麦わらの一味殲滅RTA〜夢を閉ざす者〜 作:敗北者
犬の頭をした軍艦が、少しずつ小さくなっていく。それが水平線に消えていくまで眺めていた私は、思わず小さく溜息を吐いてしまった。
「行っちゃった……」
ルフィも少し前にコルボ山のダダンさんのところに預けられちゃったし、ホムラは海兵になるという夢を叶えるためにガープさんと一緒に海軍本部に行った。ルフィには会おうと思えばいつでも会えるし、ホムラとは定期的にフーシャ村に帰ってくる約束もした。だから、二人とも今生の別れというわけではないけど、それでも離れるのは寂しくないと言えば……嘘になる。
思えば、もうずっと前から三人でいた。血は繋がっていないけど、二人は私にとって間違いなく弟と妹だったし、あの子達も私のことを姉のように慕ってくれた。
「これが成長なのかなぁ」
少し前まで私の後ろをちょこちょこと付いてきた子どもが、形は違えどそれぞれの夢に向かって邁進している。
海賊になるという夢を追い続けるルフィ。例え、祖父であるガープさんに強固に反対されても、絶対に意思は曲げず、いつか必ず船長さん──シャンクスさんのようなすごい海賊になると豪語するルフィは、その頑固さがどこかガープさんと似ていて。やっぱり、家族だなぁ……と笑ってしまった。
ダダンさんのところにいるというもう一人のガープさんの孫──エース君と仲良くやれているだろうか。ルフィにとって妹であるホムラ以外の、数少ない歳の近い相手。物怖じしないルフィなら問題ないとは思うけど、それでも心配してしまうのは姉心か……過保護かな?
海賊になるなんて、褒められたことではないだろう。でも、ガープさんには悪いけれど、実は私もルフィの夢を応援しているのは内緒だ。
この村には、私と同じ考えの人も結構多い。これだけみんなに思われているルフィは、きっとシャンクスさんのような素敵な海賊になるに違いない。道を踏み外すことは決してない、それだけは断言できる。
ホムラも自分の夢に向かって進んでいる。歳の割に大人びたあの子の場合は、ルフィよりももっと具体的なしっかりとした未来のビジョンを持っているようで、このところは遊ぶ時間を惜しんで強くなるために特訓していたのを私は知っている。ついには海兵になるために本格的な指導を受けようと、遠いところに旅立っていってしまった。
だけどホムラは頭が良すぎるから、心配だ。真面目で責任感が強いあの子は、いろいろと難しく考えて抱え込んでしまうかもしれない。
口下手で大人しいホムラは、抱え込んだものをどこかで吐き出すことができるのか……あのときのシャンクスさんとの会話を思い出す。
考えてみれば、あの子があれほど声を荒げた姿を見たのは初めてかもしれない。それだけ、今まで思い悩んでいたということなのだろう。
それを、私に相談してくれなかったことは悔しいし頼りになれなかった自分が情けない。せめてどうか、向こうで悩みを吐露できるような人と出会ってほしいと切に思う。それに加えて、ルフィにとってのエース君のような近い歳の友達でもできればもっといいだろう。
フーシャ村に帰ってきたときは、悩みを聞いてあげよう。力になれるかはわからないけど、何もしないよりはマシなはずだ。大切な……私の大切な〝妹〟にはもっと頼ってほしい。
「はぁ……」
「なんじゃ、マキノ。ため息なんぞ吐きおってからに」
「村長さん」
どうやら村長さんに聞かれてしまったみたいだ。迂闊だったかなあ。
「村長さんは、ルフィがいなくなって、寂しくないかしら?」
「フン。……海賊、海賊と……小うるさいのがいなくなって、せいせいしとるわい」
相変わらず、素直じゃないなぁ。村長さんが海賊になろうとしているルフィに反対しているのは、叱りつけているのは、きっとルフィのことを心の底から心配しているからだ。海賊なんて危ない世界に、ルフィに足を踏み入れて欲しくないからだ。わざわざ海賊にならなくとも、この村でずっと平和に暮らしていてほしいと願っているからだ。
村の恥だなんだと……そんなのは建前にすぎない。
そうじゃなきゃ、あんなに熱心に叱りつけたりはしない。村長さんはルフィが大好きだから、孫のように大切に思っているから叱るのだ。
普段から難しそうなしかめっ面をしているけどたまにルフィとホムラのことを優しげな目で見ていたことを、まだバレていないとでも思っているのだろうか。
なんだか、おかしい。
「ふふ……そういうことにしておくわ」
「……」
苦虫を噛み潰したような顔でおし黙る村長さん。やっぱり素直じゃない。
「ホムラの方はどうなの? あの子……いろいろと心配にならない?」
「それこそ問題ないじゃろ。あやつにはガープがついておる」
確かにガープさんがついているけれど……なんとなく不安に思ってしまうのはなぜだろう。ガープさんのことは、もちろん尊敬しているし信頼もしている。だけど、子育てというのは尊敬と信頼だけで成り立つものでもない。
子どもがいない私が子育てを語るのは変な話だけど、それでもルフィとホムラを育てたという自負はある。だからこそ、たまに帰ってくるガープさんの二人への接し方を見て、どうにも不安に思ってしまうのだ。
今回だってそうだ。いくらガープさんが海軍の偉い人で、海賊を毛嫌いしているからと言って、教育と称していきなり山賊の下に子どもを預けたりするだろうか。以前にも、ルフィをジャングルに放り込んだことがあったのだ、これで心配にならないわけがない。
確かにダダンさんは、以前村に現れた山賊と比べて義理人情に厚い良い人だと思うけど、それにしても……。
「はぁ……」
「……わしからすれば、お前の方が無駄にいろいろと考えすぎだと思うがな」
言われてみれば……と自嘲する。心配性でちょっと考えすぎていたかもしれない。二人がいなくなることが、思ったよりも私の心の負担になってたのかな。
それに、なんとなく、寂しい気持ちを奥へ押しやるために二人のことばかり考えていた節がある。
二人のことを過剰に心配していたのも、きっと寂しさの裏返しだったのだろう。二人のことを考えることで、寂しさを隠そうとしていたのだ。何かを考えている間は、そのことに集中していられるから。
ダメだなぁ……私。ホムラにはお姉ちゃんぶってまたいつでも会えるから寂しくないよなんて言っておいて……。
「はぁ……」
「またため息か」
「だって、村長さん……」
「フン。お前もまだ子どもじゃな」
もうすぐ私も20歳になる。だけど、私なんかよりもずっと歳上な村長さんにとっては、まだまだ子ども扱いらしい。
私だって一人でお店を持って、ちゃんとやっていけているのに……村長さんは厳しい。
「はぁ……」
「ああああああ!! うっとうしいのう!! うじうじうじうじと!! そんなに心配なら、引き止めればよかったじゃろ!!」
確かに、海賊を目指すことに怒ったガープさんに無理矢理コルボ山に放り込まれたルフィはともかく、ホムラの方は私が止めればこの村を出て行くことはなかったかもしれない。せめて、後1年か2年は一緒にいられただろう。
あの子は私にとても懐いているから……弱みに付け込むみたいで嫌だけど、その気になればきっと引き止められた。
「……でも、二人の夢だから……」
「なら、とっくに答えは出ておるじゃろう! ここでうじうじ考えていても何にもならん! ……見送ったんだから、わしらにできることはここで、見守っていることだけじゃ」
「そう……よね……」
村長さんなりの、励ましなのだろう。相変わらずしかめっ面で、口が悪くて……優しくて。
「フン。わかったらとっとと戻るぞ。メシじゃ、メシ。マキノ、なんか作ってくれ」
でも、目だけは真っ直ぐだから。考えていることはすぐわかる。
思えば、昔からこの人には何度も励ましてもらっていた。いつも不器用で、回りくどかったりするけど、私が困ったり悩んだらしたときには嫌そうな顔をしながらも必ず力を貸してくれた。
やっぱり、素直じゃない人だ。
「ふふ……はぁい。今朝作ったシチューが、あるわ。ホムラはシチューが好きだから、たくさん作ったのよ」
まったく。うじうじして、私らしくなかったわ。
ルフィ、ホムラ。私から二人にしてあげられることは少ないけど。二人の夢を、いつまでも世界で一番応援しているわ。
美味しいご飯をたくさん作って待っているから、いつでも〝ここ〟に帰ってきてね。
いってらっしゃい。
たくさんの高評価、ありがとうございます。頑張ります。
評価の一言も、見てます。とても励みになりました。
幕間はひとまず今回で終了、次からはRTAパートに戻ります。
いつもアンケートの回答ありがとうございます。
アンケートを反映して、悪魔の実あり、生やすなら羊のツノ、幕間は定期的に書いていくことにします。
マキノと村長はこんな感じで良いのだろうか……と、多分今後も原作キャラを動かすたびに思うんだろうなあ。二次創作の難しいところですよね。
オリキャラはあり?作るにしても2、3人です(なしだとホモちゃんはぼっちになります)
-
あり
-
どちらかと言えばあり
-
好きにしろ
-
どちらかと言えばなし
-
なし