ありふレコード ー いつかありふれていた魔王と異世界×魔法少女みたま☆マギカ   作:十二の子

34 / 38
 ありふレコード 前回の3つの出来事!

 1つ、イヴの自由をホーリーアリナが奪ったことで、エヒトが逆にイヴを乗っ取った!

 2つ、エヒトは3日後「ワルプルギスの夜」を召喚、全ての世界で順繰りに遊んでいくことを宣言!

 そして3つ、対イヴエヒト・ワルプルギスへの戦準備が進む中、香織により、インキュベーターが滅亡した!


28 黙示の災典

―*―

 

 その日、神山の上空には、台風のような雲の渦がグルグル回っていた。

 

 無数の赤黒い光が、地上へと差す。

 

 ③

 

 ②

 

 ①

 

 アハッ、ハハッハハッ!

 

 アーッハハハハッ!

 

 それは、ハジメが発射した100本ものトマホークミサイルを受けても、平然と爆炎の中から姿を現した。

 

 地上を包む嵐が上空の雲に吸い込まれ、一層濃さを増した雲によって下界は新月の夜よりもなお暗い。

 

 地上にいつの間にか現れた、ピンクのプードルに乗る役者「アオハナ」と赤と黒の長耳の者「アカハナ」。そして、雲の中から降り注ぐのは影絵の少女たち。

 

 アオハナアカハナは、宙に浮かぶそれの首につないだ綱を、皆で引いている。

 

 そして、使い魔闊歩する神山の上空で、台風の目から降臨するのは。

 

 足がなく土台にした歯車に刺した串の上に乗る黒ドレスの魔女。それが逆さまで浮かび、歯車を回している。

 

 その大きさは少なくとも300メートル。心なしか少しずつ大きくなっている。

 

 「アレが…」

 

 ーワルプルギスの夜。

 

―*―

 

 エヒトは、歓喜していた。

 

 マギウスがもたらしたほどの愉悦とスリルをトータスで味わうことはできそうにない。

 

 しかし、ワルプルギスの夜の力を得て次なる世界次なる世界へと飛んでいくのだ。

 

 もはや、邪魔するものなどいない。ワルプルギスの夜だけでも、本気を出せば王都は根こそぎひっくり返り、無謀な勇者も魔法少女もかけらも残されず、涙だけが後に残るーああなんと愉快!

 

 「紳士淑女の皆々様

 

 虫けらと 野良猫たち

 

 是非とも 永久に お立ち寄り

 

 幾時代かは弄び

 

 星の因果が世界に報う。

 

 尻尾の記憶も宛てにはならぬ

 

 万世 織り続く 一大戯曲。

 

 神威は今にも拝まれよ

 

 サァサァ 壊せ

 

 天地はすべて 歓声の虜」

 

 戯れに、エヒトは唄う。

 

 そして、世界を巡る万象の破壊者となるため、神域の扉を開いた。

 

 「エヒトルジュエの名において命ずるー『我の物となれ』」

 

 アーッハハハハッ!

 

 アオハナアカハナの行進が止まり、エヒトに謁見するかのようにして勢ぞろいする。今も行われる外側からの火力投射は、まったく効いていない。

 

 神域から空間に亀裂を作りすべてを不快にきしませて現れたそれは、赤黒い深淵である神域にそぐわないほど白く。

 

 エンブリオ・イヴは、羽をはばたかせ、まるいおなかを膨らませ、ワルプルギスの夜に近づく。

 

 アハハ!

 

 影絵の少女たちがイヴを攻撃しようと迫る。

 

 「エヒトルジュエの名において命ずるー『従え』」

 

 その一言で、影絵の少女たちは動きを反転させ、ワルプルギスの夜に攻撃の矛先を変えた。

 

 それでも、最強最悪の魔女は笑い続けるーそうすることが役割だから。

 

 そして、イヴは、ワルプルギスの夜の背中にぶら下がった。

 

 歯車の回転が止まり、蛾のクセに顎を開いて開けられたイヴの口へと入っていく。

 

 その時だった。

 

 ワルプルギスの夜は、無造作に、神域の入口へとその長い手を突っ込んだ。

 

 赤黒い魔力がワルプルギスの夜へと吸い出され、まるでハジメたちが初めて魔物肉を食べた時のように、赤黒い筋がドレスに走る。

 

 雲が降下して、竜巻の渦となって、イヴへと舞い降りる。

 

 無数の竜巻がイヴを呑む。

 

 「何をする!?我に従えと言っている!」

 

 ーワルプルギスの夜の本名は、今まで誰にも知られてこなかった。どんな因果のどんな魔法少女のどんな願いがあれば文明を消し去るような魔女になるのか誰にもわからなかったからである。

 

 「舞台装置の魔女、その性質は無力」。

 

 ワルプルギスの夜は、今まで、何もしてこない無力な魔女に過ぎなかった。

 

 ただ存在するだけですべてが戯曲となる悲喜劇の舞台装置。

 

 故にそれは、世界という舞台に存在するあらゆる役者をして阻むことのできない、絶対の舞台装置ーワルプルギスの夜であり続ける。

 

 「ぐあっ!

 

 この程度の力で、我が、なぜ!?」

 

 とうとう、トータスに現存していた最後の魔女結界「神域」が吸収され消え去る。

 

 「ありえん、ありえん、ありえんぞっ!

 

 我は、絶対にして、至高にして、永遠の、神エヒトルジュエなるぞぉぉぉ!」

 

 アハッ、ハハッハハッハハ、アーハッハハハハハハ、ハハハ、アハッ!

 

 ただ、笑い声だけが…

 

―*―

 

 ー舞台装置の魔神。その性質は全知全能。

 

 遊ばれ続ける遊戯の顕現。神話の向こうから現れた絶対の支配者。

 

 存在するあらゆる宇宙を虚無に帰してしまうまで無軌道に世界で遊び続ける。

 

 本来逆さ位置にある人形は上部へ来ており、自らを暴風の如き速度で飛行させ地表の文明でお手玉しようとしている。

 

 自らもまた、すでに存在しない誰かの道具に過ぎなかったことを直視できない限り、魔神の破壊はあらゆるレコードを無に帰しても止まらないだろう。ー

 

―*―

 

 「マジすか…」

 

 ハジメをして、言葉を失った。

 

 イヴがワルプルギスの夜を食べようとして使い魔どうしでも若干ずつ弱ってくれれば、だいぶラクになる。誰もがそう考えていたが予想は裏切られた。

 

 ワルプルギスの夜の背後の緑とピンクの重なり合う魔法陣が、分裂し、奈良大仏の光背のように展開していく。

 

 アオハナアカハナの姿も変わり、そしてそれは、哀れな少女ノイントの姿をしていた。

 

 舞う舞う影絵舞う。

 

 そして、頭が溶けるように、歯車がせりあがるように、ドレスが裏返るように。

 

 赤黒い無数の触手を生やしながら、ワルプルギスの夜は、上下を戻していった。

 

 エヒトルジュエなど、子供のおままごと、アメーバの歩み、ありんこの知恵自慢に過ぎなかったのだーそう思わせるほどの迫力を、それは持っていた。

 

 上下左右前後、それぞれ1キロを超える長さを誇る。

 

 どこからともなく湧き出す「シロハナ」は、魔女の首を引きパレードする役目から解放されて散らばっていく。

 

 踊り狂う影絵。

 

 それでも、少年少女は立ち向かう。

 

 「行くぞ!」

 

―*―

 王都を包囲するように、その大軍は現れた。

 

 魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物魔物

 

 世界の終局をもたらすシロハナの群団に、蟷螂の斧に過ぎないにもかかわらず、トータス中の魔物が立ち向かっていく。

 

 それは戦いではなく、質量のぶつかり合いだった。

 

 シロハナから発射されるのは、分解のビーム。もはや仕える主を持たない哀れなる抜け殻のそれは、魔物を消し去っていく。

 

 一方の魔物もまた、命などものの数ではないと、崖から飛び降りるレミングもかくや、消えるよりも早く後から後から殺到し、シロハナを噛み、踏みつぶし、王都を踏みにじる。

 

 ウルで果たされなかった夢を今果たしていることに、小高い山の上でその「勇者」はため息をついた。

 

 脇では、水晶玉を浮かべた美国織莉子が、シロハナや影絵の進行方向を預言して、「勇者」に指示を下し、そして呉キリカがその周りを油断なく警戒している。

 

 終末の日が訪れるという「救世の魔法少女」美国織莉子の預言がすべて正確に的中していることに、擁立された「勇者」清水幸利は畏れを抱きつつ、ふもとを見下ろした。

 

 「さあ、俺が地上の使い魔は引き受けた。

 

 魔女を、何とかしてくれよ…南雲。」

 

―*―

 

 擁立した主を失った道化の「勇者」もまた、戦っていた。

 

 清水幸利と美国織莉子が地上の使い魔を担当するのなら。

 

 天乃河光輝とその魔法少女の霊魂は、空中の使い魔を担当するのが道理である。

 

 「行くぞ恵理、龍太郎、鈴!」

 

 誰もがうなずく。

 

 ー相手は使い魔らしく見えるが、実はそうではない。

 

 舞台装置の少女 劇団「ソデ」「カミテ」「シモテ」「ツラ」「オク」「ドンチョウ」「マワリ」「セリ」…それらは、ワルプルギスの夜の膨大な魔力に引き寄せられて魔女の姿を失い魔法少女の影のみとなった、魔女の成れの果て。それゆえ、それぞれが魔法少女の力を持ち踊り狂う。

 

 「相手は俺たちより強い。だが、俺たちには俺たちの友情、そして恵理が下ろしてくれた魔法少女がついている!」

 

 恵理を中心にした三角陣形。

 

 龍太郎が拳で、鈴が攻性バリアで、攻撃してくる影絵を撃退していく。

 

 そして光輝の聖剣に、そっくりな幻影の中から伸びた手が持つもう1本の剣が重なった。

 

 [こんな重いモノを、虚像なんかに持たせるんじゃねえ俺。]

 

 「ああ、すべて俺が背負うさ。」

 

 [ふん。

 

 せめて、お前の手が届く人たちに手を伸ばせばいい。それが恵理から始まって世界中に伸ばせるほどの手になった日には、俺は、お前は、きっと勇者さ。]

 

 虚像が、融合していく。

 

 「聖剣よ、そしてエペ・ド・クロヴィスよ、我に力を…

 

 …天に至った護国の意思よ、万翔羽ばたかせ光をもたらせ『天翔閃・リュミエール』!!」

 

 2振りの剣が完全に融合し、雲のスキマから一瞬降り注いだ光が剣にこもったかと思うと、光が剣から伸びて30メートルはある光の剣身となった。それを光輝が振るうや、劇団「ソデ」が真っ二つにされ、揺らめいて消える。

 

 それでもまだまだ、影絵は15から14に減ったばかり。

 

 「南雲…せっかくなんだから、思いっきりやれよ。

 

 俺は、お前に託したんだからな!」

 

―*―

 

 そして、マギウスがエヒトのために擁立した勇者たちは。

 

 「「「「「『我、汝の絶対なる死を望む』」」」」」

 

 ハジメ、香織、ユエ、雫、優花は舌打ちしたーただ殺すだけの概念魔法ではなく、「最期」の意味を持つみたまの「メメントモリのドッペル」のイメージを載せた概念魔法であるにもかかわらず、ワルプルギスの夜はこゆるぎもしないー戯曲の舞台装置でしかないソレに生死があるはずもなかったのだ。

 

 だが、ここには、マギウスという組織を動かしていた世紀の天才がーそれも理系も文系も両方ーいるのだ。それしきのトラブル、バックアップできないわけが、想定に組み込まないわけがない。

 

 「これで、キミたち全員は誰かの死を明確に願い、それは歴史として認識された。それは背負うべき十字架が生まれたと言うこと。」

 

 「つまり勇者じゃなくなったわけだにゃー。そんな元勇者君たちに、わたくしとねむから新たな称号をプレゼントするよ。」

 

 「喜びたまえ。

 

 神を玉座から引きずり下ろすのはいつだって王だ。

 

 むふっ。

 

 祝え、トータスに僕らが擁立した」

 

 「くふっ。

 

 魔法とオタク知識をしろしめす、平凡最強の世界の王者南雲ハジメ…そっ」

 

 「「魔王の誕生を!!」」




 まどマギとのクロスオーバー。そのラスボスは、悪意ある神ではなく、悪意なき舞台装置。

 そして、それぞれに擁立された勇者たちは、役割を果たす。

 ハッピーバースデー、世界最強!スバラシイっ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。