ありふレコード ー いつかありふれていた魔王と異世界×魔法少女みたま☆マギカ 作:十二の子
1つ、中村恵理とアリナ・グレイによって王宮陥落!
2つ、神浜、王宮、神山で発生したウワサが真実を明らかにした!
そして3つ、アリナは、仲間だったはずの恵理を裏切った!
―*―
「そうだ、こいつらの魂、魔女の餌にしたら、もっとベストアートワークになるかもだヨネ!」
アリナが緑のキューブから取り出した魔女はー
ーハジメが、神速の速さで斬りつけて両断し、崩れ去った。
「アリナの、アリナの魔女!アート!
ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるぬヴァァァァァ!」
「おい、俺の香織と雫と優花を傷つけて、タダで済むと思ってねえだろうな…
アァァァァァリィナグレェェェェェェェェイィィ!!」
狂化状態のアリナとハジメが、誰も追いつけないような速度でビームと銃弾を交わし走り回る。
「すりつぶして銀色の絵の具にしてやるぅ!」
「てめえこそ檜山ともども愉快なアートにしてやろうか!?」
誰にもー助け出された香織と雫と優花にも手が付けられない。というより彼女たちは、衝撃波による損害を押さえるための防御障壁を張るので精一杯である。
「フフフ、クフ、アハハハ!
キター…!愛おしいアリナのドッペル…!」
走り回るアリナの残像がぼやけ。
カビ、あるいは発疹のような丸い球体が無数に浮かび上がる。
熱病のドッペルーそれは、アリナの思想が感受性の強い十代にパンデミックを起こす可能性が絵の具となり、世界を塗りつぶそうとする映し身。
あふれ出した絵の具がハジメに降り注ぎ、埋めつぶす。
「アハッ」
アリナの動きが停止し、絵の具がほんの少し付着しているだけの檜山や騎士たちがドロドロに溶けてしまう。
絵の具の山の中心にいたはずのハジメは、どうなってしまったのか。
それでも、香織と雫と優花は、ハジメのことを信じている。
「チェックメイトだ!」
「何!?」
アリナの後ろに現れたハジメが、アリナを羽交い絞めにした。
「ワケがわからないワケ!」
アリナの服の襟から「宝物庫」の指輪が落ちるーハジメは、宝物庫にひそみ、ドッペルが消滅してアリナのもとへ戻っていくときに引き寄せられていたのだ。
「ここでおしまいだ。
みたまには殺すなと言われたが…さすがに許せないんでな。それにほかっておくわけにはいかなそうだ。」
「アリナを殺すワケ?アリナのラストアートワーク、ちゃんと録画してぇ~」
「断る。」
「許せないワケ!」
「そうね、許せないわね。マギウスがいけとしいけるあらゆるものに授ける救いを拒否するだなんて。」
無数の光弾が、王宮の屋根をぶち抜いて降り注ぐ。
「何っ!」
ハジメは慌てて重力魔法でそれらを吸収し、上を見上げた。
同じく上を見上げたほむら、まどか、さやかが絶句するー
ー数百はあるだろうマスケット銃。
秒間数発発射される光弾。
その中心に、巴マミが、虚ろな目をして王冠の乗った純白のヴェールをかぶり、矢羽の突き刺さった環のカタチの光輪を背に神々しくも浮遊していた。
背後に空間ゲートが出現し、白竜に乗った片腕の男ーフリード・バグアーまでもが現れる。
「…そこまでだ。マギウスに従わぬ者たちよ。大切な同胞達と王都の民達を、これ以上失いたくなければ大人しくすることだ。」
「そうね。
『ティロ・フィナーレ・ホーリーナイト』」
無数のマスケット銃が、王宮の真上を埋め尽くし、銃口を下に高速回転を始めた。
「「マミさん!?」」「止めなさいまどかさやか!アレはループの間に何度も見た、殺しに来るときの巴マミよ!」
「フフ、フフフ…」
「くそっ…」「ハジメ…やられた」「ハジメさんアレはヤバいですぅ…」
身体のあちこちに傷を負った杏子、ユエ、シアが、よろよろと王宮に転がり込んできた。
「マジかそんなにか…
来るぞおい!」
光が降り注ぐ。
王宮は1秒以内に更地になった。
結界を張れる人全員がバリアを張るが、次々と崩壊していく。
「ハジメくんこのままじゃ…!」
「ちっ…どうなってやがる…いくらなんでもふせげないほど強いわけじゃなかったと思うぞ…」
10秒は、永遠ですらあり。
ついにマミの魔力が尽きた。
王宮がクレーターと化しているその中央だけが盛り上がり、ハジメたち、生徒たち、ほむらたちらが残っているのを、フリード、いつの間にか白竜に乗っているアリナ、灰竜の群れ、マミが見下ろす。
「お願い、フローレンス…」
マミの後ろから、にょっきりと光背を背負う巨大なリボンのつぼみが姿を現す。
「ちょ、その強さでドッペルは反則だろ…」
ハジメが、つぼみが開いてせり出してきた大砲をにらみ、慌てながらも何枚も盾を取り出して上へ構え防ごうとする。
「双方、そこまでです。」
その盾の上に、誰かが乗って、宣言した。
「みふ、ゆ…?」
誰かが呟く。
「みふゆ、そこをどくワケ。今からそいつらアートにするカラ。」
「いけませんアリナさん。
ワタシの身体が傷ついてもいいのですか?」
「ちっ…」
アリナはしぶしぶ、巴マミの身体にキューブからビームを放ち、ドッペル大砲から放たれる膨大な魔力を空の彼方へ向けさせた。太陽に倍する輝き。
「はっきり言ってあなたは無茶苦茶し過ぎです。そもそも灯花もねむも、神代魔法を集めている南雲ハジメたちを殺してはいけないと言っているでしょう。」
「…でも、こいつらはアリナのアートを」
「アリナ!」
みふゆがチャクラムを自らの顔に向けると、アリナは明らかに取り乱した。
「み、みふゆの美しい身体に傷がつくだなんて人類の損失、芸術の滅亡なワケ!ストップ!」
「では、落ち着いて、帰りましょうか。」
「…後で、みふゆのデッサンをさせてくれたら許さなくもないワケ…水着で。
『界穿』」
「…水着って…
ほら、フリードさんも魔人族の皆さんも、帰りますよ。」
「…みふゆ様がそう言うなら…」
こうして、魔人族の王都襲撃は終わりを告げた。
「南雲さん。
ワタシも、今回のアリナの暴走は反省しています。
ですが、解放は少々の犠牲を払っても果たされなければならないのです。
すみませんでした…『界穿』」
毒気を抜かれたように、残された者たちは立ち尽くした。
―*―
鶴乃ちゃん、フェリシアちゃん、さなちゃんは、まだみかづき荘に帰ってきません。きっと、マギウスの羽根になってしまったんだと思います。
それでも私は、あきらめません。
リーダーとして、きっと絶対に「チームみかづき荘」を元に戻して、ういを捜し出し、マギウスがしているような他人を他の世界を巻き込むやり方ではなく、私たち魔法少女の問題を解決して見せます。
「やちよさん、ついてきてくれますか?」
「ええ、いろは。」
―*―
「恵理…」
「光輝くん…」
その2人は、沈み切ったまま放置されていた。
アリナにもてあそばれた上に同情できる境遇である恵理を罰することは難しいーもちろん、メルド含む数百人の騎士を殺し降霊術で操った罪をごまかすわけにはいかないが、しかし事件の説明をしようとすれば天乃河に責任の一端が着せられてしまう。
結局、空中分解寸前の王国政府をなんとか立て直そうとしているリリアーナに取れた選択肢は、先送りである。といっても事態が重大過ぎて追及を避けられないのですべての責任をマギウスに帰すしかなく、実質の隠蔽であった。
それでも、事情を知っている者からすれば、もう誰も光輝について行こうとしない。記憶キュレーターのウワサに恵理の記憶を見せられたのは光輝だけではないのだ。
はからずも、恵理は、「光輝くんと二人っきりの世界」という状況に陥っていた。介入してくるのは日に3度食事を持ってくる龍太郎と鈴だけ。
恵理の心は、冷え切っていた。
心が零点で揺らぐ中、かろうじて最初に発された言葉は。
「ねえ鈴。
なんでまだ、僕の世話を焼くのさ。」
「エリリンの、友達だからだよ。」
「僕が、鈴に何をしたのか、わかって」
「うん。
それでも、だよ。」
―*―
「ほむらちゃん!」「ほむら!」「ほむら!」
「うるさいわね!
私だってマミを助けたいわよ!でも、今までのループで一度だってうまく行ったことはないの!」
「あらぁ~
…まどかちゃんを助けるのだって、うまく行ったことはないんでしょぉ?」
「何が言いたいの八雲みたま!」
「別にぃ~。」
「…調整屋が言いたいのは、マミを助けられないのにそこのピンクを助けられるわけねえってことだろ。
あたしは一人でもマミを助けに行くさ。」
「どうやってよ。」
「あたしは…
…マギウスに潜入する。羽根になってな。」
「杏子ちゃんダメだよ!マミさんみたいになっちゃう!」
「もしマミみたいに洗脳されたら、そうだな、そんときゃアンタたちに何とかしてもらうさ。じゃあな。」
「じゃあなって…アイツ…」
「佐倉杏子…
…いいわ。
まどか、さやか、私も、魔法少女としての先生を失いたくない。」
「ほむらちゃん、ありがとう。」「ほむら…やっぱりいい奴なんだね。」
―*―
私は、調整屋。
私は、この破壊しつくされた王都と同じように神浜を破壊するために、するために…
…でも、仲良くなったみんなまでは、破壊できないわねぇ…
…でも、私は調整屋。
中立を、破るわけにはいかない。
「やあ、そろそろ動き出さなくちゃだから調整に来たよ。」
「ねむちゃん、いらっしゃぁい~」
―*―
俺たちが強くなることは、マギウスの狙いの一つらしい。
それでも、俺たちは。
立ちふさがるすべてぶっ潰して、香織たちと日本に帰る!
―*―
「なあ、龍太郎。」
「なんだ光輝」
「俺は、恵理を、守れなかったんだな…」
「…みたいだな…」
「恵理をまだ守りたいって、言っていいと思うか?」
「わかんねえ。
でも、もっと強くなればいいんじゃね?」
「強くたって恵理の心は」
「だから、心も強くすればいいんだよ。」
「はは、なんだそれ。龍太郎らし過ぎる。
でも、なんか道が見えたよ。ありがとう。」
「おお俺もうれしいぜ。」
「なあ、恵理。」
「…なに、光輝くん。」
「降霊術、使えるんだよな?」
「うん…絶対使わないけど。」
「…そこを曲げて…
…俺が、俺が今度こそ本当の勇者になるために、誰かを降霊させてくれないか?」
「は?…勇者にって、また、あの女どもの?」
「違う。
恵理のだ。信じてくれ。
…さすがに、あの12年の記憶はきつかった。」
「…光輝くん、やっと、やっと、わかってくれた…」
「俺は、恵理だけの天乃河光輝にはなれないし、トータスすべての勇者でもなくなった。
だからせめて、恵理だけの勇者にしてくれ。」
「…あはっ、わかった。
でも、この世界の英雄はエヒト側か性格に難があるかだから…
…鈴にも、手伝ってもらわないと。
赦して、もらえるかな…」
「いけるいける。なあ光輝。」
「俺も、いっしょに頭を下げるよ。」
「うん…それなら…
光輝くんに勇者を教えてくれる英雄、だよね?
できるとすれば、魔法少女たちが通るミラーズから降霊術で神浜世界に干渉して引っ張り出すしか…」
「恵理、頼む。」
「もちろん!」
―*―
「なあ姫さん。」
「何でしょうか…あ、そう言えば、樹海に向かうとおっしゃってましたよね!私もついて行き」
「それなんだが方針変更だ。
樹海で味方を拾って、それから帝都に行く。」
「て、帝都に?それでは私も連れて行ってください!」
「ああ。ただあんまり時間はないぞ。待ち合わせしてるんだ。」
「待ち合わせ、ですか?」
「ああ。だから、同乗していくだけなら乗って行け。」
「はい!」
―*―
「そろそろ、南雲さんたちと帝都で待ち合わせした日ですね。
始めましょう、やちよさん…
『ウワサを消すツアー』を!」
「そうね。
マギウスに入った鶴乃とフェリシアとさなを連れ戻すために、まず、ウワサをつぶして羽根を吊りだすわよ!」
「そうだな環くん、七海。
神浜の西のウワサがトータスの王国のウワサなら、東のウワサは帝国のウワサ、大東のウワサは帝都のウワサか、面白い。
あちらと呼応できているのだな?」
「ええ。両方の世界から攻めて、確実につぶすわ。」
「行きましょう、やちよさん、十七夜さん!」
「ええ、いろは!」「自分も、臨時でチームみかづき荘に加わらせてもらおうか。」
※香織の身体は無事。まあ魔物肉食べてるしうんたらかんたら、例え心臓を刺されてもどうにかなっただろうし。
※どうしてユエたちがホーリーマミに勝てないのか?もちろん地力(マミは転移しながら数万発のマスケットを連射している)もある(これだと攻撃側のマミは圧倒的に有利)が、一番の理由は魔力を使い切るとソウルジェムが汚れてドッペルが出るから。すなわち魔力無尽蔵。