灯花』『柊ねむ』。この名前について聞き覚えはある?

 

 それとついでに、魔人族がこんな所で何をして、どうしてマギウスなんていう組織に加わっているのか、さらに大量の雑魚魔物たちはどこで手に入れたのか知りたいわね。」

 

 「あたしが話すと思うのかい?人間族の有利になるかもしれないのに?バカにされたもんだね。」

 

 「『知らない』って言わない時点で、4人に心当たりがあるって言ってるようなものよ。

 

 それに、魔人族の目的は、すでに制覇してウワサまで設置した大迷宮を巡って、神代魔法を手に入れる、とか?

 

 魔物も、神代魔法の産物かしら?」

 

 「それを何故…まさかあんたも」

 

 女魔人族の視線が、やちよの胸元に向いた。そこには、ソウルジェム。

 

 「私も、魔法少女よ。それに向こうの高校生たちは神代魔法の収集者。」

 

 「…そうかい。なるほどね。あの方と同じなら…どいつもこいつも化け物ぞろいなのも頷ける…」

 

 「私はまだ、人間だと思ってるわ。

 

 それで、お願い。みふゆは、どこにいるの?教えて…。」

 

 やちよは、頭を下げかねない勢いだった。

 

 「話せるわけないだろう。もういいからひと思いに殺りなよ。あたしは、捕虜になるつもりはないからね…」

 

 やちよはしかし、動かない。周りの人々も、やちよがどうするのかかたずをのんで見守っている。

 

 「…七海さん、どうしてもできないって言うなら、俺が引き受けるが?」

 

 ハジメが、名乗り出た。その手にはドンナーが握られている。

 

 「そうね…私たちにこの世界のノリは厳しいわ。人をいたぶるのは好きじゃない…」

 

 ハジメがやちよの隣に立ち、引き金に手を添えた。

 

 「ま、待て南雲!

 

 彼女はもう戦えないんだぞ!殺す必要はないだろ!」

 

 天乃河が叫ぶ。

 

 「捕虜に、そうだ、捕虜にすればいい。無抵抗の人を殺すなんて絶対ダメだ。俺は勇者だ。南雲も仲間なんだから、ここは俺に免じて引いてくれ。

 

 七海さん?も、殺したくないなら、南雲を止めてくれ。」

 

 「…何言ってんだ?」

 

 「誰も殺さずに済ませたいなら、私たちは最初から、軽々しく戦いに足を踏み入れるべきじゃなかったのよ…」

 

 バン!

 

 ハジメの銃口が、火を噴いた。

 

 女魔人族の額に穴が空く。やちよも、目をそらそうとはしない。

 

 「なぜ、なぜ殺したんだ。殺す必要があったのか…」

 

 天乃河の押し殺した声。

 

 「やちよさん…

 

 …その、どうしても、殺さないと、いけませんでしたか?」

 

 青のコイン(ミラーズで産出する魔力の結晶)を握りみたまの手鏡の中から出てきたいろはが言う。

 

 「そうだ!彼女の言うとおり、殺す必要はなかったんじゃないのか南雲!」

 

 「…この世界の人間族は魔人族と戦争中なの。環さん、逃がしてまた襲い掛かってくるのを許すわけにはいかなかったし、捕虜にして連れ帰ってもらったところで…助命してもらえないでしょう。」

 

 うつむくやちよといろは。一方でハジメは天乃河をにらむーハジメだって、実のところ初めての人殺し、平常な心でいるわけではない。

 

 「ましてこいつは自ら死を望んでたんだぞ天乃河。見てなかったのか?」

 

 「だが…」

 

 「つまり、皆さんの意見は一致していますね。

 

 この世界のルールは厳しくて、命は戦場では軽い。そして日本人にはその価値観は合わない。

 

 そういうことですよね、やっちゃん。」

 

 「み、みふゆ!?」

 

 やちよが振り向いた先にいたのは、殺されたはずの女魔人族を抱える魔法少女ーやちよの幼なじみ、梓みふゆ。

 

 香織が発砲するが、当たらない。ハジメはハジメで、死体が消えていることに愕然とした。

 

 「失礼ですが、幻影の固有魔法を使わせていただきました。

 

 あなたのおかげで羽根たちを逃がせました。ありがとうございます。」

 

 「そう、じゃあ、あたしも解放のために役に立てたかい?」

 

 「はい。ですからしばらく、眠っていてください。」

 

 「みふゆ!本当に、みふゆなの!?」

 

 「はい、久しぶりです、やっちゃん。」

 

 ハジメも発砲するが、これもそれている。義眼による魔力視も幻影魔法でそらしているのだ。

 

 「お願い、みふゆ、戻ってきて!」

 

 「それは、できません。

 

 ワタシはね、やっちゃんのところにもう戻れないんです。ワタシも『マギウス』の幹部、やっちゃんたちがウワサを消すのなら、ワタシはやっちゃんの敵ですから…

 

 気づいていますか?

 

 ワタシも、いくつか神代魔法を持っています。それでも、撃たせないのではなく、弾をそれさせるという手段を取らざるを得ない。

 

 …魔法少女としての年齢的な限界で、魔力が衰えているんです。もともとワタシたち魔法少女は、トータスの魔法を強引にしか使えませんが…」

 

 「だからって、多くの人を巻き込んで、トータスの事情に巻き込まれて…

 

 …黒羽根たちの言う『解放』?」

 

 「はい。

 

 魔法少女の呪縛からの、解放。そのためのカギが、この世界にはあるんです。」

 

 「本当かどうかなんて、わからないわ。」

 

 「それでも、すがりたいんです。すがってしまうんです。」

 

 みふゆは、魔力でこうこうと輝く魔晶石を取り出し、ソウルジェムに近づけた。

 

 「今のワタシには、マギウスと、マギウスにすがってくる羽根の魔法少女たちを結び付ける大事な役割があります。やっちゃんの元には戻れません。それに、ここでやられるわけにもいかないんです。

 

 『界穿』!」

 

 ハジメが放った弾丸が、とうとうみふゆに命中しようとしたその瞬間、空間が揺らぎ、円形の空間ゲートが開いて、みふゆと女魔人族の姿は消え失せた。

 

―*―

 

 迷宮から地上へ戻る道すがら、いろはとやちよ、それにミラーズの力の分身であるミラーズコイン片手に舞い戻ってきた鶴乃とフェリシアと杏子も加え、天乃河ら勇者勢、ハジメら、そして魔法少女たちの間での情報のすり合わせが行われた。

 

 それぞれに、葛藤があった。

 

 天乃河たちは、どうして久しぶりに再会したハジメ、香織、雫、優花が結ばれているのかと動揺した。

 

 やちよは、どうしてずっと探していたみふゆがマギウスなどという怪しい秘密結社の一員になっているのかと動揺した。

 

 そして、天乃河たちはウワサについても神浜の近況についても全く知らず、これでは後々要らぬ軋轢を生む危険もあった。

 

 「環さん、ごめんなさい。

 

 私、やっぱり、みふゆのことをあきらめきれない。」

 

 「はい、私も、ういの手掛かりはやっぱり、マギウスとこの世界にあると思います。」

 

 「…血なまぐさすぎる世界だけど…」

 

 「それじゃあししょー、また、仲間だね!」

 

 「仲間じゃないわ鶴乃。」

 

 「えーっ!」

 

 「あくまで、環さんとは協力関係よ。

 

 だからまあ、鶴乃も、昔のように弟子としてついてきたら?」

 

 「わーい!ししょー」

 

 「うわっ、鶴乃、離れなさい!」

 

 どこかしんみりとした空気が、流れている。

 

 しかし、空気が読めないやつが約1名いたー

 

 「それなら、魔法少女の皆さんも、俺たちが世界を守る戦いに参加してくれないか?」

 

 ー天乃河光輝である。

 

 「いやよ。」「私も、もう、こりごりです…」「あ?なんでだ」「フェリシアは黙ってる。…私も、ししょーに賛成かな。」

 

 「なんでだ!南雲も戻らないとか言うし!

 

 みんな、力があるんだから、人間族を守る戦いに参加すべきだ!」

 

 「…あなた、天乃河君だったかしら?

 

 まさか、私たちを人殺しに付き合わせようと言うの?環さんなんてまだ中学生よ?

 

 それでよく、勇者を名乗れたものね。」

 

 「な、なんだと!?」

 

 「大切なモノを失ってからでは遅いの。だから私は、もう仲間は作らないし、あなたのごっこ遊びにも付き合えない。

 

 戦うとはどういうことか、真剣に考え直してきなさい。

 

 少なくとも、私はいろはを試して、神浜で魔女と戦う覚悟を見せてもらった。一方であなたは、トータスで勇者として戦う覚悟がまったくないことを見せてくれた。これがすべてよ。」

 

 やちよについて、「本質を見抜く、探偵のような鋭さがある」と評価する人は多い。そして、彼女が天乃河に見た本質とは、つまり「付き合いきれない」というものだった。

 

 「な、なんでなんだ!

 

 香織も雫も南雲が好きとか言ってるし、魔法少女は正義の味方のくせして手伝うつもりがないし…おい、さては南雲、お前だな!?お前、どんな強力な洗脳をしたんだ!」

 

 「みたま、洗脳?何の話?」

 

 「そこのおばかさんがおばかさんだってお話よぉ~。」

 

 「やちよさん、もう遅いですし、私たちはそろそろ神浜に帰りましょう。」

 

 「ああ、それなんだが、あたしはしばらくこの世界に残るよ。マミにドッペルとか言うやつのことを伝えないといけないし、どうせ風見野にも見滝原にも帰る家があるわけじゃねえしな。」

 

 「佐倉さん、また次、何か縁があったら協力しましょう。」

 

 やちよ、いろは、鶴乃は、状況を呑み込めていないフェリシアの手を引き、みたまの手鏡が作る結界の中へ去っていく。杏子もどこかへ駆けていきあっという間に姿が見えなくなった。

 

 アリナだけは、ハジメたちと天乃河の争いの蚊帳の外に自らを置き、何事か考えるそぶりを見せ。

 

 そして、中村恵理に近づいていって、耳打ちした。

 

 「アリナも、マギウスとして、もうあの勇者が用済みになったワケ。」

 

 「えっ、アリナさんが、マギウ」

 

 「キャットをかぶっても無駄なワケ。

 

 それよりも、アリナたちマギウスに協力してほしいんだケド。」




 やちよと天乃河の温度差ー「誰かを戦いで失ったことがあるかどうか」。
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