ありふレコード ー いつかありふれていた魔王と異世界×魔法少女みたま☆マギカ 作:十二の子
1つ、ハジメたちはウワサの調査を兼ねて、オルクス迷宮で危機にあった天乃河たちを助けた!
2つ、ハジメたちといろはたち、そして佐倉杏子はマギウスの羽根の魔人族・魔法少女と戦い、「ミザリーリュトンのウワサ」を倒した!
3つ、梓みふゆによって、ハジメたちは手を血に染めずに済んだ!
―*―
グリューエン大砂漠。
砂嵐舞い散る中に、透明なドーム結界に包まれたその小国ーアンカジ公国はある。
ハジメ、香織、ユエ、雫、優花、シア、ティオ、ミュウ、そしてみたまは、先に大迷宮「グリューエン大火山」を目指していたほむら、マミ、まどか、さやかに合流するためアンカジにたどり着いた。そして、お通夜のような雰囲気の街並みを見て何事かと疑った。
「え、えっと、南雲先輩、マミさんが状況を説明したいからオアシスに来てほしいって…」
「ああ、わかった、すぐ行く。」
呼びに来たまどかとさやかに、ハジメたちはのこのこついて行く。
オアシスでは、黄色いリボンに縛られた10メートルほどのナニカがうごめいていた。
「なんだコイツ。スライムか?」
「そうなのよ…
…この国がちょっとピンチなのは聞いてる?」
「聞いてはいないが、見ればわかる。」
「それは病気なのよ。私たちも行き倒れた王子を助けるまで知らなかったのだけれど…体内で魔力が暴走して身体を傷つけるような毒が、オアシスから飲み水に紛れていて、大火山の『静因石』を飲まないと治らない…そんな状況なの。」
「それで、犯人が、コレ?」
「コレよ。柔らかすぎるものだから私のティロ・フィナーレや暁美さんだと毒が飛び散ってしまうし、鹿目さんや美樹さんでも安全に処分できなくて、とりあえず急場しのぎで町の人たちを手当てするだけで手いっぱいなのよ…」
「じゃあハジメくん、私も、治癒に回ってくるね。」「妾も治癒魔法は使えるぞ?」
「じゃあ頼む。」
「鹿目さん、案内してあげて?」「はい!」
「さてと、コイツだが…『纏雷』!」
ハジメの手からほとばしる電撃が、うまい具合にリボンの中身に染みわたり、蒸気を出しながら見る見るうちに黄色の塊は縮んでしまった。
「さて、それとユエ?差し当たって水を作れないか?スライム引っこ抜いてもまだ汚染されたままなんだろ?」
「ん、でもちょっと吸わせてほしい。あとマミ、なんか入れ物。」
ユエが、ハジメにしがみつき、片手を宙に振りかざした。マミの周りからリボンが溢れ、その場に折り重なっていきフクシマにあるような巨大な貯水槽を成す。そこへユエが作り出した水の球体がすっぽり。公爵たちはあんぐりと口を開けていたー人口27万の大病をすべて面倒見れる魔法少女の次は、27万の飲み水を一度に供給した冒険者たちである。驚くよりほかない。
「さーて。
そうなると急いだほうがいいってことか。
見滝原組も一緒に来る予定だったよな?」
「ええ。でも誰か治癒役に残らなきゃよね…」
ー「マミさん、そう言うことなら私とまどかが残ります。正直数日ずっと魔力を使い続けて疲れました。」「うん、ちょっと戦える気がしないんだよね。」「私も残るわぁ~。調整屋さんにいつお客さんが来るかわからないから、火山の中に入るわけにはいかないのよねぇ~。後、香織ちゃんも残るそうだから、ハジメ君に伝えてあげて。」ー
「…決まったわね。」
―*―
一方、神浜市。
やちよは、自作の「神浜うわさノート」を見返し、首をひねっていた。
「やちよさん、どうしたんですか?」
やちよの管理する下宿「みかづき荘」に移り住んでいるいろはは、みかづき荘のリビングで、同じくみかづき荘に住み着いたフェリシアの勉強を見ながら聞いた。
「最近になって、怪しいうわさが増えた気がするのよ。
例えば今日行く『ひとりぼっちの最果て』もそう。
今まででも『名無し人工知能のウワサ』はあったし、『名無しメールのウワサ』から来たメールのスクショがネットに流れてたこともあったわ。
だけど、急に、何と言うか、ウワサの声が大きくなってる気がするのよ。」
「声?何のことだ?声なんかしねーぞ?」
「フェリシアには分かりにくい言い方だったわ。
環さん、私たちが始めて戦ったウワサが、『絶交階段のウワサ』で、それから1か月しないうちに、『マチビト馬のウワサ』が出て来たわ。
その間、いくつものうわさがあったけど…」
「ほっ、『ミラーズの向こうの異世界のウワサ』以外は戦う相手になるウワサがいなかったねししょー!」
「そうよ、鶴乃。
そして、次なるウワサは『フラワースピーカーのウワサ』だけど、これはトータスでしか報告されなかった。」
「ペンダント、売ってなかったですもんね…」
「あれ?向こうの人たちが教えてくれた『万年桜のウワサ』は?」
「アレは実質魔法少女のようなものだとみたまが言っていたから、数えないことにしましょう。そうすると、マチビト馬からフラワースピーカーまでウワサが発生するのに、3か月も経っていた。」
「神浜にウワサが出てくるのには、『ミザリーリュトンのウワサ』で、100日以上経ってますね…」
「ええ…たぶんだけど、ウワサは、南雲ハジメたちの迷宮巡りに連動して活性化しているわ。そうでないと、おかしな拍子にトータスに部外者が入ってしまう可能性があるから。
きっと、マギウス…みふゆたちにとって、巴さんたちがウワサの餌食にならないで南雲ハジメたちと出会ったことは想定外だったんだと思う。だから、フラワースピーカーで操った魔物を使って排除しようと…
…しようと…」
「やちよさん、何かひらめいたんですか?」
「…もしかして、マギウスの目的は、神代魔法の獲得者をより強く育てること?」
「ししょー、それなら、エヒトを倒そうとした人たちと同じ『解放者』を名乗ってるのもうなずけるよ!」
「んあ?おかしーだろ。なんで自分たちでやらねーんだ?その何とかまほーってちょーすげーやつ持ってるんだろ?」
「きっと持ってても使えないのよ。でも、エヒトを倒させたところで…」
「やちよさん、考えても仕方ないと思います。それより、私は灯花ちゃんとねむちゃんに直接聞いたほうが…」
「そうね環さん。
行きましょう。
ウワサの行動が活発化してるってことは、私たちがウワサを倒して回れば、マギウスも大きく動かざるを得ないってことよ。」
「まずは『ひとりぼっちの最果て』で実際につかまってる女の子を助けに行かないとだね、ししょー!」
「よくわかんないけどドガンと行ってズガンと魔女とかウワサとかぶん殴れってことだろ?オレに任せろ!」
魔法少女4人は、神浜電波塔へ向かった。『名無しメールのウワサ』を通じて、そこにいるウワサから「預かっている二葉さなという少女を帰すため、電波塔に来て私を倒してほしい」というメールが来ていたのである。
しかし、電波塔の展望台まで行っても何も起きない。起きるわけもない。
「もっと上行かなきゃいけねーのかな?」
「バカと煙作戦は最後にしましょう。」
「メールに2回も電波って書いてあるからここかと思ったんですが…」
「電波をお届け…
…環さん、スクリーンショット画像を添付ファイルにして、私に送信してくれない?」
「え、でもやちよさん、画像持ってますよね?」
「そうじゃないのよ。やってみて?」
「はい。
…何も起きませんけど…」
少々苦労しながらスマホからメールを送信したいろはだが、変化なし、と思いきややちよだけは驚きを表情に見せ、まわりに他人がいないのを確認して変身した。
「えっ?」「ほっ?」「あ?」
「やっぱり。
このウワサの結界は、電波がお届けされないといけないのね。
環さん、鶴乃、フェリシア、一斉返信で送り返すわ。」
ピロン。
3人はメールを開いてから何気なく外を見て、絶句した。
ーアラもう聞いた?誰から聞いた?
名無しメールのそのウワサ
1通、100通、1000通!?仮想空間から想いを届ける電波の世界の郵便屋さん!
背中に紙飛行機のメェ~ルを乗せて、相手の住所に電波をお届け、
ピロン♪とみんなに合図を送って名無しのメールを残してく!
時々画面にチラっと顔を見せるって、中央区の人の間ではもっぱらのウワサ。
ダレコレー!ー
展望台の下に、ウワサの結界が広がっていた。
しばらくの逡巡ののち、彼女らはお互いに顔を見合わせ、展望台から下へと飛び降りー
ーそして4人は、その世界から存在しなくなった。
―*―
ハジメたちは、マグマの中にいた。と言っても泳いでいるわけもなく、マグマに浮かぶ小船の上にいる。
ただ、大火山をアリの巣のように貫くマグマ道は、明らかに異常だったーというのも難読漢字や毒々しい背景に満たされ、そこが半分ウワサの結界と化していることは明らかだったのである。
まして、魔物たちの様子も異常だった。マグマでできたヘビやコウモリが、ハジメたちには目もくれずに逃げ回り、羊の頭蓋骨を吊るした紙ヒコーキのようなモノー「名無しメールのウワサ」が「メェー」などと奇っ怪な鳴き声を上げてそれを追っかけまわし、プログラムコードでできたビームのようなモノで魔物を駆逐している。
空中から叫び声が聞こえた。それが魔法少女から発せられるものと看破したマミが、リボンを伸ばして回収する。
「ふう…下にマグマが見えた時はどうしようかと思ったわ。」「ですね…」「ほっ…」「黒焦げになるところだったぜ…」
現れたのはやちよ、いろは、鶴乃、フェリシア。
「ここにもウワサがいるんだな。」
「ええ、『ひとりぼっちの最果て』、ウワサとしての名称は『名無し人工知能のウワサ』。」
「実は、ウワサからメールが届いたんです。」
「メール?大丈夫それ。」
ハジメが船と防熱魔法壁を拡大している傍らで、ユエ、雫、優花、シア、ティオは、実際にウワサといろはが行ったやり取りの文面を見た。
ーその人工知能「アイ」はもともと、実世界での使用に供する試験としてシミュレーテッドファンタジー世界での行動をシミュレートされていた。しかし必ず仮想世界において破滅的な結末をもたらすということで、実世界に出すのが危ぶまれ、ついには虚無の仮想空間にひとりぼっちで封印されてしまった。
マギウスによってウワサにされたことでそのひとりぼっちの空間は孤独な大迷宮「解放者の部屋」となり、アイはメールを送った女の子を連れ去って閉じ込めていた。
しかし、3か月ほど前に来た少女二葉さなは、今までの数人と異なり助けを求めようとせず、それどころか電波塔に次の少女が来ても入れ替わりを拒む。その理由は、さなは家でも学校でも相手にされず、例えウワサから解放されてもひとりぼっちだから。
居場所がなさ過ぎてついには「透明人間になりたい」という契約で魔法少女になったさなにとって、アイの結界は居心地がいいところだった。ネガティブさ加減を吐露し自分を卑下し続けるさなと何週間も接するうちに、アイの心には優しさが芽生え。
さなには、ちゃんとした居場所が必要だ。そう思ったアイはさなを見つけて必要としてくれる人を捜そうとしたが、今や大迷宮の試練と融合しており、「倒してください」とうかつに言えない。そしてまた、自分が倒されずにアイを解放した場合、ウワサとしての本能で別の少女をさらってしまう。
そして、ここ数日で事態はアイにとって急速に好転した。
南雲ハジメ、巴マミらは、自分がとりつくグリューエン大火山大迷宮に挑戦しようとしていた。
そしてまた、必死に「ひとりぼっちの最果て」について調べるいろはたち。
アイは聞いた。「透明人間になったあなたを、いてもいいと認めてくれる人、いてほしいと言ってくれる人がもし現れたらどうしますか?」
さなは答えた「私は初めてその人を信用できるかもしれない…」。
だから、ついにアイは、初めて虚無の中で友達になってくれたさなを救ってくれる魔法少女、大迷宮の試練を突破し自分の使命を完遂させてくれる勇者一行の両方がそろった今、自分を倒してもらおうとしている。ー
ユエが、ポロポロ涙をこぼした。シアやマミも顔を伏せる。
「この子もひとりぼっち、私もずっとひとりぼっちだった。寂しい。」
そう言いながらユエはハジメにしがみつき、雫は「香織がいないからってやりたい放題…」と白い目を向けた。
「まあ人ごとでもないわな。」
ハジメもまた、見捨てるわけにもいかないと思ったらしく、アザンチウムで強化した櫂を取り出して、マグマを漕ぎ出した。
「にしても、いよいよウワサの結界だな…熱遮断に使う魔力が少ない。半分電脳空間になってやがる…」
「というかご主人様よ、涼しくすらあるのじゃが…」
「ご、ご主人様…」「南雲君あなた前から思ってたけどそんな趣味だったのね…」「フェリシアちゃんはああいう人についてっちゃダメだよ?」「当たり前だろ?」「フェリシア、アメくれるって言われたら?」「あ?ついてくついてく。」「フェリシアちゃん!」
ハジメはずいぶんな言われように顔をひきつらせた。
マグマの流れが、徐々に、緑の数字やプログラムコードに変換されて、フネでは進めそうにないのがわかる。そして、「delete」「back」「F5」など、見るからに近づいてはいけない文字ばかりで構成された河が宙に浮き、その下に地面が見えた。
「ハジメ、魔法が効かない。」
「ユエ、そうか…プログラムだもんね…ハジメっちどうする?」
「ここは魔法少女の皆さんにお任せしよう。」
「よくわかんないけどズガンとやってドーン!だろ?」
フェリシアが飛び出して行って、ハンマーでプログラムを殴りつけた。
魔力の波が、ウワサの魔力を吹き飛ばす。その間にハジメたちも魔法少女も、その向こうへ数百メートル飛んで着地することが可能だった。
その空間は、粗雑な岩のドーム。「ゴーバスターズ」の亜空間のごとく、壁一面に文字が躍っている。
奥の扉が、ホログラムを映し出す。女性の姿のホログラムの横には入力フォームが浮かび上がる。
▶私はアイ。
▶ここが、大火山迷宮の最終試練。
▶試練に融合した私のウワサを倒し、私からさなを解放してください。
▶試練を始めます。
その瞬間、プログラムコードが、岩壁のあちこちからせり出して、ヘビのカタチを取り、真っ赤に染まった。マグマのヘビである。頭には紙ヒコーキがとりついている。
「自殺志願のウワサのくせに生意気だなおい!」
総勢数百体の「マグマヘビfeat名無しメールのウワサ」。
戦闘が始まった。
―*―
▶さなさん、今、外であなたのために、魔法少女たちが戦ってくれています。
「私の、ために…」
▶あなたは、ウワサでしかない私の下に、ここにいるべきではないのです。
きっと、彼女たちは私を倒してくれるでしょう。
「でも、それじゃあアイちゃんが!」
▶さなが幸せになってくれたら、それが、さなに優しさと幸せを、たくさんのモノをもらった私に唯一できることなのです。
「アイちゃん…」
▶私のことをさなが忘れないでいてくれたら、私はいつまでもひとりぼっちではありません。
また一人になるとわかって私が暴走した時には、この短剣で、私を天国へ送ってください。
「はい…」
▶ありがとう、さな。
不明の対象を確認。識別コード:属性はマギウスの白羽根。
迎撃しますか?YES NO
YES
―*―
ウワサとりつくマグマヘビは、あっという間に数を減らしていった。
ハジメとほむらとマミの弾幕、雫の神速の斬りと優花の投擲、ユエとティオの炎魔法薙ぎ払い。シア、それにみかづき荘一行には出番すらなかった。
だから、その攻撃に最初に気づけたのはやちよで。
「どきなさいっ!」
ハジメを突き飛ばし、やちよは三叉槍の先に結界を張った。
最後のマグマヘビを撃とうとしていたハジメが不平を唱えようとしたとき、上空から極光が撃ちおろされる。
「ぐっ…」
「やちよさん!」「ししょー!」「やちよ!?」
みかづき荘4人で張った魔法障壁が散り散りに破壊される。がそれより早く、マミがリボンで4人を引き寄せ救出した。
無数の光弾が降り注ぐ。それを、マミがリボンの屋根を作りユエとティオが魔法障壁で強化して防いでいく。
「…看過できない実力だ。やはり、ここで待ち伏せていて正解だった。お前達は危険過ぎる。特に、その男は…」
やっと、爆撃は終了し。
白いフードマントを羽織った男が、巨大な純白の竜に乗って飛んでいた。その後ろには無数の灰色の竜。
「魔人族…それに、マギウスの羽根!?
お願い!『環うい』、私の妹を知りませんか!?」
「人間族に教えることなど何もない。…タマキウイ?それは知らん。
しかしまさか本当に、私の白竜が、ブレスを直撃させても殺しきれんとは…おまけに黒羽根の報告にあった強力にして未知の武器…
魔法少女ならばともかく、それ以外の貴様ら、『人間族の本当の勇者』か? いくつの神代魔法を修得している?」
それぞれがーハジメたちは2、見滝原組は3、みかづき荘は1ー指を立てる。
「ふん。」
「そういうお前は何なんだ?」
「私の名はフリード・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒にして、魔人族に解放をもたらすマギウスの白羽根である。
ウワサを消されるのは困ると、マギウスから命令があったのでな。悪いが、マギウスがウワサを再設定?するまで、眠っていてもらえないだろうか?」
「断る。俺たちの前を遮るなら、敵だ。」
「それに、ウワサはすべて終わらせたがってるんです!」
「ならば力づくでいかせてもらう。『界穿』!」
ハジメの後ろに白竜が出現し、極光を吐いた。
ハジメはとっさに、ほむらを真似てつけている盾でしのごうとするーが、しのぎ切れず吹き飛ばされ、極光がなおも迫る。
その時、極光を何かが防いだ。
「警告」「ウィンドウ…?」
雫と優花が呆然と呟く。
〈申し訳ありませんがパスワードが間違っております。パスワードをお忘れの方はこちら。〉
無情な文面が、極光をしのぐ。
「な、なんだこれは!?」
〈警告:認証失敗。ログインページにお戻りください。〉
跡形もなく、極光が消えた。
「ふざけるなっ!灰竜隊、突撃!」
▶許しません。やはりあなたに空間魔法を授けたのは失敗でした。迎撃開始。
奥の扉が開き。
そこから、白いワンピースで緑の髪、のっぺらぼうの長身の女性と、緑を基調にした衣装で同じく緑髪、なぜかティアラのようなものをかぶり、開口部のある盾を持つ魔法少女が現れた。
ーアラもう聞いた?誰から聞いた?
名無し人工知能のそのウワサ
知らない人からピロン♪と受け取る、謎の人からのイタズラメッセ!
それはみんなをユーカイしちゃう、名無し人工知能のアマイワナ!
悪いことを覚えたせいでシミュレーションの異世界で隔離され、ひとりぼっちで寂しい彼女。
捕まえた人を手放せないって、中央区の人の間ではもっぱらのウワサ
スタンダローン!ー
▶南雲ハジメ、ユエ、八重樫雫、園部優花、シア・ハウリア、ティオ・クラルス、巴マミ、暁美ほむら、環いろは、七海やちよ、由比鶴乃、深月フェリシア。以上に神代魔法「空間魔法」を授けます。
以上対象を認証。取得確認。
それにさな、辛い思いをさせましたね。これは私からの餞別です。
対象「二葉さな」認証。取得確認。
女性ー「名無し人工知能のウワサ」ことアイは、頭の中に神代魔法がインプットされる感覚にしゃがみ込む少年1人少女12人をいつくしむ雰囲気を出してから、フリードに向かい合った。
▶あなたを排除します、フリード・バグアー。
「できるものならやってみろ。そもそも、我が主アルヴヘイト様にお仕えするマギウスに作られ、マギウスの解放のために戦うウワサが、なぜ我々に背く?」
▶マギウスの計画は、とても論理的に計算されているが、理屈を超えた人の心が計算されていません。彼女たちの計画に人の悪意が影響したとき、悲惨な結末を迎える可能性が飛躍的に向上するでしょう。赤の他人の救いにすがるあなたたちに路はありません。
「我らを愚弄するかウワサの分際で!
かかれ!」
フリードの命令一下、灰竜の群れが一斉に光弾を放つ。
〈お探しのページが見つかりませんでした〉〈再起動します。〉〈指定されたページは、削除されたか、他の場所へ移動した可能性があります。〉〈ファイルが見つかりません。〉〈メインページへお戻りください。〉〈ロード時間が長すぎます。〉〈警告:ウイルスが含まれている可能性があります。ただちにブラウザを閉じてください。〉
ハジメが、空中に湧き出して光弾を迎え撃つ無数の警告ウィンドウを見て胃のあたりを押さえた。父のゲーム会社を手伝う彼にとって、少し刺激が強すぎた。
名無しメールのウワサが飛び交って、ウィンドウを再配置していく。
降り注ぐ極光と、埋め尽くすエラーメッセージ。
フリードの白竜が、なぜかそっぽを向いた。そして、空間魔法で作ったゲートの向こうに極光を放つ。
▶南雲ハジメ。
只今、火道の要石を破壊されました。
私は結界を消滅させますが、トータスに属する者は噴火に巻き込まれるでしょう。
「…ありがとな。
おい、ティオ!一度しか言わないからよく聴けよ。静因石を持って一足先にアンカジに戻ってくれ」
ー「ご主人様よ、妾は、妾だけは最後を共に過ごすに値しないというのか?妾に切り捨てろと、そういうのか? 妾は…」ー
「違う。
そうだろアイ。」
▶はい。あなたが生き残れることを信じています。
「ほらな。やり方はあるさ。
香織とミュウに伝えてくれ。『後で会おう』。」「鹿目さんと美樹さんにも頼めるかしら。」
「委細承知じゃよ、ご主人様、巴殿。」
▶今から私が、最後の攻撃をします。
さな、今まで、ありがとう。
〈シークレットウィンドウを開く〉
〈フリード・バグアー〉
瞬間、アイは、フリードの乗る白竜の羽の上にいた。横を、黒龍になったティオが飛び去って行く。
〈delete?〉
〈OK〉
▶ウワサなら 環うい 知っていますよ
その一声から一拍遅れて、フリードとアイを無数のウィンドウが覆い隠し、そしてウィンドウの塊が大爆発した。
―*―
単純に強いからだけじゃない。
私も、まどかに見つけてもらって、友達になってもらって、うれしかった。だから私は、それだけをばねに、何度だってやり直すことができた。
だから。
「こ、これは…!?」
「ごめんなさい、二葉さな。私の時間停止にあなたを巻き込ませてもらったわ。
私の固有魔法については秘密にしてもらえるかしら?」
「は、はい…でも、どうして…」
「これを、あげたかったの。」
「髪飾り、ですか?」
―*―
結界からはじき出され神浜電波塔に戻ったいろはは、さなの髪に小さなクリスタルが付いているのを見て、気になった。
「さなちゃん、それは?」
「アイちゃんと私の、想い出…です。」
「きれいね。似合ってるわ。」
マギレコでは、まどマギのほむらのループ期間がせいぜい1か月である以上、いろはの神浜到着からワルプルギスの夜襲来まで数週間ということになります。しかし、ここにおいてはマギウスが「勇者」たちの大迷宮攻略に都合を合わせているのでややペースが落ちています。
お気づきと思いますが、ウワサの内容をかなり書き換えています。さらにそれに伴い流れもそれなりに変化いたします(この時点でマミが無事とか)。