ありふレコード ー いつかありふれていた魔王と異世界×魔法少女みたま☆マギカ 作:十二の子
1つ、エヒト、ソウルジェム化。ユエ救出!
2つ、イヴからういが救出された!
そして3つ、魔女化を開始したエヒトの力を手に入れ始めたイヴが魔神化!
―*―
宙に浮かぶイヴの中で、エヒトルジュエは、半分魔女になりかけた醜い魂ながらも、消化されまいと力を振り絞りー
ーそして、たまたま毛の間に挟まる1枚のミラーズコインを見つけた。
「エヒトルジュエの名において命ずるー」
コインに魔法を付与し、投げる。
「ー『その欲望、解放しろ』!」
それは、被膜を維持し続けていたアリナ・グレイに、スパッと入った。
「アハッ」
アリナが笑う。
「そーだヨネ。
アリナの目的は、魔女を絵筆に、この世界をアートで埋め尽くすこと!
だカラ、破壊、滅び、人類が無意識に求めるアートを今体現して見せるワケ!」
ーアラもう聞いた?誰から聞いた?
死と欲望の毛皮神のそのウワサ
万物に訪れる最期!それ故に誰もが最期を夢見て最期を目標とするヨネ!
だカラこのウワサを着こんだが最期、ポカポカ心は楽園へ!
来た者の罪と引き換えに世界のすべてをゴールに導くって
アリナ・グレイの間ではもっぱらのウワサ!
アートワーク、イズ、ビッグバン!ー
白いマント、背中からは6本の鹿の足、そして頭から血のように流れだした絵の具は顔面を染める。
周りに浮かぶデスマスクが禍々しい。
「このウワサは寿命を奪い、相手が魔女であれば自由を奪うワケ。
さあ、アリナがイヴの自由を奪うカラ、アナタはイヴを手に入れて、全てをアートにしてヨネ?」
「ちっ…ウワサの自由がアリナに奪われていて、削除できない…
…いろは、灯花、みんな、これは、ウワサを生み出した僕の責任だ。
概念魔法『解放』」
ねむが、手に持っていた本をかかげ、両手で引き裂く。
「概念魔法なんてアリナには要らないヨネ!だって誰もが滅びと最期を望む『究極の意思』を持っている!
だカラいつでもこの世界は滅びという概念魔法の中にあるワケ!
エヒトが今やすべてを滅ぼそうとしているのもその通り!
飽きては次のおもちゃに移る子供のように、エヒトは世界を壊しては次の世界に移っていく!だとしたらそれって滅びそのものだヨネ!そう、創世神こそ滅び、これこそが世界の真理であり全人類の希求なワケ!
感謝してヨネ!」
ねむの本のページが飛び散り、舞い上がり、数百枚のページのすべてが手下級のウワサとなってアリナを襲った。
「違う!
病室から出て分かったことだってある!
そんな言葉で一言で語れないほど、一冊の本ですべてを記せないほど、僕たちの願いと世界は、どんな奈落の底でも生きて前に進もうとする人間の力は豊潤だ!」
アリナのドッペルと、ねむのドッペルは、正面から激突した。
無数のウワサが、アリナを竜巻のように包んで襲い。
万物を滅びで魅了する病原テンペラが、ねむを呑み込む。
白煙が、全てを包み込んだ。
ねむとアリナが倒れる影。
ハジメが、致死の霧へ飛び込み、そしてアリナから剥がれたウワサへアッパーカットをかまして消滅させ、アリナのソウルジェムを持ち去る。
「チェックメイトだ、アリナ・グレイ。」
「アハッ、もう、遅いワケ…
…良き、終末を」
チャリン。
ミラーズコインがアリナから飛び出し、砕け散ったー
ー欲望は、すでに果たされた。
「ワハハ、最後に勝つのは、我、エヒトである!」
「エヒト様、さすがでございます!」
アルヴヘイトだけが、それをたたえる。
宙に浮かぶは、巨大な魔女「エンブリオ・イヴ」にして、創世神エヒトルジュエ。
「そうだろうアルヴ。
だがまだ落ち着かん。
そこでだ。」
「なんでしょう?」
5本指が、アルヴヘイトやフリード、ノイントの群れをつまみ上げた。
「我が糧となれ。」
ぐしゃりと、アルヴヘイトや、フリード、使徒たちが指先でつぶされる。ハジメですら、息を吞んだ。
イヴの背後に、巨大な空間ゲートが出来上がる。
「ふむ、まだ安定しない、か…
我が定着の暁には、全てを破壊し、次は貴様らの世界を、1つずつつぶしてやろうぞ。魔法少女の世界に伝わるところの最強の存在『ワルプルギスの夜』によってな!
3日くれてやろう。じっくり味わうがいい。」
「待て、エヒト!」
ハジメが駆け寄るその先で、イヴは無情にもゲートの向こうの異空間へ消えた。
「そんな…
…いくら私たちが強くなってたって、イヴに『ワルプルギスの夜』だなんて…」
ほむらが、どさっと崩れ落ちた。
―*―
3日後、伝説の魔女「ワルプルギスの夜」が、イヴエヒトに連れられて現れるー
「で、その『ワルプルギスの夜』とやらはなんなんだ?俺たちだけで行けそうか?」
「南雲ハジメ、甘く見過ぎよ。
私が、何度あの1か月を繰り返しても、ワルプルギスの夜に傷一つ付けることができなかったんだから…」
「そうね。
結界を持たず、無数の使い魔を伴い、文明を根こそぎひっくり返す最悪の魔女。それが『ワルプルギスの夜』よ。これだけの魔法少女、そしてあなたたちのような概念魔法持ちの『勇者』でも、太刀打ちできるかどうか…」
「またトータスを被膜で包めば、魔女の弱体化はできるかもしれないけど、さすがのわたくしでも今アリナに頼み事する気にはなれないにゃー…」
「それだけのものを召喚しようってか…それなりの対策を取らなくちゃだな。」
「そもそも、おかしいと思ったのよ…
…なんで、見滝原中に転校してから1か月の間にワルプルギスの夜が出現しなかったのか…
予定調和的に決まってたからじゃない…
今からでも、元の世界に戻れば…」
「それは、たぶん、無理だと思うわぁ~。だってエヒトは『世界を1つずつつぶす』と言っているのだから。」
「それじゃあ、私がまどかのためにループしてきた世界全てを…!?」
「さすがにまどかちゃんの魔女『クリームヒルト・グレートヒェン』がいる世界に行ったら倒されちゃうでしょうけどぉ~。」
「みたまちゃん、それ、世界を滅ぼしてる魔女なんだよね?さすがにハイリスクじゃないかな?かな?」
「香織の言うとおり、いくら何でも毒を以て毒を制すわけには行きそうにねえな。
ってことは、トータスで何とかするしかないってことか。
みたま、武器は俺が錬成で何とかする。調整を頼めるか?」
「もちろんよぉ~。それに、概念魔法で1度戻って、縁がある魔法少女に助けを求めたいんだけどぉ~?」
「ああ、そう言われると思って作っておいた。
世界の隔たりを無視して望むところへ行けるアーティファクトだ。まクリスタルキーとでも呼んでくれ。」
「いいのぉ?これ、香織ちゃんと作った大事なアーティファ」
「みたま、お前も、大事な仲間だろ?それに…
…お前ら魔法少女が俺に勇者の役目を押し付けたんだ。もう、後には引けないさ。
それだけの力を、持たせられちまった。俺がやらなきゃ誰がやる、だろ?」
「ほんと、変わったわねぇ…」
―*―
すべては、急がれた。
3族全国家の団結は、ただイヴエヒトとワルプルギスの夜を迎撃するためだけではなく、姿を現したキュゥべえとの契約者が出ないようにするためにも必要だった。
一国の因果が集まる王女であるリリアーナでも、「エヒトを消してほしい」という契約は「キミの因果量じゃとても無理だ」と言われてしまった。一方でアリナの例で分かるように、天秤を滅びの方向へ傾かせる願いは容易。ならば契約を誰にもさせてはならない。
そんな中で、香織は、オルクス大迷宮に向かったユエやシアのことを思いながら、王宮で夜風に吹かれていた。
「キミかな?ボクを呼んだのは。」
「うん、そうだよ、キュゥべえ。」
「白崎香織、いや、もう、南雲香織と呼ぶことになんの支障もないのかな?残念だけど既婚者から得られるエネルギーは少ないから契約はお断りさせてもらうよ?
キミにはなぜか膨大な因果が絡まっているんだけど、もったいないよね。どうして人間は、貴重なエネルギーを、成長、まして恋愛なんてことに浪費するんだい?」
「感情がないあなたたちには、永遠にわかんないんじゃないかな?」
香織は思わず対エヒト用の概念魔法をキュゥべえに使いそうになった。しかし、まだ懸念はあるから、あえて言葉だけで済ませる。
「そうかい?まあわからなくても宇宙は生き続けるから別にいいんだけど。
それより、ボクになんの用かな?」
「もしかして、エヒトに力を授けたのは、あなたたちインキュベーターなんじゃないかな?かな?」
「どうしてそう思ったのかな?一つ聞かせてはくれないかい?」
「だって、イヴがエヒトを食べた時に、アリナがイヴの自由を奪うまで、神様を謳うのに押されっぱなしだったよね?あなたと契約してすら。
魔法少女の力は、エヒトの力より本質的に上にあるんじゃないのかな?かな?」
「その通りだよ香織。
ボクたちは感情からエネルギーを生み出す。その時に、文明が発展して複雑化していたほうが、感情の振れ幅が大きくなってより多くのエネルギーを得られるんだ。
だから、ボクたちインキュベーターは時により、文明の発展を後押しする。例えば、寒さに震えている十数万年前の人類の少女に『火を扱う方法を知りたくないかい?』と聞いて、人民の労苦をいたわるある数万年前の王女には『誰もが魔法を使えるようにしたくないかい?』と聞いて、魔法の才能がないことに悩むある少女には『魔法をもっと体系的に概念・神代・普通とわける分類を生み出せば魔法を理解しやすくなるよ』と提案してきたんだ。」
「そうして、ずっとトータスの人をだましてきたんだ。」
「ボクのおかげで今キミは魔法を使える。どこに文句があるんだい?わけがわからないよ。
だけど、2つの願いを叶えたのは、失敗だった。」
「2つ?」
「ずっと昔に、争いを終わらせようとしているある少女が『世界を1つにまとめる力になれる人たちを異世界から呼んでください』と願って契約したんだ。そのせいで来たのが」
「エヒト…」
「それに、キミたちが『神の使徒』と呼ぶ銀髪の天使だね。
彼らは最初、希望に満ち溢れて、世界を平定しようとした。だけど戦場にあふれる憎悪に押しつぶされたんだ。
そして、最後に残った少年と少女に世界の因果が集まったころに、少女は願った。『少年を絶対の存在にしてくれ』とね。
その結果、神エヒトが生まれた。だけど、神を創る、神より優れた少女は、その代償に魔女化してしまったんだ。」
「もしかして、エヒトが逃げていったのって…」
「『神域』だなんて本人は言っているようだけれど、ボクからすればあれは魔女の結界に他ならないね。
魔女はエヒトよりすさまじい力を持っているべきだけど、『エヒトを絶対の存在にする』という願いによってそれは許されず、魔女はエヒトと同化した。そして残された魔法少女の肉体を手本にした使い魔は『神の使徒』として、愛する人を否定する存在を分解して回る存在となったんだ。
その過程で、万が一にも他に神様を生み出せるかもしれないボクたちインキュベーターも、エヒトの絶対性を維持するために、この太陽系第三惑星からはじき出されてしまったんだ。
そして、人々の信仰心を因果にエヒトはその絶対性をどこまでも高めていった…だけど、それももうここまでだったね。キミの目は愚かしくもかつての少女と同じだから。
ボクはもう行くよ。キミたちはやがてボクと等しくなるだろう、が、宇宙の維持には興味がないらしい。その時に愚鈍なキミたちは、どんな風に世界を破壊する?未来はキミたち次第だ。」
キュゥべえは、いつの間にかホログラムとなっていた。その写影は果実をくわえるヘビであり十字架であり法輪であり「資本論」第一版でもある。
「待って。」
「何だい?」
「あなたが、諸悪の根源ってことでいいんだよね?」
「はあ…どうしてキミたち人間は原因を捜すことにこだわるんだい?
ボクがどうするかに関係なく南雲ハジメは生き抜き力にたどり着いただろう。
本星の超演算機に頼るまでもなく、今から起きることはただ、エヒトに南雲ハジメが成り代わるだけだと予測できるよ。
神から魔王へ。パラダイムをシフトさせるのはいつだって少女の願いと紡がれた祈りの因果で、歴史は繰り返す。
そして、ボクたちを拒み続ける自分勝手な最強にして絶対的なる道化によって、この星の文明レベルは永遠の停滞を甘受することになるんだろうね。
キミたちが自動浄化システムの概念魔法を完成させたらボクたちはまたこの星で活動できなくなり、この端末分のエネルギーが無駄になる。そうなる前に退散して、後はアリナ・グレイが予測したとおりの緩慢な滅亡へと導く主の交代を、本星から見守らせてもらうよ。」
「そっか。
そうなんだ。」
香織の表情は、どこかすっきり、つきものが落ちたかのようであった。
背後、王宮の屋根の上では、いつ昇ってきたのか、いろは、灯花、ねむ、うい、まどか、ほむらが座って見守っている。
「今まで、ありがとうね?」
「お礼を言われるのは初めてだよ。ボクらこそ、礼儀としてエネルギーのお礼を言わせてもらうよ。」
そして、香織は、フューレンでみたまに止められてから一度もしなかったことを、初めてした。
「うん。
概念魔法『我、汝の絶対なる死を望む』」
「なにをすー」
ーこの日、広大なるトータス宇宙の遥か彼方のある遊星エデンから、灯が消えた。
これでもかとライダーネタを放り込み、さらにゴーバスターズ的場面も混ぜていくスタイル。
※キュゥべえの預言じみた発言は、ある意味で原作ハジメを意識しています。ここで香織がキュゥべえを呼ばず、最終決戦で負けて「お願い、キュゥべえ、ハジメくんを『世界最強』にして」と願ったらば…
そして、 ト ー タ ス か ら イ ン キ ュ ベ ー タ ー 滅 亡