麦わらの一味殲滅RTA〜夢を閉ざす者〜   作:敗北者

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忘れたりうろ覚えだったりする部分が結構あるから、ONE PIECE読み返そうかなって思うけど約100巻分読み返すの大変すぎる。
なるべく読み返したり調べたりして、設定やキャラを原作に寄せているつもりですが、違和感があったり間違いがあったら教えてください。


幕間 別れの朝・約束の空

 

 

 いつか海兵になったときのためにと、すでに日課となっている修行を行なっていたら、どこかで見たような見覚えのある麦わら帽子を被ったルフィが、ずいぶんと急いだ様子で走ってきた。

 

 それから話を聞くと、どうやらシャンクスは今回の航海ではフーシャ村にはもう戻らないという。

 

「ホムラ! 最後だからお前も来いよ!」

 

 そんなことを言いながらわたしの腕をとって引っ張るお兄ちゃんには、「自分で歩く」というわたしの声はすでに聞こえていないみたいだ。

 

 お兄ちゃんは昔からこうだ。妙にお兄ちゃん風を吹かせるくせに、考えなしで向こう見ず。わたしの言葉はろくに聞きもしない。

 産まれたのがわたしよりたった数分早かっただけで、歳は全く一緒なんだから精神的にも肉体的にもわたしとほとんど変わらない。それなのに兄だからとわたしに構おうとするのはやめてほしい。

 はっきり言ってお子さまなお兄ちゃんに構われるのは疲れる。

 まったく、大人で優しいマキノお姉ちゃんを見習ってほしいものだ。

 

「シャンクスーーー!! ホムラ連れてきたぞーーー!!」

 

「おーう! よう、ホムラ!」

 

「……ん」

 

 シャンクス。もうだいぶ前にフーシャ村に寄港して、それからずっとこの村を拠点にしている海賊だ。そして、お兄ちゃんが海賊の道を志すようになった、原因。

 

 わたしは海兵志望だから、今まで極力シャンクスとは会わないようにしていた。それにシャンクスは、海賊だけど……良い人だ。

 そんな人と仲良くなったりしたら、わたしの海兵になるという夢が揺らいじゃうかもしれないから……だから、シャンクスとは仲良くなりたくなかった。

 

 わたしの憧れは、シャンクスではなくおじいちゃん。この村の人たちにおじいちゃんはすごい人だって聞いて、それからたまにフーシャ村に帰ってくるおじいちゃんに武勇伝をせがんで。

 それで、わたしは海兵に憧れるようになった。

 

 でも、もしかしたら海兵に憧れるようになる前にシャンクスと出会っていたら、わたしもお兄ちゃんと一緒で海賊に憧れることになっていたかもしれない。

 そう思えてしまうほどに、シャンクスは──赤髪海賊団は魅力的で素敵な人たちだった。

 

 海軍は正義、海賊は悪。それが世界のルール。だからわたしは海兵を目指すんだ。

 それで良い、それだけで良いはずなのに……シャンクスを見ていると本当にそうなのかと思わず疑問に思ってしまう。

 そしてそんな疑問を持ってしまうたびにわたしは自己嫌悪に陥ってしまう。

 

 あの山賊からお兄ちゃんを助けてくれたときなんてまさにそうだ。あれではまるで、シャンクス達が正義の……やめよう。

 

 きっと、おじいちゃんに聞けば、シャンクス達は悪だと即答するだろう。わたしは、そんなおじいちゃんが少し羨ましい。

 

「ホムラ、難しい顔して、どうした? ……さては、ルフィに麦わら帽子をやったのが羨ましいんだな?」

 

 どうやら変なことを考えていたのが顔に出ていたようだ。シャンクスに指摘されて、恥ずかしくて顔に熱が集まっていくのを感じる。

 

 それに、麦わら帽子……? 

 そういえば今日のシャンクスはトレードマークの麦わら帽子を着けていない。ルフィの被っていた麦わら帽子が見覚えがあると思っていたら、シャンクスの麦わら帽子だったのか。

 でも別に、わたしは麦わら帽子が羨ましいなんて思っていない。そんなの、強請っているようで浅ましい子どもみたいじゃないか! 

 

「べつに、羨ましくない」

 

「照れるな、照れるな! ガキなんだから、欲しいものは欲しいって言えばいいんだよ!」

 

「だから、ちが──」

 

「──はっはっはっは!! ホムラは妙に大人びてやがると思ってたが、やっぱりまだまだガキだな!!」

 

 ぐぬぬ……! ルフィといい、シャンクスといい……話を聞け!! 

 

「そうだな、悪ィが、麦わら帽子はもうないからなァ……よし、ホムラにはコレをやろう」

 

 そう言ってシャンクスが取り出したのは、木製の鞘に入った……刀? でもちょっと短い? 

 

「ほら、抜いてみろ」

 

 渡された刀は、ずっしりと重い。両手でしっかりと持って、なんとか鞘から刀身を抜いてみる。

 

「……刃がない?」

 

「こいつは〈不斬(なまくら)〉って刀でな、人を殺さないために作られた刀だ」

 

「刀なのに?」

 

「ああ、製作者が何を思って作ったのは知らねェが……ホムラにちょうどいいと思ってな」

 

「……?」

 

「お前、よく一人で特訓してるだろ。ちょっと前にたまたま見かけてな……おれが見た感じお前には剣の才能がある。だが、剣なんてガキに持たせるモンじゃねェ……だからその〈不斬(なまくら)〉はちょうどいいだろ?」

 

 どうやらシャンクスはわたしのために色々考えてくれていたらしい。確かに、この刃が無い刀なら危なくないし、わたしの修行に使うにはちょうどいい。長さが短いのも、今のわたしにとってはまだ大きいけど、振り回せないほどでもない。

 わたしのことを考えて、こんなプレゼントを用意してもらって……嬉しくないわけがない。だけど……これじゃあ、なおさらわからなくなってしまう。

 

「シャンクス……シャンクスは、悪?」

 

「あ? おれは海賊だぞ?」

 

 思わず口をついて出てしまったわたしの言葉に、シャンクスは当然だ、とでも言うように肩を竦めて答えた。

 

「そうだけど! でも……シャンクスは優しい」

 

「……」

 

「わたし、海兵になりたくて……でも、海賊の中にもシャンクスみたいな良い人がいるのなら、って考えると……わからなくなってくる……」

 

 シャンクスの顔つきが、真剣なものに変わった。

 

「わたし……どうしたらいいのかな……? シャンクスは悪い人なの……?」

 

「はぁ……そんな迷子みたいな顔をするな」

 

 そんな顔をしていただろうか。わたしは……それほどまで追い詰められていたのだろうか。海兵になるという夢が揺らぎそうになって……。

 

 シャンクスがわたしに目線を合わせるようにしゃがみこむ。

 

「いいか、ホムラ。おれは──海賊は社会的に言えば間違いなく悪だ。けどな、例えばルフィのようなヤツにとっては、正義とまではいかなくとも、少なくとも悪じゃない。わかるよな?」

 

「……うん」

 

「それは、ホムラにも言えることだ。おれがお前にとっての悪か正義か……そんなこと、誰に決められるモンじゃねェし、おれが決めることでもねェ」

 

「……」

 

「それはホムラ……お前が決めることだ。誰が悪で、何が正義か……それを決めていいのは、誰でもねェ自分自身だけだ」

 

 シャンクスの手が頭を撫でる。その手は、とても大きかった。

 

「おれがお前に言えるのは……そのぐらいだな」

 

 何が正義で、誰が悪かはわたし自身が決める……。わたしは答えが知りたくてシャンクスに聞いたのに、これじゃあ今まで悩んでいたことは何も解決してないし、むしろ悪化している気がする。

 わたしを悩ませるシャンクスは、やっぱり悪……? 

 

「……難しい」

 

「はっはっはっはっ!! 別にすぐ答えを出す必要はねェよ。お前、海兵になるんだろ? それなら、次会ったとき答えを聞かせてくれ」

 

 頭からシャンクスの手が離れていく。お話は終わりみたいだ。

 

「よォし、野郎ども!!! 錨を上げろォ!!! 帆をはれ!!! 出発だ!!!」

 

 シャンクスの船が港から遠ざかっていく。

 

「シャンクスぅぅぅぅ!!! 約束はぜったいに守るからなあああああ!!!!」

 

 お兄ちゃんが泣き腫らした顔で、喉が裂けるほどの大声で叫ぶ。この村で一番シャンクスと仲良くしていたのはお兄ちゃんだ。別れは辛く、寂しい。

 あまりシャンクスと関わることのなかったわたしでも、えも言われぬ寂寥感のような何かが胸に去来するくらいだ、お兄ちゃんはどれだけ辛いのだろうか。

 

 それにしても約束……か。わたしはシャンクスとルフィが交わした約束というものが何なのかは知らないけれど、それはきっととても大事なことなのだろう。

 

 …………

 

「シャンクス……またね」

 

 わたしのその小さな呟きは、シャンクスに聞こえることはきっとなかっただろう。だけど、船から港に向かって大きく手を振るシャンクスと、一瞬だけ目が合った気がした。

 

 ──答えを、楽しみにしてる。

 

 そんな声が、聞こえた気がした。

 

 

 

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