ありふレコード ー いつかありふれていた魔王と異世界×魔法少女みたま☆マギカ 作:十二の子
1つ、マギウスの指示により、「神の使徒」ノイントの関係者誘拐が始まる!
2つ、フェントホープ内外で、チームみかづき荘はマギウスの羽根を破り、マギウスへ迫る!
そして3つ、概念魔法を理解したハジメたちがフェントホープに向かおうとしたところ、ノイントが迎えに来るも、これを瞬殺!
―*―
ズドン!
轟音とともに、パレス・フェントホープの大広間の扉がはじけ飛んだ。
両側に檻、奥に豪奢な祭壇と玉座、そしてその向こうの開け放たれたテラスにはイスが3つ並び少女が背を向けて座っている。
ハジメ、香織、ユエ、雫、優花、シア、ティオは、まず檻へと駆け寄った。
「パパぁーー!」
「あなた!」
「皆さん!」
ミュウ、レミア、愛子、リリアーナ、そして生徒たちとハジメたちが口々に言葉を交わす。
一方で、みたま、そしてやちよ、鶴乃、フェリシア、まどか、マミ、さやか、杏子は扉が開くなり一歩も動けなくなっていたし、ほむらに至っては真っ蒼になっていた。
「何…この穢れ…」
魔女結界なんて目ではない。
あふれ出す穢れは、ソウルジェムにダイレクトなプレッシャーとなって働きかけてくる。
ーどこかに、ワルプルギスの夜にも引けを取らぬ超弩級の魔女がいるー
魔法少女ではない人間が、調整を受けていない生徒たちですら無事と言うことは、つまりその魔女は、対魔法少女専用ということだ。
その時。
テラスに座る3人が、椅子を回転させこちらを向いた。
「よく来たね、南雲ハジメ、暁美ほむら、七海やちよ。歓迎するよ。」
「わたくしたちの話を、聞いてほしいのにゃー。」
ワルプルギス戦を幾度も生き延びたほむらをして気圧されるほどの濃い穢れの中で余裕でいる3人の魔法少女ー里見灯花、柊ねむ、アリナ・グレイを見て、誰もが異常だと思った。
ハジメが、小銃を構える。
「せっかちだにゃー…」
「僕たちはただ、平和に話を聞いてほしいだけなんだけどな。そうしたら、僕たちの目指す解放の意義、そして、どうしてそれに大迷宮とウワサをクリアした勇者が必要だったのか、理解することができると思うんだけどね。
そう思うよね?アルヴヘイト様も。」
「まったく、その通りさ。」
玉座の後ろに隠れていた金髪紅眼の偉丈夫が、そう応えながら玉座の上にある宝石を手に座るーその時になって、誰もが、それがいろはのソウルジェムであると理解した。
「久しぶりだね、私のかわいいアレーティア。
マチビト馬に託したメッセージは、受け取ってもらえたかな?」
「…う、そ…どう、して…」
「どうした、ユエ?」「ハジメくん…調整で読んだのよ。『アレーティア』は、もはや失伝した、ユエの本名よぉ!」「何…」
「むふっ、青天霹靂、といった塩梅だね。刺激が強すぎたみたいだよ姪殿にとっては。ねえ、ディンリード?」
「無理もない…私はユエのように先祖返りではないから、不老不死は得られないからね。一度死んでいることは認めよう。普通にしていればとっくの昔に息絶えてることも認めるよ。だけどね、アレーティア。私には2つ、奇跡が起こったんだ。」
「おい、奇跡には代償が伴うって説教したばかりなんだ。アンタがいったいどんな代償を払ったのか、あたしの頭でもわかるように説明してくれ。」
「なるほど…佐倉杏子くん、君は魔法少女になる願いで家族でも失ったかな?
君たちが疑うのも最もだ。だが、順を追って説明するから私を殺すのは少し待ってくれないか?まず、最初に答えるのは……アルヴとは確かに私であり、同時に私ではないとも言えることだ。」
「どういう意味で、それがどうして今いろはのソウルジェムを握っていることにつながるのか、説明しなさい。」
「説明の時間をくれるとは、諸君の寛大な心に感謝をするよ。さて、アレーティアに、勇者や魔法少女の皆。まずは君が、いや、君たちが疑問に思っているアルヴヘイトのことからだ。」
「これについては、僕たちがここにいる理由を絡めて話したほうがいいかもだね、灯花。」
「ねむの言うとーり!
だから、わたくしたちがここに来た理由、そして、わたくしたちがここで聞いたことを、順番に語っていくね。」
―*―
「この世界と神浜では、魔法少女は魔女にならない。知ってるよね?」
「それこそが、僕たちがこのパレス・フェントホープで飼っている『半魔女』エンブリオ・イヴのもたらした、魔法少女の解放なんだ。」
「そもそも、あなたたちはキュゥべえの本当の目的すら知らない。
でもね。
わたくしとねむはね、実際に、キュゥべえから聞き出したんだ。」
「キュゥべえ、から…?」
「とーっても面白い話だったよ。
キュゥべえは、人間も知らないテクノロジーを持つ、広大な宇宙で文明を築いた存在の端末で、ある目的を持っていたんだ。
それは女の子の願いをかなえることでもなく、魔女を狩ることでもない。」
「むしろ、エヒトと同じことをしていたんだ。エヒトはそうしていると理解していなかったけれど『宇宙を救う』ことをね。」
「宇宙を、救う、だと…?」
「うん!
この宇宙で起きているすべての事象は、熱力学第二法則に従って、常に宇宙全体のエネルギーをロスさせている…って言ったら、高校生のお兄さんお姉さんたちはわかるかにゃー?」
「熱力学第二法則?エネルギー?何の話?」
「キュゥべえ…インキュベーターによれば『焚火で得られる熱エネルギーは木を育てる労力と釣り合わない』ってことだね。その釣り合わないロスが蓄積すると、宇宙はいずれエネルギーを失って、いわば老化し、死んでしまうんだ。」
「その老化を抑えるために活動しているのがキュゥべえなの。」
「みたまさんたちは、魔女を倒すための存在じゃ、ない…?」
「そ。
もっと聞きたくなったでしょー?くふふっ」
「否定はできないな。魔女を狩る存在が魔女になってちゃ割に合わない。
…でも、魔法少女を創るためのエネルギーより、魔法少女が終わる時までに得られるエネルギーが多いってことか?」
「うんうん、さすがれんせーし!いい着眼点だね!そのちょーしで、どこからロスを補ってるのか考えてみよー!」
「…魔女化のエネルギー、か?」
「だいせーかい!
キュゥべえはね、熱力学第二法則に縛られないエネルギーを見つけたんだ。
それが、知的生命体の感情。喜んだり落ち込んだり驚いたり、人間が感情を発生させるときのエネルギーはね、生まれて死ぬまでに必要なエネルギーより、はるかに多いんだよ。」
「実を言うと、私と、私の記憶を見たまどか、さやかは、そこらの話を知っているのよ。」
「そう?じゃあ、ちょっと暁美ほむらにバトンを投げてみるワケ。」
「一番、感情の振れ幅が大きくエネルギーを集めやすいのが第二次性徴期の女の子。
私たちが希望から絶望に振れて魔女になる瞬間、大きなエントロピーが生まれる…飽きるほど聞いてきたわ。だからこそ、魔法少女と魔女って言うサイクルを作って、感情の相転移が起きやすいように気持ちを揺さぶってきたって。」
「そ、いい解説なワケ。
こうして見ると、一概にエヒトを責められないヨネ。だって、このトータス宇宙のロスしちゃったエネルギーを補ってきたのは、エヒトが遊びの中でもたらした戦争、その中で生まれるたくさんの大きなエモーションなんだカラ!
みんなの勝利への希望と敗北の絶望が、この世界を維持してきたワケ!アッハ。」
「でも、わたくしたちは、それじゃいけないと思ったんだ。
だから、イヴがドッペルを創り出して、アルヴヘイト様がエヒトからトータスを解放するのを助け、そしてわたくしたちマギウスは見返りにキュゥべえに成り代わらせてもらうんだよ。」
「キュゥべえに、成り代わる?」
「もう、僕たちの固有魔法は、知っているよね?
灯花が『変換』、この僕が『具現』、アリナが『被膜』、そして君たちにまだ姿を見せていない魔女イヴが『回収』なんだ。
もう、お分かりかな?」
「『被膜』神浜の中でイヴが『回収』で穢れを集め、灯花が『変換』で魔女ではなくドッペルにし、ねむがエネルギーを『具現』で宇宙に送り出せば、キュゥべえと同じ…ってか?」
「そーそー。さすがイレギュラー、よくついてくるね!
わたくしたちとしては、イヴを完全な魔女にしたかったんだにゃー。そしたら地球のすべてで奇跡が実現されて、いずれ魔女も絶滅してみんな平穏。
わたくしは人類何万年かけても知れないような宇宙の全てを知ることができ
ねむはあの地球そのものを原稿としてあらゆる物語を具現化でき
アリナは自身のアートワークを永遠の生の象徴として君臨させ、宇宙規模のアートにソウルを委ねることができ
そして魔法少女は救われてみんなハッピーハッピー…」
「そのために僕たちはウワサと魔女で穢れを集めてイヴを育てようと思ったんだ。
だけど、キュゥべえの邪魔が入らないようにアリナが神浜を被膜で覆った時に、異変は起きた。
エヒトが知らぬ間にトータスに張っていた似たような被膜。それが、ミラーズを通じて、平行宇宙を超えてつながってしまったんだ。」
「アリナも、最初は何事かと思ったワケ。
だけど、そこにこの神様は現れて、言ったんだヨネ。
『別の宇宙から来て計り知れない力を持つキミたちなら、我が主エヒトを倒せるかもしれない。』ってネ。」
「アルヴはずっと、エヒトの行為に、眷属でありながら疑問を持っていた。
いつか叛逆してやろうと思っていたおりに地上で同じく疑念を抱いていたディンリード、つまりこの私に出会い、それ以来、地上からエヒト神に対抗するため、1つの身体に2つの魂で魔王として戦争をわざと激化させ、イレギュラーを捜してきた。それが、アルヴであってアルヴでないという言葉の意味だよ。
いろいろ、私の中のアルヴに助けてもらい、エヒトに対抗する方策を捜してきたが、いまいちだった。そんな中で現れたマギウスは、私とアルヴにとって救いの光だったさ。」
「他の並行世界にも介入できる神さまエヒト。それをイヴが食べちゃえば、神浜とトータスに広がる奇跡を、あらゆる並行世界に広げることができるからね!」
「そうなれば、それはもはや魔女じゃない。神の権能を得た魔女…さしずめ、魔神と言ったところかな?むふっ。」
「そのためには、エヒトを少しでも弱らせられる勢力、つまり大迷宮を制覇して概念魔法にたどり着いたヒーローが必要だったんだヨネ。」
「最初はわたくしたちが概念魔法を使うつもりだったけどまともに使えないしにゃー。そこで、エヒトが勇者を召喚したと聞いて、ウワサも上乗せして試練にチャレンジしてもらえばエヒトに勝てるよーになるかなと思ったんだよね。」
「途中で、暁美ほむらたちをはじめとした不確定要素に対抗するためにイヴ自身の強化を迫られたけどね。
でも、それも環いろはのソウルジェムを食べさせれば、おしまいだよ。これで、僕たちの理想の世界が出来上がる。
さあっ!」
―*―
カチリ
「二葉さな、これを使いなさい。」
「わっ…ほむらさん、気付いてたんですか!?それに、これ…」
「空っぽの『使徒』よ。この動力部に、あげた髪飾りをはめてみて。」
「は、はい…」
カチリ
―*―
アルヴヘイトが、いろはのソウルジェムをかかげたその時。
|言ったはず。傷つけることは何人たりとも|▶許しませんよと。
清涼な声とともに、虚空から現れた人影が、アルヴヘイトの右腕ごとソウルジェムを奪い取った。
そして次の瞬間、ハジメがバルカン砲の砲身をアルヴヘイトに向け、玉座ごと粉砕する。
「ハ、ハジメ…?」
ユエが、突如として恋人が叔父を粉砕したことに呆然とする。一方で万年桜のウワサ、そして緑髪になったノイントーあらため名無し人工知能のウワサ「アイ」は、さなの透明化で隠れていたいろは、さな、みふゆのもとへ駆け寄った。
|いろは、いろはの命。|
▶さな、また、会えましたね。
「みふゆ…」
再会を喜ぶ魔法少女たちの一方で、ハジメたちの間には重苦しい空気が流れていた。
「ハ、ハジメさん!?」「ちょっ、何してるのハジメくん!?」
「…さんざん魔眼でソウルジェムを見てきたんだ。気づけないわけないだろ。
俺には一つの薄汚い魂魄しか見えなかった。まるで、蜘蛛が張り巡らせた巣のように肉体を侵食している魂魄しか見えなかった。」
「え、じゃあ…」
「アレは、アルヴヘイトがディンリードの抜け殻にとりついただけってことねぇ~。」
その一言で、無数の攻撃が玉座があったあたりに降り注いだ。
アルヴヘイト宿りしそれは、もはや血肉のかたまりでしかなくなっている。
「バッドなワケ…ウィーク過ぎ。」
「そこまで言われる筋合いはないが…
せっかく、こちら側に傾きかけた精神まで立て直させてしまいよって。次善策に移らねばならんとは……あの御方に面目が立たないではないか。」
それでも、肉塊はゾンビのごとく立ち上がる。
「あなたは、叔父様でも何でもない。
もう、終わり!
死んで!」
肉塊の正面に立ったユエが、右手をかざした。
膨大な魔力が、まさに放たれようとしたその瞬間。
灯花、ねむ、アリナがニヤリとし。
ーそして、光の柱が天空より来たりてユエを包み込んだ。
ありふれ原作を御存じの方なら「マギウス、黒幕ぶってるくせに騙されてんじゃねーか」と思ったと思います、はい。
そしてここでアイちゃん復活!この展開にしたくて「魂魄魔法でアイちゃんの魂をSAOユイのごとくオブジェクト化・原作では香織に使われる分のノイント肉体確保」の伏線張ってました!