ありふレコード ー いつかありふれていた魔王と異世界×魔法少女みたま☆マギカ   作:十二の子

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終上 ウツロウサクラ

―*―

 

 神浜市において。

 

 南雲ハジメ、鹿目まどか、環いろはの3人は、万年桜のウワサ結界の中にいた。

 

 「解放の災厄」(カタカナでは単に「カタストロフ」と表記されることとなった)によって破壊された結界だったが、北養区にある「いろはが本来万年桜の位置として考えた場所」の結界は世界を超えた損傷を受けてはいたが何とか無事だった。結界の無秩序な拡大を止めるためにミラーズの魔女が清水幸利の制御下で休眠に入った今、恒常的に通れる3世界の通行路としてはこちらのほうが便利である。

 

 ーもちろん、まだまだしなければならないことは多い。

 

 ハジメがクリスタルキーを以て確かめたところ、今までにほむらが繰り返してきた時間遡行により生まれた世界へはわたることができなかった。おそらくはほむらの「因果侵食する黒き翼」に収束しワルプルギスの夜と対消滅したのだろうと推測されたが、ほむらの記憶は消えていない。

 

 戦場に希望を届けた羽をもたらしたのはまどかだったが、この時まどかはトランス状態にあって、それは外宇宙の「円環の理」をハジメと香織が錬成した瞬間に戻った。このことから力の正体は「他の並行世界で異なる願いをして世界を超える神と等しくなったまどか」であり「円環の理」こそまどかが持っていた力と考えられたが、ほむらにはそんな記憶はなかったしあったのなら神浜世界に魔女はいない。

 

 ー要するに、「因果」それ自体で殴りあった結果、パラドックスを量産していた。概念魔法で修復できるとはいえ、災厄がやらかしてくれた「概念干渉を通じる現実改変」も相まって面倒を次々と起こしていた(例:帰還してみれば八重樫道場は歴史ある忍者屋敷になっていた。「雫には隠していた」というが隠しおおせるわけがない。なお美国織莉子は聞いてあたふたする雫を見てせせら笑った)。こうしたことへの対処は進めていかなければならない。

 

 それでなくとも。

 

 トータスと自らの世界を往復していた神浜の魔法少女たちはいいが、ハジメたちとPMHQは「ある日突然行方不明になり、数か月後、途方もない力を携えて帰ってきた」状態である。一刻も早く改竄しなければならない。

 

 神浜世界にいる魔法少女たちにも、もはや魔女化の呪縛から解放されたことを伝えなければならない。でないと魔女が減るに従い魔法少女同士の争いがおこる。それと同時並行で、「自動浄化システム」「円環の理」を代替する外宇宙の仕組みの法則を少しはマニュアル化しておきたいところだったが「絶望と希望の相転移ではなく愛情と優しさと希望の感情によって世界を支えるように錬成した」などと言われても当のハジメ本人にすらわけがわからない。

 

 もっと目に見える頭痛のタネとしては、トータスの破壊がある。結局、王都はクレーターとなり、神山は天保山より低くなってしまっていた。人的損害こそなかったが、心の支えであった聖教教会も消えてしまい、トータスは0からの再出発である(和泉十七夜は「何もかも破壊されたおかげで、3族が手を取りあえる。そもそも半分が自業自得だ。…とはいえ清々しい気分にはなれなかったな。」と苦笑した)。

 

 3つの世界が手を取り合い、適度に情報を秘匿しつつ「修復」に努めていかなければならないわけだが。

 

 それはさておき、とりあえず世界は守られたのだ。

 

 今や「神にも等しい畏怖の魔王」「神そのものであった理の顕現」「神を代替する論理を束ねるリーダー」とも言われる3人とて、人の子。学校の宿題をやりながら世界の御片付けもやるのは疲れるのであって、たまには休憩したくなる。

 

 「ハジメくん!」

 

 「まどか!」

 

 「お姉ちゃん!」

 

 咲き誇る桜の花びら舞う下の満開の笑顔へ、3人は駆けだした。

 

―*―

 

 「桜子、逢、どうかな?」

 

 |いろは、うい、灯花、ねむがいっしょ。満足。|

 

 ▶さなにちゃんと居場所があるのです。望外です。

 

 「何を言っているのかにゃー?」

 

 「そうだよ。

 

 キミたちも、いっしょにいるんだよ?」

 

 ▶私は、ウワサですよ?

 

 「わたくしたちがいっしょにいてほしくて幸せに遊んでほしんだから、文句言わないの!」

 

 「灯花の言う通りだよ。僕たちの世界には、桜子と逢も含まれるんだから。

 

 ウワサを創り出した僕としては、僕の生み出した創造の子供たちが、物語が終わった後も幸せでいてほしんだ。」

 

 |そういうことなら、納得。|

 

 「灯花ちゃん、ねむちゃん、桜子ちゃん、逢ちゃん!やちよさんがごちそう持ってきたって!」

 

 ▶ごちそう、ですか。データでしか知りませんね。

 

 |実際に食べてみたら、どんな味かな?|

 

 「あっ、待つのにゃー!」

 

 「灯花、ごちそうは逃げないよ?」

 

―*―

 

 「どうだ?アリナ君、考えは変わったか?」

 

 「エヒトのせいにしてアリナたちマギウスをイノセンスにしてくれたことにはサンキューなワケ。だけど、やっぱり破壊は美しかったヨネ。」

 

 「そうかしらぁ~?

 

 私も、神浜を滅ぼそうと考えていたけれど。

 

 トータスが滅びかけたのを見ても、なんの感慨もわかないわねぇ…」

 

 「ワッツ?

 

 ガレキに滅びを見出しても、何も感じないワケ?」

 

 「壊れるより、創りなおされる方が、むしろ…」

 

 「八雲の言いたいことはわかるぞ。

 

 創造は、破壊からしか生まれないからな。」

 

 「ソー…

 

 デストロイ、デッドは目的ではなく手段、そう言いたいワケ?だとしたら…

 

 自己破壊欲求は、次のステップにつなぐためのベース?」

 

 「死、最期は、新たな誕生の始まり。

 

 だから私も、もう一度、魔法少女の呪縛の死の向こうに、神浜にも希望が見えないか、考えてみるわぁ~。」

 

 「うむ、八雲、自分も、神浜の外に出て考えてみようと思う。

 

 我々は神浜しか知らなかった。だから、今から新生するトータスに、何が見いだせるか、大いに期待している。」

 

 「そ。

 

 人類が希求するアートがフィニッシュじゃなくてその先のスタートだったとしたら、それってとってもイマジネーションを刺激するヨネ。ゾクゾクしてきた。」

 

―*―

 

 「八重樫さん。」

 

 「…美国さん。」

 

 「私、やっぱり『八重樫』は嫌い。

 

 だから…

 

 …次から、救世の苦労は貴方たちだけで背負いなさい。」

 

 「ふふ、私たちならそれができる、あなたのように未来が見えなくても…ってこと?」

 

 「…まさか。

 

 私がそんな、あなたたちが私とキリカを超える存在だと認めるような発言をするわけがないじゃない。」

 

―*―

 

 「ハジメくん、おいしい?」

 

 「ああ。…誰から教えてもらった?」

 

 「やちよさんから。」

 

 「む…香織、ずるい。私たちが日本円わからないからって。」

 

 「そうですよ!服だって融通してもらってるし!」

 

 「妾なんか、あう服を貸してくれと頼んだら、寂しそうな顔で逃げられたんじゃぞ!」

 

 「ティオ、それはたぶん胸…おっと。」

 

 「わあ優花お姉ちゃんすごい!槍を投げ返したの!」

 

 「ふふん。」

 

 「…香織、その気になればお金の心配をする必要なんか…「でも、そっちのほうがお嫁さんっぽいよね?」確かに。

 

 おっと、ミュウ、気を付けるんだぞ!」

 

 「だいじょーぶ!」

 

 「過保護ね、あ、な、た。」

 

 「…レミア、どうして心配しない。」

 

 「だって、何があってもどうにかなっちゃいそうだから。」

 

 「そりゃあまあ、な。子どもの数人くらい…」

 

 「なら、いいですよね?

 

 王国もぐちゃぐちゃなので、世継ぎを増やすためにも、私、子供が欲しいと思っていたんです。」

 

 「あっ、リリィ、抜け駆けは良くないわよ?」

 

 「あっ、雫ちゃんお帰り。

 

 そうだよね。

 

 ね、ハジメくん、何人がいい?」

 

 「これだけいればサッカーチームどころか神浜マギアユニオンぐらい作れそうよね。」

 

 「…そんなにいてどうするんだよ。」

 

 「ん…でも、キュゥべえによれば、世界を救うのは感情の力。だから、感情を持つ人は多いほうがいい。」

 

 「そうですよハジメさん!産めよ増やせよ地に満ちよ、さもなきゃどうにもなりませんよ!」

 

 「シア、何言ってるかわかってる?」

 

 「…残念ウサギじゃなくなったと思ってたけど…」

 

 「皆まで言うなんて、まだまだね。」

 

 「だって、黙ってると香織さんが全部持ってっちゃいそうじゃないですか!」

 

 「大丈夫、シアにも出番はあるよ?ハジメくんしだいで。」

 

 「…ま、元から、全員まとめて愛してやる覚悟だからな。

 

 …っと、ミュウが呼んでる。」

 

 「ういちゃんもみたいだね。

 

 あ、ハジメくん、ういちゃんを口説いたりしたらダメだからね。」

 

 「俺はロリコンか?そりゃユエ…何でもない何でもない。」

 

 「だって、ハジメくんの傍にいるとみんな、優しさにほだされてしまいますから。

 

 親御さんたちとの間で奇跡的にうまくまとまったことは驚きでしたけど、先生は、いつかあなたがいろはさんと戦争になるのではと「愛子、もしかして、これ以上増えないようにするための牽制?」ユエさん!?」

 

 「…さすがにユニオンやPMHQと本気で抗争したら世界が持たないから、配慮しとくよ。ってかミュウの友達なんだから、普通に考えて妹枠だろうが。」

 

―*―

 

 ねえ、かなえ、メル?

 

 あなたたちが逝ってしまった時、私もいつか、同じ路をたどるのだと思っていたわ。

 

 だけど、今、そしてたぶん明日も明後日も、私「たち」は、幸せよ。

 

 「あれ?どうしたの、ミュウちゃん?」

 

 「ういちゃんと遊びに来たの!」

 

 「そっか、何する?」

 

 「泳ぐ!」

 

 「えっ、でも、私泳ぎ方なんて知らないよ?」

 

 |大丈夫。溺れないように、ウワサの結界の中に海を作ればいい。|

 

 「さしずめ、『ウワサアクアリウム』だね。ウワサの本の書き直しのついでにやってみようか。」

 

 「それじゃあわたくしはお父様に頼んでリゾートの海の施設についてリサーチしてもらうね。」

 

 「ありがとうね、みんな。」

 

 「ねえ、いろは。」

 

 「なんですか?」

 

 「ほほえましいものね。

 

 あらためて、みかづき荘が『家族』なんだって思うわ。」

 

 「そうですね。」

 

 「やっちゃん、私も、普通の女性として…あんな風に子供を持って幸せを手に入れられる日が来ると思いますか?」

 

 「みふゆ、私を何だと思っているの?

 

 …そうね、きっと来るわよ。だけど、その前に、あなた浪人生でしょう。」

 

 「そーだよ!わたくしがみっちり教えるからね!」

 

 「やれやれ。みふゆくん、僕の宿題はちゃんとやるんだよ?」

 

 「…ワタシは小学生以下ですか…」

 

 「そ、そんなことないですよ?少なくともフェリシアちゃんよりは…」

 

 「あ?さなの教え方が難しいんだぞ!」

 

 ▶さなの教え方は、大変適格です。

 

 「あれ?ういは?」

 

 |ういならあそこ。ミュウといっしょに鬼ごっこしてる。|

 

 「…鬼って、ハジメさんたち?」

 

 |大丈夫、ゲートは結界内では無効に設定してある。|

 

 「ステータス的にそう言う問題じゃ…ちょっと行ってきます!」

 

 「行ってらっしゃい。」

 

 ふふ。

 

 私、これからも、2人に託された希望を胸に、家族と、精一杯幸せに生きて見せるわ。

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